ダーク・ファンタジー小説

I live with ヴぁんぱいあ。【5/20更新】
日時: 2019/05/20 01:12
名前: はるた

「しばらく更新停止します(通常更新です)」 byはるた


 




 初めましてor(知っている人がいましたら)お久しぶりです。
はるたと申します。

 はるたの五作目となる今回の小説のテーマは「ヴァンパイアと人間の少女の恋」になっております。
今回は皆様に少しでも「ドキドキした」と言ってもらえるようなお話にしていきたいと思っています(思っているだけ)ので、どうぞよろしくお願いします。





【参照記念】

 参照300記念小説 >>55
 参照600記念小説 >>81
 参照900記念小説 >>111
 参照1200記念小説 >>112
 参照1500記念小説 >>121








【お客様】

◇ゴマ猫様
◆ひよこ様 
◇雨空様
◆朔良様
◇覇蘢様
◆占部 流句様
◇いろはうた様
◆錦歌赤兎様
◇紗悠様
◆如月 神流様
◇みるく様
◆波璃様
◇星来様
◆蒼様
◇美奈様
◆ゆーき。様
◇戒壇様
◆ことり様
◇顔無し@様
◆村雨様
◇佐渡林檎様
◆Garnet様


【目次】

*Prologue >>09
*Episode01 >>113



【設定資料集】

*「ゆたか&鉋」 >>77
*「八朔&海里」 >>78
*「恭也&庵」 >>104
*「悠真&千影」 >>105





 参照9000感謝です。
 



では、物語の世界へどうぞ。





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Re: I live with ヴぁんぱいあ。 ( No.192 )
日時: 2018/08/22 23:51
名前: はるた ◆OCYCrZW7pg

 Blood24「中学」





 どうして大事なものは、大切なものは、大好きなものは……全部私のもとから離れていってしまうのだろうか。いくら私が抱きしめようとも、手の隙間からみんな零れ落ちてしまう。ゆたかは、どうして出て行っちゃったんだろう。ゆたかはどうして、私から、私のそばから。

「……わかんないよぉ、い、いやだよぉ」

 溢れ出てくる涙は後悔の涙だった。泣きじゃくる私に、きっとゆたかならこう言う。海里らしくないね、って。海里なら「何先に死んでんだよ、ばーか」みたいに軽く笑ってくれると思ってたよ、なんて、ああ、きっとそう言う。ゆたかなら絶対そう言う。

「東雲、大丈夫か」

 佐伯くんが強く握った私の右手。ゆっくり熱がこもっていく。
 強くならなきゃいけなかった。私は、ゆたかを守れるくらいに、強くならなきゃいけなかった。

 ***



 相楽ゆたかに初めて出会ったのは、中学一年生の春。彼女は新入生代表で、私たちの代表としてスピーチをしていた。その姿は凛として美しく、女ながら見惚れてしまうくらいで。
 でも、クラスメイトになった彼女はびっくりするくらい気さくな女の子だった。見た目は相当可愛いのに、きっとモテるだろうに、そういうことに全く興味がなくて。男の話題がようやく出たと思ったら彼女の弟だったり。本当ゆたかは今どきの女の子とはかけ離れていた。


「もう、海里はわかってないっ! 悠真は天使みたく可愛いの!」
「はいはい、それもう何万回も聞いた」
「昨日もね、お姉ちゃんおかえり、って帰ると玄関までお出迎えしてくれてね」
「……はいはい」
「あああああああ、もう可愛いの。なにあれ、悠真可愛い」

 だから、私はこの時知らなかった。ゆたか自身も隠していたから、だからわからなかったのも仕方ないけど、私はちゃんと気づかなきゃいけなかった。ゆたかのSOSにちゃんと、気づかなきゃいけなかった。
 中学三年の夏。親友になった相楽ゆたかは一切の連絡を絶って、学校に来なくなった。夏休みの二週間前のことだった。すぐに長期休暇に入ったこともあって、補習にすら出てこないゆたかをみんな心配していた。それでも誰も彼女の「家」まで尋ねる人はいなかった。何でかはわからない。でも、なんとなくだけど、今までゆたかが一度たりとも「家に遊びにおいで」なんて言わなかったことが原因かもしれない。いや、そもそも彼女が自分の家の話題で「弟」以外口にしたことがなかったことが、そもそもおかしいのだ。彼女は一度たりとも親のことを話さなかった。何でかちゃんと私は、気づかなきゃいけなかったのに。



「ゆ、たか。ねえ、ゆたか」


 夏休みの補習帰り、先生にプリントを届けると言って彼女の住所を聞いた。良く晴れた夏の日だった。
 チャイムを鳴らして彼女の名前を呼ぶ。五分待って、それでも彼女は出てこなかった。もしかしたらいないのかな、と思って引き返そうと思った時だった。玄関の扉が開いて、一人の少女が出てきた。目を疑ったのを覚えている。まぎれもなく、それは私の良く知っている「相楽ゆたか」なのに、それは全く別人で。


「ゆ、ゆたか?」

 扉を開けた瞬間に力尽きたのか、ばたりと倒れこんだ傷だらけの、あざだらけの少女。開いた口がふさがらなかった。どうしてこんな風になってるのかわかんなかった。泣き声がする、男の子の泣き声。この異様な雰囲気は、十五歳の私を大きく変えた。呼吸をするのもやっとの、この壊れた家族。

Re: I live with ヴぁんぱいあ。【8/22更新】 ( No.193 )
日時: 2018/10/01 22:40
名前: はるた ◆OCYCrZW7pg

 ヴぁんぱいあ。四周年だよ!!!!!!!!!!!!!!!
 お久しぶりです、はるたです。この作品も四周年を迎え、あれ? なんでまだ完結してないの??? という疑問が私の背後をついてくるのですが気にしない。大丈夫。
 さて、今回も夏の小説大会で銀賞という素敵な結果をいただきました。ありがとうございます。今回で合計五回目の受賞となります。うれしいな。

 この作品も最終章に突入し、多分来年のこの時期を迎えるまでには完結できるかなあ、みたいな今のところそんな感じで進めています。月に一度の更新を目指してやっていますので、これからも定期的に更新できるよう精進します。どうぞ、宜しくお願い致します。

 

Re: I live with ヴぁんぱいあ。【8/22更新】 ( No.194 )
日時: 2019/01/22 23:10
名前: はるた ◆OCYCrZW7pg

 純粋に、ゆたかが死んじゃうと思った。ボロボロの姿で、ひくひくと嗚咽を漏らす彼女を見て、無性に殺意が沸いてきた。助けて、と彼女の口は動いていたけれど、それは声にはなってなかった。もう、限界だったのだろう。

「ねえ、何があったの。ねえ、ゆたかっ」

 呼吸の荒くなったゆたかは、喋ることもままならなかった。
 奥の部屋からわんわん泣きじゃくったまま出てきた男の子は、私を見るなり「助けて」と呟く。ゆたかみたいに体がボロボロなわけじゃないけれど、もう精神が限界みたいに、泣くことしかできなくなってしまった男の子は、知らない赤の他人の私に勢いよく抱き着いてきた。

「きみが、悠真くん?」
「……んん」

 こくんと男の子が頷いて、また瞳から大きな涙の粒をこぼす。

「お姉ちゃんが死んじゃうよ」

 いやだよ、こわいよ。助けてよ、悠真くんの脳内はもう整理も何もできない状態で、まるでパニック障害みたいに、ひたすらに「たすけて」と私にすがり続けた。

 壊れた家族は、もう二度と元には戻らないんだよ。と、ゆたかが何気なく言ってたことを思い出す。これのことなのかなって、もう後戻りもできなくなって、私はようやく気付いたのだ。








 何がきっかけか、何が原因か、それも何も教えてはくれなかったけれど、ゆたかはようやく自分のことを話してくれた。
 父親の不倫がきっかけで、母親がアルコール中毒になり、家がめちゃくちゃになったこと。理性を失った両親は、平気で殴ったり蹴ったりしてくること。それが最近もっと悪化して弟の悠真くんにまで影響が出そうになってること。
 ゆたかは笑いながら言った。私が守んなきゃって。根本からおかしいことに、彼女自身気づいているはずなのに、それを言葉にしないのはどうしてなのだろうか。
 嫌なら逃げればいい。助けを求めればいい。そんな簡単な脱出方法をどうしてゆたかは取らないんだろう。渦の中で彼女はきっと溺れている。悲鳴をあげることもできないほど苦しんでくるくせに、手を伸ばさない。そういう彼女は、私は嫌いだ。


「こんなままじゃ、ゆたかが死んじゃう」
「死なないよ。こんなことで」
「そうやって、誤魔化して、ゆたかはどんどん傷ついていくんでしょ」

 私が怒りまかせに大声を出すと、驚いたようにぱっちり目を見開いて、そして、くすくすとゆたかは笑った。

「海里はかっこいいね」



 いつもゆたかは、そう言って私のことを突き放すのだ。







   * * *



 「この世界が正解なんて何も保証もないのに、どうして私はゆたかの死を受け入れなきゃいけないんだろう」

 ゆたかが死んだなんて、そんなの嘘だと今でもそう思ってる。
 綺麗ごとばっか言ってた自分が酷く滑稽に思えた。ゆたかはきっと帰ってくる、ゆたかはきっと戻ってくる、ゆたかはきっと

 生きてるなんて、何の根拠もないのに私はそう信じていた。


「でも結局さ、未来にはゆたかはいないのに」




 佐伯くんが私の頭を優しく撫でる。だんだん強くなってぐしゃっと私の髪をかき回した佐伯くんは「それが現実なら、仕方ねえだろ」と、ぼそっと私の耳元で囁いた。顔が真っ赤になる。覚悟できてなかったのはきっと私だけだ。気持ちをひとつも告白できなくて、嘘をついて彼女のそばで笑ってた。親友だよね、なんて私は聞けなかった。だってゆたかが本当にそう思っているならきっと、彼女は私に助けを求めたはずだ。
 強がりですべてを片づけられない。ゆたかはきっと私のことを信じてなかった。それがあの日わかった現実だ。



「なんにも知らなかった。なんにもしらなかった。ただそれだけが、こんなにも、苦しいの」




 ゆたかの病気の悪化も、ゆたかの家の問題も、私たちは何一つ知らなかった。
 それで、親友なんていえるのだろうか。
 あんなに近くにいたくせに、何にもできなかった自分が不甲斐無くてまた私は泣いてしまった。

 ゆたかが死んだ。私たちの太陽だった女の子が、死んじゃった。



 Blood25「破壊」

Re: I live with ヴぁんぱいあ。 ( No.195 )
日時: 2019/03/05 01:22
名前: はるた ◆OCYCrZW7pg





 2018年冬の小説大会でこちらの作品が銀賞をいただくことができました。
 大会期間中更新もしてなくて大変心苦しいですが、嬉しい限りです。
 平成最後の小説大会、金賞、銀賞のダブル受賞で終えることができてとても嬉しいですね。これからもよろしくお願いします。


 ■





 それは絶対に嘘であってほしかった。
 だって、そんなの間違いじゃん。そうやって誰かに言ってほしかったんだ。


 君が死んだあの日のことを、思い出せない。だって、いつ死んだかもどうやって死んだかも、
 誰のことを思って死んだのかも、私は知らないのだから。

 幸せだった、って聞いたら君はなんて答えるだろう。考えてももう無駄なのに、私は当然のように君の、彼女の、あの子の答えが浮かぶ。





 「幸せだよ」



 いつも、君は苦しみながら笑って、そういうんだ。嘘だって、君はそれを隠してしまうから。
 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿。ばあか。
 そうやって、私は君のお墓で何度も何度も泣きわめく。とても弱っちい。

Re: I live with ヴぁんぱいあ。 ( No.196 )
日時: 2019/05/20 01:12
名前: はるた ◆OCYCrZW7pg







 Blood26「兄妹」





 たとえば、って言葉はとっても単純で、なんて口にしやすいフレーズなんだろう。たとえば、私が死んだとして悲しんでくれる人はいるんだろうか。そんなこと考える時点で私はかまちょだ。
 人生をもう一度やり直せるなら十七とか十八とか、そんな若い間に「死」なんて考える必要のない、楽しい人生設計とかを友達とわいわいして決められるような、そんな日々を過ごしたい。

 ああなんて、気持ち悪い。





   ***




「ゆたか」

 呼ばれたその声にはもちろん聞き覚えがあった。
 ちょうど歩道橋から深い深い海を見下ろしていて、ここから落っこちたら簡単に死ねるんじゃないかってそんな馬鹿なことを考えてしまった。

「なんだ、ついてきたんだ。八朔」

 見覚えのある蜜柑色の猫耳パーカー。化け猫って本来は猫が妖怪に変化したものだから、あえて猫を強調する意味は分かんないんだけど、ってきっとそれを彼に言っても意味はないんだろう。だって八朔は神様だから。

「やっぱり、俺が間違ってたんだ」
「ちがうよ。八朔がどうしたって結局結末はこうなってたんだって。私が生き延びる未来は存在しないし、鉋が死んじゃう最期がいつになるか、それが変わるだけ」


 八朔が変えた、一つ前の過去の鉋が私と出会わなかったら、もし私と恋をしなかったら死ななかったのかもしれない。事故にあったりしなかったかもしれない。
 絶対に知らないはずの過去なのにわかる。きっと私は言ったのだ。鉋に、早く帰ってきて、と。渡せなかったチョコレートは、きっとこの日に渡す予定だったんだろう。罪悪感で死にたくなって、きっと私は寿命を迎える前に死んだ。

「前の私は自殺だったんでしょう」

 八朔は黙ったままだった。

「化け猫なんて嘘ついて、神様だなんて私をもう一度救いにきてくれるんだね。本当に馬鹿だよ、馬鹿だよ、ゆうまぁ」









 大嫌いだよ、悠真。









***





 「ばれちゃったみたい」





 どうしたの、悠真くん。僕の顔を覗くように近づいて千影ちゃんは口を開いた。なんでもないよ、と僕は笑って病院の外の景色を見ていた。

「僕も早く学校行きたいなって」
「そうだよ、悠真くん! 早く元気になって私と一緒にがっこういこっ」

 千影ちゃんの笑顔は真夏のひまわりのように明るく、無邪気で、そして無垢だった。
 なんでもできるって、本当はなんでもできないことの言い訳にしかならないんだと僕はこの時ようやく気付いた。

 お姉ちゃんを泣かせてしまった自分が不甲斐無くて、弱くて、だから僕は何度だって嘘をつくんだ。


 いつか、すべてを終わらせる。






 きみを救えない僕をどうか許してください。



 「二度目の人生は楽しかったですか、ゆたかお姉ちゃん」




 

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