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ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜
日時: 2012/07/10 23:37
名前: 緑野 柊  ◆5Qaxc6DuBU (ID: DnOynx61)

 ついについについに来ました! 

 どるさんとの合作!

 このお話はどるさんのキャラクタ—設定を元に、私緑野が文章を作らせてもらってファンタジーギャグ(シリアスもたまに)のお話です!


 今までの作品を見てきた方たちは少し驚くくらい作風が変わりましたが、みなさん楽しんでくださいね!あ、お話を。


 それではどるさんと読者さんに感謝しながら、

 このお話を書き進めていきたいと思います!
 
 そして出来れば感想が欲しいです!待ってるよー!!

  ここからギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜の世界に……
 ↓レッツゴー!!!(^O^)/

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Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.113 )
日時: 2013/01/13 00:01
名前: 緑野 柊 (ID: DnOynx61)


                *

 何もできなかった。
 オレは何もできなかった。守ることが出来なかった。
 ミルはオレの腕の中で悲鳴をあげると、するりと上手に抜け出して。バニラのもとにと駆け寄った。
 オレはその背中を呼び止めることが出来なかった。
 ミルは信じたくないと、顔を両手で覆い。やがてその両目から溢れる涙を拭うこともせずに、両手に顔を埋めた。
 その場に両膝を付いて肩を震わせるミルにかける言葉は「辛いね」「大丈夫か」「元気だせよ」
 違う。そんな言葉じゃ彼女に届かない。
 もっと他になにか……心に響くようなそんな言葉が。
 いや違う。今のミルに届く言葉なんか存在しない。
 今の彼女の前にはどんな言葉も無意味。
 だからクレソンさんも、ミルに何の言葉もかけずに、ただ苦しそうな顔をして見つめている。
 クレソンさんはそうやってただ見つめているだけだ。だけどオレにはあんなに泣きじゃくるミルを後ろから見ているだけだなんて、そんな冷たいこと出来なかった。
「ミル……」
 おずおず声をかける、と。そのとき。
「嘘だ……」
 マジョラムが呆然と呟いた。
 オレはハッとし、そちらに視線を集中させる。
 マジョラムはあり得ないと首を力なく振り。こう続ける。
「だってバニラは僕の作った、最高傑作なんですよ……なのにどうして……」
 そしてマジョラムの果てしない絶望は、徐々に怒りにと形を変え、運の悪いことにその矛先は彼女に向いてしまったのだ。
 マジョラムは顔を醜く歪めて「くそ……さすがあの女の娘ということか……クソガッ!」と言った。
 あの女の……娘?
 その言葉が妙に引っかかりオレは思わす「どういうことだ?」と疑問を漏らした。
 ミルも虚ろな瞳をその時ばかりはマジョラムに向けた。
「……あの女の娘……私のお母さんのこと?」
 ミルはそう呟いてみて。その意味にやっと気が付いたのか。目を大きく見開いたと思えば。
「私のお母さんのことを知ってるのっ!?どうゆうことっ!?」
 焦ったように声を張り上げたが、マジョラムはミルの質問には答えずに、不敵に微笑みだけ。
 どうやら、ショックすぎてこちらの声は届いていないらしい。
「……こうなったら……奥の手を……使うしか……」
 これから何が始まるのか。
 その場を漂う緊張感に、オレの心臓は眩暈を覚えるほどに激しくドクッ、ドクッと脈を打っていた。
 アイツも緊張した面持ちで、戦闘態勢をとる。その額にはうっすら脂汗が浮かんでいた。
 しかしマジョラムは、両手がぽうっと淡い光に包まれたと思えば、その手を敵(オレ達)にでなく、自分の胸の部分にあてた。
 ……なんだ?
 魔法になんかまったくの知識なんかないオレは、これから何が起きるのか分からずに、行動を起こせずにいた。
 だけど、アイツは違った。
 そのマジョラムの行動を見た瞬間、アイツは「しまった」というような顔をして。
「おいっ!やめろっ!」
 そう叫びながらマジョラムのもとへ向かって走っていった。
 オレは何をしてるんだと、ぎょっとしたが。
「そんなことしたらお前の命が……!」
 そう懸命に伝えようとする姿をみて、とにかく何か大変なことが起きると察知したオレは慌てて、まだどこか呆けているミルのもとへ走った。
「ミルッッ!」
 ただミルを守ろうという、思いでいっぱいで、オレはミルを庇うようにマジョラムに背を向け、強く抱きしめた。
 ミルは案の定、魂の抜けた状態で、顔を真っ青にして小刻みに震えていた。
 オレも強く目を瞑る。
 その瞬間、さっきの淡い光とは比べられない強い光が辺りを照らした。
 いや照らしたというよりは、閃光弾をくらった時のように頭が一瞬クラクラとした。
「くっ……!」
 それでもミルだけは今度こそ守ろうと、さらに抱きしめる腕に力を込める。
 ふっと辺りが元の明るさに戻ってから、数秒たってから、オレはゆっくりと瞳を開ける。
 まださっきの激しく眩しい光の、後遺症が残っていて。しばらく目がチカチカとした。
「おい……さっきの一体……?」
 目元を抑えて蹲るアイツに近づくと、それが目に嫌にでも入ってきて、オレはゾクリと身振りをした。
 マジョラムは力なく腕を地面に下ろし、その瞳は焦点も合わずにゆらゆらと宙をさ迷っている。
 口はだらしなく開き、だらりと涎が垂れる。
「なっ!?コイツ!?」
 その様子が気味悪くて、オレは数歩後ずさりをした。
「……間に合わなかったか……」
 アイツは悔しそうに呟いた。
「……何が?」
 しかしアイツはオレの問いに答えることはなく、「何故自らに魔法をかけるなんて、そんな馬鹿なことを……」と呟いた。
「……自分に魔法をかけて、ソイツどうなっちゃったんだ?」
 答えを聞くのが怖かった。それでもオレはそう尋ねてはいられなかった。
 アイツはゆっくりと視線をオレに向けて、それから諦めるような大きなため息を吐いた。
「……奴が何をしようとしたのかは、知らないが。魔法がリバウンドしたんだ」
「リバウンド?」
 アイツは小さく頷くと、こう続けた。
「そうだ。もし自分にかけた魔法が、炎系、水系など自然の力に頼ってかけたものなら別に良かったんだが。俺が見ていた限り、奴はそうゆう系の魔法を使えそうではなかった」
「じゃあ……マジョラムは自分に何の魔法をかけたっていうんだよ?」
「……それは、分からない。何しろおとぎ話の中の存在の人形遣いが本当に存在したことでさへ驚いているんだ。だが、これだけは言える」
 そこでアイツは言葉を止め、息を大きく吸った。
 真剣な表情をオレに向けて、静かに。
「……魔法は失敗したんだ」
「魔法が……失敗?そうなると、一体どうなるんだ?」
 オレは純粋に気になって、尋ねた。後で後悔するとも知らずに。
「魔法が失敗すると。術者。つまりその魔法を発動した者に影響が出てしまうんだ」
 心臓が冷やりとした。
「……影響って、たとえばどんな?」
「……かすり傷程度で済む軽い場合もあるが。マジョラムのように、大きな反動を受ける場合もある」
 オレは動揺を隠せなかった。隠せないほどに動揺していたのだ。
「どうゆうことだよ……おい聞いてねぇよそんなの……魔法にはそんな危険があるだなんて……おいっ!」
 魔法を使う、オレの身近にいる親友。それはマフィンさんやコイツなんかもそうだ。だけど、ミルだって魔法を使う者。
 いつか魔法が失敗して、目の前で馬鹿みたいに呆けているマジョラムみたいにミルがなるんじゃないか。そう思うとたまらなく魔法が恐ろしくなった。
「でも……死にはしないんだよな?」
 ドクンッ、ドクンッと強く脈を打つ心臓を抑えながら、恐る恐る問う。
「そうだな。……しかしこうやって、記憶を失うことはあるが」
   記憶を失う……?
         おい、嘘だろ??
 オレは息をするのも忘れて、その言葉を頭の中で何度も繰り返す。
 それは、ミルがいつかオレを見て。こんな光のない瞳を向ける可能性も否定できないってことか?
 深い深い、闇の中に放り出された気分だった。
 それは底のない、絶望。恐怖。
 しかし、そんなオレの思考は、後ろから聞こえたミルの声によって遮られた。
「記憶がないって……そんな……」
 ミルはよろよろとマジョラムに近づき、肩をがしっと力強く掴む。
 ……ミル。
 そう言えば、確かミルは母親は行方不明で、お祖母さんと一緒に暮らしてたって……。
「それじゃあバニラちゃんは一体何のために死んだっていうのっ!勝手に死んだみたいに……それにお母さんは……私のお母さんは何だっていうの?私は一体誰の娘なのっ!?」
 金切声をあげて肩を強く揺さぶる。
 だけど、記憶を完全に失ってしまっているマジョラムに言葉が届くことはない。
「……なんとか……答えなよ……」
 最後に震える声でそう懇願すると、ついにミルは声を上げて泣き出してしまった。
「……ミル」
 オレはそんなミルに、声をかけることすら出来なかった。

Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.114 )
日時: 2013/01/13 00:02
名前: 緑野 柊 (ID: DnOynx61)


                *

 その後、すぐ近くにいて丁度あの時の光を見ていたシャルロット達が駆けつけてきてくれたので。マジョラムはなんとか確保出来た。
 と言っても、抵抗することすら出来ない状態だったので、苦労することもなかったのですけど。
「いやぁ〜。助かりましたよ。幹部殿が近くにいてくださって」
「……まったく。貴方は上の者に対してはすぐに態度が変わりますね」
「まぁまぁ」
 俺はそう言って、お決まりの営業スマイルを浮かべるが、どうやら幹部殿にはお気に召されなかったようだ。
 深くため息を吐いて奥にいる二人に目を向ける。
「それにしても……一体何があったんです?一人足りないような気もするのですが」
「……気になりますか?」
 思わずニヤリと口角をあげると、幹部殿の癪に触ってしまったようで。
「……まさか」
 少し頬を赤らめて、そっぽを向かれてしまった。
 しかし、幹部殿と言っても所詮まだまだ子ども。
 恋心をいくら押し殺そうとしたところで、この俺にはバレバレだ。
 奥には泣きじゃくるミル殿を、心配するようにプレッツェル君が寄り添い。優しく背中を撫でていた。
 あれを遠くから見ていれば、ただのカップルにしか見えないのだけども。
「……まぁ、いろいろあったんですよ。それにもう一人の彼女のことについても」
 幹部殿はしばし黙ってから、何か察したのか。静かに頷くと部下たちがいる方に向かって歩いて行った。
 ……さて。俺もそろそろ働くとするか。
 幹部殿の後ろについて歩み始めた時、どうしても目の端にあの二人の姿が離れなかった。
 ミル殿はいろんなことが起きすぎて、パニック状態になってしまったようだ。
 それはそうだ、彼女は目の前で人が死ぬところを見てしまった。あの若さで。
 そしてバニラ殿を死なせてしまってしまったのも、他でもない彼女の責任。
 俺も初めて大切な人を失った時、ショックでしばらく立ち直れなかった。
 ……懐かしいな。そんな時。シフォンが俺を元気ずけてくれたんだっけ。
 ふとそんなことを考えていると、肩を叩かれて。
「クレソン殿。シフォンという名の女性からお電話です」
 中性的な顔つきのスノーボールが俺に受話器を向けていた。
「……シフォンから?」
 それは今一番聞きたかった人の声だった。
 俺は嬉しさを噛みしめて、震える手で受話器を受け取る。
「……もしもし」
『……シャルロットから話は聞いた。バニラちゃん……死んじゃったんだってね』
 受話器の向こう側から、最愛の人の悲しそうな声が聞こえた。
 あぁ。俺は彼女までも傷つけてしまっていたのか。
 そう思うと、たまらなく悲しくなった。
「……すまない」
『別にクレソンが謝ることじゃない。クレソンだって……十分頑張ったんだから。ね?』
 ……シフォンはやっぱり優しい。優しいからいつもこんな俺を結局はこうやって温かく迎えてくれる。
 でも、今ここで優しくされたら、俺はもう今までため込んできた感情が止められなくなりそうだった。
「……そんなことはないさ。結局は君の大切な友人を守りきれなかった。それにミル殿も」
『……そっか。でもクレソンだって……』
 少しの間が空いて、困ったように笑う声が聞こえてくる。
『何泣いてるの……』
「泣いてなんか……そんなことあるわけないだろう」
 嘘だ。
 止めどない後悔の感情は涙となって。俺から溢れ出た。
 俺は気付かせるものかと、無理に声を明るくさせて笑った。だが彼女にはばれているんだろうな。
 だけど。彼女は笑ってこう言ってくれた。
『そう。じゃあワタシの勘違いね』

Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.115 )
日時: 2013/01/13 00:02
名前: 緑野 柊 (ID: DnOynx61)


                *

「でも。まさか本当に人形遣いが存在していたなんて……。僕はずっとおとぎ話の世界の夢のような話だと思っていましたよ」
 スノーボールがまだ信じられないと首を振りながらそう言った。
「ワタシだってまだ信じられませんヨ。でも……これはなかなか興味深いでス」
 とプリン・ア・ラ・モード。
「ちょっとぉ。皆よく平気でいられるわね。コイツ今じゃ世界をも滅ばすことが出来るほど強いのよぉ?」
 サンデーは気味が悪そうに肩を摩りながら、人形遣いを見つめた。
「確かにそうですね。しかし今は危なくないでしょう。いくら人形遣いと言ってもいまは赤ん坊程度の知力しかありません。いえ、もしかしたらそれ以下かも……」
「確かに隊長の言う通りだけどぉ〜」
 やっぱり無理っ!とサンデーはぶるりと身を震わせた。
 でもそれも仕方がないかもれない。こうやって部下の前だから少し気を張っているけど。これが一人の時だったら。わたしだって近づきたくないもの。こんな得体のしれないものなんかに。
 近くにいた兵士たちに、馬車を手配するように命じ。すぐに馬車が到着したためマジョラムという人形遣いを屋型の中に放り込み、見張りとして一人下級の兵士を同乗させたが。
 その兵士でさへマジョラムのことを気味悪がって、ろくに近づこうとしない。
「……では。頼みます」
 そう言うとその兵士は涙目でわたしを見つめ、しぶしぶと「……了解です」と返事をした。
 まぁ、その気持ちは分からなくもないのですが。ここではわたしが彼らような下級兵士の上に立つ者。
 隊長の命令は絶対です。
 小さくなっていく馬車を見送って、安心したのかふとスノーボールが。
「そう言えば、ブラン殿はどこに行かれてしまったのでしょう?」
 その一言で、わたしが現実に引き戻されました。
「……あっ!」
「……忘れてましたねぇ。隊長」
「……忘れていたのではありません。ただ少しこの件については後回しにしようとそう思っていただけであって……だからそのっ」
 ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべられると、どうしても言い訳をしたくなるわたしはとっさにそう言いつくろいましたが、途中で「そっかそっか〜」と話をはぐらかされた挙句。
「焦った隊長可愛い可愛いっ!」
 などと言い、頭をぐりぐりと撫でてきた。
 隊長のわたしにいったい何を!といつもなら叱るところなのですが、彼女に何を言っても意味はありません。
 ここは好きにさせておくほうがましです。
 わたしは大きくため息を吐き。
「……仕方がありません。ブランさんを見つけるまで皆さん休みはなしです。覚悟してくださいっ!」
「「「えええええええ〜っ!」」」
「文句を言わないっ!」
 叱責すると、一番私に忠義を尽くしてくれているスノーボールがべそをかいて。
「そんなぁー、ブランさんどこですかぁー!出てきてくださーい!」
 そんなこと言って、素直に出てきてくれれば。わたしもこんなに苦労することもないのですが。
 まさかブランさんがプレッツェル様の憧れの人だなんて。知らなければあんな人放っておいたものを。
 チラリと、プレッツェル様を見ると、あの人はわたしにではなく相変わらずミルクレープに向いていた。
 わたしを見てもくれない。
 いっそブランさんの話題も持ち上げて、会話を盛り上げようとも思ったが。それは止めておきました。きっと彼は今のブランさんの状態を聞いたらとても悲しむ。
「……ブランさーん!どこですかぁー!」
 ……でも、こうやってたまに急にいなくなるのは。本当に辞めてほしいです。
 そう強く思い。わたしはもう一二時は過ぎているので今日初めての、大きいため息を吐いた。

 まぁそのころ彼女たちが探し求めている人物は、自由奔放に町を歩き回って、知らず知らずに町の人たちと仲良くなっていたこのなんて。知ったらすくなくとも彼女激怒すると思うが。

Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.116 )
日時: 2013/01/13 00:04
名前: 緑野 柊 (ID: DnOynx61)


                *

 まだ、まだ。道のりは遠い。
 人形遣いマジョラムを載せた馬車は、砂利道を長いこと進み。気付けば夜も深まっていた。
 マジョラムを見張るように命じられた、若い兵士はついうとうととしながら窓から見える月を眺めていた。
 今日も、雲一つない。美しい星空だ。
 そう思ったいたその時だった。
 キキキーッ!
 馬車が急ブレーキをかけ、馬たちが驚いたように「ヒヒーン!」と鳴いた。
 年若い兵士も驚いて目を覚ます。
 敵襲かもしれない。しかし一体何の?
 そんな不安を抱えながら拳銃に手を伸ばす。 
 外で御者が驚いたような声がした。
「おいっ!貴様ら一体何者だっ!……なっ何をする……ぎゃああああああっ!」
 突然の悲鳴。
 若い兵士は何かが来る。襲ってくるという恐怖に必死に耐えた。
 だからこんな仕事引き受けたくなかったんだと、ぼやきながら。
 ガチャリ
 扉に手をかけた音。そして扉はゆっくりと開かれる。
 月明かりに照らされて、顔を見せたその敵は、若い兵士が想像していたような者ではなく。なんと、まだ年若い小さな少女だったのだ。
「……あれ?まだこんなところにもいた」
 少女は薄ら笑いを浮かべながらゆっくりと、兵士に近づいた。
 兵士はただ怯え、後ずさることしか出来なかった。
「ふふ……こんなに震えて、可愛い」
 少女は兵士の頬に手を触れ、そして優しく微笑む。
 あれ?もしかしてこの人は敵じゃないのかも。
 そう油断したのが過ちだった。
「でも、貴方。今邪魔だから」
 それは一瞬出来事だった。
 兵士の腹にはいつの間にか、鋭い刃が刺さっており、兵士は一体なにが起きたのかも理解できなかったまま倒れこみ、そして一生目覚めることはなかった。
 少女は微笑みながら兵士を通り越し、お目当ての者の前へと足を進める。
「マジョラム。迎えに来たよ。さぁ。私と一緒に行こう」
 お目当ての者、それはマジョラムだった。
 しかし記憶も言葉も分からないマジョラムは、ただ不思議そうに首を傾げただけだった。
 今度は少女が首を傾げる番だった。
「どうしたの?マジョラム?私だよ?」
「どうやら彼には記憶がないようですね」
「えぇっ!そうなの?じゃあ役に立たないじゃん」
 少女は目を大きく見開いて、影に言った。
 もう一つの影が、笑いながらこう言う。
「それじゃあソイツはいらないね。そもそもアタシたちの中にはこんな無能いらなかったのよ。ね?」
 少女はその言葉を受け取ると、ふむと考え込む。
「……そうだね。マジョラム一人いなくなったって別にどうでもいいやっ!」
 少女は満面の笑みを影に向けると、マジョラムに向き直り。
「これでマジョラムが余計なことを喋ったりしたら迷惑だし。じゃあね。マジョラム。……君、もういらないよ」
 冷笑を漏らし。それだけ告げると、彼女たちは馬車からさっさと離れていってしまった。
 しかしただ立ち去ったのではない。彼女は去り際に馬車もろとも燃やしてしまったのだ。
 それは、もう何も残らないほどに、高温の炎で馬車を焼き尽くす。
 少女とその影は、もう馬車などには目もくれず。ただもくもくと歩みを進める。
 ただ、己の望みを叶えるためだけに。

 馬車は結局灰になるほどまで、綺麗さっぱり燃えつくされたため。
 今宵起きた、この悲惨な出来事を知る者は、現在この世界では少女ら以外には誰もいない。

Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.117 )
日時: 2013/01/13 00:08
名前: 緑野 柊 (ID: DnOynx61)

             - お知らせ -

「緑野 柊の〜」を総合掲示板の方で見た方は分かっていらっしゃると思いですが、一応ここでもご報告を。

 そのⅠ。どるさんが挿絵を描いてくださることになりましたっ!感謝の思いで胸がいっぱいで張り裂けて死にそうですWW

 そのⅡ。ギルドカフェはこれから毎週土曜日か日曜に、一話ぶんを更新させていただきます。連載日みたいな感じですかね。

 私の勝手な都合のためこのような形にさせていただきますが、なにとぞよろしくお願いいたします。 
申し訳ありません。


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