複雑・ファジー小説

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Ultima Fabura—終焉へ向かう物語—スレ移行
日時: 2012/04/28 09:41
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: YsvlUcO/)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=12685

サイト移行しました(参照)↑



Clickいただきましたッ! 感謝感激雨嵐☆
はじめましての方ははじめまして、久しぶりなひとはお久〜! ファジー初、Aerithです♪←
Ultima Faburaの読み方は「アルティマファブラ」(省略=α)。



※ルールいろいろ※
■けんか、他の人を中傷、わいせつ(エッチ)、恋人募集、チェンメ等の話題は禁止です。
■一話につき、2000文字を超える駄文の長文が亀更新ですが気長にお付き合いできる方だけで。
■話はそこまでシリアスではないですが、グロ描写ちょいちょいと。心臓の弱い方は回れ右ですね。
■漢字、フリガナのスペースがミスってる箇所を指摘などなど、頼りない私を支えてくれる方感謝!!
■自分寂しがり屋なのでコメくれると嬉しいです^^
__________。o*★*o。_________
          SPECIAL THENKS !!!
○・。右左様 ○・。ヴィオラ様 ○・。霊夢様 ○・。yuri様 ○・。缶コーヒー様 ○・。桜庭遅咲様 ○・。ダンボール戦機様
○・。nata様 ○・。フレイア様 ○・。暁月様 ○・。風そら様 ○・。風様 ○・。涼様 ○・。アキラ様
○・。蒼天の彗星様 ○・。七星様 ○・。文学少女様 ○・。ザクラ・ノイザ様 ○・。淡雪様 ○・。怜茄様
○・。ミロカロス13様 ○・。夜兎____ ≠様 ○・。青雅様 ○・。フェイト様 ○・。海底2m様 ○・。水月様 ○・。ベクトル様
・.━━━━━━━━━━━━ † ━━━━━━━━━━━━.・
              α情報
11.03.04
 AM 00:26【Ultima Fabura—〝最後〟の物語— 設立】
11.10.14【prologue】
11.10.23【第六章 第十四話SHOT 1〝あなたの手で〟】
11.10.26【〝 〝 SHOT 2〝預けられた背中〟】
11.12.23【〝 〝 SHOT 3〝聖星へ〟】
11.12.28【〝 〝 SHOT 4〝天界と過去〟】New!!
.・━━━━━━━━━━━━ † ━━━━━━━━━━━━・.
C   O   N   T   E   N   T   S

〆第一章〝雷水の魔導士〟 -Lightning conductor and who Mofa water-
>>0289 Chapter CONTENTS

〆第二章 〝水地の魔導士〟 -Mofa of Water and Landwho guide-
>>0290 Chapter CONTENTS

〆第三章 〝闇に魅入られし魔導士達〟 -The magician reaches into the darkness mummy-
>>0291 Chapter CONTENTS

〆第四章 〝時の白魔導士〟 -At the time of White Mage-
>>0292 Chapter CONTENTS

〆第五章 〝高貴なる血筋〟 -Serene bloodlines-
>>0293 Chapter CONTENTS

第六章 〝光の戦士達の想い〟 -Worriors of light feeling-
>>0395 Chapter CONTENTS


      S       U        B

>>0002 世界観   >>0046 お知らせ     >>0047   世界地図
【登場人物】
>>0003 〜雷水の魔導士編〜 >>0066 〜水地の魔導士編〜 >>0209 〜時の魔導士編〜 >>0388 〜高貴なる血筋編〜
>>0241 イメージソング〜Ultima Fabura〜
>>0103 イメージソング〜第一章ver.〜 >>0105 イメージソング〜第二章ver.〜
>>0117 イメージ声優まとめ

========♪√.・○ おまけ ♪√.・○=========
>>0116 リク完成品めにゅ〜&オリキャラテンプレ
>>0203 小ネタ集【1、2】
>>0221 小ネタ集【3〜5】
>>0216 UGSAのコーナー!【1】
>>0255 UGSAのコーナー!【2】
>>0274 UGSAのコーナー!【3】
>>0278 UGSAのコーナー!【4】
>>0380 UGSAのコーナー!【5】
>>0225 UGSAのコーナー!〜ヴィル好きさんに20の質問〜
>>0237 UGSAのコーナー!〜フェルド好きさんに20の質問〜
===========================================
>>0153 敵キャラ〜王とその16人の混沌の戦士達〜 Pert I >>0154  Pert II

【愛すべきオリキャラたちとその創造神様方】
>>0007 アルス・Z・ベルゼビュート  -蒼天の彗星様 ご提供-
>>0009 リトゥス・レフトベッカ >>186 技  -右左様 ご提供-
>>0032 フィニクス・グリモワル >>171 技     -ヴィオラ様 ご提供-
>>0036 テフィル・ディ・シャイアーネ >>168 技 -フレイア様 ご提供-
      レフィーナ・ディ・シャイアーネ >>223 イメソン[オリ]
>>0404 ゼノン・ケルクォリア
>>0037 アール・ノヴェル >>173 技   -七星様 ご提供-
>>0049 セルペンテ・ディスペラジオネ >>177 技 -月夜の救世主様-
>>0093 カイズ=ワイヴァーン >>174 技 - 缶コーヒー様 ご提供-
>>0100 ヒュドラ・ワイヴァーン
>>0199 シグレ
>>0107 ノーヴァ・ヒュールン >>185 技 -風様 ご提供-
>>0349 グラス・K・ルース -水月様ご提供-


==================至福.・+=====================
11.03.08#参照100突破。
11.03.26#参照200突破。
11.04.02#参照300突破。
11.04.07#参照400突破。 返信100突破
11.04.18#参照500突破。・・・え?
11.05.03#参照600突破。        
11.05.03#参照700突破。 
11.05.17#参照800突破。
11.05.24#参照900突破。 返信200突破。
11.05.29#参照1000突破。・・・1000!?
11.06.03#参照1100突破だなんて感謝の言葉が見つかりません・・・
11.06.12#参照1200突破。右片上がりぃいい!!
11.07.02#参照1300突破! 勢いがもはや怖いですよ!!(汗汗)
11.07.15#参照1400突破。・・・これは夢?
11.07.17#返信数300! 皆様有り難う!!
11.07.25#参照1500突破。どこまで上っていくのかもはや楽しみです!
11.08.03#参照1600突破。えーーと・・・そろそろ現実味がわかなくなりましたι
11.08.13#参照1700突破。し、知らないうちに・・・
11.08.20#参照1800突破。え、えへへへへ(←壊れた)
11.08.27#参照1900突破。もうすぐ2000!
11.08.30#参照2000突破!!2000行ったよーーー!!
11.09.03#参照2100突破。現実の状況的に更新がキツい。
11.10.14#参照2400突破。返信数400行きそうです!
11.10.26#参照2500突破。返信数が!後一歩!!しかもFF零式いよいよ明日発売!!
11.12.28#参照2700突破。返信数400突破!昨日で15歳になったたい!返信数と参照数がバグ起こしてるぅー☆アハハ☆(故障)
11.02.25#参照3000突破。いやもうワケワカランてw
===============================================

Re: Ultima Fabura—最後の物語—  参照1100突破 ( No.245 )
日時: 2011/06/06 16:50
名前: nata ◆xi9CqIOvBg (ID: Xr5Y0osE)
参照: うはー。腹がー!!!  ・・・いてぇ。

やほ〜^^
参照ヤバスww
頑張れ〜

Re: Ultima Fabura—最後の物語—  参照1100突破 ( No.246 )
日時: 2011/06/12 18:42
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
参照: 〝手を広げ 謳いながら 悠久の時に抱かれ 命をつなぐ〟

>>238 Before shot  >>247 After Episode


     SHOT 5 調和の神






 隣室は騒がしい。しかしこの部屋はまるでそれが別世界だとでも言いたげな程に静寂を守っていた。
 首を傾げ、不思議そうにヴィルは初めてみる異世界の建造物や服、そのほかの雑貨を見渡している。そんな中、白魔導士がさっきとは相反してその静寂を神妙な面持ちで破った。

「この世界には幾多の伝説があります。伝承の一つに今起こっていることや・・・私のことも」
「おまえ、白魔導士だもんな!」
「はい。・・・皆さんは、それでも私・・・白魔導士の伝説はあまりご存じないでしょう」
 白魔導士の伝説で明かされているのは魔術の種類が縛られていないこと、マントが純白なこと、守護神がいないこと。そして対立する黒魔導士を、倒さねばならないこと———。
 それ以外に一般的に知られている情報は無い。4人は顔を見合わせる。全員が微かに首を振り、また白魔導士を見た。

「・・・でしょうね。私にはある使命が与えられているのです。
 黒魔導士を倒すことは勿論、あなた方調和の光の下で忠誠を誓った戦士達を導くこと」
「あー、ちょっといいか?」
 躊躇いがちにヴィルが手を上げる。どこの講習会だ、とヴィングが呆れ顔で眉をひそめる。

「その・・・『調和の光の下で忠誠を誓った』・・・ってやつ? 俺等身に覚えが無ぇんだけど」
「確かにそうだよね」
「頭悪いくせに何核心突いてんや」
 隅っこで何気にシュヴェロがぼやくが当の本人は気付かない。
「元から元凶の敵陣は〝混沌の闇の下で忠誠を誓った戦士〟なんですよ。敵対する貴方達は必然的に調和の光です」
「なんやゴーインやなぁ・・・」
「まぁそれは置いておいて。今現在お仲間の中で守護神がコスモスの方はおりませんか?」
「コスモス???」
 何それ? 花かなんか? そんな顔をしているのはヴィルだけだった。逆に、今出た固有名詞を理解していない様子の彼に気付いた他の仲間達が仰天していた。

「知らへんの自分!?」
「ヴィル・・・! やっぱり・・・・」
「な、なんだよお前ら! やっぱりってなんだよ! じゃ、じゃあヴィングは知ってんのかよ!!?」
「〝混沌の神〟カオス。敵対する〝調和の神〟コスモス。この神々が太古にこの星や宇宙を作ったって話さ」
 何じゃそりゃあぁー! 規模デカすぎて参っちゃうんですがー!? 宇宙規模になっちゃったよ、星の規模じゃなかったっけこの戦争!? しかもそれ従える魔導士がいるって・・・うぎゃぁ・・・。
 どんだけ強いんだよそいつ。

「残念ながら今はいねーな。うちらの仲間には、な」
「んー・・・。聖護は違ったと思いますし、私には伝説のとおり守護神もいませんから。王はカオスが守護神です」
 ナニーッ!? やっべぇな・・・。強すぎる。敵が・・・デカい。
 だが『敵の実力が高いから』『敵わない戦いだから』———ヴィルは、そんなもので何かを断念するような小さい男ではない。むしろ、この馬鹿は・・・
「戦ってみてぇ!!」
 身を乗り出し、わくわくするタチである。

「はぁ・・・。てめーみてーなでしゃばり小僧にゃ倒せねーよ」
「ぁんだとぉ!?」
「まぁまぁ・・・。話はまだ終わりではありません。こちら側にコスモスがいないとなると光の守護は弱いでしょうね。彼女を見つけないと——星は、救えないかもしれません」
 全員の間に緊迫感が走る。ヴィルは立ち上がり、その辺りを歩き回るとまたミュレアの隣に腰を下ろし頭をかきむしった。本人はコスモスという名前さえ聞いたばかりだというのに探し出すのは可能であるのだろうか。

「コスモス、ねぇー・・・。まずはそいつを見つけんのが先決ってわけか!」
「纏めてしまえば、そうなりますね」
「よーっし! んじゃコスモス探すぞー!」
「待ってヴィル。どこ探す気?」
 重要は部分が陥没していたことに気がついたヴィルは、「そうじゃんか・・・」と言って頭を抱えた。忙しないやっちゃなー、とシュヴェロが苦笑いする。ヴィルは頭を抱えたまま、答えを求めるように白魔導士のほうを見た。白魔導士は頷く。彼女は立ち上がり襖の向こうに見える夜空を見上げながら口を開いた。

「私にも、よくはわかりません。ただ——コスモスを守護神にしているものがいるかどうかさえ怪しいのです。まずは世界の各地を回ってみましょう。コスモスゆかりの地・・・それでいて、人の踏み込む事のなかった地」
「心当たりっつーのはあんのか?」               アエデムアリアマリス
「今思いつくところといえば、深い海の底にあると言われる〝海底大神殿〟・・・」
 言うと今度はミュレアが身を乗り出した。後の人々が驚いたように彼女を見る。ミュレアはまるで自分でもなぜ身を乗り出したのか良くわからないというような不可解な顔で上半身を元の体勢へと戻した。

  アエデムアリアマリス
「〝海底大神殿〟・・・? 伝説上でしか存在しないはずでしょう?」
「はい。何度も言われているかもしれませんが・・・お二人も伝説上の人物。実在しているでしょう?」
「今更何の不思議も無いで、ミュレアちゃん」
 そう・・・よね、といいつつ項垂れる。まだ何か府に落ちない様子だった。


 ヴィルが隣室の襖を盛大に蹴破って入室すると(白魔導士の笑顔の口元が一瞬ピクリとしたようにミュレアには見えた)、聖護含め現在15人の仲間達が一斉に振り向いた。
 増えたなーとも思ったが内心彼は凄く嬉しく思っているのだ。

                    アエデムアリアマリス
「皆、聞いてくれ。俺達は明日から〝海の大神殿〟に向かう。
 目的は〝調和の神〟コスモスに協力を得ること! いねぇかもしれねーけど、情報があるかもしれないからな!」
「もう動いても平気なの? ヴィルも、テフィルも・・・」
「ええ、大丈夫です。彼らの傷口の〝時〟を戻しましたから。怪我をする前に戻したようなものです」
 有り難う、とヴィルが惜しげもなく白魔導士に頭を下げる。続いてテフィル。しかし白魔導士は顔を真っ赤にして手を顔の前で千切れんばかりに振った。いいんですよ〜と言いながらも照れ屋なのか上がり症なのか・・・。
「私なんかそそそ、そんな大それたことは・・・ぶわっ!?」
 慌てて襖の奥に引っ込もうとした白魔導士は顔を真っ赤にしたまま座布団に足を引っ掛け盛大にズッこけた。




Re: Ultima Fabura—最後の物語—  参照1100突破 ( No.247 )
日時: 2011/06/11 00:00
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
参照: 〝手を広げ 謳いながら 悠久の時に抱かれ 命をつなぐ〟

第十話 海底の大神殿


>>246 Before Episode   >>248 After shot


     SHOT 1 海へ





 [航海経験者]
・ヴィング、ジェッズ、レフィーナ、テフィル、カテーナ、ライシェル、白魔導士。

 [航海未経験者]
・その他。

 結果、大方の予想通り(ミュレアを除く)全員が船酔いした。
 いや、『した』というよりも現在進行形。『している』の間違いだ。現在絶好調船酔い中。天気は好天、風も良好。気分は最悪。船酔い中の全員がおもしろいように船の淵にズラッと並んでだれている。

「クッ・・・俺はもう一生船などには乗らないぞ・・・」
「お、おへひょ〜・・・(お、俺も〜・・・)」
「ヴッ——わたしこんなことなら飛びたいんだけど」
 フェルドが珍しくを上げている。いやそれ以前に彼が酔うのが予想外だった人のほうが多いだろう。
「意外な欠点判明だな」
「五月蝿いぞライシェル・・・」
 嘔吐寸前の背中に向かってライシェルが鼻で笑う。弱々しい声音でフェルドが反撃するも全く覇気が無かった。
 何しろ「任せろ!」とか言ってた本人ヴィングの操縦が半端じゃない。完全に船酔いさせるのが目的ではないかと疑惑を掛けられてもおかしくないような船の揺れ方。酷い。酷すぎる。
 その証拠に幾度と無くヴィルは顔に海水を食らい・・・というより既に飲んでしまっていた。

「もっとそふとに操縦しへふれぇ〜〜・・・(操縦してくれ)」
「これが精一杯だっつーの!」
「おいおいねーちゃんねーちゃん・・・」
 男勝りに舵を取るヴィングを宥めるようにジェッズが腕組しあぐらをかいたまま言うが、直後に海水をモロにかぶってしまった。ほぼ全員ぐしょ濡れだがライシェルだけは濡れていない。場所がいいのか、彼女の運がいいのか。はたまた、彼女が自分の反射神経で避けたのかは不明だ。

「ペッ、ペッ! おいおい! 見てらんねぇよ! ちょっと父ちゃんに貸してみな!」
「あァ? おい、私はお前の娘になった覚えはねーぞ?」
「いいから!」 
 何故かは判らないが無性に乗り気でジェッズが身を乗り出した。この手のものの腕に自身があるのか、それとも単に興味があるだけなのか——。後者であることだけはあって欲しくない。それなら死にたい・・・。
 そう思ってしまうほどにヴィルの精神状態は限界に達していた。
 刹那、船が嫌な横揺れをした。ギリギリ寸止めで間に合ったが本当に腹の中のものがリバースするところだった・・・。

「ほーれ、もう大丈夫だぞー」
「あ、あれ・・・?」
 揺れが殆ど感じられない。しかし進んではいる。ヴィングの操縦していた場合とは大違いだ。船酔い組はほぼ全員が安堵の溜息をつき、縁に背中を寄りかけた。

「あれ、フェルドお前・・・」
「い、言うな・・・」
 全員無事復活を遂げた。——フェルド以外は。



 見かねた心優しき子供達が重症人と化しているフェルド君の背をさすってやっていた頃、船が止まった。白魔導士の情報によれば、この辺りが最も海の深度の深い位置に相当するという。

「や、やっと・・・・・・着いたか・・・」
「おわ〜・・・。やべーぞ、早くしねーとこいつキャラ崩壊起こすっ!」
 『リア充など知った事か』と思った方は今、この時だけは彼に同情してやって欲しい。船酔いって辛いんだよ。
 白魔導士はミュレアに何かを頼んでいるようだった。彼女が頷くのが見え、そしてミュレアはそのまま海に直線落下した。慌ててヴィルはミュレアの落ちた場所まで移動するが——そこで、躊躇しているようだった。

「どうした」
「お・・・俺っ——」
「飛び込め!!」
 背後からのヴィングの突進に耐えかね、ヴィルは船から落下した。そしてそのまま沈没する。呆気にとられ、仲間達はその様子を凝視する。フェルドは苦痛をかみ締めながらそちらに駆け寄った。今まさに彼の顔色は海と同系色なのだが・・・。

「おいっ・・・。あい、つ・・・・・・泳げないぞ・・・」
「えぇーー!?」
「生まれて・・・間もないとき、から・・・南東の森に・・・いたんだ。川もなかったしな・・・」
 眉をひそめて額に手を当てたままヴィングはマジかよ、と声に出さず呟いた。その間にも主人公は沈んでいく・・・。

「世代交代か?」
「じゃあ次はわいの番や!」
「おいおいにーちゃん達。いい加減助けてやんねーとあいつ死ぬぞー?」
「飛べ!!」
 見かねてジェッズが諭す。刹那、ライシェルが言って自ら瞬時に飛び込む。聖護が鉛色気味の海へと飛び込み、高き水しぶきを上げた。続いて恐る恐るアルス。白魔導士も飛び込み、シュヴェロに支えられながらフェルドも飛び込んだ。男性二人の体重が一方向にかかり、ボートは転覆しかかったが残りがバランスをとり船は少し状態を良くした。
「がんばれな」
 片手を上げ、弧を描いてヴィングが綺麗にダイブする。フィニクスが黒い羽根を畳みながら船の端の向こうに消えた。慎重に降りようとしてジェッズが船の縁を両手で掴んでいたがふとした揺れに手を滑らせ情けない声を上げながら落下した。
 次々飛び込む仲間達に戦々恐々の子供達を見て、リトゥスは宙にばっと舞った。

「行くわよ」
「あぁっ、待って!」
「テフィル、レフィー。ほら行こ!」
「えぇっ!? わっ!!」
 空が曇り怪しい雲行きになっている。それを見かね、カテーナが鎖を後の二人に巻きつけ、海に引きずり込んだ。かなりの恐怖を味合わせられる連れ込まれ方で無事全員が海へと飛び込んだ。


Re: Ultima Fabura—最後の物語—  参照1100突破 ( No.248 )
日時: 2011/06/12 18:46
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
参照: 〝手を広げ 謳いながら 悠久の時に抱かれ 命をつなぐ〟

>>247 Before shot  >>253 After shot


     SHOT 2 ガキ






 鉛色の海に飛び込んだはずだった。だが結構中に落ちてみると意外と青い。・・・が、今はそんな悠長なことを考えている場合ではなかった。何しろ、ヴィルは泳げない。すでに視界には闇が侵食しつつある。

ゴボッ・・・

 脱力した口から数千個の泡が融合し、分裂し、再び融合するのを繰り返しながら若干明るい水面に向かい上昇していく。同じほうへ向かおうと闇雲に手を振り回しもがくが気持ちとは裏腹に身体は沈んでいった。

〝—————ゥ〟

〝——ヴィル!!〟

 声。閉じかけた瞼をヴィルは今一度持ち上げた。既に頭の中では火花がパチパチと弾け、散っている。黒い人影が遠くに見える。それは物凄いスピードで向かってくると、ヴィルの周りを一周回った。
 途端ヴィルの意識が現実へと戻された。訳が判らないままヴィルは自分の体のあちこちを眺め、あることに気付く。

『俺息してる!?』
「うん、そうだよ」
 泡の出る音に続いて背後から声が聞こえた。そこにはミュレアがいた。ただ、自分の体は泡で包まれているのだがミュレアの体に泡は無かった。でも彼女はまるで息をしているかのように涼しげな顔だ。

「うん。わたし、してるもの」
『はへぇ??』
 驚きすぎて素っ頓狂な声を上げてしまう。心を読まれた上に海中——いや、水中で息をしているとはどういうことか。何気なく見たミュレアの身体にヴィルは文字通り顎を外しかけた。
 ミュレアの下半身は尾ひれになっていた。

「びっくりした? わたし、人魚なの」
『でぇえーーーーっ!?』
「うっそー」
 鈴のようにころころと笑ってミュレアはくるくると上下に回った。尾ひれが海流の動きにあわせ、まるで地上で風に煽られているかのようにはためいた。マントも全く同じ動きをする。銀の髪はキラキラと煌き、銀紅の瞳はくるくると良く回る。尾ひれの鱗が虹色に煌き、艶やかな光を発していた。

「水の神霊と水属性の妖精族、こういう姿になっちゃうんだよ。行こ! 皆いるよ!」
『皆無事か?』
「当然! わたしと、あとひとりいるからね♪」
 あと一人? と首を傾げると楽しそうにミュレアはうん、と本日3度目になる動きをした。

『おーいヴィル! おー、嬢ちゃん! ちゃんと合流できたんだな!』
「もう。その、〝嬢ちゃん〟っていうのやめてください〜」
『フェルドお前もういいのか?』
 ああ、大分楽になった。と頷いてみせるフェルドを中心にヴィルは辺りの人々を見た。・・・と、ヴィルはそこですぐさまミュレアがさっき言っていた〝もうひとり〟を発見する。

『カテーナお前、水属性の妖精族だったのかー!』
         バシカリキ
「うん。あたしは解鍵の妖精族なんだけどこれが結構特殊で・・・。だからこの姿なの」
 くるりと左回りをしてみせ、カテーナは柔らかく楽しそうに笑んだ。見れば彼女の服は濡れていないようだった。ミュレアの服も。ヴィルの服も実際濡れていなかった。不思議そうに服に触れながら「で、どっち行くんだ?」と首を捻った。

『とりあえず、下へ。』
「海底だもんね〜」
『待って。水圧でわたしたち潰れない?・・・わよね?』
 恐る恐るリトゥスが誰にとも無く言った。確かに、あるかないかも判らない物を探しに行ったら水圧で潰れて全員死んじゃいました☆・・・なんてオチはつけてほしくない。

『大丈夫です。こういうのには魔力が入ってますから、水圧なんてメじゃないです』
『万が一、泡が破けても俺の結界で2時間はもつ。・・・泡が破れるって状態的、それまで海面上まで戻れるかが愚問なんだけどな』
「・・・というわけ。安心、してね?」
 やんわりとミュレアが微笑む。理解し、皆が海底に向かい進み始める。
 ふと何かに気付いたようにアルスが声を上げた。どうした、とフェルドが振り返る。気まずそうにアルスは口を開いた。
『あの、偵察に行ってた時の事を報告し忘れてました・・・』

  —*—

『成程、最終夜になる前に倒せばいいわけだ』
 先刻より全然ましな顔色になったフェルドは話を纏めた。そして、聞いた。
『今日で何日目だ?』
『〝聖月夜〟の3日間が終わって今日で2日目だ』
『ていうことはあと11日しかないんだ・・・』
 少し沈んだ調子でテフィルが言った。こんなに小さく幼き子だ、当然だろう。回りの大人達からしたらこういうふとした瞬間に「ああ、彼らを巻き込まなければ良かった」と後悔するのだ。
 戦争。当然ながら危険極まりない。常識ある人であれば罪悪感を感じるのは当然だった。

『いたたまれねぇなぁ、ガキを巻き込んじまうとはよ・・・』
『ガキ共も俺が守るよ』
『俺から見たら・・・お前も、ガキさ』
 強気で言い張ったヴィルに静かな口調でジェッズは言い返した。そこにヴィングも流れてくる。ヴィングは不敵な笑みを浮かべ、ジェッズの肩に自分の手を置いてこう言った。



『私からみりゃあ、あんたもガキだよ』



Re: Ultima Fabura—〝最後〟の物語—  第十話更新 ( No.249 )
日時: 2011/06/11 13:15
名前: アキラ (ID: jtELVqQb)


またまたお久しぶりです、アキラです。
時間はかかりましたが、読みました!
最初に思ったことがですね、内容にしろ名前にしろ世界観にしろ、
ものすごく丁寧に考えられてるな、ということです。
名前の由来とか、すげー!て思いました。
小説家なれるんとちゃうん……とか思いましたよ。


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