コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜
- 日時: 2012/07/10 23:37
- 名前: 緑野 柊 ◆5Qaxc6DuBU (ID: DnOynx61)
ついについについに来ました!
どるさんとの合作!
このお話はどるさんのキャラクタ—設定を元に、私緑野が文章を作らせてもらってファンタジーギャグ(シリアスもたまに)のお話です!
今までの作品を見てきた方たちは少し驚くくらい作風が変わりましたが、みなさん楽しんでくださいね!あ、お話を。
それではどるさんと読者さんに感謝しながら、
このお話を書き進めていきたいと思います!
そして出来れば感想が欲しいです!待ってるよー!!
ここからギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜の世界に……
↓レッツゴー!!!(^O^)/
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- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.68 )
- 日時: 2012/10/30 21:47
- 名前: 緑野 柊 (ID: DnOynx61)
*
「ご連絡どーもありがとうございますぅ」
「いや。別に市民として当然のことをしたまでだ」
黒髪のまだ若い兵士は、ヘラリとした笑顔を浮かべて。そうお辞儀をした。
シフォンさんはそれを冷たくあしらう。
……というか。
「クレソンさん。まじめに仕事をやってください」
この人は一体何をやっているんだ。
ほとほと呆れる。
クレソンは小さく微笑むと。
「これは幹部殿。申し訳ございません」
などとふざけた調子で返してくる。
確かにクレソンさんのほうが年上だし敬語も使うけど。この人には本当にほとほと呆れる。
わたしは小さくため息を吐いて、額に触れる。
この人のせいなのかもしれないが、少し頭痛がした。
クレソンさんはまるで仮面のように、微笑を絶やさないようにしていたが、ふとそっぽを向いているシフォンに気が付くと、何か嫌がらせを思いついたようにキラリと瞳を輝かせた。……ようにわたしには思えた。
「シフォン。相変わらず君は冷たいねぇ」
「あぁ。まぁワタシはお前のことが嫌いだからな」
シフォンさんはちらりとこちらを見ようともせず、冷たくそう言い放った。
だがクレソンさんは傷ついた様子もなく、ふざけて笑ってみせる。
「またまた〜。そんなこと言って。俺のことが好きなくせに」
そう言ってさりげなくシフォンさんの肩に手をまわした。
その行為にシフォンさんはイラついたように。手をまわされていないほうの腕を思い切り振り上げて。クレソンさんの顔を思い切り殴った。
……正直、ものすごく痛そうだったが。クレソンさんは顔を抑えながらも、笑みを絶やさなかった。
ある意味尊敬する人だ……。
「それにしても。シフォンさんとは仲が良さげそうですが?」
「そうなんだよ、俺たち昔からの仲なの」
「どこが……」
シフォンさんは露骨に嫌そうな顔をして、顔をそむけた。
クレソンさんも「あははは」なんてふざけて笑っていたが、急に顔を引き締めて。
「それにしても、気になりますねぇ。あの少女。何者なんです?」
シフォンさんも深刻そうな表情を浮かべて、「分からない……」と小さく呟いた。
あれには正直わたしも驚いた。彼女は一体何者なのか?その疑問が私たちの間でずうっとぐるぐると回っていた。
ミルクレープはまだ目を覚まさない。苦しそうな表情で、小さく寝息を立てているだけだ。
あの平凡で、元気なミルクレープは内にいったい何を秘めているんだ?
クレソンさんは一つ咳払いをして。
「まぁ。とにかく監視をお願いします。今度暴走を始めれば。どんな手段を使っても。暴走を止めるように。頼むよ、シフォン」
「……あぁ」
シフォンさんは暗い顔をして、小さくうなずいた。
わたし達が乗るのを待って、動き出さない馬車の中で、プレッツェルだけが心配そうに、ミルクレープの手を握りしめていた。
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.69 )
- 日時: 2012/10/31 23:07
- 名前: 緑野 柊 (ID: DnOynx61)
昔。一人の少女は自分が皆とは違うすぐれた能力と、頭の良さを持っていたために、周りのもの。すべてを小馬鹿にしていた。
だから彼女の周りには生き物と呼べる存在が近寄らなかったという。
時間が残酷にも過ぎ、孤独に慣れてしまったその少女は、どんなにさみしい思いをして生きていたのだろうか……。
コントロア王国の宝物書。「ベルトの日記」から
第七魔法 必然
「ノエル」
「シフォンカ……」
少しの明かりだけが頼りの薄暗い部屋に、ノエルはいつも以上に深刻な表情をして、ワタシを見つめた。
「ミルハ?」
「眠ったよ……」
「そうカ……」
ノエルはそう静かに答えるとまた、机に視線を戻した。
ティラミスさんが気まずそうに、温かいお茶を載せたお盆の淵を握っていた。
ワタシもノエルの向かいの席へ腰を下ろす。
姿勢を正してノエルと向き合うと、その重い口をノエルは開いた。
「ミルが魔法を使ったのは……本当カ?」
やはり、ノエルもそのことは気になっていたんだな。
「本当だ。あんな状態を見ればわかるだろう」
ミルクレープの体は煤だらけ、少し火傷をしているところもあり、ボロボロの状態だった。
ノエルは深いため息を吐き。あり得ないというように首を力なく振った。
「僕はまだミルに魔法を教えてなんかいないんだゾ?」
「それだけ彼女に素質があったということだ」
「そんな簡単な問題ではなイ!」
ノエルは金切声をあげて、机を思い切り叩いた。
その音にワタシは少し動揺する。
ノエルは荒く息を吐き、血走った目でこちらを見ている。それだけ彼にとっては重要な問題なのだ。
いや、彼だけではない。それはワタシも一緒なのだ。
「そうだな。魔法を教えてもらわずに魔法を発動できたのは、歴史上あの人だけだ」
「それでは、ミルちゃんもあの人と同じ素質を持っていると?」
「その可能性が高いです」
「……じゃあミルちゃんは、あの人と敵対するかも知れないと?」
「それだけは嫌ダ」
ノエルが静かに否定した。
小さな体がフルフルと震えている。
ノエルは押さえつけていた恐怖が爆発するように、早口にこう言った。
「あの、フェニックスの魔法使いと恐れられた最強の魔法使いさえでも倒せなかった奴だぞ!ミルがもし死んでしまったらどうすル!」
「ノエル落ち着け。まだミルが奴と敵対するとは分からない」
「ボクはもう嫌なんだ!大切な人が死んでいくのはもう見たくないんダ!」
「ノエル……、ワタシもミルが死ぬのは嫌だよ」
ノエルはハッと我に返ったように目を大きく見開いた後、力なく項垂れた。
ノエル……まだあの人のことを。
あの人……そういえば!
「ノエル!そのミルの使った魔法というのがな、まるでフェンネルさんみたいに炎をまるで生き物のように扱うものだったんだ!」
「何!?」
ノエルもそれには驚くことしかできなかった。
ティラミスさんも驚いたように瞬きを繰り返した。
フェンネル。いやフェニックスの魔法使いは、炎と風魔法を得意とする、魔女。炎を風で煽り炎の威力を上げるという特殊な技を使うことでも有名だが、彼女だけが使える魔法。それはまるで炎を生き物のように操ることのできる魔法だ。炎はときに舞い、ときには大地を駆け抜けた。そのことからまるで鳳凰のようだといわれ、フェニックスの魔法使いと呼ばれるようになったのだ。
しかしなぜ彼女特有の魔法をミルが……?
これは誰が考えてもこう考えるしかなかった。
ミルクレープはフェンネルの血縁者、またはなんらかの関係があるのではないかと。
……なんなんだ。この奇妙な偶然は。
いや違うこれは偶然なんかではない。これは神が決めた、必然なのだろう。
「それにしても、嫌な必然だナ」
ノエルはひどく悲しそうにそう笑った。
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.70 )
- 日時: 2012/10/30 23:38
- 名前: 緑野 柊 (ID: DnOynx61)
*
「ミルクレープ」
誰かがそう私に話しかけた。
どこか昔聞いたことのある、優しい声だった。
でも思い出せない。誰だっけ?
それは私の記憶力が小さいから?
「誰……?」
「ミルクレープ。私の愛しのミルクレープ」
声は優しくも尚私に話しかけてくる。
すごく懐かしい。優しい声。今にも涙があふれそうなのに。誰なのか分からない。
「ねぇ、誰なの?」
話しかけてみるが応答はない。
声は優しくこう続けた。
「貴女だけは真っ当な、道を進んで。道を踏み外して畜生の道を歩まないで。お願いよ」
「え……それってどういうこと?」
「お願い。貴女だけは……生きて」
だんだんと声は小さくなり。しまいにはまったく聞き取れなくなるほど小さくなってしまった。
そして声が小さくなるのと同じように、私の視界もぼやけていった。
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.71 )
- 日時: 2012/10/31 23:06
- 名前: 緑野 柊 (ID: DnOynx61)
*
気が付くと、私は朝の光が差し込む、もう見慣れてしまった部屋で横になっていた。
まだ少しぼうっとする。
……ここは、先生の家?
起き上がろうとすると、驚いてしまうくらいに、全身に痛みが走った。
思わず小さく悲鳴を上げて、蹲る。
手のひらを見ると、ところどころに皮がむけていて、自分で見るのも痛々しかった。
私……どうしたんだっけ?
そんなことをぼんやりと考えていると。
「ミルちゃん?」
突然名前を呼ばれたもので、わたしはまだぼんやりとした視界の中で、名前を呼んだ主を探した。
「ミルちゃん!」
さっきよりも明るい声が響くと、それは突然私の胸の中に飛び込んできた。
「マフィンちゃん!?」
私も驚いて彼女の名前を叫んだ。
顔を上げたマフィンちゃんは目にいっぱい涙をためて。
「良かった〜!良かった〜!ミルちゃんが生きていて。もう五日も寝ているんだもの、本当に死んでしまったのかと心配でたまらなかったんですよ!」
え……。今なんて?
「ちょっと待って!今五日って言った?」
「はい。五日。わたし心配で心配でもう……って聞いてますか?」
そんな五日も眠ってしまっているなんて。これはもうマフィンちゃんの話をゆっくり聞いている場合ではない。
……酷いとは思うけど。
でも五日寝てたってことはもしかしてギルドも五日休んで?シフォンさんに迷惑をかけて?怒られるみたいな?
そんなのは嫌だぁ!
私が頭を抱えて、突然蹲ると、マフィンちゃんは心配そうに声をかけてきてくれた。いやそういう痛みじゃないのよ、心の痛みなんだけど。
「ミルッ!」
また名前を呼ばれて顔を上げると、そこには心底安心したような顔つきのプレッツェル。
「プレッツェル君……」
と名前を呼んだまではいいものの、倒れる直前に抱きしめられたことが不意に頭の中に浮かんで、私は一気に顔を見られないほど恥ずかしくなった。
「ミル?」
プレッツェルがそんな私を不思議に思ったのかさらに近づいてくる。
「プッ!プレッツェル君!」
私は反射的に手を前に出す。
プレッツェルはきょとんとした顔をして。
「何?」
まあそう思うのは当然だろう。
「あっあのっ!」
何かを言おうとすればあの時の光景がまるで嫌がらせのように浮かんだ。
「あの時は……ありがとう」
とっさに出た言葉はさらに墓穴を掘ってしまうような内容だったけど、それでプレッツェルはどうして私が動揺しているのかを悟ってようで。
「あぁ……あれか」
プレッツェルも少し照れくさそうに、頬をかいた。
「あの時は俺も必死だったからな。随分大胆なことしたよな……ごめん」
「ううん。おかげで助かったよ。本当にありがとう……」
「プレッツェルさん何をしたんです?」
「なっ、なんでもねぇよ!」
プレッツェルが少し頬を赤くしてそう言ったものだから、マフィンちゃんは嫌な誤解をしてしまって。
「まさか……ミルちゃんに破廉恥なことでも……?」
マフィンちゃんは汚物でも見るような顔をしてそう冷たく言い放った。
「してないって!それはない!」
プレッツェルはぶんぶんと勢いよく首を振り、必死に否定をする。
「ミルっ起きたのカ?」
ちょうどその時、ノエルが大急ぎで部屋に駆け込んできた。
その後ろにはティラミスさんも一緒だ。
「先生……」
ノエルは心配に顔を強張らせて、ゆっくり私に近づいてくる。
ノエル先生はマフィンちゃんに抱きかかえてもらって、私と目線を合わせた。
私はその行動にティラミスさんの堪忍袋の緒が切れないかハラハラしたのだが、その時ばかりはさすがにティラミスさんも剣を抜くことはなかった。
先生はそっと私の頬に触れて。震える唇を開きこう言った。
「馬鹿かお前はっ!まだ魔法そのものをよく理解できていないのに、魔法を発動するなど馬鹿な真似を……!」
「せんせぇ!止めてください!今回の件はミルには何の罪もありません!」
ティラミスさんが慌てて先生を止めようとするが、先生は小さな声でこう続けた。
「どんなにボクが……心配したと思ってるんダ」
「先生……」
私は先生の小さな手に自分の手を重ねる。
「……ありがとう。ごめんなさい」
先生の手は、小さかったけど。その代りとても温かかった。
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.72 )
- 日時: 2012/10/31 22:53
- 名前: 緑野 柊 (ID: DnOynx61)
*
「具合はどうだ?」
あれから二日後、毎日毎日プレッツェルは私のお見舞いに来てくれる。
まぁ相当暇ともとれるんだけど。
「うん。良くなってきたけど、あと五日程度は絶対安静だって」
「そっか……良かった」
私の体にはまだ火傷がところどころに残っている。
体はまだ思うようには動かないが、元気はまぁまぁ出てきている。
「そういえばシフォンさんは?」
この前も見舞いには来てくれなかったし、実をいうとここの所シフォンさんには会っていないのだ。
プレッツェルは苦笑を浮かべて。
「前に一回話したろ?ミルが気絶しちゃって、シフォンさんがそのまま店に帰った時、マフィンちゃんが仲良さげに男の人と会話しててさ、自分のお店めちゃくちゃにしちゃったって話」
「うん。シフォンさんも熱くなると周りのことが見えなくなるタイプだね」
プレッツェルは「そうだな」と肩を竦める。
「それでその男の人、マカロンさんっていうんだけど、ちょっと厳つそうに見えるけど意外と良い人でさ。あの店で働くことになったんだって」
「えぇ!本当?じゃあお店のメニューも増えるかな?」
「そうだな、前まではシェフのおすすめメニューしかなかったからな」
プレッツェルは今にも悪口を言いたげに、そう言った。
私は笑って「そうだね」と答えた。
「これはマフィンちゃんから聞いた話なんだけど、その人シフォンさんにここで働いてやってもいいが?なんて大口叩いたらしいんだけど、そのあとシフォンさんがマフィンちゃんの姉だって知った途端、お姉…あ、シフォンさん、ここで働かせてください!なんて土下座したんだってよ」
プレッツェルはご丁寧にもそのマカロンという男性の区長まで真似してこと細やかにその時の状態を私に教えてくれた。
プレッツェルは毎回毎回面白い話を持ってきてくれて楽しい。
「ミル。ちょっといいカ?」
ノックの音がして、先生の顔がひょこりと扉から覗いた。
「うん。いいよ」
「じゃあ、俺は帰るな」
プレッツェルが気を遣ってか、私が寝そべるベットの近くに置いてある椅子から腰上げた。
「ありがとう。また来てね」
私が微笑むと、プレッツェルも微笑みを返してくれて、小さく手を振ると部屋から出て行った。
しばらくして窓からお店の方向に向かうプレッツェルの後姿が見えると、私は先生に向き直った。
「それで、なんですか先生?」
「僕もいろいろと考えタ。まだお前は魔法の恐ろしさを理解してもいないし、正直まだ教えるのは早いとは思ウ。だけどその強大な魔力をコントロールしなくてはならなイ。今度こそお前の命が尽きるかもしれないからナ。それでダ……」
ノエルはそこでいったん言葉を切って、小さく息を吸った。
私は期待に胸をふくらます。
「お前に本格的に魔法を教えることになっタ」
……本当に?
私は今にも大声で叫びだしたい気持ちを抑えて、代わりに大きく頷いた。
「はいっ!」
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