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ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜
日時: 2012/07/10 23:37
名前: 緑野 柊  ◆5Qaxc6DuBU (ID: DnOynx61)

 ついについについに来ました! 

 どるさんとの合作!

 このお話はどるさんのキャラクタ—設定を元に、私緑野が文章を作らせてもらってファンタジーギャグ(シリアスもたまに)のお話です!


 今までの作品を見てきた方たちは少し驚くくらい作風が変わりましたが、みなさん楽しんでくださいね!あ、お話を。


 それではどるさんと読者さんに感謝しながら、

 このお話を書き進めていきたいと思います!
 
 そして出来れば感想が欲しいです!待ってるよー!!

  ここからギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜の世界に……
 ↓レッツゴー!!!(^O^)/

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Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.153 )
日時: 2013/04/05 21:37
名前: 緑野 柊 (ID: UgGJOVu5)


                *

 それからあれやこれと私の思いで話をした。
 いつ頃までおねしょをしていたとか。いつごろまでお化けが怖くて一人じゃ夜。二階に上がれなかったとか。そんな恥ずかしいことだったけど。今は酷く懐かしいような気がして。そんな昔話でも大人しく耳を傾けていた。
「そう。それであの時貴女が突然どこにもいなくなってしまって。皆で探し回ったのよ……」
 それは私が六歳ごろの時。皆で収穫祭をしていた時に。私がふらりとどこかへ行ってしまった時の思い出話だった。
「そんなこともあったけ」
 嘘。本当は覚えてる。なんでどこかへ行こうとしたのかは覚えてないけど。
「あったのよ。それでも結局ミルクレープは見つからなくて。帰ってきたら貴女がずっと前からここにいましぁって感じで。さも当然にそこにいたからびっくりしたわ」
「えっ!?そうだっけ……」
 あれ。おかしいな。それは覚えてない。
「そうよ?覚えてないの?あの時どこに行ってたのって聞いたら。空があまりにも綺麗だったから。追いかけちゃったの。ごめんなさい。なんて大人びた解答しちゃって」
「嘘。そんなの覚えてないよ?」
 そもそもそんな詩人みたいな解答を、私がするはずもない。恥ずかしくて出来ないもん。
「うーん……でも確かにそうね。ミルクレープらしくなかった。あの時の貴女」
 お婆ちゃんも今更ながら不思議に思ったのか。首を傾げる。
 でも。あれ?私はあの時どうやって帰ったんだっけ?
 ドクン。
 心臓が嫌に跳ねる。
 なんだろう。何かあったはずなのに。思い出せない。
 何かを追いかけてたのかもしれない。でもそれは空?いいや、違うあれは……確か……。
 でもその先を思い出そうとしても。うまく思い出せない。記憶があいまいとかじゃなくて。ヴェールがかかってしまっているようで、その先が思い出せないんだ。
 額が妙に熱く疼く。
 私は無意識のうちに額に手をやって、眉をひそめていた。
 
 それからもしばらく私の昔話をした。
 でもたまに私にとってはまったく覚えのない話まであったので。とても驚いた。
 たとえば。階段の一番上から落下したことがあるのだけど、意外とあっさりそのまま起き上がって外に出て遊びに行ってしまったとか。
 私には階段から滑り落ちた記憶があっても、その後のことだけが綺麗さっぱり記憶の中から剥がれ落ちてしまっているのだ。
 他にも、知らない人に連れて行かれそうになったけど、見事な足技を食らわせて逃げて来たとか。海に行ったとき溺れかけたけど、なんとか泳いで無事だったとか。
 それは幼いころから最近のことまで。
 おかしい。そこまでインパクトのあることなら今でも多少は覚えているような気がするのに。
 まったくもって思い出せない。
 頭がズキズキと痛む。
 なんなの……コレ?
 額が、まるで思い出すなとでもいうように、記憶のない話を聞かされるたびに、激しく痛んだ。
「……っ?」
 頭痛の理由が理解できなくて不思議に思っている私を、お婆ちゃんがただじっと、見つめていた。
         まるでこの頭痛の意味を知っているかのように。

Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.154 )
日時: 2013/04/05 21:38
名前: 緑野 柊 (ID: UgGJOVu5)


                *

「さて、無駄話はこれくらいにして。本題に入りましょうか」
 お婆ちゃんがティーカップをテーブルの上に置くと、突然そう口を開いた。
「えっ!?」
 突然のことで私は焦ってしまう。
「ミルクレープ。貴女はこんな話を聞きにここまで来たわけじゃないでしょ?」
 ハッとした。
 ……さすがお婆ちゃん。何でもお見通しってわけね。
 私は一人、ふっと皮肉気に笑う。
「うん。そうなんだけど。その……なんだか話しにくいことでね」
「何?彼氏でもできたの?」
「んな訳ないでしょっ!!」
「冗談よ」
 お婆ちゃんは小さく笑うとまたティーカップに口につける。
 この人は……!この年になって、まだ人をからかうか!
 大きなため息を吐いて、お婆ちゃんを睨みあげる。
「……まぁいいや。私が聞きたいことっていうのはね……その…………私のね…………お母さんのことなの」
 お婆ちゃんが微かに目を見開いたような気がした。
 暖炉の上に飾ってある、古い家族写真が電気の光に当たって不思議に煌めく。
 それは一分だったのかそれ以上だったのか。重く意地らしい沈黙が下りた。
 私の心臓は緊張と期待で跳ね上がり。今にも止まってしまいそうなほど心拍数は上昇していた。
 その間ずっと耳元では、時計の針が時を刻む音だけが響いていた。
 かちゃんと、お婆ちゃんがカップをお皿の上に置いた音がする。
 そしてその音が合図だったというように。お婆ちゃんは静かに口を開いたのだ。
「……どうして。今更それを?」
「……べつに。ちょっと気になってただけだよ」
 お婆ちゃんにあの話は伏せておくことにした。街中でお母さんにそっくりな操り人形を見たなんて話しても。それは私がお母さんの過去を知りたがっている理由とは、思い難いだろう。
 それに人形遣いや最強の魔法使いと呼ばれるあのお方の話なんて、こんな田舎で暮らしている一般人。しかも老人に誰が出来るだろうか。
「……ちょっと気になっただけでここまで来たの?」
 お婆ちゃんはさすがに疑うように、私の目を見つめてきた。
「うん」
 その目を逸らすことなく私も見返して、力強く頷いた。
 じっと、お婆ちゃんが私の瞳を見てくる。まるでその中の何かを覗き見ているかのように。
 やがて深いため息を吐き出して。
「……分かったわ」
 そうしてお婆ちゃんは、静かに私の母の話を、ゆっくりと。まるでその時の情景を思い出すかのように語りだした。

Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.155 )
日時: 2013/04/05 22:15
名前: 緑野 柊 (ID: UgGJOVu5)


               *

 私の母。そしてお婆ちゃんの娘であったフェンネルは、幼いころから魔導書や、魔法陣の研究書などを好み。そのまま、流れるように魔法使いになった。
 首都グランマイルにある魔法学校に通い、上級魔法使いの称号を与えてもらった。
 本当は魔法使いになることには、反対だったんだけどね。とお婆ちゃんは悲しそうに笑った。
 そして上級魔法使いとして城に仕えながらも、教師として魔法学校に母は残り続けた。
フェニックスの魔法使いと呼ばれ、敬まれた母は、主に炎と風系の魔法を生徒たちに教えていたらしい。
そして何よりも驚いたことは、その教え子の中にノエル先生がいたことだった。
 先生とお母さんが知り合いだった。これは後で先生に詳しく聞かなくちゃな。
 その時はそうとだけ思って、お婆ちゃんの話にまた耳を傾けた。
 お母さんが教師として魔法学校に勤めるようになって程なくして、お母さんは私のお父さんと会った。
 母と一緒で父も魔法学校の教師だった。
 お母さんはまるで運命かというように、すぐにお父さんと付き合い始め。当たり前のように結婚。すぐに私が生まれてきたという訳だ。
二人は私のことを本当に大切に思い。大事に育てていたのだという。
 本当に子どもの自慢ばっかりをする、親ばか夫婦だったと。お婆ちゃんが笑いながら言うから。なんだかそれもそれで恥ずかしいくなってきてしまった。
でもまぁ。それならどうして私を置いて出て行ってしまったのかと、お父さんに言いたいことは山ほどあるのだけど。
 私も幼いころは母と父と一緒にグランマイルで暮らしていたらしい。
 私にはそんな記憶まったくもってないのだけど。
「そうして貴女が三歳になった頃かしらね」
 お婆ちゃんは急に深刻そうな顔になって、ポツリと呟いた。
「首都で大きな戦争が起きたの」
「首都でっ!?」
 信じられなかった。あんなに賑わっていて、そんな暗い過去など見る影もなかったから。
「規模こそは小さかったものの。大量の死傷者が出たわ」
 言葉を失う。
 私が幼いころに首都でそんなことがあったとは。
 小さかったとはいえ、何か些細なことでも覚えていることはないのか?
 自分の記憶を思い起こしてみる。でもそんなこと私の記憶の中にはこれっぽっちも残っていなかった。
「それだけじゃない。その頃。丁度各地で戦争が頻発してね。多くの子どもが両親を失ったわ」
 ……戦争孤児。
「……だから」
 お婆ちゃんはそこで言葉を切り、遠い目をする。
「フェンネルがミルクレープを抱えて尋ねてきたときは驚いたわ」
「お母さんが……私を?」
「えぇ」

Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.156 )
日時: 2013/04/05 22:16
名前: 緑野 柊 (ID: UgGJOVu5)


 コンコン。
 夜遅くに、もう時計の針は0時を指していた。それなのにこんな時間にノックは続く。
 コンコン。コンコン。コンコンコンコンッ。
 だんだん強くなっていくそのノックに、少し恐怖もあったけれど、その扉の向こうから伝わってくる焦りに、私はただ事ではないと感じて、慎重に扉を開けたの。
 あの時は……本当に驚いたわ。だって扉の向こうにいたのは、今城下町にいる筈のフェンネルと貴女だったんだもの。
「どうしたのっこんな夜遅くに!?」
 驚いて声を出した。
 貴女のお母さんはあちこち擦り傷だらけで、服もボロボロでね。命からがら逃げてきましたって感じで。
 本当に驚いた。
「ごめんなさいお母さん。寝てた?」
「私のことよりも今は貴女のことでしょう!」
 相変わらず笑顔で、フェンネルは何もなかったようにそう言った。
 私は貴女たちのことが心配でたまらなくてね、急いで中に入ってもらおうとしたのだけど。
 あの子は静かに首を振って、深々と頭を下げてきたの。
 驚いたわ。いきなりなんだって。
「お母さん。ごめんなさい。私はすぐに帰らなくちゃいけないの」
「帰るって……グランマイルへっ!?そんなの自殺行為よっ!それに貴女だってそこから逃げるためにこんなにボロボロになってまでこんな田舎なんかに……」
 私は、その先の言葉をつづけられなかった。
 あの子の瞳が、決意の色に燃えていたの。
 それを見た時、あぁ、この子は本気なんだなって思った。
 母親だもの。分かるわよ。
 あの子のあの眼は、絶対になにがなんでもこれは譲るもんかって、お隣の男の子におもちゃを渡そうとしなかったときと同じ目だった。
「お母さん。この子を……ミルクレープをよろしくお願いします」
「貴女は……どうしても戻る気なの?」
 愛しい孫娘を、私はすぐに抱きかかえる気になれなかった。
 だってこの子を受けっとてしまえば、フェンネルはいなくなってしまう。この場所から自ら地獄の業火に身を投げ出してしまう。
「やらなくちゃいけないことがあるの」
「……どうしても?」
「いいえ」と、首を振ってほしかった。
 一緒にここでひっそりと、戦争が収まるまで暮らしましょうと言ってもらいたかった。
 失いたくない。離れたくない。最愛の娘を。
「えぇ。私があの子を止めないと。この戦いは終わらないから」
 目を細めて、フェンネルは遠い空を見上げた。
 ……あの子?
 この子にはこの世界がどんなふうに見えているのだろう。
 自ら命を投げ出そうとして、死を覚悟した貴女には、この世界はどう映っているの?
「……そう。行くのね」
「うん」
 あの子は、そう言って強く頷いた。
「そう……その意見は、どうしても捻じ曲げないつもりなのね」
「ごめんね。お母さん」
 フェンネルは苦笑をして、ミルクレープをずいと近づけてきた。
 震える手で貴女を受け取った。
 ずしりと、意外と重い命の重み。
 最愛の娘から生まれた大切な命。
 フェンネルと彼が愛し合っていたという証。
 ぎゅっと力強く抱きしめる。
「ミルクレープ……」
 フェンネルはまだ幼い貴女の頬を優しく撫でると、愛しそうにその名前を呼んだ。
「ずっと、愛しているわ」
 ……私は今にも泣きだしそうだった。
「お母さんも、死んでしまったお父さんも。愛してる。……ありがとう」
 いつも開け閉めしていた扉が、その時だけはやけに重たく感じた。
「……フェンネル」
 あの子の名前を呼ぶ。
 でも、もうあの子は帰ってこない。あの子はもう行ってしまった。
 それでも「やっぱり行くのはやーめた」なんてふざけてでもいいから、帰ってきてほしかった。
「……フェンネル」
 傍にいて欲しかった。
「フェンネルーーーーーーーーーーっっっっ!!!!」
 もういないあの子の名前を叫んだ。声の限りに。
 腕の中にはあの子の、最愛の娘。貴女がいた。
 何も知らずに、唇に薄ら笑いを浮かべて。とても気持ちよさそうに寝息を立てていた。

Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.157 )
日時: 2013/04/05 22:16
名前: 緑野 柊 (ID: UgGJOVu5)


               *

「……それが私が見た、貴女のお母さんの最後よ」
 ……知らなかった。そんなことがあったなんて。
 お婆ちゃんはとても辛かっただろう。最愛の娘を手放すような真似をしなくてはいけなくて。
 お母さんのおかげでこの世界が今存続しているとしていても、今この世界で生きていて欲しかった。
 傍にいて、「お母さん」って呼ばせて欲しかった。
「……知らなかったよ。全然そんなこと」
「今初めて話したからね」
「……どうして?」
 尋ねると、お婆ちゃんは、きっぱりと、そう確信しているようにこう言った。
「私は、まだあの子が死んだなんて。信じてないからね。だから話さなかった。戦争の話も貴女のお母さんの話も」
 胸が苦しい。
 お婆ちゃんはまだ信じているんだ。お母さんが、まだこの世界のどこかで生きていることを。
 でもね。私見ちゃったんだよ。お母さんが、人形になって襲いかかってきたの。
 紛れもない娘の私をね。
 あれはお母さんじゃなかったよ。別人だったよ。
 やっぱりお母さんは……。
 お母さんがこの世界に存命している可能性は減ってしまった。
 だけど。この話を聞いて分かったことがある。
 私のお母さんは、優しくて強い人だ。
 人を惨殺するようなバケモノじゃない。
 生徒を見守り、そして国を守ろうとした。強くて優しい人だ。
 自慢の……母だ。
「お母さんは……私のこと、愛してた?」
「最後の最後まで。勿論今だって、愛しているわ。それにね。愛してたじゃないわ。愛してるのよ。今でも」
「……そっか」
 嬉しい。記憶の中で薄れてきてしまっている母の愛情を、初めて強く感じた瞬間だった。
 いつの間にか、瞳から涙が溢れてくる。
 お婆ちゃんが無言で寄ってきて、強く抱きしめてくれた。
「おかぁ…………おかぁさん……お母さんっっっっ!!!!」
 お婆ちゃんの背中に手を回して、声を上げて泣いた。
「うっっ……うっあっ……うああああああああああああああああああんっっ!!!」


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