複雑・ファジー小説

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Ultima Fabura—終焉へ向かう物語—スレ移行
日時: 2012/04/28 09:41
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: YsvlUcO/)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=12685

サイト移行しました(参照)↑



Clickいただきましたッ! 感謝感激雨嵐☆
はじめましての方ははじめまして、久しぶりなひとはお久〜! ファジー初、Aerithです♪←
Ultima Faburaの読み方は「アルティマファブラ」(省略=α)。



※ルールいろいろ※
■けんか、他の人を中傷、わいせつ(エッチ)、恋人募集、チェンメ等の話題は禁止です。
■一話につき、2000文字を超える駄文の長文が亀更新ですが気長にお付き合いできる方だけで。
■話はそこまでシリアスではないですが、グロ描写ちょいちょいと。心臓の弱い方は回れ右ですね。
■漢字、フリガナのスペースがミスってる箇所を指摘などなど、頼りない私を支えてくれる方感謝!!
■自分寂しがり屋なのでコメくれると嬉しいです^^
__________。o*★*o。_________
          SPECIAL THENKS !!!
○・。右左様 ○・。ヴィオラ様 ○・。霊夢様 ○・。yuri様 ○・。缶コーヒー様 ○・。桜庭遅咲様 ○・。ダンボール戦機様
○・。nata様 ○・。フレイア様 ○・。暁月様 ○・。風そら様 ○・。風様 ○・。涼様 ○・。アキラ様
○・。蒼天の彗星様 ○・。七星様 ○・。文学少女様 ○・。ザクラ・ノイザ様 ○・。淡雪様 ○・。怜茄様
○・。ミロカロス13様 ○・。夜兎____ ≠様 ○・。青雅様 ○・。フェイト様 ○・。海底2m様 ○・。水月様 ○・。ベクトル様
・.━━━━━━━━━━━━ † ━━━━━━━━━━━━.・
              α情報
11.03.04
 AM 00:26【Ultima Fabura—〝最後〟の物語— 設立】
11.10.14【prologue】
11.10.23【第六章 第十四話SHOT 1〝あなたの手で〟】
11.10.26【〝 〝 SHOT 2〝預けられた背中〟】
11.12.23【〝 〝 SHOT 3〝聖星へ〟】
11.12.28【〝 〝 SHOT 4〝天界と過去〟】New!!
.・━━━━━━━━━━━━ † ━━━━━━━━━━━━・.
C   O   N   T   E   N   T   S

〆第一章〝雷水の魔導士〟 -Lightning conductor and who Mofa water-
>>0289 Chapter CONTENTS

〆第二章 〝水地の魔導士〟 -Mofa of Water and Landwho guide-
>>0290 Chapter CONTENTS

〆第三章 〝闇に魅入られし魔導士達〟 -The magician reaches into the darkness mummy-
>>0291 Chapter CONTENTS

〆第四章 〝時の白魔導士〟 -At the time of White Mage-
>>0292 Chapter CONTENTS

〆第五章 〝高貴なる血筋〟 -Serene bloodlines-
>>0293 Chapter CONTENTS

第六章 〝光の戦士達の想い〟 -Worriors of light feeling-
>>0395 Chapter CONTENTS


      S       U        B

>>0002 世界観   >>0046 お知らせ     >>0047   世界地図
【登場人物】
>>0003 〜雷水の魔導士編〜 >>0066 〜水地の魔導士編〜 >>0209 〜時の魔導士編〜 >>0388 〜高貴なる血筋編〜
>>0241 イメージソング〜Ultima Fabura〜
>>0103 イメージソング〜第一章ver.〜 >>0105 イメージソング〜第二章ver.〜
>>0117 イメージ声優まとめ

========♪√.・○ おまけ ♪√.・○=========
>>0116 リク完成品めにゅ〜&オリキャラテンプレ
>>0203 小ネタ集【1、2】
>>0221 小ネタ集【3〜5】
>>0216 UGSAのコーナー!【1】
>>0255 UGSAのコーナー!【2】
>>0274 UGSAのコーナー!【3】
>>0278 UGSAのコーナー!【4】
>>0380 UGSAのコーナー!【5】
>>0225 UGSAのコーナー!〜ヴィル好きさんに20の質問〜
>>0237 UGSAのコーナー!〜フェルド好きさんに20の質問〜
===========================================
>>0153 敵キャラ〜王とその16人の混沌の戦士達〜 Pert I >>0154  Pert II

【愛すべきオリキャラたちとその創造神様方】
>>0007 アルス・Z・ベルゼビュート  -蒼天の彗星様 ご提供-
>>0009 リトゥス・レフトベッカ >>186 技  -右左様 ご提供-
>>0032 フィニクス・グリモワル >>171 技     -ヴィオラ様 ご提供-
>>0036 テフィル・ディ・シャイアーネ >>168 技 -フレイア様 ご提供-
      レフィーナ・ディ・シャイアーネ >>223 イメソン[オリ]
>>0404 ゼノン・ケルクォリア
>>0037 アール・ノヴェル >>173 技   -七星様 ご提供-
>>0049 セルペンテ・ディスペラジオネ >>177 技 -月夜の救世主様-
>>0093 カイズ=ワイヴァーン >>174 技 - 缶コーヒー様 ご提供-
>>0100 ヒュドラ・ワイヴァーン
>>0199 シグレ
>>0107 ノーヴァ・ヒュールン >>185 技 -風様 ご提供-
>>0349 グラス・K・ルース -水月様ご提供-


==================至福.・+=====================
11.03.08#参照100突破。
11.03.26#参照200突破。
11.04.02#参照300突破。
11.04.07#参照400突破。 返信100突破
11.04.18#参照500突破。・・・え?
11.05.03#参照600突破。        
11.05.03#参照700突破。 
11.05.17#参照800突破。
11.05.24#参照900突破。 返信200突破。
11.05.29#参照1000突破。・・・1000!?
11.06.03#参照1100突破だなんて感謝の言葉が見つかりません・・・
11.06.12#参照1200突破。右片上がりぃいい!!
11.07.02#参照1300突破! 勢いがもはや怖いですよ!!(汗汗)
11.07.15#参照1400突破。・・・これは夢?
11.07.17#返信数300! 皆様有り難う!!
11.07.25#参照1500突破。どこまで上っていくのかもはや楽しみです!
11.08.03#参照1600突破。えーーと・・・そろそろ現実味がわかなくなりましたι
11.08.13#参照1700突破。し、知らないうちに・・・
11.08.20#参照1800突破。え、えへへへへ(←壊れた)
11.08.27#参照1900突破。もうすぐ2000!
11.08.30#参照2000突破!!2000行ったよーーー!!
11.09.03#参照2100突破。現実の状況的に更新がキツい。
11.10.14#参照2400突破。返信数400行きそうです!
11.10.26#参照2500突破。返信数が!後一歩!!しかもFF零式いよいよ明日発売!!
11.12.28#参照2700突破。返信数400突破!昨日で15歳になったたい!返信数と参照数がバグ起こしてるぅー☆アハハ☆(故障)
11.02.25#参照3000突破。いやもうワケワカランてw
===============================================

Re: 【Ultima Fabura—最後の物語—】 圧倒的感謝! ( No.285 )
日時: 2011/07/13 20:50
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: Ma3wYmlW)
参照: キャラ絵まだ主人公しか終わってない(乙w

だ、黙らっしゃい!(お前が黙れ)

Re: 【Ultima Fabura—最後の物語—】 圧倒的感謝! ( No.286 )
日時: 2011/07/15 18:31
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: Ma3wYmlW)
参照: 夏休みは勉強詰め・・・乙((

第十一話 〝調和の神〟コスモス


>>280 Before Episode   >>287 After shot


     SHOT 1 仕打ち





 さて、と呟いて白魔導士は先刻ライシェルの出てきた右の道のほうへ一歩近付いた。そうだ。此処に来た目的——。皆を引き連れやってきた自分がそれを少々思考の片隅に追いやっていた事に嫌気が差した。
 静かに頷き、ヴィルは横に立って手を広げた。
「行こうぜ、皆。俺らが此処に来たのは他でも無ェ、この世界救う為だろ?」
「ああ・・・そうだったな」
 暫く無言だったジェッズが久々に口を開いた。道を譲るヴィルの前を、神妙な面持ちで歩いていく。皆もその後に続く。ちら、とライシェルは祐希を見た。その仕草に気づいたか、そっとヴィングが彼女に耳打ちした。
「・・・似てるよな、やっぱ」
「・・・・・・ああ」
 私の守るべきだったもの。それに凄く似ている。髪色も雰囲気も違う。しかし顔立ちや仕草や、瞳の奥に秘めるものが似ている。
 何かを守る為に強くなりたいという、優しさと言う名の光。まるで同じ。錯覚を引き起こしてしまうほど・・・。事実、祐希が自分達の名を呼んだ時はひやりとしたものだ。
「でもあいつはもういない。・・・辛いけどそうなんだろ?」
「・・・・・・ああ」
 自分自身に苛立っているような、振り絞った声でライシェルは歩を進めつつ繰り返す。——ああ、そうさ。あの子は私の所為で死んだ。あの子が私を庇ったりしたから・・・。あの時、私が死んでいればよかったのに。
「生きていたとして、私には会う権利も無いさ」
「そんなことはねーだろ」
 少々声を荒げて、ヴィングが言う。前を歩いていたフィニクスが振り返ったがそれだけだった。
「そんなことがあるんだ」
「あいつが一番逢いたいと思ってんのはお前に決まってんだろーが。おまえが迎えに行かなくて誰が行く?」
「・・・・・・」
「もしまた逢えたらちゃんと向き合ってやんな」
 穏やかな口調でヴィングが諭すように行ったが、ライシェルは俯き無言のままだった。
 自分の言葉が相手に届いたかなんて解らない。仕方が無いがあとは本人次第だ。自分に出来ることは精々これだけだった。

 —*—

 長く続いた通路の先に、光が覗く。ヴィルは思わずそれを見た瞬間に駆け出していた。慌ててミュレアが追い、シュヴェロが追う。背後の状況など露知らず、ヴィルは光の中に突入し思わずその眩しさに目を細めてしまった。
「うわ・・・」
 そこにあったのは、視界一杯のステンドガラス。何故か他の所と違い海面から来る光を採光しているわけではないことが一目瞭然だった。他のところは海が見えるが、このステンドガラスは色の所はともかく無彩色の所も海が透けてはいないのだった。故に光らないはずなのだがそれはまるで自ら発光しているかのように明るく、色鮮やかであった。
 勢い良く駆け込んできた後の面々も同じようにしてその光景に魅入る。
 その中でミュレアと白魔導士、それに祐希だけは不思議な—壁画とでも言うべきだろうか—光の元へと立った。そこには皇かな手触りの黒い石が置いてあった。何か記されていて、文字は水色に輝いている。何処か神秘的だ。
「これですね」
「んだこりゃ? 暗号かよ。読めねーしよ」
「何かな・・・。私達の世界の文字でもないよ」
「? この文字か?」
 覗き込み、ヴィルは問う。上のほうの文章も読もうとしたところでヴィルは水色の文字に触れた。その瞬間、身体が硬直する。何かに捕らえられたかのように。周囲の人々は彼の違和感に気付いていない。
「っ・・・」
 突如、先刻の来た時と同じく唐突にその感覚は消え失せていた。恐る恐る文字に触れてみるも何も感じない。
「ヴィル・・・?」
 遠くのほうでミュレアが呼ぶ声。しかし何故かヴィルは目の前に書いてある文章を無意識にも読み上げていた——。
 題されている銘は『——終焉に向かう物語——』。そしてその下の文に視線が移る。瞳が文字と同じ色になる——。

『時は期して巡り来る
 闇は熟して星は帰す

 万物の生命 悪修羅王の手により悪魔の供物と哀れな傀儡と化すであろう
 哂う悪魔と化した天 均衡を崩し 聖夜に墜つ

 天命の使者 女神コスモスは予見す

 大いなる海は引き裂かれ 天は荒ぶる光の矢に包まれ 地は千に砕かれるだろう
 疎は供物をも引き裂き 供物をも貫き 数多の命を砕ききるであろう
 冷酷な死 万物へと広がり 陰陽の境界線消えうせん

 救いの光よ 正道であれ
 多少なりとも曲がること無かれ 揺らぐこと無かれ 遅れること無かれ 閑散 なれば星は救われん
 邪な考え持ちし者潜むならば 揺らぐ魂潜むならば 送れば競るもの潜むならば 星の崩壊加速せん

 女神の予言は 絶対である』

 過度に驚愕すると、人は言葉を失うらしい。今、初めて知った。鼓動が早くなる。息が苦しい。自分が読み上げたその内容が理解できない。万物の生命、悪魔の供物・・・!? 意味は分からなかったが、走馬灯のような映像と共に流れ込んできた『もの』の所為で嫌と言うほど理解してしまった。
 ——全ての生命は闇の神霊の贄となることを。

「そんなことって・・・!?」
「嘘だ・・・」
 また、少しでも揺らげば自分達が星を破壊する運命に進むことを。つまりはこの世界の敵。この星に生きる、鼓動する、息づいている全ての生命の——敵。そう断言されたも同然だった。
 違う! 俺はただ、英雄に—————っ!
 ドクン。
「ヴィルっ!?」
 黒曜石の元で膝をつく。鼓動が早くなる。もう水色ではなくなった瞳で開いた両手を見る・・・。
 五月蝿いほどの耳鳴りがする。鼓動が耳元で脈打っている。暑くも無いのに汗が流れた。嫌な汗が。冷たい汗が。冷酷なほどに、恐ろしい位に冷たい水が。

 俺が、この世界にどんな仕打ちを受けた?
 物心つく前から親は居なかった。愚か、何も聞かされたことは無かった。只、『ゴミ溜めに捨てられていた』と知らされただけ。只、働かされただけ。ただ、ただ———。

毎日、必死に生きていた・・・。

 誰も救ってはくれない。誰にも心配をかけてもらったことが無い。愛など知らない。好意など知らない。心からの楽しみはあった。旅立って毎日が冒険だった。毎日が楽しかった。仲間が居てくれたから。
 でもその前は? 物心ついて自分の拾い主を殺し、森に入り、そのときの自分は魔物と同じで。
 あまり覚えていない。
森に迷い込んだ哀れな罪の無い人間を何人殺したことか。
 俺が仕向けた、生命への仕打ちは?



俺は——ッ!!





Re: 【Ultima Fabura—最後の物語—】 圧倒的感謝! ( No.287 )
日時: 2011/07/16 10:48
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: Ma3wYmlW)

>>286 Before shot   >>288 After Chapter prologue


     SHOT 2 罪の十字架





 脚が震える。自分の受けてきていたことと自分が犯した罪が一斉に、鮮明に蘇り、ヴィルの精神を揺さぶり襲った。
 それは、たかが半人前の一魔導士の耐え切れるものではなかった。今はそれに星の敵だという負荷がかかっているのだから。人を殺して喰らう魔物と同じように、自分もしてきたかもしれないのだから・・・。
 パンッ
「しっかりしろっ!」
 頬に受けた赤くはれるほどの強い痛みも今は果てしなく鈍く感じた。その鈍痛の中で、ヴィルは自分の頬を貼った人物をゆっくりと見上げた。その視線は焦点が定まっていなく、ゆらゆらと揺れていたという。
「『行こうぜ、皆。俺らが此処に来たのは他でも無ェ、この世界救う為だろ?』そう、言ったの自分でしょ?」
 不自然なほどぼんやりと惚けた顔で無表情になっているヴィルの肩を揺さぶり、ミュレアは呼びかける。泣きそうな顔で、涙を堪えながら。光を失くした、連れ合いの瞳に訴えかけるように。
 しかしヴィルは無言のままだ。
「ねぇ、わたし達はいつも一緒だよ。貴方の抱える闇も一緒に背負うから」
 抱きしめてミュレアが言う。視線を揺らがせたまま、ヴィルは腕を動かす。華奢な彼女の背中を包み込もうと手を伸ばす。この小さく細い双肩と背中には自分と同じ十字架がある。それなのに彼女は、自分のものだけでなく他人のものも背負うといってくれているのだ。
 どうして、そこまで。
「う・・ぅ」
 違う。背負わなきゃいけないのは自分だ。救う役目も、他人の分まで背負う義務は自分にある。こんなか弱いものに任せていいはずが無いではないか。何故早く気づかなかったのか。こんなにも簡単なことを。
 過去も未来も関係無い。
 自分達は今を生きる人間だ。今を支えあっていけばいいのだ。
「おれ・・・、俺ッ・・・!」
「ヴィル。頑張ろう? ね。私達が星救うんだから」
「うん・・・。そうだよ。ごめんな・・・!」


 祐希は辺りを見回す。これの他に、これといった仕掛けは無さそうであった。しかし祐希は壁にこの黒曜石と同じような文字を発見し、駆け寄る。やはり同じようで、祐希はヴィルたちを呼んだ。

『我此処に至り
 消えぬ光の名の下に
 星を救う戦いへ身を投じるもの

           雷獅子』

「雷獅子っ・・・!?」
「じゃあこの文字は7億年前の・・・!?」
「皆」
 動揺を秘す事の叶わない目の前の仲間達に、俯いたままヴィルは呼びかけた。静かな口調で放った言葉だったのだが、皆は一斉に彼のほうを見た。気配で感じ取り、顔を上げる。
 信頼しきった瞳。そうだ、自分はこの瞳に救われている。それぞれが個々に違う心情を持ち、違う面持ちをしている。似通っていても少しずつ違う思考を持っている。しかしヴィルは感じる。瞳の奥に背負うものも、潜む考えも違う。それでも宿る光が同じだ。
 何かを守りたい——大切なものの為の、誓いの光。
「俺・・・。決めた」
 握りこぶしを胸の前において、ヴィルは目を閉じる。
 自分の生命の鼓動が感じられる。そうだ、自分は生きている。そう実感できる。
 成長してどれだけ強くとも、一人で生まれてこられた生命など無い。一人で生きてこられた生命も無い。生きる為の知恵を教わり、巣立ち出来るその日まで安全に守ってもらえる——それが生命だ。
 どんなに苛立つ育て親であっても、怨嗟の感情を持っていても、殺したとしても。生きていく為の力を持つまで育て、守ってくれたのだ。親も等しく、勝手に自分を生んでそのまま自分を捨てたとしても。生んでくれなければ自分は今この場に存在しなかったのだ。
 なれば育て親を殺してしまった罪を、この星を救うことで償おう。
「この星を守る」
「わたしも!」
 前に進み出て、手を差し出したミュレアは微笑んだ。
「わたしも、守るよ」
「僕も」
「わいもや」
「俺だって」
「私もです」
「あたしも」
 一斉に皆が頷く。泣きそうになるのを堪え、ヴィルは差し出されたミュレアの細く華奢な手を握った。
 ありがとう・・・、皆。

 雷獅子は水不死鳥とともにゆく。
 どんなに険しく、どんなに辛くとも。
 時に支え、支えられながら。
 仲間とともに、どんな道でも。

そして。

 終焉への物語は急降下を始めていた。





—————俺はこの時、まだ気付いていなかった。ミュレアを飲み込もうとしていた闇に—————




 新たに義務を感じた一向は海底の大神殿を後にした。結局のところ、コスモスの残した先刻の予言は見つかっても肝心の本人が居なかったのだ。予想はしていたことだったが、救いが無かったことは少しだけ一行の心に影を落とした。
「皆、そんな暗ぇ顔すんなよな! 判ってた事なんだし」
「解ってるよ、ヴィル!」
 それでも。
 やはり不安は増す。閉塞感は感じてもこれから行く当ても無い。世界は広いのだ、居るかどうかもわからない存在を世界中探してなど居たらすぐに最終夜は来てしまう。それでも彼女が居なければ世界は救えない。
「あの・・・。あれ、なんでしょう・・・?」
 海底神殿を出て少したった時、フィニクスが不意に動きを止めて一点を見据えつつ言った。ヴィルも同じ方向を見遣る。何か大きなものが向こうからやってくるようだった。
「なんか・・・。デケェもん」
「もしかして魔物だったりして」
「えぇ、やめてよ〜」
 おどけた調子で言ったカテーナの言葉に怯えてテフィルは身震いする。そりゃあこんな時に襲われたらろくに戦闘が出来ない難しい状態だからだろう。

——しかし。

「ありゃ・・・海猪ピープグルだな・・・」
「へー。可愛い名前」
「ちょっと、カテーナ・・・」
「獰猛種だぞ」
 黒い影は見る見るうちに近づいてくる。その間にも聖護が解説し、カテーナが余裕たっぷりに笑み、レフィーナがテフィルにしがみ付くとフェルドが構えて言った。
 海猪は突っ込んでくるとまずリトゥスを狙った。
「たかが猪のくせに。——生意気ね」
 海中を切るようにして黒羽が猪に向かい海猪の目に突き刺さる。唸り声を上げ、海猪の目から出た赤い糸の様な液体が海中に散布した。ヴィルが突っ込み、剣で切りつけると海猪は悶える。
「海中戦、得意中の得意だからね?」
 舌を出し、ミュレアが海猪の足を海流で捕らえた。悶え苦しみ逃げることも叶わず、海猪は叫び声を上げた。


その時、事は起こった。





                                     ——第四章 〝時の白魔導士〟 完

Re: 【Ultima Fabura—終焉に向かう物語—】第四章終了 ( No.288 )
日時: 2011/07/24 17:12
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: Ma3wYmlW)

第                    五                    章







prologue







 幼きころであった少女の姿が、頭から離れないまま彼は数年間を過ごしてきた。
 強く、気高く、凛とした面持ちで——でもどこか、儚げで。
 彼の母親と談笑していた一人の男性が言った。
 あれは私の娘なんだよ、と。
 健やかに育った若君の花嫁になる子です、と。
 彼は素直にうれしかった。それから何ヶ月か一緒に過ごし、来年も、再来年も会った。

しかしあるとき。

 未来の花嫁はその残り香をかすかにその場にとどめ、いずこかへ消えてしまった。
 それでも彼は彼女を待ち続け、探し、他の者と婚を結ぶなどとは思わなかった。

 彼女は自分の婚約者だった。もうすぐ数年ぶりのの再会を果たして、永遠の愛を誓うはずだったのだ。
 なぜいなくなった? そう考えるより彼女の面影を探した。
 表向きな、彼女の代わりがいてもただもう一度だけ、再び彼女とまみえたかった。

そして今日。

 君も今、見ているだろうか。僕の見ているものと同じ月を。
 誕生日おめでとう。ごらん、君の髪のような色をした銀の月が太陽を優しく覆っているよ。





 女は、貴族と騎士の間に生まれた。
 突然失踪した姫の代わりに親も亡い為にか偽りの王座へといざなわれ、偽りの自分でいる。
 本物がいる限り、私は不完全のままだ。
 なれば本物が消えれば、まがい物の私も本物になれる。
 私を受け入れてくれた王に真に愛される。偽りの愛でなく、真実の愛を与えてもらえる・・・。

 女は決意した。
 本物など消してしまおう。

 知らず〝彼〟と〝女〟の目的は交わり、交錯した。
 一方は手に入れるため。
 他方は消すため。

 双方は同じ銀の朝に同じものを求めて旅立った。











>>287 Before Chapter >>302 After Episode

Re: 【Ultima Fabura—終焉へ向かう物語—】第五章開始 ( No.289 )
日時: 2011/07/18 14:35
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: Ma3wYmlW)
参照: CHAPTER 1st CONTENTS

〆第一章【雷水の魔導士】 -Lightning conductor and who Mofa water-
>>0001       prologue

第一話 [〝雷獅子〟と〝風白龍〟]
>>0011   SHOT 1 〝夜の街〟
>>0015   SHOT 2 〝共食い〟
>>0018   SHOT 3 〝からす〟
>>0030   SHOT 4 〝銀波〟
>>0031   SHOT 5 〝堕落した神霊の勇気ある行動〟

第二話 [氷の森に潜むもの]
>>0034   SHOT 1 〝氷の嵐〟
>>0044   SHOT 2 〝氷竜〟
>>0051   SHOT 3 〝動き出した歯車〟

第三話 [銀水まといし水の歌姫]
>>0060   SHOT 1 〝遠い記憶〟
>>0061   SHOT 2 〝わたしは誰〟
>>0062   SHOT 3 〝氷の護符〟



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