コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜
- 日時: 2012/07/10 23:37
- 名前: 緑野 柊 ◆5Qaxc6DuBU (ID: DnOynx61)
ついについについに来ました!
どるさんとの合作!
このお話はどるさんのキャラクタ—設定を元に、私緑野が文章を作らせてもらってファンタジーギャグ(シリアスもたまに)のお話です!
今までの作品を見てきた方たちは少し驚くくらい作風が変わりましたが、みなさん楽しんでくださいね!あ、お話を。
それではどるさんと読者さんに感謝しながら、
このお話を書き進めていきたいと思います!
そして出来れば感想が欲しいです!待ってるよー!!
ここからギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜の世界に……
↓レッツゴー!!!(^O^)/
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.138 )
- 日時: 2013/02/03 13:54
- 名前: 緑野 柊 (ID: UgGJOVu5)
*
ドオオオオオオオオンッ!
すさまじい音を立てて、周りの建物が崩れ落ちていく。
これでは大きな騒ぎになってしまうかもしれないなと、ミルクレープの姿をしたその人はぼんやりと思った。
まぁ、死者は出なかったとは思うけど。とも。
「……そろそろ町の人が来てしまうかもしれないな」
ぼそりとその人は呟き。プレッツェルたちの近くに向かおうと背を向けた。だがそこでその人は足を止めてしまう。
背後で懐かしい気配がしたからだ。
忘れる筈もない。とてもとても。大切な人の匂い。
ゆっくりと振り返ると、そこにはあの時から一つも姿が変わっていない。幼き少女の姿をした、彼女がいた。
地面に座って、その膝には死んでいるように眠るシブレットの頭を乗せている。
「……会いたかった」
その人は、姿の変わらぬ彼女を見ても、気味悪がったりせず。ただ本当に心の底から嬉しそうに、目元をほころばせた。
彼女はその表情を見ると、少し切なそうに眉を潜める。
「……ジン?」
「うん。そうだよ」
「でもその姿は、ミルクレープじゃないの?」
「そうだね。僕は彼女で、彼女は僕だよ」
「……訳わかんない」
彼女は大きなため息を吐きながら、シブレットを支えるようにして立ち上がる。
「……そうだね」
ジンと呼ばれた、ミルクレープ(?)も苦笑を漏らす。
「君は何しに来たの?」
「この子が死んじゃいそうだったから、助けに来たの」
「相変わらず優しいね」
そうジンに言われると、彼女はほんのすこしだけ照れたように頬を赤く染めた。……ような気がした。
彼女は素早く背を向けると、さっさとどこかへ行ってしまおうとする。
そんな小さな後姿を慌ててジンは呼び止めた。
「どこ行くのっ!?ティー!?」
ぴたりと、彼女の足が止まる。不機嫌そうな顔でジンを見た。
「……その名前で呼ばないで」
「ゴメン……でもっ!」
言いかけた言葉を、ティーは遮る。
「それに、ジンはミルクレープ側にいるんでしょ。だったら私達は今、敵同士よ」
ジンはかける言葉すら見つからなかった。
「でも……僕はっ!」
「やめて……、気が狂ったのかもしれないけど、ジンの振りをするのは止めて。ジンはもうとっくの昔に……」
ティーはそこで言葉を切る、でもその人にはその先の言葉が痛いほど理解できた。
出来たから苦しそうな顔をして、ティーの後姿をただじっと見つめる。
「じゃあ今回は、本当にこの子を助けるためだけに来ただけだから。帰させてもらうね……」
「バイバイ」とティーが小さく呟いた。さわさわと心地よい風がミルクレープの長髪を揺らす。
次にその人が瞬きをしたときには、ティーと呼ばれた少女の姿も、シブレットの姿も、跡形もなく消え去っていた。
まるでそこにもとから何も存在していなかったかのように。
「おいっ!何が起きたんだっ!?」
ティーやシブレットと入れ替わるように、大勢の人々が路地裏に駆け込んでくる。
そしてまたミルクレープも、そのタイミングに合わせるように、がっくりと膝から崩れ落ち、今度こそ深い深い眠りに堕ちていった。
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.139 )
- 日時: 2013/02/03 13:55
- 名前: 緑野 柊 (ID: UgGJOVu5)
*
一番初めに感じたことは、違和感。
右腕が固定されてるみたいで、自由に動かない。
あと背中の感触が悪い。ワタシはどこかに寝ているみたいだけど、マットレスが固い。ここはワタシの家じゃない。
あとひそひそと囁かれる無数の声。
ウルサイ。
「う……ん」
小さくうめき声をあげて、寝返りを打とうとしても。
痛っ……!
ほんの少し体をずらしただけでも走る激痛。
ホント、一体何なのよ……。
訳が分からないことだらけで、顔をしかめていると、眉間の皺を伸ばすように眉の間を軽くつつかれる感触があった。
「……シフォン」
聞きなれた声がする。おかしいな、アイツは今いない筈なのに。城の中で立派に兵士としてやっている筈なのに。
……懐かしいな。
なんだか涙が溢れそうで、ワタシはうっすらと目を開ける。
「シフォンッ!」
飛び込んできた光景に、ワタシはパチパチと何度も瞬きを繰り返した。
一気に目が覚めた、というか現実に引き戻された?いやそもそもこれは現実なのか?
私の眉間の間をつついていたのは、今まさに幻聴だと思っていた声の持ち主。
「……クレソン?」
あ。駄目だ。声が出ない。ガラガラだこれ。どうしたんだろう。まるで水分のもう何日間もとってないみたい。
クレソンは私が名前を確かに呼んだのを聞くと、有無を言わさず、いきなりワタシに抱き着いてきたのだ。
「……なっ!?」
驚いて突き放すか抱き返すか迷っていると。
「……良かった」
耳元で震える声が聞こえた。
「君が無事で……本当に……良かった」
クレソン……。
どうやらクレソンはワタシのことをとても心配してくれていたらしい。理由は分かってる。なるほど道理で自由に体が動かせないと思った。
ワタシはやはり家とは違う、ここは病院だろうか?真っ白なシーツの敷かれたベットに寝ていて、右腕は三角巾で固定されていた。
右腕が折れてしまったらしいな……。
左腕には細いチューブが注されていて、ワタシはここ数日点滴だけでなんとか生き延びていたのかもしれない。
この状態を見れば、自分がどれだけ重傷だったのかはワタシにだって分かる。
ワタシはそっとクレソンの背中に左腕だけを回して、優しく抱きしめ返した。
「……シフォン……」
少し驚いたようにクレソンが目を見張る。
慣れないことをして、ちょっとだけ照れ臭かったけど、ワタシはこの左手を離さなかった。
クレソンも安心しきった笑みを浮かべて、きゅっとさっきより強く抱きしめる。
「……心配かけた?」
「シフォンにしては珍しく。心配かけっぱなしだったよ。ホント……」
ふとクレソンの横顔を覗くと、目の下に薄らとクマが出来ていた。
きっと睡眠もろくにとらずに、ワタシの世話をしてくれていたのだろう。
「……ごめんね、ありがとう」
「……本当ですよ」
珍しく感謝の言葉を口にすると、クレソンの肩越しから、扉が開いてそこに涙ぐんだマフィンと、花束を抱えたプレッツェルが立っているのが見えた。
「……マフィン」
クレソンはワタシがポツリとつぶやくと、そっと体を離す。
久しぶりの姉妹の再開に、水は差さないということだろうか。
プレッツェルもクレソンも扉の傍で立ったままで、向かい合うワタシ達を優しい瞳で見つめている。
マフィンは目に涙を一杯に溜めて。
「お姉ちゃん……良かったです」
マフィンは涙を我慢しているのか。壊れそうな笑顔で言った。
我慢しなくてもいいのにと、ワタシはそっとマフィンの頭に触れる。
姉妹の間ではそれだけで良かった。お互いにたくさん言いたいことはあるだろうが、今はこれでいい。
マフィンはダムが崩壊したように、ダァーと大量の涙を流し始めると。叫び声をあげてワタシの胸の中に突っ込んできた。
「お姉ちゃん……お姉ちゃんっ!」
ひっくひっくと嗚咽をするマフィンの頭を、ワタシは何度も何度も優しく撫でた。
病院服が嬉し涙で濡れていく。
「うん……ごめんね」
心配かけたよね。ごめんね。
馬鹿だなぁ、ワタシが一番家族を失うことの恐ろしさ、悲しさを知ってたはずなのに。
ワタシだってマフィンがこの腕の中からいつか消えてしまうんじゃないか。そう思ったら怖くて仕方がない。
きっと、ワタシが目を覚まさなかった間、マフィンもワタシと同じような不安に縛られていたんだろう。
この世でもうただ一人だけの、血のつながった大切な人。もう身近な人を喪いたくはないよね。
泣きじゃくるマフィンを落ち着かせるように、しばらく頭を撫でていると、ようやくマフィンは涙を止めて、ゆっくりとワタシから離れていった。
「本当に、一杯心配かけちゃって。悪かったな。何かマフィンたちにお礼をしなくちゃいけないね」
目元を赤くして、スンスンと鼻を啜る姿が可愛くて、ワタシはぽんぽんと軽くマフィンの頭を撫でた。
「……うん」
マフィンは小さく頷き返した。
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.140 )
- 日時: 2013/02/03 13:55
- 名前: 緑野 柊 (ID: UgGJOVu5)
「……そう言えば、お前たちは寝てなくていいのか?」
ふと疑問に思ったことを口にすると、プレッツェルは苦笑を浮かべた。
「まぁ、オレ達はシフォンさんよりも傷が浅かったみたいなんで」
言いながら、自分の右腕を元気よく回してみせるが。よく見ると二人とも、まだあちこちの包帯は取れてないし、全身傷だらけだった。
「お姉ちゃん知らないとは思いますけど。もう五日も眠っていたんですよ」
「五日もっ!?」
それは初耳だ。こんなに心配されていたとはいえ、まさかそんなに眠っていたとは。
なるほど、声がよく出ない理由はそれだったか……。
「ここずっと点滴しか打ってませんし、そろそろ水分補給とかもした方がいいんじゃないですかね?」
「まぁそれは可憐な看護師さんたちに任せることにしましょうか」
「クレソンさん、相変わらずですね……」
マフィンが少し呆れたように小さく笑った。
まぁ、コイツの女癖の悪さは昔っから変わってないからな。ワタシとしてはもういい加減にしてほしいものなんだが。
「相変わらずって……コイツ昔からこうなのかよ?」
露骨に嫌そうな顔をしながら。プレッツェルが近くの棚に置かれた花瓶に花を添える。
プレッツェルが棚から離れたとき、ふと向こうにあるものが目に入ってきた。
そう言えばさっきからあまり気にしてなかったが、ワタシの隣にはもう一つベットが置かれていて、そのベットの左側に置かれている、ワタシの近くにある棚と同じデザインのモノの上に、見慣れた服が綺麗に畳まれていた。
服装や、食べかけの食器など、さっきまでいた痕跡があるのに本人はそこには不在だった。
「……ミルは?」
恐らくこの部屋はベットが二つ置かれていて、一つはワタシ、そしてもう一つはミルが眠っていたのだろう。
しかし彼女はそこにはいない。あんなに至近距離から攻撃を食らったのだから、私服を着て歩き回っているマフィンたちと比べて、無傷でいる筈はないのだが。
「……またいつもの場所だと思うよ」
プレッツェルは大きなため息を吐いて、ミルのベットに腰かけた。
「いつもの場所?」
「うん。アイツさ肋骨に三本くらい折って、結構重症だったんだけど、ティラミスさんに急いで来てもらって治療したから、もう普通に出歩けるくらいになったことはなったんだけど」
そうか、ティラミスさんは城に仕えてノエルの寿命を延ばすための医薬を開発してるんだった。じゃあ医療方面にも詳しいんだろう。
「でも。治療と言っても応急処置ぐらいだろ?ちゃんと寝てなくちゃいけないじゃない」
語尾を強くしてそう言うと、プレッツェルはしょんぼりと肩を落として。
「そうなんだけどさ……ミルの奴、最近しょっちゅうぶらりって一人でどこかに行っちゃって」
「……それは」
もしかしてあの時、自分の母親の人形を見たからだろうか。
ずっとどこにいるのか分からない。いつか会ってみたい。そう望んでいた母親が、まさか敵の持つ人形として現れたら。そんなの誰もがショックに思うに違いない。
だいたいミルの場合はバニラの死に、母親が人形になっていたのだから。二つの悲しみが重なって、心がぐちゃぐちゃになってしまっても仕方がない。
それにワタシもショックだった。まだ断定はできないが。あのフェンネルさんが、まさか人形になっていたなんて……。
あの時からフェンネルさんは突如としてワタシ達の前から姿を消した。でもそれは田舎に帰って大事な一人娘を育てているのだとばかり……。
『お帰り。シフォン、マフィン』
帰る場所を持たなかったワタシたちを快く引き取ってくれて、いつも穏やかな笑顔を向けてくれていたフェンネルさん。
……そんな、まさかフェンネルさんが……。
じわりと涙が滲みそうになって、ワタシは慌ててその考えを振り捨てた。
駄目だ……ワタシもまだ上手く事が整理できてないみたいだ。
しかし以外にもプレッツエルは首を振って。
「別に悲しんでるとか落ち込んでるとか、そういうのはないんだけどさ」
「……え?」
予想もしていなかった言葉に、ワタシは驚いて反射的に顔をあげる。
プレッツェルは顎に手をあててしきりに首を捻っていた。
「なんて言うか……何かをずっと考えてるみたいな?」
「何かを……考える?」
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.141 )
- 日時: 2013/02/03 13:56
- 名前: 緑野 柊 (ID: UgGJOVu5)
確かにワタシが退院するまでの三週間、ミルは常に何かを考えているようだった。
プレッツェルに状態を聞いたものよりも、本人はいたって元気で、食欲もあるとのことだった。
楽しそうによくワタシに話しかけてくれたが。ふと眉間に皺を寄せて黙り込んこんでしまう。なんてことが数回あった。
そして昼食後は必ず屋上へ向かい、遠い目をして果てない向こうの何かを見つめていた。
プレッツェルも傷ついているみたいじゃなくて良かったけど、一体何を考え込んでいるのか心配なようだった。
まぁワタシも、この真剣な横顔に、一体何を隠しているのか気にはなったけど。
そして今日。ワタシ達の退院の決まった。あれから三週間後。事は起きた。
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 ( No.142 )
- 日時: 2013/02/03 13:57
- 名前: 緑野 柊 (ID: UgGJOVu5)
*
「私……一旦実家に帰ろうと思います」
そう告げた時の皆の顔は、多分一生忘れないと思う。
ただ一人シフォンさんは納得した表情で、腕を組み静かに頷いていた。
「どっ……どうしてですかっ!?」
マフィンちゃんは驚き焦ったように私の腕を掴んだ。
「ミル……お前」
やだなぁ。なんて顔してるのさ、二人とも。
マフィンちゃんとプレッツェル君はとても寂しそうな顔をして私を見つめていた。
私はそんな二人を安心させるように微笑むと。
「大丈夫だよ。さっきも言ったけど一旦だから。すぐに帰ってくるって!」
陽気に笑ってまだ不安そうなマフィンちゃんの頭を優しく撫でていると。
「本当に帰ってくるんだな?」
「……うん」
プレッツェル君が確かめるように、そう尋ねてきた。
「すぐに帰ってくるよ。三日間ぐらいにしか向こうにいようとしか考えてないから」
「どうしてモ……?」
「うん。どうしてもだよ。先生」
すぐに声のイントネーションで誰が言っているのかが分かった私は、笑いながら答えた。
「知りたいことがあるんだ」
先生は何も言わない。私は構わず続けた。
「私ね、ずっと考えたよ。胸のもやもやが消えるように、ずっとずう〜っと。でも、分かんなかった。だから答えを探しに行くの」
実家に帰って、お婆ちゃんにすべてを尋ねるつもりだった。
そこにどんな悲しい真実があっても、私は躊躇しない。ただ知りたい。だって……。
「このもやもやがなくならなきゃ、次に進めないような気がするからさ」
しばしの沈黙。
私は緊張で飛び跳ねる心臓を抑えるように、胸の部分の服を掴んで、答えを待った。
「ハァー……」
やがて諦めたような大きなため息が聞こえた。
「退院まで来ないでと言ったのは、そうゆう事カ……。分かっタ。じゃあボクはすぐに船のチケットを買って来よウ。ミルは早く家に帰って支度をしていろヨ」
船……支度?
いきなりの言葉に、驚いて振り向くと、やれやれと先生は頭を掻きながら踵を返すところだった。
慌ててその背中を呼び止める。
「待って!先生っ、本当に良いの?」
なんだかあっさりと認められたことに不安になって尋ねると。
「別に良いも何モ。どうせお前はボクが止めたところで無理やりにでも行くんだロ」
「……確かにそうだけど。でもっ」
「ただ真実を受け止められるほど、お前は強くなっタ。ただそれだけのことダ。もうボクが心配する必要はなイ」
「先生……」
今までずっと、「……それは今のミルには話すことは出来なイ」とか、「もっとお前は強くならなければならなイ」とか否定的な言葉を言われていた私にとっては、認められたその言葉こそが、何よりも嬉しくて、まるで奇跡のようなものだった。
先生が強くなったって褒めてくれた……。どうしよう。すごく嬉しいっ!
「先生……ありがとう」
聞こえるか聞こえないかの小さな声で、その背中に喋りかけると、私は滲んだ視界を晴らすように目元を擦って、その後ろを追いかけた。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32