【三次元】運命の人が男と女とは限らない【ナマモノ注意!!】
作者/ 枝豆豆腐

〝初恋〟-1- ※学パロ 視点 小林
「設楽くんって彼女いるの?」
今年になって何回質問されただろう?
自分から聞けよと心の中で軽く呟いた。
「今はいないんじゃないかな」
「好きな人とかいる?」
「さぁ、知らない」
適当に答えると眉間に皺を寄せた。
「ね、聞いてくれない?」
「なんでだよ。自分で聞きにいけよ」
「だって設楽くんって不良じゃない。怖いしさぁ…………でも。
顔とか超タイプなんだよねぇ。もう全てかっこいい」
喋りが止まらないらしく、俺はそのまま静かに教室を出て行こうとした
…………だがあと一歩のところで捕まってしまった。
「逃げないでよ、お願いだから聞いてきて」
「俺がぁ」
「だって設楽くんとは幼馴染みなんでしょ」
よろしくね、と走り去ってしまった。拒否権はないようです。
別に設楽に好きな人居るか?って聞くのは簡単なことだ
けどもし………居るって答えたらどうしょうと不安になる。
だって俺は昔からずっと設楽のことが大好きだから
長年の初恋。いつ叶うのだろう。
「設楽、設楽。」
呼びながら寝ている設楽の背中をつつく。
よく設楽はこの屋上でのんびりと昼寝をしている
今日は肌寒い、けど設楽はお構いなしで冷たいコンクリートの上で
昼寝を堪能していた。そして俺は設楽に呼び出され
水色と白のアイスキャンディーを買ってこいと命令され
屋上に移動し、今に至っている。
「どっちがいい?」
そう言って首をかしげると設楽は
「お前、あまりにも可愛いな」
なんて言われてしまった。周りからしたら変だろうが
昔から言われているので慣れている、たぶん冗談だ。嬉しいけどね。
すると設楽はソーダ味を乱暴に奪った。
「えっ、お前ソーダ味でいいの?」
「だって賢太郎はバニラ味好きだったろ?」
「……………まぁそうだけど」
「なら食べなよ」
こういう優しいところに惹かれてしまう。
俺はにこにこと笑いながら、設楽の隣にちょこんと座った。
秋空にはいわし雲。放課後だから夕陽が出ていて空は茜色に染まる
「………設楽はさぁ、よくこんな寒い日にアイス食べるよね」
「小林だって食べてるくせに」
「小さい頃から食べてるから慣れちゃったんだよ」
そう、俺は設楽のことだったらなんでも知っている。
変な性格のことも意外に猫舌だってことも器用なとこも
あと電話が苦手なとこも。
だけど俺に知らないことが一つあったとしたら、それは
「………設楽、」
「なに?」
「彼女とか居るの?」
「えっ?またその質問?……しつこいなぁ、いないって言ってるじゃん」
設楽の答えを聞いて少し安心する。
なら…………好きな人とか居たりするのかな?
「好きな人とか居るの?」
「………いねぇよ。いきなりなんだよ」
質問しただけなのに、設楽は少しだけ戸惑った。
そしてほんの少しだけ顔を赤らめたかもしれない。
………居るんだ。好きな人が
幼馴染みの俺でも知らないことが一つあった。それは
設楽が俺のことを好きじゃなくて、違う人が好きだったってこと。
少しだけ奇跡を信じてた自分がバカらしい。何自惚れしてんだよ。
「あのな、小林……」
「うん」
「俺、その………えっと……」
「あのさ設楽、前々から思ってたんだけど」
「えっ?」
「好きな人出来たでしょ!」
はぁ!?と設楽は叫ぶ。
「気付いて、ないのか?」
「いや、最近おかしいとは思ってたんだよ。いいんだ別に」
そして心にも無いことを言った。
「俺にも好きな人いるし」
「えっ?」
「お互いもう大人じゃん。好きな人くらいいないとね」
じゃあね、と言って俺は屋上を出て行った。
泣かないと決めていたけど少しだけ涙が流れていた。
違う。これは俺の涙じゃない。誰かの涙だ。
いつからすれ違っていた?
どうして気付けなかった?
二人で過ごした思い出はここからもう封印した。
そう設楽は友達。もう今日から友達
もう二度と好きだなんて想わない、言わない。

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