コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 二話解禁
日時: 2011/09/01 02:20
名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)
参照: http://loda.jp/kakiko/?id=758.jpg

初めての投稿です!!そして初めての小説です。まだ途中ですががんばって書いていきたいと思います!!内容の細々とした設定は後々追加していく予定ですのでどうかよろしくおねがいします!!そして、初めて書くので全然下手で文章力もないですが、荒しとか、下手だからやめとけとか言わないでください。そう思うならとっとと帰っちまえ!!とおもう所存ですゆえ・・・。^^;
タイトル変更のお知らせ 【紅蓮の契約者】からErret Crimson〜紅蓮の契約者〜になりました^^;オリキャラ募集は引き続き行っています^^;おねがいします〜

参照200突破したので主人公から一言—————「え?は?おまえなにいっちゃってんの?そういうのは作者がするもんだろ?」———いいからいいから———「いいからじゃねーよ!恥ずかしいだろ!?」———いいからやれよ馬鹿!!———「逆切れされた!?」———・・・いつまでもこのヘタレが私に逆らってくるので今回はこの辺で———『一言終了』

参照300突破したのでヒロインから一言—————「こんにちは、エルシャロン・ユアハーツです♪この度は私と裕介のイチャイチャラブストーリーを読んでくださり」———ちょ、エルさん?違う、違うからね?———「・・・はぁ?人間風情が気軽に私の名前を呼ぶんじゃないわよ」———おーい・・・本性でちゃってますよ〜———「ていうかそもそもこれを裕介が見るわけじゃないんだし、一言とか必要ないじゃない」———・・・あー、エルさんが帰っちゃったので今回はこの辺で———『一言終了』

参照400突破したので先生から一言—————「こんにちは(キラッ)髪の毛がワイルドなほどに生えている雉田信之助デスッ(キラッ)」———うそはよくないと思います、先生———「う、うそじゃないもん!!ほんとだもん!!」———きもいんでやめてもらえますか?———「フン・・・キサマはどうやらこの私を怒らせてしまったようだな・・・喰らえ!!ハゲビーム!!」———えー、この先生相手にするのがめんどくさいので———『一言終了』

参照500突破したので西野から一言—————「始めてまして、西野です。鎖牙裕介の友達やってます。好きなことはゲームで趣味はゲームで将来結婚したいのはゲームで」———おいオタク。お前は自己紹介でなにいってやがんだよ———「今発言してきた人は無視してください。ゲームの中の登場人物の声ですので」———おいお前、作者にむかってそんなこといってっと登場させないぞ?———「では、ここらで俺がオススメするゲームを紹介し」———・・・どいつもこいつもまじめな挨拶ができないと私が失望したのでここらへんで———『一言終了』

参照600突破したので昌子から一言もらおうと思ったけどもうなんか前のやつらがとてもめんどくさい反応をしていたのでこの企画はなかったことに———「ちょ、ちょっと作者さん!!私にもやらせてくださいよぉ!!」———えー・・・だってどうせふざけるんでしょ?———「ふ、ふざけないです!!だからお願いします!!」———まぁそこまでいうならやらせてあげないでもないけど———「そうですか?ならもうあなたには用はないのでとっとと帰・・・」———はいはい、強制終了します—————『一言終了』

参照700突破したのでサブキャラクターみたいな感じになっている佐々木さんから一言—————「う、うぇ?わ・・・わたしですか?」———うん、おねがいね———「う・・・うう・・・あ、あの・・・こ、この物語は・・・ええと・・・あの・・・そのぅ」———緊張しなくていいよ〜、一言いってくれればそれでいいから———「え、あ・・・はい。え・・・と、この作品は、んと・・・」———む、無理しなくてもいいよ?———「ふぇ・・・お、お役に立てなくて申し訳ありません」—————というわけで、一番まともな挨拶をしてくれようとした佐々木さんに盛大な拍手を!!『一言終了』

もうすぐ一話終了だっていうことで、ここでひとつ、主人公に一言もらおうと思います、どうでしょう?こんどこそやってもらえますね?—————「よ・・・よし、今度こそはいけそうだ。ちゃんとやってやる」———そうこなくっちゃな、主人公さんよ———「うーん・・・若干作者がうざいけどまぁしょうがねぇ・・・やってやらんこともないぜ」———いいから黙って始めなさいこのヘタレ主人公———「あーあー!!わかったよくそっ・・・えーと・・・なになに?」———プッ・・・セリフも覚えられてなかったのかよこの子———「うぐっ・・・う・・・うるせぇこの駄作者!!ちょっとだまっとけ!!」———といわれて黙る私だとお思いですかな?———「・・・もしかして、最初のやつ根に持ってんのか?」———・・・———「ぷっ・・・器のちっちぇやろうだなぁ」———・・・えーと、では、次回から主人公はこのヘタレ男ではなく雉田先生に———「え?まじ?よっしゃああぁぁ!!この髪の毛がワイルドなほどに生えている雉田信之助様にすべておまかせあれええぇぇぇ!?」———「先生はだまってろ・・・!!」———「なんだと?このワイルドなほどに髪の毛・・・もといワイルドなほどに髪の毛が生えているこの雉田信之助様にただのヘタレのお前が勝てるとでも?ハーッハッハッハ!!」———「・・・ハゲ、育毛剤、つるつる、カツラ、テカテカ、抜け落ちる髪の毛、ワイルドほどになにもなかツルツル頭」———「うわああぁぁ!!ヘタレ男がいじめるううぅぅ!!」———「きしょいんだよこのくそやろう!!くっつくんじゃねぇ!!」———
・・・と、いうわけで、一話終了まじかの一言でしたー、また次回〜———「「っておいなにかってに終わらせてんだこのくそ作者!!」」———そういうところだけはそろうんですね、そしてきしょくが悪いですね、先生———「うわあああぁぁん!!」———というわけで、まぁ・・・最後ぐらいはお前に閉めさせてやるよ、ほら、最後に挨拶ぐらいしときなさい———「ぐっ・・・まぁいい、ていうか一言とかなにもいってないような気がするけど・・・ま・・・いいか。んじゃ、Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜の一話を読んでくださりありがとうございました。引き続き、二話もこの駄作者が書いてくださるということなので、期待せず、むしろ作者を罵倒しながら待っていてください、んじゃ・・・というわけで」———一言終了。そして作者から一言
—————————まだエピローグが終わってないんだぜ——————————


最近かいてて思ったこと『別の小説に熱が入ってしまってなかなか進まない・・・』

山下愁様による、この作品の宣伝文です!!なんというかもう神ですね^^小説本編が宣伝文に劣っているという真実が———^^;


————————

「僕は君を——守りたいんだ」


夕日が赤く染める空き地で、少年は少女に『力』を入れられた。
それは、彼女を守る為の能力——。

その日を境に、主人公・裕介の物語は始まった。


それから高校生になった裕介の日常は、至って普通だった。
幼なじみと登校し、
友達と馬鹿騒ぎを起こし、
普通に授業を受けると言うありふれた人生を送っていた。

人生の脇役を演じる裕介の前に現れたのは、


1人の転入生だった————。


そして、その転入生は、裕介が昔好きだったと言う女の子だった。


予測不能なファンタジー小説が、コメディライトにて活躍中!

裕介の未来はどうなってしまうのだろうか?!


    Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜


「この世界に空気が存在するように、光が存在するように、太陽が存在するように月が存在するように、『これ』も存在するの」

————————




>>6 登場人物紹介&オリキャラ素材

第一話 サブタイトル【邂逅】
プロローグ>>0
一章、始まりを運ぶ者 >>1 >>2 >>3 >>4 >>5 >>7 >>8
二章、再会の意味を知る者 >>8 >>9 >>10 >>11 >>13 >>18 >>23 >>25 >>26
三章、紅蓮の契約者 >>29 >>32 >>33 >>34 >>39 >>43 >>44
四章、幽霊屋敷の能力者 >>47 >>48 >>49 >>52 >>53 >>54 >>55 >>57
五章、孤高の翼をもつ者 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63 >>64 >>71 >>74
六章、孤独の愛する者 >>75 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>83 >>84 >>85 >>86 >>87 >>88
七章、結社最初の襲撃者 >>89 >>92 >>94 >>95 >>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>103 >>104 >>105 >>106 >>107 >>109 >>115 >>116 >>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126 >>127 >>132 >>172 >>176 >>177 >>180 >>182 >>183 >>184
エピローグ>>186 >>187 >>188



第二話  サブタイトル【解禁】
プロローグ>>199



参照800突破初企画始動 裕介、中学時代のバレンタイン >>133 >>134 >>135 >>136 >>137 >>138 >>140 >>147 >>148 >>149 >>155 >>158 >>162
>>165 >>166 >>167 企画END

魔法の詳細てきなもの>>142
秋原かざや様による小説紹介文>>185

作者自作イラスト(裕介) >>56 >>110 (エル) >>67 >>93 >>189 (リーナ) >>91   扉絵>>0
凡さまの神イラスト>>170

スペシャルサンクス(コメントをくれたお客様) >>67

では、そんなこんなで本編スタートです!!↓ 

 

   プロローグ、涙とともに消える記憶

「この世界に空気が存在するように、光が存在するように、太陽が存在するように月が存在するように・・・『これ』も存在しているのよ」

なにもない。ただの空き地となってしまったこの場所で、一人の幼くも美しい、それでいて不気味な雰囲気をまとっている少女の声が響く。

夕日に照らされた少女の髪はオレンジ色に染まり・・・顔は、影にかくれて見えない。草が適当なサイズに切られているこの空き地には、もう一人の少年らしき人物がたっていた。
その少年らしき人物は少女の声に聞き入り、うんうんとうなずきながら、少女のほうをみつめている。その少年のほうは影になっておらず、六、七歳の男の子だということがわかる。とくにといった特徴の無い顔、少しだけ長い漆黒の髪、身長はその少女よりも少しだけ大きい。

少女は子供が無邪気に笑っているのとは程遠い、美しい笑みを浮かべながら、その少年のことを見ている。その少女の雰囲気には、まるで愛しい人をみているかのような空気がまとっているようにも思えた。

少年は早く続きが聞きたいのか、早く早く、と少女のことを急かす。少女はニッコリは笑った後、再び声をだす。

「『これ』は使える人には使える。たとえば、それが得意な人にとってはそれが簡単にできて、それが得意じゃない人はそれは簡単にできない。つまりそういうことなの。『これ』は、私のように使える人にとっては簡単に使えて、あなたのように、使えない人にはできないの。わかった?」

首をかしげながら少女は少年に聞く。少年はそんな少女の言葉にガッカリした雰囲気をだしていた。それを察した少女は、慌てて言葉をつけたした。

「あ、あ、でもね、あなたも使えるようになれる方法が一つだけあるよ」

それに少年は顔を上げる。その少女の顔を見ながら少年が感じたのは、疑問だけだった。まだ幼い少年の頭では、理解ができなかったのだ。
だが少女は、やはり愛しそうにその少年を見つめる。見つめながら顔をよせてきて、理解できていない少年の耳元でそっと・・・ささやく。

「そう・・・ひとつだけ。私の力をあなたに入れる。そうすれば、あなたは『これ』を使えるようになる」

「ほ、本当!?」

そのときはじめて少年は歓喜の声をあげた。だけど少女の言葉はまだ続いていて・・・

「でも・・・それをやったらあなたは、あなたの人生は・・・捻じ曲がる。私のような狂った化物しかいない、最悪の人生・・・違う、もう人生ともいえない道を進むことになる・・・それでも、いいの?」

さっきとは裏腹、少女の声には寂しさが宿っていた。それは自分に対する言葉でもあったかのように、少女は寂しそうに顔をゆがめる。
少年はそんな少女の顔を見るのが嫌いだった。少女とあって二ヶ月の間にこの表情を何度みたことだろうか、見るたびに、少年の頭の中にはひとつの言葉が浮かび上がる。————守りたい————と。

それは小さい子供の我が侭な感情なのかもしれない。でも少年は、自分のことなんかどうでもいいから、少女を守りたい・・・と、そう思うのだ。好きな人を———守りたいと、思うのだ。
だから少年は、すぐ近くにいる少女の腰に手を回し、思い切り抱き寄せてから、言うのだ。

「・・・僕は君を、———を守りたいんだ」

その言葉に少女は目を見開き、驚きの表情を見せる。今までに無かった反応に少年は笑いながら、もっと強く少女を抱き寄せる。その細くてしなやかな体を、抱き寄せる。

少女は少年の抱擁をうけいれながら、うれしさに笑顔を見せる。今までに自分に近づいてくる奴は大抵汚いやつばかりだった。『これ』を使おうと自分を利用したりする、汚いやつらだったり、この力を恐れた連中による、自分を殺そうとするものばかりだった。だけど、この少年からはそんな汚いものは見えない。あるのは、自分を守りたいという純粋な・・・気持ちだけ———

「じゃぁ・・・力をいれるよ?」

そう小さく少女が呟く。うれしさを押し殺したかのような声で、そうつぶやく少年はその少女の言葉に返す。

「どうやって?」

少女はやはり、愛しそうに少年の言葉を聞く。だけど、ちゃんと答えてあげないとだめだと思った少女は、少年の胸から少しだけはなれて、目をみて言う。

「簡単だよ〜。ただあなたの手にわたしの力を込めた手を重ねるの」

よくわからない、といった表情をみせた少年だが、一応少女から離れて、両手を前に突き出す。少女は少年の行動の速さに納得して、両手に力を込める。その瞬間、その小さく滑らかな手に黒い幾千の文字が生まれていく。その手を少年の手に重ねるようにして差し出した少女は、こう呟く。

「はい、これで私の力があなたのなかに入った。でも、最後の言葉を交わさないと、契約は完成しないの」

「契約?」

「そ、力を分け与えるための契約の儀式。その段階が今ので、言葉がこれから言わなければならないもの」

「えと・・・なにをいえばいいの?」

「ただ私のことを愛しているといえばいいの」

「え・・・」

「もしも愛していないもの同士が力を共有すると・・・その力は互いを拒絶して、暴走してしまうの・・・あ、あの・・・それで、あなたは私のこと、嫌い?」

「き、嫌いじゃ、ないよ」

「じゃぁ言ってよ、好きだって」

少年の顔が真っ赤に染まっていく。夕日に照らされている今でもわかるほどに、紅く染まっていく。それに少女は笑い、言葉を発する。

「私は、裕介のことが好きだよ」

おそらくその少女の顔は、真っ赤に染まっていたのだろう。わからないのは、影にかくれているからだ。
そして———、少年は言葉を発する。少女を愛しているといおうと、言葉を発しようとする。
そこで———————すべての物語は始まったのだ。ゆっくりと、着実に・・・鎖牙裕介の物語は、始まったのだ。

        

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Re: 【紅の魔法】 ( No.1 )
日時: 2011/03/28 03:41
名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)

          第一章、始まりを運ぶ者


「ねー、ねーってばぁ」

「・・・」

「ゆーすけぇー、早くおきてよぉ、学校遅刻しちゃうよぉ?」

思春期に入れば、誰もが願うであろう隣に住んでいる可愛い幼馴染が自分を起こしてくれるというイベントを、今日の今までうざいと思ったことは一度もない。だから俺は、鎖牙裕介はいってやりたい。ネットの中で夢をほざいているやつと、かわいい幼馴染がいればよかったとかいっている俺の通っている高校のクラスメイトの男連中にいってやりたい。可愛い幼馴染がいたってそいつはきっと自分のことをどうとも思っていない糞野郎だけだ、と。
その証拠にこれだ。朝七時だというのに俺の部屋の窓にどこで拾ってきたかわからない石を何度も何度もぶつけてきて、さらに起きろといってくるのだ。お前は俺のお袋かよ!!というつっこみをいれてやりたい気分だが、そうもいかない・・・。
前置きはどうでもいいとして、俺は昨日夜の十時に突然眠くなり寝たのだ。それは昨日今日に限ってのことじゃない。一ヶ月も前から、そんな生活がずっと続いているのだ。本当は幼馴染が窓に石をぶつけてくれないといつまでも寝てしまいそうな勢いなほどだ。どんな怠け者だよ、そしてなに逆ギレしてんだよ、とネットのやつらとクラスメイトのやつらに言われてしまいそうな気がするような気もするが・・・まったくその通りで。
俺は無理矢理体をベッドから引き剥がし、カーテンを思い切りスライドして、窓も開ける。太陽の日差しに一瞬目がクラっとしたが、幼馴染が窓をあけたことに気がつかずになげてしまった石に額をやられ、それもすぐに収まった。

「あっ、あっ、ご、ごめんなさい!」

・・・俺の家と幼馴染、椿昌子の家は根本的に作りが違う。やつの家は広いベランダつきで、しかも庭までついている。だがしかし俺の家には親父とお袋、そして妹の麗帆の四人で暮らすには少し狭い二階建ての家に、小さいベランダ。そして庭がないという。
昌子と俺は、一ヶ月前に近くにある高校、宮西高校に入学した高校一年生だ。俺の場合生まれたときから一度も引っ越していないためずっと今の家に住んでいるが、昌子は小学五年生の時に隣に引っ越してきたのだ。まぁそれ以来よく遊んだりしているが、中学校のころべつの学校に昌子が行ってしまい、俺に一度彼氏的なやつを紹介してきてからは俺のほうから彼女を避けてしまっている。だがやつは、そんな俺の心境などお構いなしにいつも絡んでくるのだ。・・・くそっ、昌子、お前はその彼氏、修二君とやらと男女の関係でも築いて俺のことなんてほっといてくれよ———とは口に出せず、やはり怠け者でヘタレな俺は眠くて閉まりそうなまぶたを持ち上げ、右手で目くそをとりながらヘラヘラ笑い、言う。

「はは・・・おはよう昌子。これで何度目だ?俺に石ぶつけんの」

近くにいる女の子にどこの誰とも知らない男がつくのはあれだ。痛く辛い。俺がもしも昌子のことを好きだったらそれはもう発狂してしまいそうなほどに辛いものなのかもしれないが、まぁそんな気持ちはわからないね。たしかに昌子は可愛い。十人中十人は可愛いというぐらい可愛いだろう。黒髪のショートヘアーにヘアピンで前髪を左右に止め、形のいいおでこをまるだしにしている。目はちょっと大きめで、鼻筋はピンとたっていている。それらを桜色の小さな唇がほどよいバランスにしてくれている。顔は小さく整っており、これで彼氏がいなかったら世界はどうなってんだといいたいね。うん。そんでもって俺は極平凡な男子高校生だ。親譲りの漆黒の黒髪、中学までやっていた空手でちょっと鍛えられた体。顔つきは平凡で、身長は百七十六ぐらいだったな。
そんな俺が、近所の人から可愛い可愛いといわれ、高校に入って一ヶ月でもうラブレターとかもらってたりする昌子を好きになっていいはずが無い。いや、それをいってしまうと俺が昌子を好きになりたいのに好きになれないみたいな言い方になってしまうが、それは断じてないさ。ただ・・・俺じゃぁこいつとは釣り合いが取れないってだけだ。

「さてさて何度目でしょー?」

「ちょ、お前・・・反省してねぇな?」

「ふっふーん♪」

「はぁ・・・」

朝から元気いっぱいの昌子をみていると、俺はどんどんテンションが下がってくる。ていうかこいつ、学校にいくなら修二君とでも行ってろよ。どうして俺なんだよ。はぁ・・・言ってやりたい、言ってやりたいけど・・・、こいつの笑顔を見ているうちに、どうでもいいかと思えてくる。

「あ、もしかして怒った?怒っちゃったの?」

「怒ってねーよ」

「うっそだー」

「怒ってねぇって、まじで」

軽くあしらいながら、俺は制服に着替えるために窓を閉め、カーテンも閉める。その瞬間に昌子が三十分後玄関でねーといってきて、俺は少しだけ窓をあけてあいよ、とだけ答えておく。
平凡な毎日だ・・・。幼馴染が俺のことを起こし、俺はそいつと一緒に学校にいく。学校にいけばこいつから開放されて、一ヶ月の間にできた友達とゲームの話をして、俺最近早ねなんだぜーとか冗談を言って笑ったりして・・・そんなそんな毎日を繰り広げる。
俺は・・・人生の脇役だ。人生の主人公の側にいて、ただそいつをうらやましそうな目で見ているだけの脇役だ。ただ誰かを飾るための、主人公を飾るための脇役だ。
そこで俺はふと思う。自分がこんなことを考えるようになったのはいつごろだろうか、と。目標もなく、ただただなにかを必死にがんばっている人を嫉妬の目で見ている俺は、どうしてこんなふうに考えるようになってしまったのだろう。
俺が空手をやっていたころは・・・、自分は人生の主人公で、生きる意味を持っていた。全国大会で良い線まで上った俺は、ああ、俺は空手で強くなるんだと言って、それを言った二年後に・・・医者から告げられた最悪の宣告・・・

『残念ですが・・・もうその足では、いままでどおり空手もできなければ、激しい運動もできません』

・・・
おそらく、そこだ。そこで俺は脇役になった。やることが見つからず、ただただ生きるだけの脇役になった。その後に昌子からの彼氏の紹介、追い討ちをかけられるように、俺は主人公から脇役に堕ちて行った。
まぁ・・・それでもいいさ。平凡に生きていければ、それでもいいさ。毎日警察と戦っている暴走族の方々はけして平凡とはいえないし、ヤクザの連中に目をつけられたりしたらそれはもう完全に平凡じゃないだろう。そんなスリル満点な人生を生きるより、なにもしないでダラダラと過ごす、こっちのほうがましだ。
自分の部屋は二階にあるので、一階に下りて、洗面所で顔を洗う。洗い終わったらまだ起きていない三人をほっといてパンをトースターに入れて焼く。妹は中学校に通っているが、そこの始まりは八時半なので、まだまだ余裕がある。宮西高校は八時十分からなので、それなりに早くいかなければ間に合わない。といっても、俺たちの家からだと十分もかからないので、七時三十分にでるのは早過ぎると思う。
お袋のパートもまだだし、親父の会社もまだまだだ。なんちゅーグータラな家族だといいたくなるが、ほっといてほしい。

Re: 【紅の魔法】 ( No.2 )
日時: 2011/01/27 17:10
名前: だいこん大魔法 (ID: AEu.ecsA)

パンにバターをたっぷり塗り、朝のニュースを見ながら俺は時間をつぶす。今から朝風呂しても三十分には間に合いそうだからどうしようか悩んだけど、もう制服に着替えてしまっているのでめんどくさいという結論になり、やめた。
はぁ・・・俺にも彼女とかできれば毎日が暇じゃなくなるのかもしれないが、もてないからしょうがない。もてないやつはもてないやつなりに暇をつぶせってか。神様もやなやつだねぇ・・・。
パンを食べた俺はなにか忘れていることに気がつきカバンをとりに部屋に戻る。
カバンを手にもち、再び俺は一階に降りる。部屋の中は誰も起きていないので電気はついていない。前に誰も起きていないのに俺がつけてそのまま学校に行ってしまった時電気代の無駄だろうがと軽く注意をうけているので、俺一人しか起きていない場合はつけていない。
電気もついていない、寂しいリビングを見回した俺は、脇役にはちょうどいいかもな、と自嘲気味に笑い、玄関に向かって歩いていく。
少しさび付いているドアをあけて、靴の踵を直しながら外にでた俺は、もう一度太陽の光にクラッとする。ああくそ、今日は朝から太陽もご苦労なことだぜ。

「ゆーすけぇー!」

俺が心の中で太陽に嫌味をぬかしていると、近くから昌子の声が聞こえてくる。昌子の声は声優のように透き通っていて綺麗なのだが・・・、この声を独り占めしているのは修二君で、昌子の心を独り占めしているのも修二君だ。これは俺が長年聞いてきた声だが、もう他人のものになってしまっている。
そう思った瞬間、なにかいやな感じが心の中に広がるが、俺はそれを無視する。そんなことは俺に関係ないと、拒絶する。
散々寝たのにまだ眠いな・・・。ああちくしょう。これは相当やばいぞ。———そろそろ意固地になってないで病院いこうかな。

「悪い、待たせたか?」

「ううん、あたしも今きたばっかだよ〜」

にこにこと笑いながらそういう昌子の顔をみて一瞬、ほんの一瞬だけ、俺の頭のなかにひとつの影が生まれる。それはいつも見る夢。美しい雰囲気の少女と・・・自分。影に隠れていつも見ることの出来ない少女のことが・・・一瞬だけ、頭の中によぎる。その夢の中で話している内容は覚えていない。覚えていないというか、夢の中でだけしか共有ができないものなのかもしれない。まぁ仮定の話とかをたてるのは苦手だからどうでもいいか。
なにか大切な思い出だったような気もする。だけどそれは、あまりに現実離れしていて、どうもリアルでおきたことだとは思えない。そう思い直した俺はそのことを隅におき、昌子の隣にたつ。それを合図に昌子と俺は同じペースで歩きだし、学校に向かい始める。

「なぁ昌子」

「なぁに?」

なにも話さないで歩くのは気まずいので、適当に俺は話題をふってみることにする。

「なんで今日は一緒にいきたいなんて言ったんだ?いつもは俺を起こした後チャッチャと一人でいっちまうくせに」

「え、えっとね。今日は裕介と一緒にいってあげてもいいかな〜って、思ってね」

俺の何気ない質問に少しだけ陰をみせて昌子だが、すぐに平気な顔にもどってそういう。まぁ長年の付き合いだ。昌子が嘘をついていることぐらいわかる。だけど、俺はべつにこいつの恋人でもなんでもない。ただの幼馴染だ。そういう深いところには突っ込まないさ。

「そっかそっか。彼女のいない寂しい俺に同情してくれたんだな?」

「そうそう。もてない君のために昌子ちゃんがわざわざ声をかけてあげたのだ〜」

「お前・・・ぶっとばすぞ?」

「はっはっは、やってみなさい裕介ちゃん」

そういいながら昌子は宮西高校の女子の制服であるセーラー服と青色のミニスカートをなびかせながら振り向く、そしてカンフーかなんかのみょうちくりんなポーズをとり、こちらにむかって差し出された手をコイコイ、といったふうにふる。
俺は周りに人がいないことにホッとし、昌子の馬鹿さ加減にため息をつく。

「昌子・・・、高校生にもなっておかしな行動するなよな」

「え〜、大丈夫だよぉ、こんなことするのは裕介の前でだけだもん」

「お前・・・俺以外の男にそんなこといったら誤解されるぞ?」

「ふぇ?誤解?どんな誤解されるの?」

「・・・わかんねーならいいっす」

ハァ・・・、テンションが最高に低い奴とテンションが最高に高い奴とでは感じるものが違うのだろう。正直こいつの相手するのはめんどくさい。
五分ほど歩いていると、チラホラと宮西高校の制服をきている生徒を見かけるようになってくる。それを確認した俺は、ほかの生徒に誤解のないよう少しだけ昌子の後ろを歩く。意識のしすぎだって?ははは、お前らもこんな状況になってみればわかるさ。過剰ぐらいが丁度いいってな。

「あれ?なんで裕介後ろ歩いてるの?」

「そういう気分なんでな」

「ふーん・・・変なの」

・・・ま、後ろを歩いたところで昌子が話しかけてきては全く意味がない。通りかかる男子生徒からは嫉妬の眼差しが送られてくるし、女子からはなになに?あの二人ってそういう関係なの?とか変な誤解をもった視線が送られてきている・・・いやね、こいつには修二君っていう彼氏がいるんですよ?俺はただの幼馴染ですよ?とか大声で言おうにも・・・ヘタレな俺はそういった思い切りのいい行動をとることができない。はぁ・・・実に不愉快だ。

「そういえば、裕介とこうやって二人で歩くのは久しぶりだね〜」

昌子が笑いながらそういってくる。その言葉は俺の心にチクリと、針が刺さったような痛みを与える。それを不快に思った俺は、若干吐き捨てるようにその言葉を言ってしまう。

「フン、お前は修二君がいたからな。俺にかまってる暇なんてなかったんだろ」

それは男の嫉妬だったのかもしれない。可愛い女の子を誰かに独り占めにされているということが不愉快に思ったのかもしれない。男ならば誰もがそう思うだろう。その例としてさきほどの男子生徒が俺たちに送っていた視線だ。だからそれは当然の発言だったのかもしれない。
だけど———昌子の顔には、怒りともいえない・・・、悲しみの色が顔を覆っていた。

「・・・裕介、もしかしてあたしに彼氏がいたこと、怒ってるの?」

だがその顔色とは裏腹に、そんなことを昌子が聞いてくる。昌子の突然の変貌に驚いていた俺は、一瞬どういった反応をすればいいか困ったが、ここはハッキリと言わせてもらうさ。

Re: 【紅の魔法】 ( No.3 )
日時: 2011/03/28 03:44
名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)

「いや、怒ってねーよ。そりゃお前は可愛いし、彼氏の一人や二人できたっておかしくないからな。嫉妬したってしょうがないさ」

「・・・そ、そう、ならいいんだけど」

「・・・なぁ、お前、なにかあったのか?」

・・・しまったぁぁぁぁ、なにやってんだ俺!?深いところにはつっこまないといったばっかりな気がするんだけど!?あぁちくしょう!
こいつとは幼馴染以外の関係にはなりたくないんだよ!!ほっとけよちくしょう!と心の中で自分を罵倒してももう遅い。昌子はひどく悲しそうな顔でこちらを見る。いつのまにか俺たちは———立ち止まっていた。

「・・・」

「あ、あんさ、いいたくないことなら言わなくていいぜ?ほら、なんか話長そうだし、今聞いてたら学校に間に合わなくなるだろ?よ、よっし、ほら、急ごうぜ!!」

昌子が今にでもなにか話しそうな雰囲気だったので、とにかく俺はその場かぎりのごまかしを使うことにした。・・・これからこいつが俺の家にたずねてきたりしたら絶対に無視しよう。今日の帰りも一人でちゃっちゃと帰っちまおう。そうすりゃこいつと秘密を共有したりする必要もなくなるだろう。

「う、うん、そうだね」

納得がいかないような表情をしながらも、昌子は俺の後ろをついてくる。俺は歩きながらあたりの様子を見回してみる。えーと・・・よし、今のは誰にも見られていないようだな。丁度いいところで通学者がとぎれてくれて助かったぜ。
若干テンションが反転してしまった俺たちは、そのまま五分間、なにもしゃべることなく無言で学校までの道のりを歩いたのである。




俺と昌子は違うクラスなので、俺は下駄箱についてすぐに昌子から逃げるようにして素早く上履きに履き替え、早歩きで一階にある自分の教室、1—Bクラスに入る。ガラッちょっとだけ勢いよくスライド式のドアをあけた俺は、まだあまり人のいないクラスを眺め回し、自分の席にむかって歩き始める。

「お、鎖牙じゃん、今日は早いんだな」

すると、朝早く学校にきているご苦労様なやつらの一人が俺をみて声をかけてくる。そいつに俺は目をむけて、言う。

「西野・・・お前はいっつもこんな早くからきてんのか?」

西野と言われたクラスメイトは、俺のゲーム仲間だ。高校に入ってから一ヶ月でできたカズ少ない友人の一人である。本名は西野勉。名前とは裏腹に頭の悪い馬鹿だが、俺と妙に馬が合うのだ。若干茶色がかった角刈りで、身長は俺より小さく、小太りな男だ。

「おうよ、家じゃ親が勉強勉強しろうるさいからな。いっつも早く学校きてゲームしてんだよ」

「そりゃしらなかった・・・」

西野の当たり前だといわんばかりの発言に呆れたような声を俺は出す。自分の机に教科書類がなにもはいっておらず、携帯ゲーム機しかはいっていないというカバンを置き、俺は席に座る。俺の席は男女隣同士で一列と数えると、二列目の丁度真ん中だ。悪くもないし良くもない席だな。
俺はなるべく昌子のことを考えないようにしようとPSPをとりだして、それを起動する。実際この学校はゲーム機とかそういった類はもってきちゃいけないのだが、先生にバレさえしなければいいのだ。

「お、モ○ハンじゃん。なぁなぁ、一緒にやろうぜ?」

実をいうと、西野は俺の目の前の席なのだ。椅子を反対側に座った西野がモ○ハンのカセットとPSPを取り出し、起動する。それに俺はニヤリと笑い、こういってやる。

「いっとくけど、俺はやりこんでるぜ?」

「はっ・・・、オタクの力をみせてやるさ」

そういって俺たちはゲームをやろうとするが————

「あー、ゴホン、残念ながら鎖牙、西野。お前たちはモンスターを狩る前に先生にゲームを没収されるぞ?」

「なっ・・・雉田のハゲ野郎、いつのまに教室に入ってやがったんだ・・・」

「なぁ鎖牙、お前は生徒、私は先生。わかる?生徒は先生にそんな口をきいちゃいけないんだよ」

いつのまにかあらわれていた長身でハゲでマル眼鏡のおっさん、雉田信之助が俺の机の横にたっていた。雉田はこめかみに血管をうかべて、さらに拳にも血管をうかべる。だが俺たちに何言っても無駄だと悟ったのか、突如拳を緩めて、長年の教師生活からへたスキルなのか、俺たちの手にあったゲーム機がいつのまにかうばわれており、雉田は得意げな顔をみせていた。

「どうだ鎖牙、西野。これが私の長年の教師人生で覚えたスキル、秘儀・ボッシュートだ!!」

得意げに勝ち誇る子持ちの五十五歳のおっさん。そんな担任をもってしまったことに俺は脱力しながらも、小声でそっと・・・思ったことを呟いてみる。

「・・・いいから人生定年退職しろよ。ハゲ」

すると、西野も俺と同じ考えだったのか、小さな声でそっと呟く。

「・・・そんなんだから皮膚に毛が生えないで脳に毛がはえんだよ万年ハゲ野郎」

「ねぇ、お前たち生徒だよね!?先生にそんな口きいていいと思ってるの!?てか鎖牙!!なにが人生定年退職だ!?それまじめに死ねっていわれるのより傷つくんだけど!?西野も西野だ!!私はたしかに皮膚に毛は生えてないけど脳にも生えてないよ!!」

「あ、ハゲってのみとめたな?」

「てかさ、俺前みたんだよね、教員トイレで必死に育毛剤を使ってた雉田を———」

「わーわー!!ゲーム機は返すからそれ以上いうでない西野おぉぉぉぉ!!」

「朝からむちゃくちゃテンション高いな・・・こいつ」

「ああ・・・正直相手にするのめんどくさいし、今はおとなしくしとくか」

「了解っす・・・」

雉田のテンションについていけなくなった俺たちは、ゲーム機をしまい、それぞれ暇つぶしをするために元の席に戻る。
・・・俺たちが適当なことをやっているうちに五分がたっていたらしく、教室にはいってくる生徒がちらほら見え始めてくる。そんな光景をみながらやはり俺は———平凡だなぁ・・・と思う。
毎日馬鹿みたいに学校に通い。有益ともいえない授業をうけて。友達と騒いで、また明日なといって帰って、家では勉強かゲームをして、寝る・・・。毎日平々凡々で過ごせたらいいなぁと思う人は、どこかにいるかもしれない。だけど平凡なひびを過ごすものにとっては、それは退屈でしかない。
せめて———せめて、この世界に魔法とか非科学的なものがあれば———ちょっとはかわるのかもしれないな。と、俺は小さく、誰にも聞こえないように呟いた。
その言葉は、ほんの思いつきだったのかもしれない。だがしかし、その言葉がどんな意味をもっていて、どんなに恐ろしいものなのかは———そのときの俺には、検討もつかなかった。

Re: 【紅の魔法】 ( No.4 )
日時: 2011/01/23 22:48
名前: だいこん大魔法 (ID: AEu.ecsA)

「えー、今日は転校生がこのクラスにやってきている」

朝のHRが始まった直後、雉田が突然そんなことを言う。クラスの男はおぉーと歓喜の声を、女はその転校生は男?そしてイケメン?という視線を先生におくる。雉田はそれに困ったような反応をしたものの、見れば分かるという言葉を残し、教室をでていった。おそらく、呼びにいったのだろう。
俺も興味がないといえば嘘になる。だがしかし、俺の頭の中で警告の鐘が何度も何度もやかましくなりひびく。その転校生に会うな、会うな、と俺の頭の中で、鳴り響く。

「なぁ、転校生だってよ。どんなやつがくるか楽しみだなっ」

「あ・・・ああ」

突然頭の中で鳴り響きだした警告に戸惑っていた俺は、西野の言葉に反応するのが少しだけおくれた。だが西野は転校生がどんなやつなのか興味深々で、俺の異変には気がつかず、前を向いてその転校生が入ってくるのを待つ。
その間にも、頭の中で警告は鳴り響く。会うな、会うな。そいつと会うな。絶対に会うな。あってはならない。会ったらお終いだ・・・と、鳴り響く。俺はそれが気持ち悪く思った。嫌な予感はたしかにする・・・。警告の通りに、逃げた方がいいのかもしれない、だけど———

【どうしてこんなにもハッキリと頭の中に声が響くのだろう?】

普通、人間はおぼろげな意識の時にすさまじい直感をはたらかせることができるという。それをいった学者の言葉が本当かどうかはしらないが、とにかくそういうことらしい。だがどうだろう、俺の場合これはカンというものではなく、誰かが俺に直接話しかけてきているような———そんな感じがするのだ。・・・実に馬鹿げているとは思わないか?
ガラッと勢い欲ドアが開く。まず先生が入ってきて、転校生が気持ちよく入ってこれるようにするためにあれこれいらない説明をする。俺はそれを聞いていなかった。このままだとまずい。まずいまずいまずい———頭の中に響く声が除々にでかくなっていき、吐き気を覚えてきた。椅子から一度転げ落ちそうになるが、先生のはいたギャグにみんな笑っていたからそれに気がつかない。なんとか椅子から落ちないように踏ん張った俺は、机に突っ伏するような形にとどまった。

「な・・・なんなんだよ、これ。この声はなんなんだよ・・・」

突っ伏しながら片方の手で頭を押さえる。だけど、まだ声はでかくなっていく。クラスメイトの笑い声が消え、先生がはいってこい———という。それに俺は、頭の中の声にしたがって、待てといおうとするが———そのとき、一瞬だけ、さきほどの声とは違う。幼い少女の、透き通った綺麗な声が、頭の中に響いた。

【私は———裕介のことが好きだよ———】

その声を聞いた瞬間、俺が今まで思い出せなかった、小学一年生の時の記憶が少しだけよみがえる。事故で完全になくしたと思っていた記憶がほんの少しだけよみがえる。美しい少女の顔。風になびいている美しく、長い、深紅の髪の毛。自分と同じぐらいの少女の身長。なめらかな体。とても同い年とは思えない。美しい少女の姿と俺の子供の頃の姿。夢で見るあの光景にどことなく似ているよみがえった記憶。それを思い出した瞬間、俺の顔は恐怖に歪んだ。
あの夢・・・。いつも見ているあの夢は、現実にあったことなのだと実感させられた。内容を覚えていないため核心をつくことはできないが。本能が、俺の中心にあるなにかが、そういっている。あれは夢なんかではない。幼い頃のお前の記憶なのだ———と。

「・・・ざっけんなよ。あれは俺の記憶なんかじゃない・・・絶対に違う」

そう心の中で言っても、自分でももうわかっているのだ。あれが俺の記憶の中のできごとで、さきほど響いた声も———知っているのだと。わかっているのだ。

「でも違う・・・違うんだ。絶対にあれは俺の記憶じゃない。もしも本当に夢の中のできごとが現実だとしたら———」

俺は小さく呟く。誰にいうまでもなく、高鳴っている自分の心を落ち着かせるために、暗示の言葉をかけるようにして呟く。そうあってはならない。あんな記憶があってはならない。記憶ということはそれはもう終わった出来事、もしくはすぎた出来事だ。そうなると———もしもあれがすぎた出来事ならば———


      【俺は死んでいるということになってしまう】

Re: 【紅の魔法】 ( No.5 )
日時: 2011/03/28 04:08
名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)

あってはならない。これからくる、この教室にはいってくる転校生には会ってはならない。もしもあってしまったら、完全に認めてしまいそうだからだ。今だ逃げろ逃げろと警告を鳴らし続けている頭の声にしがって俺はこの場から今すぐに逃げようとする。しかし、なにかに固定されたかのように俺の体は動かない。俺は動け、動けよ!!と心の中で悪態をつきながら体を机から引き剥がそうとするがやはり動いてくれない。
終わってしまう———このままだと、終わってしまう。今まで生きてきた日常が終わってしまう。平凡もいいかもなと思っていたのに・・・、平凡でなにが悪いと開き直っていたのに———俺は人生の脇役で、平凡に人生の道を進んでいくつもりだったのに———だったのに———
教室に女子用の上履きが入ってくるのが見える。男子はそれを見た瞬間おぉー!!と叫び、明らかに女子からは残念そうなオーラが発せられる。足が入ってきたということは、次は体が入ってくるのが常識。その通りに、セーラー服をまとった、あまり発育のいいとはいえない体が見える。そこまではまだよかった———だが、次の瞬間に見えた横顔と髪の色で、この教室は静まり返った。
その顔は、ひどく美しかった。横からでもわかる。悪戯っぽい深紅に彩られた瞳、引き締まった桜色の美しい唇。ぴんとたっている綺麗なラインを描いた鼻筋。どっかのモデルなんかよりもうつくしい腰の細さ。胸は若干小さい方だが。それは彼女の小柄な体がカバーしてくれている。足のラインはそんじょそこらの女子なんかよりも綺麗で、ハリウッドスターでもここまで綺麗なやつはいないんじゃないか?といいたくなるほどだ。そのまま美しい足取りで教卓の隣まで歩いていった彼女は長い深紅の髪の毛をなびかせながら黒板のほうをむき、チョークを滑らかで美しい手でとり、黒板に名前を書いていく。
その白磁のような肌をもった、とても人間とは思えない少女のことをみて、俺の頭には戦慄が走った。俺はこの少女を知っている。この少女と会っている。この少女は———俺の夢の中にでてくる少女の年齢を十歳ぐらいとらせた感じの———

「えー、彼女の名前は竜貴エルだ。先生もさきほどしったのだが。どこかの王国の姫と日本人の男性の間に生まれたハーフだそうだ。生まれてからずっと日本にいて日本語は大丈夫だが、今はわけあって両親と離れ離れで寂しい思いをしていると先生は思う。仲良くしてやってくれ」

そこまで聞き終わると、もう俺は我慢ができなくなった。俺は無理矢理体を持ち上げて、立ち上がる。そのさいにガタンという音を椅子がたてたせいで、クラスメイトが転校生、竜貴エル・・・俺の夢の中にでてくる、現実離れした少女・・・エルシャロン・ユアハーツにむけていた目をこちらにむけてくる。だが俺はそれを無視して、教卓横にいるエルの美しい手をとり、思い切り引っ張って教室の中からでていく。後ろから雉田が俺を呼び止めようとするがそんなものにはかまっていられない。俺は呆然としているエルを引っ張りながら、この時間帯だと授業をさぼってやろうと考えている奴か、自殺をしようとしているやつ以外いないであろう屋上にむかって走る。階段を駆け上がり、屋上のさび付いたドアを無理矢理こじ開けて、そこにでる。
そこまできてやっと俺はエルの手を離す。エルは俺の不思議そうな目で見ているが、その目からはありありと不信感がうかがえる。俺は荒い息を無理矢理おさめてから。聞くな。やめろ。という頭の中に響く声を無視して、目の前にいる美しい少女に聞く。

「お前は・・・エル・・・いや違う。エルシャロン・ユアハーツ・・・なのか?」

直球の質問だった。もしも違うとしたら、俺はかなり痛いやつで、転校生にへんなこときいたんだってよーとか噂されて変人扱いされて挙句の果てにはいじめられてしまう可能性がある。だけど、俺はそんなことは絶対におこらないと確信できていた。
俺の直球の質問に、エルは目を見開き、口をあける。しかしすぐに顔を引き締めて、完全にこちらを警戒したふうに睨んでくる。

「あなたは・・・何者?どうして人間風情が私の名前を知っている?」

それは完全に俺を、いや、俺たち人間を馬鹿にしたような言葉だった。だがしかし、俺はそんな言葉を無視して一歩ふみだす。

「近寄るな人間。どうせお前は≪企業≫の刺客か≪機関≫刺客なんだろう?逃げた私の行方を追ってきたんだろう?なら・・・容赦はしない」

・・・なんかやばい雰囲気になってきたな。そう俺は感じたが、それはどうでもいい。俺は一歩ずつ後ろに下がっていくエルを追いかけるようにして一歩一歩足を踏み出していく。

「うぅ・・・ここに裕介がいるって情報を元にして人間の記憶を操ってわざわざ入ってきたのにもう見つかるなんて・・・」

その言葉を聴いた瞬間、俺の心の中・・・いや違う。心の中に眠っていたなにかがはじけだすのが分かる。それはまるで俺の体全体を焼くように熱く。そう思えば逆に俺の体全体を凍らせるほどに冷たくなっていく。あまりの苦しさに胸をおさえてその場にうずくまった俺は、力をふりしぼり、むりやり口を開く。目の前にいる少女に・・・再開の言葉を、かける。

「———エルシャロン・ユアハーツ、エル。俺は昔・・・お前に好きだと言いそびれちまったんだっけな」

「っ!?」

「ああ・・・記憶が戻った———俺はお前を好きだといえなかった・・・。好きだという前に———」

俺は死んだ。


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