【三次元】運命の人が男と女とは限らない【ナマモノ注意!!】
作者/ 枝豆豆腐

視点 綾部 -1-
自分の人生最大のピークは、
昨日起こった。
「…有吉さん、俺、有吉さんのこと大好きなんです!!
俺と付き合ってください」
一世一代のプロポーズを有吉さんは
携帯電話を片手に俺の方なんて見向きもせず
興味のなさそうな目で言った。
「いいよ。今日からお前は俺の七番目の愛人な」
「………やったーーーーーーーー!!」
〝年上に恋する彼と年下をいじめる彼〟
「……………ってことで、有吉さんと付き合うことになりました」
俺は満面の笑みで長年ライバルだった設楽さんに話した。
設楽さんは予想もしていなかった事実に驚愕しているのか、
唖然とした表情で俺のことを見ていた。
その表情を見て爽快な勝利に浸りながら俺はニヤニヤとする。
「ですので、もう有吉さんのことは諦めてください」
「………俺は別にいいけど。綾部…お前はそれでいいのか?」
「えっ?何が?」
「七番目の愛人ってことはお前の前に六人もいるってことだろ?」
「あっ………」
「しかも愛人ってwwww恋人でもないしwww」
「確かにそうだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「まぁまぁ泣くなって(何コイツ、天然?)」
嬉しすぎて考えもしなかったけど、今ちゃんと考えると
七番目の愛人っておかしいよなぁ!!!!
ドラマとかだったら絶対に視聴者に嫌われるタイプだし
殺されるタイプだし、一人で子供とかを育てるタイプだよ(泣)
しかも七人って…どんだけいるんだよ!!
「…設楽さんは何番目なんですか?」
「だから、俺は有吉好きじゃないって言ってるだろ。誰情報だよ(笑)」
「嘘つかないでください、吉村が言っ………もしかして…」
「お前を陥れる嘘だったりして」
「………吉村らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「はいはい、落ち着けって(やっぱ天然だな)」
吉村を信じた俺がバカだった。
「………設楽さん、俺、どうしたらいいでしょう?」
「何が?」
「………有吉さんにとって俺は何の眼中にも入らない存在ですかね?」
多分告白した時だって分かっていたんだ。
有吉さんは俺を見向きもしなかったってことは
もう眼中にはないってことの意思表示だったってことを。
だけど、七番目の愛人だって言われたときに
全ての告白を聞いてくれていたことがどうしよもなく嬉しくて
舞い上がって その場で何も 考えなかったのかも知れない。。。
「綾部はどうなの?有吉のことどう思ってんの?」
初対面のことは憶えていない。
ただ鮮明に憶えているのは、ガチガチに緊張していた俺に
笑顔て優しく接してくれた有吉さんの姿だけだった。
若手のことが嫌いだとよく噂を聞いていたから、
今日はとことん有吉さんにスベりさせられて終わるんだろうなと思った
でも、有吉さんは誰よりも俺に優しくしてくれてスベらなかった。
しかも面白くしてくれていた。
それだけの記憶が 今も鮮明に蘇る。
いつからか、有吉さんのことが大好きになっていた。
不機嫌そうに眉間に皺を寄せ
濁った瞳と昔はパッチリだった二重
ふわふわな髪
笑うと小刻みに揺れる肩
すべてを愛せそうな気がした。
「………ずっと胸の中で会いたいと流れてるんです」
会えない日があるのが涙がでるほど嫌で、
本当はこんな気持ち無いんじゃないかって思って
有吉さんのことを大好きだというのを抑えた。
「でも、有吉さんに優しくされると胸の中が冷たく息をする。
何度も目を閉じては何も見えない振りをしました。でも…………
分かるんです。自分に嘘ついてるなって」
有吉さんの心はここに無いことぐらい、昨日からずっと分かってた。
「…でもね、愛しているんです」
「………ふっ…高校の後輩の女子気分か?
まだ分からないだろ、もしかしたら照れて嘘をついたのかもしれない
アイツは素直じゃないからねぇ~」
「………………本当ですか?」
「保障はしないよ(笑)」
設楽さんは笑顔で言ってくれた。
「…俺、頑張ってみます!!」
「頑張れ頑張れ、悩むからこそ若者よ」
その日から俺は七番目の恋人を打破して
有吉さんのとっておきの大切な恋人になるために攻めていった。
「有吉さん」
「んー?」
「たまにはデートとかどうでしょ「缶コーヒー買ってきて」
「…はーい」
………まだまだ!!
「有吉さーん!」
「あっ綾部、良いとこに来てくれた。お前俺のこと大好きだろ?」
「はいっ!!愛してますよ!!」
「ならちよっとこれ持っておいてくれ」
「えっ?………有吉さんこの油性マジックがな「後は頼んだ」」
ぴゅーと早く走り去った有吉さん。
「…なんだろうな///」
すると前から何十人もの芸人さんが走ってきた。
そういえば今日はロンハースペシャルだったなぁ………
「皆さんどうし………」
「どうしたもこうしたもない!!!!!!!」
何故かみんな激怒している。
「誰や俺の額に肉やなく内って書いたんわ!!」
「後藤、そんなもん良え方や………俺なんて浮気山ほどやぞ!!!」
「二人ともいいじゃないですか、俺なんて顔面放送禁止っすよ!!」
「ザキヤマもお前らもええやんか………俺はバターナイフやで」
ジュニアさん……………。
どうやら有吉さんは楽屋を転々と移動して寝ている人に油性マジックで
額にあだ名みたいなのを書いて暇を弄んでいたらしい。
「おい綾部、お前が持ってるのって………油性マジック?」
額に「ハードゲイ」と書かれた淳さんが言う。
すると周りを囲まれた、みんながみんな睨んでいる。
「ちっ違います………これは有吉さんが……」
「先輩に罪被せる気か?」
「…………ちょっと痛めつけんと分からんみたいやなぁ……」
その後はご想像にお任せします(汗)
攻めても攻めても、上手く返されて。
しかもボロボロにさせられる始末だったり(泣)
でも諦めないでいこう!!
視点 設楽
「おはようございます」
「おはよー」
「珍しいっ、おっおはよー」
キカナイト収録前。
珍しく有吉が俺らバナナマンの楽屋に挨拶に来た。
そのせいで日村さんが挨拶程度で噛んだ(笑)
「ねぇ有吉、俺って何番目の愛人なのかな?」
白い息を吐きながら、俺は意地悪そうに言った。
すると有吉は少しだけピクッと体を震わせて
開けようとしていたドアを開けずに、俺を睨んだ。
日村さんは驚きすぎて声を失っている。
「………なんですかそれ?」
「綾部は七番目なんだって?
有吉って意外とメンクイなんだね、綾部も結構男前なのに七番目」
「…………………それが?」
「綾部が有吉に強引アプローチを続けて一週間目か………変わらずだ」
「あんたは一体何を言いたいんだ」
「…………いい加減にしろよ、いつまで続ける気だこんなこと」
長年の仲で分かっている。有吉は綾部に惚れていると。
「本当は愛人なんていないんだろ?」
すべては有吉の素直になれない性格が生み出した設定。
…分かっていたが、綾部本人には伝えなかった。
どうしてかと聞かれると分からないが、
なんか…面倒くさかった。
「………設楽さんには関係ないことです」
「だよ。そんなこと分かってるよ。でもねぇ………………
俺はああやって、どうしても振り向いてほしいって頑張る高校の後輩の女子が大好きだったんだよ」
何事にも健気な綾部がほんの少しだけ、応援したくなった。
「……………なんですかそれ?」
「分かってるくせに」
「じゃあ、俺忙しいんで失礼します」
有吉は楽屋のドアを開けた。
「有吉。いずれ決断する時はくるから」
振り向かずに、楽屋を出て行った。
「……………設楽ぁ(泣)」
「どうし……えっ?………なんで泣いてんの?」
「有吉の愛人って本当かぁ?」
「そんな訳ないだろ、俺は日村さんのこと愛してるんだから」
「……………………設楽ぁ(嬉泣)」
「はいはい、泣かないの」

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