コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜
日時: 2012/07/10 23:37
名前: 緑野 柊  ◆5Qaxc6DuBU (ID: DnOynx61)

 ついについについに来ました! 

 どるさんとの合作!

 このお話はどるさんのキャラクタ—設定を元に、私緑野が文章を作らせてもらってファンタジーギャグ(シリアスもたまに)のお話です!


 今までの作品を見てきた方たちは少し驚くくらい作風が変わりましたが、みなさん楽しんでくださいね!あ、お話を。


 それではどるさんと読者さんに感謝しながら、

 このお話を書き進めていきたいと思います!
 
 そして出来れば感想が欲しいです!待ってるよー!!

  ここからギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜の世界に……
 ↓レッツゴー!!!(^O^)/

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Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.133 )
日時: 2013/01/27 22:07
名前: 緑野 柊 (ID: DnOynx61)

                *

 確かにあの一瞬、ミルが「お母さん」と呟いたような気がした。
 しかしそう疑問に思ったのもつかの間、ミルは勢いよくその人形に吹き飛ばされ、壁に思い切り背中を打った。
「かはっ……!」
 苦しそうに顔を歪める。
「ミルッ!」
 急いで駆け寄ろうと、身をひるがえして、オレは動きを止めた。
「……何してんですか、シフォンさん!そんなぼおっとして!戦わないとっ!ミルがっ!」
 シフォンさんは顔面蒼白でわなわなと唇を震わせている。
 力なく両手をぶらりと垂れ下げる。
 ずるりと握られた拳銃が手から零れ落ちて、地面にカシャンと音を立てて落ちた。
「……シフォンさん?」
 おかしい、こんなのいつものシフォンさんじゃない。
 シフォンさんは信じられないと、瞬きを繰り返して震える声でこう言ったのだ。
「フェンネルさん……」と。
 ……フェンネル?それっていったい?誰……?
「シフォンさん?」
 と呼びかけようと口を開きかけると、シフォンさんは急に我に返ったように目を大きく見開き。
「しまった……皆伏せろっ!」
「お姉ちゃん何が起きたんですか……あっ!?」
「はっ!?何言って……」
 言っている意味が分からなくて、尋ね返そうとしたその時だった。
 シブレットがにんまりと勝ち誇った笑みを浮かべ。
「死ね」
 その瞬間、視界が赤に染まった。
 何が起きたのか分からなくて、いきなり体を貫いた灼熱の温度に、意識を朦朧とさせながら、霞む視界の中でシブレットが気味悪く笑っていた。……ような気がした。

Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.134 )
日時: 2013/02/03 13:49
名前: 緑野 柊 (ID: UgGJOVu5)

        第十五魔法   ずっと『私』じゃ嫌だから。

 なんだろう。体がすごく痛い。
 少し動かそうとするだけで、貫かれるような苦痛が走る。
 それにものすごく体が熱い。このまま溶けてしまいそう。
 朦朧とする意識の中で誰かが言った。
『……大丈夫かい?』
 とても心配してくれている声色で、声はそう私に尋ねかけた。
(私は平気……でも皆は?)
『皆重傷を負ってはいるけど、生きているよ。大丈夫』
 優しく笑うような声が聞こえた。
(そうだ私……あのお母さんに似てるあの人形に吹き飛ばされて……それから。どうなったのかな……?)
 駄目だ。飛び飛びにしか思い出せない。
 何が起きたのか、ぼんやりとしか理解出来なかったけど、プレッツェル君たちに命に関わる何か大変な出来事が襲いかかったのは分かった。
(じゃあ早く助けに行かなくちゃ……)
『待ってよ、君は今肋骨の二、三本は折れてる重症だよ?そんな怪我で戦ってどうするの?次こそ死んじゃうかもしれないよ?』
 声は焦ったように、私を引きとめた。
 確かにお腹のあたりがすごく痛いし、起き上がれない状態なのもよく分かってる。
 でもそれでも無理をしてでも、私はプレッツェル君たちを助けたい。
 その思いが強かった。
(死んだって構わない……私はプレッツェル君たちを助けたい。もう誰も死なせたくないっ!)
『本当にいいの?』
(いいのっ!もうほっておいて!早くしないと手遅れになるかもしれないっ!だからっ)
 初めて声は私の言葉を遮って、こう言った。
『でも僕は、今君を失う訳にはいかないんだ。だから君はここで眠っててよ……』
(眠ってって……どうゆうこと?)
 声は答えない。
 なんで、答えてよっ……。
『あとは僕に任せて……』
 そう声が囁いた瞬間。又だ、カッと強い光が目に入ってきて、私は思わず目を瞑る。
 —何っ!?
 視界がぐわんぐわんと歪む。なんだか自分の中にずるりと何か別の物体が入ってきたようで気持ちが悪かった。
 一体……何が?
 一瞬の出来事に混乱する。
 しかし何が起きたのかを確認する暇もなく、結局そのまま私は眠るように意識を手放してしまったのだった。

Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.135 )
日時: 2013/02/03 13:50
名前: 緑野 柊 (ID: UgGJOVu5)

 
                *

 シブレットの持つ人形の中でこれが一番最強の人形だった。
 風と炎の魔法を同時に発動させることで、威力の強い炎系の魔法を自分の周りを囲むようにして発動させる。
大炎円ブレイズサークル』だ。
 これは、コイツが得意としていた上級魔法の一つだ。
 自分を囲むようにして、地面に焦げ跡がついている。
 それを満足そうに見渡すと、シブレットは思わず声を上げて笑った。
「相変わらずすごいねぇっ!アンタの魔法はっ!」
 自慢げに人形の目の位置が同じになるように掲げると、ニヤニヤと隠しもせず口をだらんだらんに緩める。
 人形は少し悲しそうに、ぶらりと体を揺らした。
 しかしシブレットはそんなことを気にする様子もなく。 改めて周りの光景を満足そうに眺めた。
 皆、皆。地面にうつ伏せになって倒れて、苦痛に顔をゆがませる。
 今、まさに尊い命がこの世界から消えようとしている。
 生と死—。これこそが戦い、いや世界の掟と言ってと過言ではない。
 勝者は、生き。敗者は死ぬ。
 これこそがあのお方が教えてくれた世界の理。
 あぁ、なんと素晴らしいことだろう。
 シブレットはそう強く思った。そして今この場で生きているアタシこそが勝者なのだと確信し、ニッとほくそ笑んだ。
 シブレットはこの瞬間がたまらなく好きだった。
 さっきまで互いに傷つけあっていた者の、生き途絶える瞬間。
 それは同時に自分がまだ生きる資格があるからこそ、神が留まらせてくれた命。
 いや、シブレットが信じる者はあのお方ただ一人。
 この命はあのお方が助けて下さったのに違いないのだ。
 本当はそんなことない筈なのだが、何しろシブレットという女は、あのお方に溺愛しきっているのだ。
 そう考える思考しか彼女にはないのだろう。
 アタシはまだ期待されているのだと勘違い(?)したシブレットは、嬉しそうに頬に手を添えて身をよじらせた。
 そんな幸福感に浸っていた、その時だった。
 カサリ。
 するはずもない物音がした。
 シブレットは素早く顔を緊張に引き締める。
「誰—?」
 サッと物音のした方へ振り向いた。
 そして彼女は一瞬驚いたように、大きく目を見開いた。
 しかしそれは仕方のないことだ。
 何せ彼女は、この場で生きている者は、自分だけなのだと……そう確信していたのだから。
「アンタ……」
 呟いてから悔しそうに顔を歪ませる。
「そっか……生きてたんだ。ねぇどうして?死んだはずじゃないの?」
 ミルクレープは答えない。
 前髪が顔にかかっていて、表情は良く見えなかった。
 苛立ったシブレットは神経質に金切声をあげてもう一度尋ねる。
「ねぇ……どうしてっ!?」
 クッ……。
 低めの喉の奥で抑えたような含み笑いが、シブレットの耳に届いた。
 シブレットは不機嫌そうに片眉をピクリと跳ね上げる。
「君はこの場にいる全員が死んでいると思っていたようだけど。残念ながらこの子たちは全員、生きているよ」
 言いながら、ミルクレープが顔をあげた。
 ネコのように細そめられた目。まるで少年のような明るい声。
 さきほどとは明らかに違うその雰囲気にシブレットは困惑する。
 それにミルクレープは先ほどシブレットのことを『君』と言った。
 ミルクレープは『貴女』と呼んでいたような気がしたのだが……?
 そう不思議に思っていると、ミルクレープは自分の脇腹を抑えて、辛そうに唇をへの字に曲げた。
「イッタ……こりゃあ肋骨のに三本は確実に折れてるね。それに左肩もすっごく痛いし……本当にミルクレープを起こさなくてよかった」
 ふっと笑みをこぼし、大切そうに自分の左腕を摩る。
「この子をあのまま行かせていたら、絶対に無理するのは一目瞭然だったからね……本当に良かった」
「ちょっと、さっきから何を一人でぶつぶつ言ってるのよ?」
 シブレットは訳が分からないとさらに眉間に皺を寄せる。
 ミルクレープは苦笑をすると、ゆっくりとシブレットの瞳を見つめた。
 その瞳が、一瞬悲しみの色に染まったような気がした。
「まだあの子は……そんなことをしてるんだね」
「……あの子?ホントアンタ何言ってんの?頭おかしくなっちゃった?」
「うーん……それはないかな?僕はいたって平気だよ?」
「僕って言ってる時点で。もう終わってると思うけど?」
 シブレットは嘲り憐れむように、鼻で笑った。
 しかしミルクレープは愛想のいい笑みを浮かべて。
「そうかい?」
 肩を竦めて、おどけたフリをした。
 コイツ……ホント一体どうしちゃったの?

Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.136 )
日時: 2013/02/03 13:51
名前: 緑野 柊 (ID: UgGJOVu5)

 シブレットはそう疑問に思い、ミルクレープに対して徐々に不信感を募らせていった。
「まぁ、ホントにアンタが言ってることが正しいんだったら、アタシはまた貴女達を殺すだけだけどね」
 シブレットは賭けをしてみることにした。
 業と脅すようなことを口走って、これでミルクレープの反応が、怯えたり、青ざめだしたりしたら、精神的におかしくなってしまったのだと分かるからだ。
 しかしミルクレープの反応はシブレットが考えていたどれとも違うものであった。
 頭をぽりぽりと掻き始めると。
「困ったなぁ」
 目を細めて、本当に困ったように「えへへ……」と笑う。
 そして後頭部を掻いていた手を放すと、まるで人が変わったかのように目が鋭くなった。
 まるで空腹のネコが、久々に獲物を見つけたような、ギラギラと怪しく光る瞳。
「今ミルクレープと、この子達を……失う訳にはいかないんだ」
 得体の知らない恐怖感に、生まれて初めて。シブレットは他人を恐ろしいと思った。
 なんなのだろう、この言いようもない。緊張感は……!?
 シブレットは何をしたって。この人には勝てる気がしなかった。そんな人に初めて会ったのだ。
 初めての体感と、脂汗がじっとりと滲む感覚に、ドクンドクンと、緊張に胸を押し潰れそうになりながら、シブレットはどこかでワクワクと何が起きるのかと楽しみにしていた。
「へぇ……それじゃあどうするの?」
 シブレットは額に滲む汗をそのままに、余裕に見えるように無理やりに嘲笑を浮かべた。
「君には悪いけど、ちょっとだけ寝ててもらうよ……」
 ミルクレープがそう言って姿勢を低くした。その一瞬だった。
 気が付くと。構えていたはずの人形二体が。どこにもなくなっていたのだ。
 あのお気に入りの。一番強い人形も。
 カラカラ……。
 背後で聞きなれた音がする。
 まさか……。
 不安で心を一杯にしながら、これこそまるで人形のように首をキリキリと動かして振り向いた。
「へぇー……これが君の人形か……どれも悲しそうな顔をしているね」
 ミルクレープは人形をじっと見つめた後、ふっと寂しそうな笑みを漏らした。
 だが、シブレットの頭の中は混乱で一杯で、そんな言葉さへ気にならない。
「アンタ……今何したの?」
 余裕ぶろうと精一杯笑おうとするが、その顔は焦りと緊張感が滲み出ていた。
 ミルクレープは「ん?」というような顔をして、小首をかしげる。
 その後に今のシブレットにとっては腹が立って仕方がない、無邪気な可愛い顔で笑った。
「別に……君に寝ててもらおうと思ったんだけど、避けられちゃったからついでに君の人形を拝借させてもらったよ。でもなんで避けられちゃったんだろ?もしかして僕の的が外れちゃったのかな……?」
 ついでに……。
 シブレットは驚愕した。
 この業火の人形遣いのアタシの人形をついでに奪っていくなんて……。
 シブレットは爪が食い込むくらいに、強く手を握った。
 こんなにもやすやすと人形を奪われたことが悔しくて、そしてとても衝撃的だった。
「こんのっ……!」
 怒りに震える声で、シブレットはそう吐き捨てた。
 ミルクレープは興味津々にシブレットの人形を上から下までじっくりと見つめ終わると、不思議そうに首を傾げた。
 その態度にいよいよ堪忍袋が切れたシブレットは冷静さを無くし。
「返せっ!!」
 なんの計画もなしにミルクレープに突っ込んでいった。
 だいたい彼女は、人形遣いでもないし、まだなりたてほやほやの新人魔法使いだ。それに比べて幼いころから鍛えられ、あのお方から一目置かれているアタシが負ける筈がないと、そう確信したから。
 しかしその予想は大いに外れることになる。
 気が付くと、シブレットは床に倒れて空を仰いでいた。

Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.137 )
日時: 2013/02/03 13:53
名前: 緑野 柊 (ID: UgGJOVu5)

 背中に鈍い痛みが走る。
 一体何が—!?
「ごめんね。これを返すことは出来ないよ。だって君、僕がこれを返しちゃったら僕たちのこと、殺そうとするでしょ?」
 すまなそうに目を細めて、シブレットの顔を覗き込む。
 この緊張感のない余裕たっぷりの表情に、シブレットはますます腹を立てた。
「当たり前でしよっ!」
 慌てて立ち上がると、そのそばにはもうミルクレープはいない。
 もう何メートルか離れた向こうで。シブレットのことを見つめていた。
 一体何なのこの子っ!?
 パニック状態の頭をフル回転させながら、シブレットはどうにか自分が勝てる道を探そうとする。
 だいたいこの子はアタシの人形を奪っただけで、こんなに余裕ぶってる。アタシにはまだこんな状況を予想した場合の体術や、魔法を知っている。それに、この子は悪までアタシの人形を奪っただけ。人形を与えられたただの子ども。それを持っていたって何か出来るわけがない。
 ……勝てるっ!
 そんな結論に至ると、シブレットは心の中でそっとほくそ笑んだ。
 今までさんざん馬鹿にしてくれたわね……お返しに殺してやるっ!
 冷静さを失ったシブレットの頭の中には、もはやあのお方のご命令「ミルクレープを殺してはいけない」なんて大事なことすら、頭の片隅にすらなかった。
 羽織っていたコートを素早く脱ぎ捨てると、左腕に巻かれるように彫ってある魔法陣が見える。
 親指の腹をがぶりと思い切り噛み、滴る血をその魔法陣にこすり付けた。
 これはまだ誰にも見られてもないだろう、こんな時の状況を想定した場合の、シブレットの攻撃方法だった。
 その途端、左腕が眩いほど輝く。
 シブレットはニヤリと口角を引き上げた。
 ミルクレープは不意を突かれたようで、目を閉じて眩しさから逃げるように顔を逸らす。
 一瞬の隙。
 シブレットがそんな大チャンスを逃すはずがなかった。
「はああああああああああああああああああああああっ!」
 左腕の入れ墨がもぞもぞと動き出す。まるで生きているように。
 その入れ墨の模様事態が、実は炎魔法だったのだ。
 入れ墨に書かれた模様は左腕の中からするりと抜けだし、孤立していく。
 それは全て、強暴そうな猛獣だったり、伝説上の生き物だったり。
 入れ墨の模様たちは、大きく口を開いて襲いかかろうとすると。ボッと勢いよく燃え始めた。
 この世の者とは思えない、地獄の底から聞こえてくる死者の叫び声をあげながら、入れ墨の模様たちはやがてもつれるように一つの大きな炎になって、まるで噛みつくように、大口を開けて襲いかかってきた。
 これこそ、我が一族に代々伝わりし。奥義。『炎獣進』(ファイヤービーストマーチ)。
 本当はもう一つの奥義の方が、攻撃力も高いと思うのだが。相手は無心になって人を殴ることしか出来ない子どもだ。これくらいで十分だろう。
 ふっと笑みを漏らして、シブレットは左腕を強く握りしめた。
 入れ墨たちが吸い込まれるように左腕に戻っていく。
 すべてが終わった。そう今度こそ気を抜いた。
 が。その瞬間。シブレットは異変に気づいて、炎の中を見つめた。
 炎が小さくなっていく。いや違う。これは……吸収されてる—?
「……この程度で僕を倒せると思ったのなら、それは大きな間違いだよ」
 最後の最後の火の粉まで、ミルクレープの持っている人形の中に吸い込まれていく。
 ミルクレープが手にしていた人形というのは、もちろんシブレットが一番お気に入りだった、最強の人形。
 それを見た瞬間。ドッと冷汗が滲み出るのを感じる。
 ドックンドックンと、心臓が生まれて初めて痛いと思えるくらいに脈を打つ。
「……そんな……まさか……なんでお前が人形を……」
 熱風がミルクレープから吹き出て、髪がバサバサと巻き上げられる。
 前髪も上に上がって、額に刻まれた模様を見て、シブレットは全てを悟った。
「アンタ……もしかして」
 ダイヤが四つ並んだような入れ墨。               
 そしてまたその瞬間、どうやってもこの人には勝てないことも。シブレットは痛感させられたのだ。
「……ごめんね」
 ミルクレープがそう謝ったような気がした。
 人形の口から吸いこまれた炎が何倍もの威力となって、シブレットを囲むようにして巨大な魔法陣が浮かび上がる。もちろん壁に凭れかかるようにして気絶している彼らには、当たらないようにして。
「……くそっ……」
 シブレットが悔しそうに顔を歪めると、魔法陣がほのかに光りだす。
 ドオオオオオオオオンッ!
 すさまじい熱気と炎に包まれた感覚は、ほんの一瞬で。シブレットは肌を焦がす熱さに意識までとかされたように、その場に崩れ落ち。意識を手放した。


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