コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 二話解禁
- 日時: 2011/09/01 02:20
- 名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)
- 参照: http://loda.jp/kakiko/?id=758.jpg
初めての投稿です!!そして初めての小説です。まだ途中ですががんばって書いていきたいと思います!!内容の細々とした設定は後々追加していく予定ですのでどうかよろしくおねがいします!!そして、初めて書くので全然下手で文章力もないですが、荒しとか、下手だからやめとけとか言わないでください。そう思うならとっとと帰っちまえ!!とおもう所存ですゆえ・・・。^^;
タイトル変更のお知らせ 【紅蓮の契約者】からErret Crimson〜紅蓮の契約者〜になりました^^;オリキャラ募集は引き続き行っています^^;おねがいします〜
参照200突破したので主人公から一言—————「え?は?おまえなにいっちゃってんの?そういうのは作者がするもんだろ?」———いいからいいから———「いいからじゃねーよ!恥ずかしいだろ!?」———いいからやれよ馬鹿!!———「逆切れされた!?」———・・・いつまでもこのヘタレが私に逆らってくるので今回はこの辺で———『一言終了』
参照300突破したのでヒロインから一言—————「こんにちは、エルシャロン・ユアハーツです♪この度は私と裕介のイチャイチャラブストーリーを読んでくださり」———ちょ、エルさん?違う、違うからね?———「・・・はぁ?人間風情が気軽に私の名前を呼ぶんじゃないわよ」———おーい・・・本性でちゃってますよ〜———「ていうかそもそもこれを裕介が見るわけじゃないんだし、一言とか必要ないじゃない」———・・・あー、エルさんが帰っちゃったので今回はこの辺で———『一言終了』
参照400突破したので先生から一言—————「こんにちは(キラッ)髪の毛がワイルドなほどに生えている雉田信之助デスッ(キラッ)」———うそはよくないと思います、先生———「う、うそじゃないもん!!ほんとだもん!!」———きもいんでやめてもらえますか?———「フン・・・キサマはどうやらこの私を怒らせてしまったようだな・・・喰らえ!!ハゲビーム!!」———えー、この先生相手にするのがめんどくさいので———『一言終了』
参照500突破したので西野から一言—————「始めてまして、西野です。鎖牙裕介の友達やってます。好きなことはゲームで趣味はゲームで将来結婚したいのはゲームで」———おいオタク。お前は自己紹介でなにいってやがんだよ———「今発言してきた人は無視してください。ゲームの中の登場人物の声ですので」———おいお前、作者にむかってそんなこといってっと登場させないぞ?———「では、ここらで俺がオススメするゲームを紹介し」———・・・どいつもこいつもまじめな挨拶ができないと私が失望したのでここらへんで———『一言終了』
参照600突破したので昌子から一言もらおうと思ったけどもうなんか前のやつらがとてもめんどくさい反応をしていたのでこの企画はなかったことに———「ちょ、ちょっと作者さん!!私にもやらせてくださいよぉ!!」———えー・・・だってどうせふざけるんでしょ?———「ふ、ふざけないです!!だからお願いします!!」———まぁそこまでいうならやらせてあげないでもないけど———「そうですか?ならもうあなたには用はないのでとっとと帰・・・」———はいはい、強制終了します—————『一言終了』
参照700突破したのでサブキャラクターみたいな感じになっている佐々木さんから一言—————「う、うぇ?わ・・・わたしですか?」———うん、おねがいね———「う・・・うう・・・あ、あの・・・こ、この物語は・・・ええと・・・あの・・・そのぅ」———緊張しなくていいよ〜、一言いってくれればそれでいいから———「え、あ・・・はい。え・・・と、この作品は、んと・・・」———む、無理しなくてもいいよ?———「ふぇ・・・お、お役に立てなくて申し訳ありません」—————というわけで、一番まともな挨拶をしてくれようとした佐々木さんに盛大な拍手を!!『一言終了』
もうすぐ一話終了だっていうことで、ここでひとつ、主人公に一言もらおうと思います、どうでしょう?こんどこそやってもらえますね?—————「よ・・・よし、今度こそはいけそうだ。ちゃんとやってやる」———そうこなくっちゃな、主人公さんよ———「うーん・・・若干作者がうざいけどまぁしょうがねぇ・・・やってやらんこともないぜ」———いいから黙って始めなさいこのヘタレ主人公———「あーあー!!わかったよくそっ・・・えーと・・・なになに?」———プッ・・・セリフも覚えられてなかったのかよこの子———「うぐっ・・・う・・・うるせぇこの駄作者!!ちょっとだまっとけ!!」———といわれて黙る私だとお思いですかな?———「・・・もしかして、最初のやつ根に持ってんのか?」———・・・———「ぷっ・・・器のちっちぇやろうだなぁ」———・・・えーと、では、次回から主人公はこのヘタレ男ではなく雉田先生に———「え?まじ?よっしゃああぁぁ!!この髪の毛がワイルドなほどに生えている雉田信之助様にすべておまかせあれええぇぇぇ!?」———「先生はだまってろ・・・!!」———「なんだと?このワイルドなほどに髪の毛・・・もといワイルドなほどに髪の毛が生えているこの雉田信之助様にただのヘタレのお前が勝てるとでも?ハーッハッハッハ!!」———「・・・ハゲ、育毛剤、つるつる、カツラ、テカテカ、抜け落ちる髪の毛、ワイルドほどになにもなかツルツル頭」———「うわああぁぁ!!ヘタレ男がいじめるううぅぅ!!」———「きしょいんだよこのくそやろう!!くっつくんじゃねぇ!!」———
・・・と、いうわけで、一話終了まじかの一言でしたー、また次回〜———「「っておいなにかってに終わらせてんだこのくそ作者!!」」———そういうところだけはそろうんですね、そしてきしょくが悪いですね、先生———「うわあああぁぁん!!」———というわけで、まぁ・・・最後ぐらいはお前に閉めさせてやるよ、ほら、最後に挨拶ぐらいしときなさい———「ぐっ・・・まぁいい、ていうか一言とかなにもいってないような気がするけど・・・ま・・・いいか。んじゃ、Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜の一話を読んでくださりありがとうございました。引き続き、二話もこの駄作者が書いてくださるということなので、期待せず、むしろ作者を罵倒しながら待っていてください、んじゃ・・・というわけで」———一言終了。そして作者から一言
—————————まだエピローグが終わってないんだぜ——————————
最近かいてて思ったこと『別の小説に熱が入ってしまってなかなか進まない・・・』
山下愁様による、この作品の宣伝文です!!なんというかもう神ですね^^小説本編が宣伝文に劣っているという真実が———^^;
↓
————————
「僕は君を——守りたいんだ」
夕日が赤く染める空き地で、少年は少女に『力』を入れられた。
それは、彼女を守る為の能力——。
その日を境に、主人公・裕介の物語は始まった。
それから高校生になった裕介の日常は、至って普通だった。
幼なじみと登校し、
友達と馬鹿騒ぎを起こし、
普通に授業を受けると言うありふれた人生を送っていた。
人生の脇役を演じる裕介の前に現れたのは、
1人の転入生だった————。
そして、その転入生は、裕介が昔好きだったと言う女の子だった。
予測不能なファンタジー小説が、コメディライトにて活躍中!
裕介の未来はどうなってしまうのだろうか?!
Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜
「この世界に空気が存在するように、光が存在するように、太陽が存在するように月が存在するように、『これ』も存在するの」
————————
>>6 登場人物紹介&オリキャラ素材
第一話 サブタイトル【邂逅】
プロローグ>>0
一章、始まりを運ぶ者 >>1 >>2 >>3 >>4 >>5 >>7 >>8
二章、再会の意味を知る者 >>8 >>9 >>10 >>11 >>13 >>18 >>23 >>25 >>26
三章、紅蓮の契約者 >>29 >>32 >>33 >>34 >>39 >>43 >>44
四章、幽霊屋敷の能力者 >>47 >>48 >>49 >>52 >>53 >>54 >>55 >>57
五章、孤高の翼をもつ者 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63 >>64 >>71 >>74
六章、孤独の愛する者 >>75 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>83 >>84 >>85 >>86 >>87 >>88
七章、結社最初の襲撃者 >>89 >>92 >>94 >>95 >>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>103 >>104 >>105 >>106 >>107 >>109 >>115 >>116 >>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126 >>127 >>132 >>172 >>176 >>177 >>180 >>182 >>183 >>184
エピローグ>>186 >>187 >>188
第二話 サブタイトル【解禁】
プロローグ>>199
参照800突破初企画始動 裕介、中学時代のバレンタイン >>133 >>134 >>135 >>136 >>137 >>138 >>140 >>147 >>148 >>149 >>155 >>158 >>162
>>165 >>166 >>167 企画END
魔法の詳細てきなもの>>142
秋原かざや様による小説紹介文>>185
作者自作イラスト(裕介) >>56 >>110 (エル) >>67 >>93 >>189 (リーナ) >>91 扉絵>>0
凡さまの神イラスト>>170
スペシャルサンクス(コメントをくれたお客様) >>67
では、そんなこんなで本編スタートです!!↓
プロローグ、涙とともに消える記憶
「この世界に空気が存在するように、光が存在するように、太陽が存在するように月が存在するように・・・『これ』も存在しているのよ」
なにもない。ただの空き地となってしまったこの場所で、一人の幼くも美しい、それでいて不気味な雰囲気をまとっている少女の声が響く。
夕日に照らされた少女の髪はオレンジ色に染まり・・・顔は、影にかくれて見えない。草が適当なサイズに切られているこの空き地には、もう一人の少年らしき人物がたっていた。
その少年らしき人物は少女の声に聞き入り、うんうんとうなずきながら、少女のほうをみつめている。その少年のほうは影になっておらず、六、七歳の男の子だということがわかる。とくにといった特徴の無い顔、少しだけ長い漆黒の髪、身長はその少女よりも少しだけ大きい。
少女は子供が無邪気に笑っているのとは程遠い、美しい笑みを浮かべながら、その少年のことを見ている。その少女の雰囲気には、まるで愛しい人をみているかのような空気がまとっているようにも思えた。
少年は早く続きが聞きたいのか、早く早く、と少女のことを急かす。少女はニッコリは笑った後、再び声をだす。
「『これ』は使える人には使える。たとえば、それが得意な人にとってはそれが簡単にできて、それが得意じゃない人はそれは簡単にできない。つまりそういうことなの。『これ』は、私のように使える人にとっては簡単に使えて、あなたのように、使えない人にはできないの。わかった?」
首をかしげながら少女は少年に聞く。少年はそんな少女の言葉にガッカリした雰囲気をだしていた。それを察した少女は、慌てて言葉をつけたした。
「あ、あ、でもね、あなたも使えるようになれる方法が一つだけあるよ」
それに少年は顔を上げる。その少女の顔を見ながら少年が感じたのは、疑問だけだった。まだ幼い少年の頭では、理解ができなかったのだ。
だが少女は、やはり愛しそうにその少年を見つめる。見つめながら顔をよせてきて、理解できていない少年の耳元でそっと・・・ささやく。
「そう・・・ひとつだけ。私の力をあなたに入れる。そうすれば、あなたは『これ』を使えるようになる」
「ほ、本当!?」
そのときはじめて少年は歓喜の声をあげた。だけど少女の言葉はまだ続いていて・・・
「でも・・・それをやったらあなたは、あなたの人生は・・・捻じ曲がる。私のような狂った化物しかいない、最悪の人生・・・違う、もう人生ともいえない道を進むことになる・・・それでも、いいの?」
さっきとは裏腹、少女の声には寂しさが宿っていた。それは自分に対する言葉でもあったかのように、少女は寂しそうに顔をゆがめる。
少年はそんな少女の顔を見るのが嫌いだった。少女とあって二ヶ月の間にこの表情を何度みたことだろうか、見るたびに、少年の頭の中にはひとつの言葉が浮かび上がる。————守りたい————と。
それは小さい子供の我が侭な感情なのかもしれない。でも少年は、自分のことなんかどうでもいいから、少女を守りたい・・・と、そう思うのだ。好きな人を———守りたいと、思うのだ。
だから少年は、すぐ近くにいる少女の腰に手を回し、思い切り抱き寄せてから、言うのだ。
「・・・僕は君を、———を守りたいんだ」
その言葉に少女は目を見開き、驚きの表情を見せる。今までに無かった反応に少年は笑いながら、もっと強く少女を抱き寄せる。その細くてしなやかな体を、抱き寄せる。
少女は少年の抱擁をうけいれながら、うれしさに笑顔を見せる。今までに自分に近づいてくる奴は大抵汚いやつばかりだった。『これ』を使おうと自分を利用したりする、汚いやつらだったり、この力を恐れた連中による、自分を殺そうとするものばかりだった。だけど、この少年からはそんな汚いものは見えない。あるのは、自分を守りたいという純粋な・・・気持ちだけ———
「じゃぁ・・・力をいれるよ?」
そう小さく少女が呟く。うれしさを押し殺したかのような声で、そうつぶやく少年はその少女の言葉に返す。
「どうやって?」
少女はやはり、愛しそうに少年の言葉を聞く。だけど、ちゃんと答えてあげないとだめだと思った少女は、少年の胸から少しだけはなれて、目をみて言う。
「簡単だよ〜。ただあなたの手にわたしの力を込めた手を重ねるの」
よくわからない、といった表情をみせた少年だが、一応少女から離れて、両手を前に突き出す。少女は少年の行動の速さに納得して、両手に力を込める。その瞬間、その小さく滑らかな手に黒い幾千の文字が生まれていく。その手を少年の手に重ねるようにして差し出した少女は、こう呟く。
「はい、これで私の力があなたのなかに入った。でも、最後の言葉を交わさないと、契約は完成しないの」
「契約?」
「そ、力を分け与えるための契約の儀式。その段階が今ので、言葉がこれから言わなければならないもの」
「えと・・・なにをいえばいいの?」
「ただ私のことを愛しているといえばいいの」
「え・・・」
「もしも愛していないもの同士が力を共有すると・・・その力は互いを拒絶して、暴走してしまうの・・・あ、あの・・・それで、あなたは私のこと、嫌い?」
「き、嫌いじゃ、ないよ」
「じゃぁ言ってよ、好きだって」
少年の顔が真っ赤に染まっていく。夕日に照らされている今でもわかるほどに、紅く染まっていく。それに少女は笑い、言葉を発する。
「私は、裕介のことが好きだよ」
おそらくその少女の顔は、真っ赤に染まっていたのだろう。わからないのは、影にかくれているからだ。
そして———、少年は言葉を発する。少女を愛しているといおうと、言葉を発しようとする。
そこで———————すべての物語は始まったのだ。ゆっくりと、着実に・・・鎖牙裕介の物語は、始まったのだ。
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- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【初企画始動】 ( No.136 )
- 日時: 2011/03/27 17:56
- 名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)
その歩の言葉に、またってなによまたって!!と愛は憤慨する。それに歩はだってお前いつも俺たちが喧嘩しようとすると横槍いれてくんじゃん、と言い返す。それに愛はあのねぇ、喧嘩なんて見ているほうもいやな気分になってくるって知ってる?と言い返す。そんなやりとりをする二人を俺はただ、眺めるだけだった。まるで仲のよい夫婦のように戯れる二人のことを、ただただ憧れと羨望の眼差し・・・なにかに必死に取り組んでいて、それでいてこのように心底楽しそうな笑顔を見せる二人を見て、俺は・・・もう一度なにかに必死に取り組むのも悪くないか?と思う。そうすることによって、自分が主人公のことを妬ましく思うたびに心に芽生える、記憶の違和感を・・・感じなくてすむと思うから、もう二度と、友のことを妬ましく思うこともなくなるだろうから。
・・・そんなことを思う自分が、俺は嫌いだ。友をそんな目で見る自分が嫌いだ。ただ俺は、人生の主人公に媚び諂う脇役。主人公のことを妬ましく思うなんてことはあってはいけない。それだから俺は、この二人が仲良くなる、それも男女関係の中で仲良くなるのならば応援すればいいし、もしも歩が彼女という存在ができたなら俺はそれを応援すればいい、愛に彼氏というのができたら、それを応援すればいい、見ている側にとっては本気で応援しているように見える笑顔を取り繕って、ただ応援すればいい。
だが・・・やはりそのときの俺はまだ完璧ではなかった。中学生という不安定な時期に、自分は人生の脇役だと言い聞かせ、他人に見せて何にも違和感の無い表情を取り繕う。それだけならばまだ簡単だ。それだけなら、小学生も無意識にやってのけることは可能だ。だけど、そこからさき、自分の友達が自分をおいていってしまうのではないかという不安、自分のちょっと好きになりかけている子がだれかの物になってしまうときに感じる嫉妬の念。それに中学生という生き物は押し流されてしまうことが多いい。それはもちろん、俺にも言える事だった。一度恋愛というものに裏切られている俺にとってはそんなもの・・・苦痛でしかない。他人の恋路を応援するなんてまねは、できない。
「・・・ちょっくら図書室行ってくるわ」
そう俺は静かに告げる。すると、今まで歩と楽しそうに話していた愛が
「え?図書室行くの?な、なら私もついていってあげなくも無いよ?」
少しどもったような声で愛はそんなことを言う。その言葉に隠されている真相をなんとなくだが見透かした俺は、勝手にしろ、と無愛想にいって教室からでていく。その後は愛はまるで小動物のようについてくる。教室で歩は、俺が暇だからなるべく早く帰ってこいよーと大声をだしている。
昼休みの喧騒。ギャハハとうるさい笑い声をあげている男子生徒の集団、廊下に座って陣取っている女子生徒の集団。そういった連中の間をすりぬけながら、俺は、図書室とは別の方向を目指す。愛もそれに気がついたらしく、そそくさと俺の隣に歩いてきて、同じペースで歩き始める。
・・・愛が俺についてきた理由、それはおそらく昨日のことで謝らなければならないと思ったのだろう。
それをなんとなくだが感じ取った俺は、愛に気を使って人気の無い場所に行くことにしたのだ。
・・・二人とも黙っていては、なんというか空気が悪い。そもそも俺は愛と喧嘩したわけではないし、愛の昨日の行動は俺に気遣ってくれたためのものだ。感謝こそしても恨むことなんて何一つとしてない。だから俺は、なるべく愛が気を使わない程度に明るい笑顔をみせて、話かける。
「なぁ愛、もうすぐバレンタインだよな?」
「うえぇ!?な、なにいきなり!?」
愛は、俺が話しかけてくると思ってなかったのか、素っ頓狂な声をあげる。俺はそれに笑いそうになるが、今は取り繕った笑顔のほうが自然に見えるだろうからそれを我慢する。愛は俺がニコニコしているのを見て、・・・昨日のこと、怒ってないのかな?と疑問の念を顔にうかべるが、今は人気が多いからそれをいえないでいる。そんな愛に気を使って俺はもう一言声をかける。
「お前この中学はいってさぁ、好きな奴とかできた?」
・・・聊か女子に聞くに対して失礼だとも思うのだが、ただなんとなくこれを聞いてみたかった。べつに愛に答えて欲しいわけではない。
ただ愛に好きな奴が出来ていれば、そいつとの進展を応援するために、心の準備と、笑顔の練習をしなければならないから、速いうちに愛の態度を見ておきたいと思ったのだ。・・・自慢ではないが、俺は他人の感情、心を読み取るのが得意だ。それは別に、相手の心を本当に読んでいるのではなく、表情にでてくる感情を読み取っているに過ぎないが、人間の恋愛的感情というのは読み取りやすいものだ。意識すれば、人は多少うろたえるし、うろたえなかったらそれは本当に好きな人がいないという証だが、多少でもうろたえるようならば・・・そいつには好きな奴、意識しているやつがいる可能性がある・・・と読める。
愛は突然俺のふった話題にどう答えて言いかわからないといったふうな表情になり、一度俺のことを恥ずかしそうにチラッと上目遣いで見てきて、指を胸の前で絡めるように組んで、モジモジとしだす。足取りはおぼつかづ、明らかにうろたえているように見えた。
・・・間違いないな、愛には好きな奴がいる。そんでもって、俺のことを見たということは・・・いつも俺の近くにいる人が好きだっていうことだ。・・・それは歩かもしれないが、そっちの線は薄いと思う。もしかしたら、俺の近くにいるやつではなく、俺が毛嫌いしている奴のことかも知れないし、俺がうざいと思っている奴のことかもしれない。・・・それでもまぁ、愛には好きな奴がいることは、おそらく、間違いはなかった。
それを読み取った俺は、愛がこれ以上困らないように手で制して、
「あー・・・これはなかなかプライベートにつっこんだことだったな、悪い、忘れてくれ」
といって、愛の様子を伺いながら歩き出す。愛はホッとしたように胸をなでおろし、俺の後ろを再びついてくる。さぁて・・・んじゃま、昌子の時みたいに・・・あきらかに避けるような態度をとらないために、今から練習でもしておきますかね。
俺は再び笑顔の愛に見せる。だいぶ人気がなくなってきたからそろそろ昨日ののことに触れておかないといけないし、好都合だ。俺は立ち止まって、あたりに俺たちの会話を聞いているような輩がいないことを確認して、愛にいう。
- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【初企画始動】 ( No.137 )
- 日時: 2011/03/27 17:58
- 名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)
「あー・・・なんだ、昨日のことなんだけど、別に俺は怒ってないからな?」
「え?」
愛はびっくりしたように目を見開く。まったく怒ってませんよてきなオーラを自然と流す俺のことをまじまじと見つめてきたかと思うと、
「・・・ほんとに?」
と聞いてくる。・・・ま、そりゃ他人から見れば明らかに愛のほうが悪くて、怒られても当然、といったふうな雰囲気はあるのだが、それは俺の体長が悪いというのを知らない奴らが思うことだ。愛はただそれを直そうとしてくれただけで、思春期男子を欲情させてぶったおそうなどという考えは当然ないわけだ。それを知っている俺は実際、自分で笑顔を取り繕わなくても自然と大丈夫てきなオーラを出していたに違いないが、まぁ練習だ。練習。
「だって愛は俺のことを気遣ってくれたんだろ?感謝こそするが恨みはしないね」
若干気恥ずかしいセリフを、ポーカーフェイスの俺はつっかえることなくいう。それに愛は顔を赤らめる。・・・他人から聞いても、女子が男子のことを気遣って・・・とかそういったセリフは恥ずかしいものだ。とくに思春期真っ盛りのやつらにとってはな。
「おかげでほら、俺はもうピンピンしてるからな」
愛のさわり心地のいい頭の上にポン、と手をおいて、俺が妹にやるのと同じようにそっと優しく撫でてやる。同年代の女子に対してやるのはこれが初めてだが、愛に大してだとやはり妹にしているのとそう変わらず、気恥ずかしい気分もまったくなかった。
愛は破壊力抜群の上目遣いでほんとに、ほんとに怒ってない?といったふうな目で俺のことを見つめてきて、それに俺はうっ・・・と一瞬ポーカーフェイスをやぶられそうになる。思えば俺は、去年辺りから女子の上目遣いに弱くなっている。最近では妹に上目遣いで見られるだけで俺はうっ・・・とうなってしまうほどだ。
大丈夫、大丈夫だから、もう安心しろ、と言いたげに頷いた俺は、愛の頭から素早く手をひいて、そそくさと立ち去ろうとする。だが、愛は俺のジャージの端をつかんできて、本当に大丈夫?と捨てられた子猫みたいな感じの目で俺のことを見てくる。・・・やばい、もうまじでこれやばい、今すぐにでも愛のことを抱きしめたい欲求が強くなってくる。・・・男にあるのかどうかはしらんが母性本能だろうか?それとも親心というやつだろうか?すごく愛が愛しく見える。自分の子供ができたみたいに思う・・・やばい・・・理性が崩れ去るぞ、いくら俺の脇役スキルが強いからって、これには勝てない・・・く・・・耐えるんだ、俺・・・!!
・・・それが、あだとなった。俺が早く愛に返事を返しておけば、こんなことにはならなかった。人生で一度しかないはずの、宮西第二中学校カップル伝説を捨ててまでも、走り回る必要はなかったはずで・・・誰も傷つけずに、すんだはずだった———
そう・・・俺が馬鹿みたいに理性を抑えるのに必死になっていたときに現れたのは・・・バスケ部の、歩よりもかっこよくて、モテモテで、・・・男子の間では女ったらしということで有名で、さらに何度も何度も女子生徒を自分の家に連れ込んで、夜遅くに帰しているというのを目撃されているという、俺がこの学校の中でもっとも忌み嫌うやろう・・・西島浩一郎だった。
「・・・おおっと、たしか君達は、二年生の中、いや、この宮西第二中学校の中でもっとも可愛い倉橋さんと、・・・人生の負け組、鎖牙君じゃないか。こんなところでなにやっているのかな?」
俺はその声を聞いた瞬間、俺は目を鋭くさせて、ジャージのはしをつかむ愛の手を思わず強く払いのける。それが間違いだった。愛はそれによってやっぱり怒ってるんだ・・・といったふうに涙を目じりに溜めて、今にでも泣き出しそうになってしまう。それをみた、中学生だというのに耳にピアスをつけていて、さらに校則であるジャージの上のチャックの位置から思い切り外れた下のほうにチャックをさげていて、いつも肩で風を切って歩いている西島は、ニヤァと顔を、おもいきり歪める。
そう・・・こいつは前々から愛につっかかっていた。一度だが、告白さえしたこともある。それをすべて、ことごとく愛はかわして、女子同士の人間関係がくずれようがなんだろうが、本当に嫌そうに西島のことを避けていた。一度か二度、先生に報告したことだってある。そのことから西島は、愛になにも与えず、ただたんに仲良くしているだけの俺たちにちょっかいをかけるようになってきている。最初は俺のシャーペンが無くなっていたことから始まり、最終的には歩のあることないことを噂して、女子の間にそれを流しているという陰険な手口で俺たちをどんどんのけ者にしようとしてきた。
まぁそんなやり取りがまだ続く中・・・この状況を、こいつに見られるのだけは、まずかった。
「・・・そうか、そうだったのか倉橋さん、さては鎖牙君に嫌われたね?いや違うな・・・鎖牙君が一方的に君のことをいじめたんだね?可愛そうに・・・ああ可愛そうに」
「ち・・・ちがう!!裕介はなにもしてない———」
西島の言葉に愛が言い返そうとした瞬間、西島の顔が凶悪に歪む。それに愛は恐怖して、俺の影にかくれようとするが、俺を無視して西島は、愛の手首を思い切りつかむ。
「そんなことは関係ねぇ。ようは俺はこういいたいんだよ。お前の仲のいい『おともだち』が実は影で女を泣かせているひどい奴だという噂を流されたくなければ・・・俺のものになれってことだよ、倉橋愛」
強引に愛の手首をつくみ、逃げようとする非力な愛に、容赦なくバスケで鍛えた腕力を振るう。当然愛はそれから逃げられるわけもなく、首をたてにふることも、横にふることもできなかった。
それをみた西島は、ニコッとさきほどまでの険悪なムードを一気にしずめて、笑う。だがその笑顔はとても冷たく、まるで愛のことを見下しているかのような笑顔だった。
- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【初企画始動】 ( No.138 )
- 日時: 2011/03/27 18:00
- 名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)
「まぁ今日のところはいいよ、別にすぐに広める気は無いしね。そうだねぇ・・・バレンタイン当日に、俺に手作りチョコレートを渡して、みんなが見ている前で告白してくれよ、そしたらこの人生の負け組のあることないことの噂を広めるのをやめてあげるからさ」
そういい残して愛の手首を離す。愛は・・・完全に怯えきってしまった表情で西島のほうを見ている。・・・愛は、見た目も心もまだ幼い。
それを知ってか知らずか西島は愛を脅している。完全に悪だ。どれを基準に正義か悪かなんて決められないけど、確実にこいつは・・・、か弱い愛を脅し、脅迫するこいつは・・・悪だ。
満足した様子、今日は運がいいなぁとかいいたげな様子で去っていこうとする西島を、俺は睨む。睨みながらも、愛の手首をそっとさすりながら、怖くない、怖くないよ、と子供をあやすように頭を撫でてやる。
・・・俺には言い返すことは出来なかった。結局俺はただの『脇役』で、悪だが、自分の人生を謳歌している西島に一度拳を叩き込むことは出来なかった。そう・・・俺はただの脇役。俺の友人である愛が、どんなやつとくっついても、それを応援して、いい奴を気取る・・・ただの汚い、穢れた心をもつ・・・脇役なのだから。
〜バレンタイン二日前〜
その日、愛は学校にこなかった。
それは当然のごとく、昨日の出来事が関係しているはずだった。それなのに、その原因を作ってしまったであろう俺は、のんきに学校にきて、のんきに歩としゃべって、のんきに一日をすごそうとしている。
実際、俺も昨日は悩んだ。愛が、あんな最低な男とくっついていいのかと、さんざん悩んだ。だが、それは愛が決めることで、俺が決めることではない。双思わせるのに当然のごとく苦労もした。俺が原因でこうなったのに、なにが愛が決めることだ、だ、とさんざん自分で自分を罵った。だけども、俺は口をだせる立場ではないこともわかっていた。この件については、俺がほぼ間違いなく原因で、愛はそれに巻き込まれただけだ。だけども、西島は愛を的にしている。自分の人望をつかって、愛を脅している。それに、ただ脅しの材料とみなされた俺が、どう口をだせよう。実際、俺は愛が傷つかないならいくらでも女子に罵倒されてもいいし男子に殴られてもいい。それが脇役のできることなら、甘んじて受けようと思う。だが愛は心優しい女の子だ。俺が傷つかないためにはどうしたらいいんだろうと、悩んでいるはずだ。考えることは俺と同じ、愛が、それとも俺が・・・たったそれだけの違いなのだから。
実際愛は、これまでに西島の被害にあっている中でもっとも強い被害者なのだ。愛が西島を振ることによって西島のことを好きだった女子たちからいじめや罵倒をされて、さらには西島のことを好かない女子からも、自分達もいじめられたくないからといった理由で愛を避けた。
別段男子は愛のことが嫌いではなく、むしろ愛のことを庇うやつのほうが多いい。男子のほとんどは西島のことが嫌いで、今にでもぶっ殺したいと思っているほどの奴もいるぐらいだから、そんなやつに味方をして女子に好感をもとめるよりも、健気で愛らしくて、そしてなんとも可愛そうな愛一人からの好感を得るほうが、いいと思っている心優しいやつらが多いからだ。
当然、そいつらは俺たちの味方だ。そいつらが西島のことをとっちめてくれれば万事解決、愛は西島に無理な告白をさせられることもなく、今までどおり中学校生活をおくれるのだ。だけども・・・それは聊かぶしつけなものである。
第一問題は俺なのに、他人に頼るなんてことはどうかしているのだ。俺がどうにかしなければならない問題なのに、他人に頼るなんてどうかしている。
そんなことから・・・俺は帰ったら愛の家によりたいと思う。愛に、前のことでは本当におこっていなくて、俺はむしろお前のことが好きなぐらいだと言ってやろうと思う。そうすることによって愛の気が軽くなってくれればいいのだが・・・もしも軽くならないのなら・・・あることを言わなければならない。それは諸刃の刃で、いつも自分のことよりも他人のことを優先して考える心優しい愛には効果が抜群ともいえないが・・・できることはやってやろうと思う。あいつの人生が狂わないように、あいつの人生を他人に左右されないように、選択させるには・・・もう、それしかないのだから。
ピンポーン、という、軽い音がオートロックのマンションの入り口玄関に中に響き渡る。1004という数字が浮かぶ、大きな電卓みたいなものが置かれている台の横にある、スピーカーの中から、ガチャッという音がなり、どちら様ですか?と愛のお母さんの声が聞こえてくる。
「えー・・・愛さんのクラスメイトの、鎖牙裕介です」
何度か愛の家にら訪ねているし、お母さんとは顔見知りなのだけれども、どうしてか俺はこんな挨拶しかできない。もっとフレンドリーにしようものなら軽い男と思われ、即刻愛との縁を切られてしまうという可能性をなぜか思い浮かべてしまうからというのが一番おおきな理由かもしれない。
「あ、裕介君?どうしたの?愛の具合、診に来てくれたの?」
「ええ・・・まぁそうなんすけど」
「あらまぁ!!ほら、愛!!愛しの裕介君がきてくれ———」
「ママ!!」
「・・・ま、まぁ入ってちょうだいな、愛も裕介君が来てくれてうれしいみたいだし、具合もよくなってきているからね」
「・・・了解っす」
元気はつらつな嘉子お母さんの声とともに、オートロックマンションのガラスのセンサー式自動ドアが開く。俺はそこを通って一階でちょうど止まっていた、赤いドアが目印のエレベーターにのり、十階のボタンを押す。このマンションは十五階建てで、愛の家は十階にある。
いかにも高級そうなマンションで、毎回俺は気後れしてしまう。まぁ高級そうな外見から見て分かるのだが、愛の家はなかなかに金持ちだ。
警視総監の父親、カリスマ脚本家の母親。どちらも俺の両親の合計金額ぶんぐらいは稼いでいるという、なんというか恵まれた家庭だ。
エレベーターは十階に到着すると、チンッという音を鳴らす。それとともにドアがスライドして開き、俺はその狭い空間からでる。愛の家はエレベーターから見て右側一個目のところだ。俺は右側に歩いてすぐにある愛の家の玄関前にあるインターホンをもう一度おす。
「はーいはい、いまでますよー」
という嘉子お母さんの声がくぐもって聞こえてくる。と思ったのもつかの間、すぐに玄関のドアは開かれ、見知った、一個人の母親とは思えないほどに美しい、美女がその姿を現す。
目鼻立ち、顔立ち、体つきはどれもとっても美しい。だがそこにはどこか愛を連想させるものがあり、愛の将来はこんな感じになるんだろうなと思わせるところから、ちゃんと血がつながっていることが分かる。セミロングの髪の毛は小さなポニーテールにまとめられており、見た感じだとまだ二十歳ぐらいにしか見えないが、これでも立派に三十五歳なのである。信じがたい話だが・・・。
- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【初企画始動】 ( No.139 )
- 日時: 2011/03/27 18:00
- 名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)
一気に更新・・・遅くなってしまってどうもすいません^^;
- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【初企画始動】 ( No.140 )
- 日時: 2011/03/28 14:31
- 名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)
「ようこそ裕介君、さぁさぁあがってあがって!!」
その人こそが嘉子さんだ。倉橋嘉子三十五歳子持ちだ。嘉子さん笑顔で俺のことを家に中に招き入れる。ミントのような、なんともいえないいいにおいが漂う家の中に入った俺は、靴を脱ぎ、嘉子さんに連れられてリビングに入る。
そこに・・・愛はいなかった。
そんな俺の様子に気がついた嘉子さんは、今お茶を持ってくるから、ちょっとまっててね〜といって、リビングに隣接している台所に小走りでむかっていく。俺は適当に勧められたソファに腰掛けて、嘉子さんを待つ。
・・・改めてみると、やはり綺麗な家だった。壁には美しい絵のようなものが飾られていたら、戸棚の上にはなにかのトロフィーのようなものが飾られている。俺の家にもトロフィーはあるが、それは俺が空手をやめて以来、外にだしていない。俺が主人公の自分と縁を切るために、まず最初にやった行動がそれだったことを、今も俺は覚えている。
テーブルは白いテーブルクロスで覆われ、真ん中には色とりどりの花が並ぶ花瓶が置かれている。お母さんは優しそうで、お父さんは正義の使者たる警視総監、それを並べるだけで、愛は、すごく恵まれていた。
おまけに愛は可愛いし、・・・西島さまいなければ、モテていたに違いない。年相応の外見ではないとはいえ、そういう・・・なんというか、ロリ関係のほうがすきーっていう男子にはモテていたに違いないし、それに・・・なによりも、やさしい。育った環境がとてもよかったというのもあるが、それが・・・愛の一番の魅力だ。
清く美しい。それが俺が倉橋家に言える一言だった。
「はいはーい、お茶持ってきたよ〜・・・てああ!!もしかしてジュースとかのほうがよかった?」
お茶を湯のみにいれてもってきた嘉子さんは、途中までもってきておいてそんなことをいう。別に飲み物を飲みにきたわけではないので、お茶でいいですよ、と自然な作り笑いをうかべる。嘉子さんはそれに、よかった!!といわんばかりに顔を綻ばせ、歳が段違いに離れている俺でもドキッとしてしまうような、美しい笑顔を見せる。
俺はお茶を受け取り、それを一気飲みしようとするが、熱かったのでそれを断念した。ちびちびとお茶をすすって気がついたことなのだが、どうもこのお茶・・・うまい。俺がいつも飲んでいるコンビニとかスーパーで買ってくるようなお茶と違い、こう・・・コクがあるっていうか、香りがいいっていうか・・・まぁ語彙の少ない俺からはなんとも言えないよさというのが、このお茶にはあった。
愛は部屋にいるから後はよろしくね〜、と言って去っていった嘉子さんに、おいおい他人を警戒しないで大丈夫なのかよとか思いながら、別にそういうやましい事をしようとなんてしてないからまぁそれを心の中でつぶやくだけにして、俺中身が無くなった湯のみをテーブルの上に置く。おいた後俺は一度リビングをでて、愛の部屋にむかった。愛の部屋は、リビングと玄関の間、つまり廊下の中間あたりに入り口がある。俺はそこに向かって歩き、『まな☆』とかかれた札のかかるドアの前にたつ。
・・・実際、俺は昨日愛といい分かれ方をしなかった。愛は昨日、あの後俺のことを無視するかのようになにもしゃべらなかった。そして俺も、何もしゃべらなかった。全ての原因は俺にあるのに、俺は愛に謝りもしないで、そのまま帰ってしまった。あの時・・・俺が具合を悪くしなければ、あの時、俺がもたもたしていなければ・・・愛は、俺のことと、西島のことで———悩まなくてよかったのだ。
「・・・愛、いるか?」
コンコンと、ノックしてからそういう。だが、返事は返ってこない。俺は一度、軽いため息をついてから、入るぞ、といって、ドアを開ける。
「ちょ、ちょっとまって!!まだ片付いて無いから!!」
空けようとした瞬間、愛がドアを必死の形相で閉めようとしてくる。それに俺はびっくりして、ドアノブから手を滑らせてしまい、おもいきりずらして、ドアの隙間に手が行ってしまう。愛はそれに気がつかないままドアを閉めて・・・俺の手は当然、その隙間に挟まり、すさまじい痛みが俺を襲う。
「ぬおぉ・・・」
だが、俺は痛みを押し殺し、声をも押し殺し、たったそれだけの呻きだけですませた。愛はドアをしめたとおもったのに、なんか変な感触がしたなと気がついたらしく、その場所を見る、そして・・・ドアを思い切り開ける。
「ゆ、裕介!?ちょっ・・・ちょっと、大丈夫!?」
ドアを思い切り開けて、俺の手を両手でつかむ。俺はあ、ああ・・・まぁ大丈夫だ、と引きつった笑いで返し、痛む左手になるべく意識がむかないようにする。幸い・・・といってもいいのかどうかわからないが、挟まれたのは左手の人差し指と中指だけだった。ジンジンするし、手が一向に動きそうに無いが、こんなものはただのイレギャラーだ。俺の体の痛みなんて、関係ない。
俺は邪魔するぞー、といって愛の部屋に勝手に入っていく。愛はもう一度それを止めようしたが、さっきのような失敗は絶対にしたくないと思ったのか、しぶしぶ俺を部屋の中に招き入れて、ドアを閉める。
「・・・なんだよ・・・綺麗じゃねぇか」
愛の部屋にはいって、まず俺が放った言葉それだった。愛の部屋は小学生の女の子の部屋・・・妹の部屋となにかかぶるところがある。全体敵なピンク色を基準とした部屋だった。一人用ベッドにはフワフワの羽毛布団があり、その上にはぬいぐるみが置かれている。
机は綺麗に整頓されており、床には染み一つ無くゴミ一つ見えない。・・・これのどこが、片付いていないというのだろうか?
「うう・・・まだ片付け終わってなかったのにぃ・・・で、でも裕介、手・・・手は大丈夫?」
愛はそれでもなにか不満だったらしいが、すぐに表情を変えて俺の手をもう一度見ようとしてくる。それを俺はかわして、大丈夫大丈夫、と適当に返して・・・やっぱり愛は、自分のことよりも他人のことを大事に思う、やさしいやつだな、と実感する。・・・昨日、俺のせいで愛はもしかしたら人生を狂わされるという風な感じになって、今日、学校を休んでしまったというのに、突然たずねてきたその元凶が目の前で怪我をすれば・・・当然のように、そちらのほうを心配する。
俺は・・・こんな心優しい少女をこれから傷つけようとしている。俺がノロマでトンマなばかりに、・・・西島に弱みを握らせてしまい、それを傍観しようとしている。自分はなにもしないで、ただ愛の・・・判断を、促そうとしている。
「俺は大丈夫・・・大丈夫だけど、お前のほうこそ、大丈夫なのか?」
俺は真剣みを帯びる声でそういう。これは脇役としての俺ではない。俺自身の気持ちでたずねていることだ。こんなに心優しい少女一人に、全部を背負わせるなんてやはりできない。脇役でもなんでもいいから、できることは・・・やろうと、俺は決心する。
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