ダーク・ファンタジー小説

I live with ヴぁんぱいあ。【1/22更新】
日時: 2019/01/22 23:11
名前: はるた

「しばらく更新停止します(通常更新です)」 byはるた


 




 初めましてor(知っている人がいましたら)お久しぶりです。
はるたと申します。

 はるたの五作目となる今回の小説のテーマは「ヴァンパイアと人間の少女の恋」になっております。
今回は皆様に少しでも「ドキドキした」と言ってもらえるようなお話にしていきたいと思っています(思っているだけ)ので、どうぞよろしくお願いします。





【参照記念】

 参照300記念小説 >>55
 参照600記念小説 >>81
 参照900記念小説 >>111
 参照1200記念小説 >>112
 参照1500記念小説 >>121








【お客様】

◇ゴマ猫様
◆ひよこ様 
◇雨空様
◆朔良様
◇覇蘢様
◆占部 流句様
◇いろはうた様
◆錦歌赤兎様
◇紗悠様
◆如月 神流様
◇みるく様
◆波璃様
◇星来様
◆蒼様
◇美奈様
◆ゆーき。様
◇戒壇様
◆ことり様
◇顔無し@様
◆村雨様
◇佐渡林檎様
◆Garnet様


【目次】

*Prologue >>09
*Episode01 >>113



【設定資料集】

*「ゆたか&鉋」 >>77
*「八朔&海里」 >>78
*「恭也&庵」 >>104
*「悠真&千影」 >>105





 参照9000感謝です。
 



では、物語の世界へどうぞ。





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Re: I live with ヴぁんぱいあ。 ( No.18 )
日時: 2014/10/12 00:56
名前: 如月 神流



初めましてっ!隠れ読者こと、如月神流です!

はるたさんはいくつか作品を出してらっしゃるので、一通り見させていただいてます。
その中でも今回はヴァンパイアという、ドキドキ満載のタイトルに
思わずコメントさせて頂いちゃいました!

更新、頑張ってください!
1年でも何でも見ます!

私も1ヶ月前くらいから始めた初心者ですが……
もしもしもしもし、コメント下さったら嬉しいです。泣きます。いやほんとに。

これからも、ちょこちょこ来てもいいですか?

失礼しました!




Re: I live with ヴぁんぱいあ。 ( No.19 )
日時: 2014/10/12 22:25
名前: はるた

如月 神流さん

初めまして。はるたと申すものです(ド緊張っ
か、隠れ読者……、はるたにもそんな方が。
そうですね、はるたは優柔不断で話がなかなか完結させられず、いや優柔不断というよりかは文才がないせいか、うぉぉぉぉっ、話がそれましたね。一通りですか、あんな長いものを……感謝です。
一年も付き合ってもらえる……、お優しい言葉をっ。
はい、私、如月 神流さんの小説を知ってますので(タイトルが可愛らしかったので読んでいました。つまりはるたも隠れ読者♪)またコメントさせてもらいますね。
はい、どうぞ読みに来てやってください。喜びます。

コメント、ありがとうございました。

***

そろそろちゃんと更新したいです。
頑張ります……頑張ります。

Re: I live with ヴぁんぱいあ。 ( No.20 )
日時: 2015/04/26 10:16
名前: はるた

 Blood01「不幸」




 私は今まで生きてきたこの十六年間、何一つ自分が「幸せ」だと思ったことがない。別に自分一人が不幸だと思ったこともないし、人一倍幸せを欲していたわけでもない。
 でも、私はほんの少しだけれど探していた。


 今いる世界とは違う世界、不幸なんかを感じない世界を。




***




「あ、お姉ちゃん……」
「ん、どうしたの? 悠真。何かあっ……」



 私が部屋から出ると、弟の悠真が顔を濁して立っていた。
理由を聞く前に、何があったのかすぐに分かる。
 隣の部屋から聞こえる叫び声。耳に入ってくるその痛い声に私は顔をしかめながら、悠真の表情を窺う。
 悠真は、少しばかり悲しそうな……まるで強がって涙を隠しているような、そんな表情だ。それを見て私までがもやもやとした気持ちになる。



『……あなたは、またそればかりっ』
『お前だって、この前子供たちほったらかして遊びに行ってただろっ!』
『あなただって、同僚と遊びにとか言いながら女の人とどこか行って……』




 両親の会話。それは聞くに堪えないものだった。
 私はすぐに隣の部屋である両親の部屋から離れた一階に降りるように悠真を勧めた。悠真は小さくコクリと頷き、一緒に一階に降りる。
 一階に降りた後、私は悠真の顔を見て「ごめんね」と小さく謝った。すると「別に……」と悠真は私の服にうずくまって、顔を隠して答えた。きっと泣いているんだろう、男の子だから泣き顔が見られたくないんだ。そう思うと健気な弟の態度が可愛く思え、そしてまた申し訳ない気持ちになった。


 私の両親は、もう離婚寸前。
 お母さんはアルコール中毒。毎日家のこともほとんどせずに、浴びるようにお酒を飲んでいる。酔っ払っては家にあるものを投げまくり、怒りを表す。その中にはガラスのコップやお皿もあり、目の前でそれを壊す。破片が飛んできて危なかったこともあった。私は構わないが、弟の悠真に何かがあったら………と思うとひやひやモノだ。
 なかなか家には帰ってこないお父さんは多分不倫をしている。この前、塾の帰りに女の人と一緒に手をつないで歩いているのを見た。
 別に隠れて浮気をしているというのであれば、私は気にしない。でも、お母さんに背徳行為がばれてしまった。それならば、もう別れればいいのに……そう思うけれど関係はまだ続いているらしい。本当、馬鹿な人。




 ____私は自分の家族のことを「最悪」だと思う。






「お姉ちゃん……、さっき電話があってさ」
「……うん?」
「海里さんが、一緒に遊びに行こうって。だから家に迎えに来てって」
「海里が? 悠真ありがとう。あ、もし何かあったら」
「……うん分かってる。ちゃんと逃げるから」



 そんなことまで心配して出かける子なんて聞いたことが無い。
 毎回のように私は悠真にきちんと注意をする。本当に何かがあったら怖いから、これは欠かせないのだ。にっこりとほほ笑んだ悠真にほっとして、私はマフラーを巻き手袋をして家を出た。
 息が白くなって見える、真冬の朝だった。



***




 私は友達の海里の家につき、チャイムを鳴らした。最初に海里の母親が出てきた。すぐに海里のお母さんが海里を呼んでくれて、玄関に海里がやってくる。私は軽い挨拶として「やっほー」と笑って見せた。



「あれ、どうしたの? ゆたか。こんな朝早くに」
「……え? 電話してきたんでしょ、そっちが。悠真くんがお姉ちゃんが遊びに行こうって言ってるって」
「私知らない」
「……」


 悠真が私に間違ったことを伝えた? 
 友達の海里の言葉と、悠真の言葉に矛盾が生まれる。
私は、どうして悠真が嘘をついたのか全く予想がつかなくて困ってしまった。脳をフル回転させて考えるも、悠真が私を家から出させないといけない理由なんて思いつかなかった。



「もしかして、私……悠真に嫌われてる!?」
「それだけはないでしょ。ははは、悠真くん、結構なシスコンだよぉ」
「そ、そうかな?」



 シスコン……。そんなことないと思うんだけどなぁ。
 確かに悠真と私はどちらかというと仲のいい姉弟に見えるかもしれないけれど、結局は私が両親から悠真を守るために引っ付いているようなものだ。悠真にとっては鬱陶しい姉なのかもしれない。
 私が首を傾げていると、海里がカラカラと声を出して笑ってくれたので、少しだけ私はほっとした。


「あ、そうだ。話があるんだけど。いい?」


 話なんか普通に会話に紛らせればいいのに、わざわざそう最初に言うのは、何か大切な話なんかもしれない。
 私はうなづいて答えた。


「……うん。いいけど」
「ここじゃぁ、あれだし。ちょっと外でようよ」


 海里が防寒着をとりに家に入って言った後、しばらく待って私たちは外の出た。
 丁度その時、ぽつぽつと真っ白な雪が降ってきた。私は雪を見ながら小さな溜息をつく。
 あぁ、冬だなぁ……。



***


「佐伯くんのことなんだけどさぁ」
「佐伯って……、あぁ恭也のこと?」
「あんたら下の名前で呼び合うような仲だったんだぁ」
「……じゃなくて、弟が恭也の妹と仲良くて。それで……」
「告白されたと?」
「まぁ……、ん? って、何で知って!!じゃなくて、えっ」



 ごく普通にクラスメートの会話をしていると思うと、突然自分しか知らないはずの事実をさらりと海里に口にされ、私は戸惑った。
 「ははっ、やっぱりぃ」と、からから笑う海里に私は困り顔で「なんで知ってるの?」と真面目に聞き返す。



「ちょっとしたテクニックっていうかぁ。カマかけたの、佐伯くんに」
「どうして」
「だって佐伯くんがゆたかのこと好きなんて最初から分てたことだし……ってか、気づかなかったの?」
「……っ」

 そんなことも分からなかったのかぁ? と馬鹿にされたように言われたので、私は恥ずかしくなった。
 佐伯恭也、その人物は私と海里のクラスメートだ。明るく皆に気が配れるため、いわゆる人気者。悠真がらみで仲良くなったものの、私からしたら何だか遠い世界の人みたいだった。でも、そんな人が私にある日告白をしてきた。なぜ私なのかは全く分からない。でも彼は顔を赤らめながら、純粋な気持ちを私にぶつけてきた。
 私がその場で答えることが出来ず困っていると恭也は「また、今度でいいから」と優しい言葉をかけてくれた。その言葉に甘え、もう何日も彼とは話さず、答えを出せていなかった。



「で、なんて答えるの?」
「……海里なら分かるでしょ? 私には恋だの間のそういうのは向いてないって。馬鹿らしいって思ってるって」
「えぇー、もったいない。佐伯くんは相当なイケメンだし、それに釣り合ってゆたかも可愛いじゃん」



 やっぱり恭也には私なんか勿体ない。恋に興味のない私なんかより、もっと可愛い女の子と付き合った方がいいのだ。そう思うと、私は「はい」という言葉を伝えられない。でも、そう言って恭也を傷つけるのも嫌だった。我儘な女だと自覚はしている。でも、私はまだ彼に返事は出せないのだ。
 そして、海里に「可愛い」という単語を言われると、なぜか私の頬は赤くなってしまった。女の子に言われたとしてもそういう言葉をかけてもらえるだけで光栄なのだ。私はついにやにやとしてしまい、ばれないように口を隠した。
 顔が火照ったのは、これは雪のせいだ。寒いから顔が赤いのだ……そう思い込もうとして私は一息。



「私には、悠真を守る義務があるの。あの子はまだ……」

 私にとっては大切な言葉。それを海里にも聞いてほしかった。
 その言葉がちょうど出かかった時。
大人たちの大きな声が聞こえて、やっと私たちは目の前の光景に気が付いた。



「火事だぁぁぁぁぁぁっ」




 今ようやく気が付いた。
今歩いている方向。今は、海里の家を出て私の家を向っているのだ。
だから、自分が来た道を戻っている。それに声の聞こえた方向。



 ……それは、まさしく。



「な、なんで……」



 そう、火事が起こった場所。それは私の家だった。



Re: I live with ヴぁんぱいあ。 ( No.21 )
日時: 2015/06/04 08:21
名前: はるた




 Blood02「火事」





「な、なにこれ……」


 私は勿論、その光景に声を亡くした。
 私よりも先に海里が声を出す。ようやく私も今の現状が理解でき、声が出るようになった。でも、真っ黒な気持ちが私の喉にまとわりつき、声を出させないようにしているようだ。気持ち悪い、吐き気がする。
 私も同じことを思っていた。どうしてこんなことになっているのだ? 何で火事なんかに? けれど、私ははその言葉をごくりと飲み込んだ。
 もしかしたら……。いや、違うと信じたい。
 私は目の前の光景に目を疑いながらも涙を止められなかった。


 
 すぐに救急車がやってきた。
運ばれ行くのは焼き焦がれた両親と弟。皮膚が赤い。私はギュッと拳を握り、その三人の姿を目にした。でも、悲しすぎてそれから目を逸らすことしかできなかった。



「ゆたかっ、私……いっしょ、に」
「ううん。大丈夫。海里は一回家に帰って」
「え、でも……」
「大丈夫。海里が心配することなんて何もないから。だから、海里は一回おうちに帰るの、分かった?」
「う、うん」



 海里の声はいつもみたいな能天気な明るい声じゃなくて、何か奇妙なものでも見たかのような震えた声になっていた。当たり前だ、友達の家族が火事にあった、そんな事実を今彼女の胸に突き付けられている。しかも、友達の方がもっと悲しい……だから自分が泣いてはいけないのだ。きっと海里は優しいからそう思っているはずだ。私の中には申し訳ない気持ちも勿論あったが、それを態度に表わすことが出来なかった。涙を流すことができない自分を悔やんで、私は救急車に乗った。
 私は海里を家に帰し、燃えていた自分の家を見つめながら家から離れていった。


 火を消している消防署の人たち。
 興味本位で近づくやじうま。
 何やらこそこそと話し出す近所の大人。




―――お姉ちゃん




「……ゆ、悠真」



 私の目に映るのは、真っ黒になった弟の姿。
いくら声をかけても気付いてはくれない。
 体の震えが止まらなかった。涙が止まらなかった。苦しくて苦しくて、口の中が苦い……まるで砂でも口にしてしまったようだ。眠り続ける悠真に向かって嗚咽する。子供みたいに泣きじゃくる私は、すぐにこのことを理解できた。私はきっとこの先、永遠と、この火事を思い出して後悔し続けるのだろう。この火事にとらわれ続けるのだろう。





「い、いやっ……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」




 自分の叫び声に自分自身が一番驚いた。
もしかしたら、悠真は……。この先目を覚まさないかもしれない。もう二度と、私に笑顔を見せてくれないかもしれない。
 口から血の味がした。意識がもうろうとするのを我慢して、私は動く救急車に身をゆだねた。




「ゆぅまぁ、嫌だよっ!死んじゃやだよ。行かないでよ!」




 ただ一つ、思ったこと。
 もう、私は私ではない。まるで別の誰か、みたいだ……と。




***





 私は病室にいた。
薬の匂い。これは病院独特の匂いだ。
 私はベッドの前にいすを置き、そこでずっと座っていた。


 目の前で目を閉ざして眠っているのは、私の弟の悠真。
優しくて、優しくて。その優しさが仇となってこんな目にあってしまったのだ。

あの時、私を家から追い出したのは、なんとなく勘付いていたからなのかもしれない。火事が起こるという。



「残念、だったね」




 悠真の病室に現れたのは、さっきまで話していた担当医だった。
紳士っぽい男の人で、なんだか一流のエリートっぽい感じがする。かしこまっている白衣も、ぎこちない彼の笑顔も、なんだか全部が気持ち悪く感じる。



「何がですか?」
「……両親を亡くされて、それに弟君まで……意識不明の重症。同情かもしれないが、僕は本当に助けられなかったことを悔やんでいる」
「違うでしょ、先生」




 私が無理矢理笑顔を作ると、先生は少し苦い顔になった。
私は分かっているつもりだった。これ会社にはいってはいけない一言だと。でも、口が勝手に動いていたのだ。それなら仕方ないでしょ、先生。


「一家心中に取り残されたなんて、可哀想な子だなぁ……でしょ」



 自分で言って自分で恥ずかしくなった。
その上に、涙が出そうになる。私は本当、何を言っているのだろう。
 きっと、あれは一家心中なんだと私は思った。警察は何らかの事件かもしれない、そう言って捜査を進めているが、きっと何も見つからないだろう。


 しかも私は両親が死んだというのに、それは何故かあんまり悲しくなくて。あぁ、私最低だなぁ。小さく乾いた笑い声をあげながら、私はゆっくりと目を閉じた。真っ暗な世界が広がる。どうせなら、私をそっちの世界に連れて行ってよ。でも、やっぱり怖い。私はやっぱり怖いのだ、死ぬことが。
 長針が死んだということとは反対に、眠っている悠真が起きる可能性が少ないことを私は恐怖に思っていた。俗にいう、植物状態というやつだそうだ。起きる可能性もあるが、ほとんどの人がそのまま死んでいくらしい。
 私は先生にあることを尋ねてみた。
 

「私は、死んだ方がよかったんでしょうか」


 私の言葉に、先生は何も返してはくれなかった。




***





「お姉ちゃんっ」
「千影ちゃん……来てくれたんだ」



 先生が病室を出てから約一時間。私はこの場を離れることが出来なかった。ただ、じーっと悠真の寝顔を一転に見詰める。
 そんな中、突然ランドセルを背負った女の子が病室に入ってきた。
 小柄な女の子で、髪を可愛らしいゴムでふたつ結びにしている。
 その子は恭也の妹の千影ちゃんだった。悠真とはとっても仲が良くて、本当に仲が良くて……。




「お姉ちゃん、泣いてる?」
「ううん、泣いてないよ」



 我慢していたものの、涙があふれていた。ほんの数日前までは普通に千影ちゃんと一緒に遊んでたんだよ? お姉ちゃんって私のことを読んでくれていたんだよ? それなのに、どうしてこんな、こんな風になっちゃったの。
 そんなことをこんな小さな子供に悟られるわけにはいかなかった。
 私はにこりと笑ってそう言った。心の中では泣いていたけど、こんな子供に伝えることじゃない、そう思った。




「悠真くん、もう目……覚まさないのぉ?」
「……」


 いたって普通の質問。
千影ちゃんの質問に私は戸惑った。
どう答えればいいのだろうか、本当のことを言うべきなのか、言わないでおくべきなのか。心の中で葛藤が繰り広げられた。
 そうだよ、と言えば嘘になるかもしれない。でも、もう……目を覚まさない、と言えば千影ちゃんを苦しめてしまう。いや、違う。私が傷つくんだ、自分が苦しむのが嫌で千影ちゃんに本当のことを言えないのだ。最低だ、私。



「願っていれば……目ぇ覚ましてくれるって願ってたら。きっと……悠真は起きるよ」
「ほんとう?」
「うん、本当」



 私も願っていたのだ、悠真がそうなってくれること。
また目を覚まして、私に笑いかけてくれて、いつものように仲良くお話して……たまに喧嘩をしたり、言い合いをしたり。
 でも、私は怖いのだ。願うことも。……すべてに気づいてしまったから。悠真はもう目を覚まさない、私の元に戻ってきてはくれない。
 胸中で思っていることを悟られないように、私は千影ちゃんに優しくそう言った。
 自分だけでは怖いから人に押し付ける。なんて最悪な人間なんだ。




***




 この先、私はどうしていくのだろうか。
両親も死んだ。大好きな大切な、そんな弟ももう還ってこない。
 一人ぼっちで寂しくて、ウサギみたいな真っ赤な目をしながら私は永遠泣き続けるのだろうか。
 施設に預けられて、そのまま大人になって。自分の犯した過ちすら忘れて、平然と生きていくのだろうか。
 そんなのは、嫌だ。絶対に嫌だ。そんな風に生きることしかできないならば、私は問おう。なぜ私だけこの場所で停滞し続けなければいけないのか、と。



 この町でいるのは嫌だ。大好きな私の地元。友達だって大好きだし、ご近所さんだってみんないい人たちばっかり。でも、この場所にいたら狂ってしまいそう。自分だけが生きているという罪を、強く実感してしまう。
 可哀想な子、として見られるのが嫌だ。
 家族と生きてきたこの場所で、このまま当たり前のように暮らしていけるはずなんかない。
 思い出しては苦しむだろう。私もあの時一緒にいれば、と。


 そうだ、こんなに苦しまなくてはいけないのだったら、いっそ……。

 この町から逃げ出してしまえばいいんだ。



Re: I live with ヴぁんぱいあ。 ( No.22 )
日時: 2015/04/26 11:58
名前: はるた



 Blood03「逃亡」





「大丈夫か、ゆたか」




 後ろから聞こえる聞き覚えのある声。私はその声に振り返った。
 今日は両親の葬式で、私たち家族に関わり合いのあった人が集まっている。みんな、突然の私の両親の死を悲しむ、その姿を見て私の心がギュッと引き締められる。
 声をかけてきたのは、私の弟の悠真の友達の兄、そして私のクラスメートの佐伯恭也だった。なぜか私を見るなり顔を伏せる。そんなに私のことを可哀想だと思っているのだろうか。


 そう思われる方が、なんだかつらいな。
私は強がって見せるものの、すぐにそれは恭也にばれた。
 でも、技と恭也は気づかないふりをしてくれる。ありがたいけど、私はソレのほうが何だか嫌だった。




「うん、大丈夫」



 そう答えるしかほかないじゃない。
つらい、なんて言えない。それに、実際そうだったから。
 両親とはそんなに大した話もしていないし、特別仲の良かったわけでもない。寧ろあの人たちのことを、私は恨んでいた。
 私はまだしも、まだ幼ない悠真にまであんな最低な親の姿を見せて。親の優しさなんて全くなく、何でも自分でしなさいという勝手な信念を押し付けた。いわゆる育児放棄に近い奴かもしれない。姉である私がいたからよかったものの、悠真が一人っ子だったとしたら……そう考えると怖かった。
 だから、私はそんな両親を憎んでいた。
悲しい、そういうと嘘になるかもしれない。





「そっか、顔色あんまり良くないみたいだったから……。安心した」
「あ、ありがと」





 恭也は小さく微笑んで、また顔を伏せた。
何で顔を伏せるのかは最初は分からなかったけど、やっと分かった。



「あのね、恭也」
「うん」
「私、恭也のこと嫌いじゃないよ」
「……うん」




 彼は、数日前に私に告白をしていたのだ。
私の言葉に、彼は少し困ったように眉をひそめた。やっとこの話が来たか、とでも思ったのだろう。
 こんなに待たせたこと、悪かったと思う。でも、言えなかったのだ。
 でも、実際今でも返事は迷っていた。
 恭也のことは嫌いじゃない、どちらかと言えば好きだ。でもこの気持ちの正体は「友達」としての好きなのかもしれない。
 恭也は優しくて、気が利くし、私なんかのことを好きでいてくれる。
 

 しかし、私には「好き」という感情が分からない。
 恋愛感情、そんなものがこの世の中にあるのが不思議で不思議でたまらない。
 実際私がこんな両親のもとで育たなかったら、きっと恭也みたいな優しい人を好きになっていたのだと思う。きっと恋に落ちていたのかもしれない。でも、私にはそれが理解できない。


 好意とは、興味とかなのか。
 それともまた別のなにか?



 こんなみんなが簡単に出せる答えを私は出せない。
そんな、そんな私は……
 いつかは人を愛せる日が来るのでしょうか。




「嫌いじゃないってこと聞けただけでも、俺は嬉しいけど。じゃぁ、ゆたかには好きな人いるのか?」
「ううん、いない」
「じゃぁ、俺と付き合ってから好きになっていくっていう道はないのか?」
「ない、と思う。私はこの町を離れるから」





 恭也の顔が曇った。
 私が乾いた笑顔を見せると「何で」と聞いてくる。
私はこの質問に答えなくてはいけない、そういう義務があると思ったが上手く言葉にできなかった。
 この町にいると苦しいの、そんな私の我儘。言えるわけないもん。そして、もう一つだけある、私のこの町を出ていかなくてはいけない理由。それこそ、絶対に言えない。死んでもいう訳にはいかない。



「だから、悠真をよろしくね」
「なんでだよ、何でこの町から離れる必要があるんだよ!俺は嫌だ、例えゆたかに好きになってもらえなかったとしても、そばで一緒にいることくらい許してくれよ。俺は、ゆたかのことが……」




 恭也は優しすぎる。
 確かに格好いいし、きっと付き合ったりしたら私のことを大事にしてくれるんだろう。でもね、ごめん。
 これは私の独りよがりなんだ。
 私に決められた運命なんだ。
 悠真の傍にいると、私は今にでも壊れてしまいそうなの。胸がチクチクして、この棘が永遠とれてくれないの。

 ……この私の罪と秘密。
ここにいると、誰かに話してしまいそうで怖い。





「さようなら。恭也、あなたには感謝してる」




 別れは、必ずやってくるから。



***





「ここであってるよね」



 自問自答してみるものの、やっぱり不安がつきもので。
看板を見てみると知らない街の名前が書いていて私はまた不安になった。
 寒い、寒い。雪がぽつぽつと降ってきて、辺りを真白に染める。
 あたりは該当が少なく、真っ暗。私は恐る恐る足を進めるものの、道があっているのかどうか不安で不安で仕方がない。



 バスを乗り継いで、私の知らない街に来た。
荷物であるキャリーバッグを片手に、私は足を進める。
 この町なら、私が誰なのかばれないだろう。
 そうだ、私は誰も私を探せない街に来たんだ。
いや、もしかしたら……これは俗に言う迷子というやつなのかもしれない。




「こ、こんなところで迷子とか嫌だっ。こんな時に限って方向音痴がアダになるとはぁ……。あ、でも大丈夫さっきバス停のところにあったこの地図を見れば……」





三十分後。



「こんなの分かるわけないじゃんっ!てか北ってどっちよ、もう真っ暗なんだから分かるわけないじゃん」





 結局迷子になりました。
というか、北とか南とか分かるわけないじゃない。なに、一回行った場所でも迷うのに、三十回言った場所でも迷うのに、いまだに高校でも場所分からなくなったりするのに、初めて行く場所で迷わないわけないじゃないか!
 ひとりでに怒りを心の中で叫びながら、私はプンスカとまた足を勧めた。


 道を歩き続けて軽く一時間が経過。また訳が分からないところに来てしまった……。
 情けない、高校生にもなって、本当。
 迷子センターとか、ここらにはありませんよーだ! 遊園地やでっかいデパートでもあるまいし。 
 真夜中のため、人通りなんてないから道を尋ねることもできない。



「もうっ、最悪」




 私が来た道を帰ろうとして振り返ったところ、小さな路地が見えた。


 そこには人影があって、こんな真夜中なのにどうして人が? と思うより先に「よし、道を尋ねよう」という欲求が勝ってしまったので私はその場所に近づいた。
 そこには二人の男と女がいた。
 最初は二人が抱き合っているのかと思って、正直引いたがよく目を凝らすとすぐに違うと分かった。




「……え」




 女の人が男の人の身体からするりと離れていき、横に倒れた。
衝撃的だった。あ、これは殺人とかの類ではないかと思ったほどに。


 体が震えた。
全身に鳥肌が立つ。目の前の光景を、私はすぐには理解できなかった。




「何やってんの、お前」



 私は驚いて、そこから動くことが出来なかった。
 そんな中、男のほうが私に気づいたのか話しかけてきた。真っ暗な闇に包まれて顔や年齢は分からないけど、声からしてまだ若い男だと思った。私は動かない足をにらみつけた後、ゆっくりと顔をあげた。
 そこには、やっぱりいなくなることなく男の姿。
 もしかしたら、次殺されるのは私?


 そういう風に思う反面、私はこういう場合を何て言うんだっけ、とずっと考えていた。





 あ、思い出した。




 …………弱り目に祟り目。


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