ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 彼女が消えた理由。 完結 そして、
- 日時: 2011/08/31 01:40
- 名前: 朝倉疾風 (ID: 0nxNeEFs)
- 参照: http://lyze.jp/ix3x/
キャラ説明
>>79
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- Re: 彼女が消えた理由。 最終章突入 ( No.215 )
- 日時: 2011/08/26 23:42
- 名前: 朝倉疾風 (ID: 0nxNeEFs)
- 参照: http://ameblo.jp/ix3x-luv/
ヒロカが愛していたのは、千尋の母・千里。
だから、その千里が他の男と幸せな家庭を造っているのが、
たまらなく許せなかったんです。
だから、子どもである千尋や五鈴にもその嫉妬は容赦なかったんです。
彼に優しくしていたのも、彼女の演技です。
>紅蓮の流星さん
どういう終わり方にするかは、もう決めています。
ただ、千尋はミユキではなく、彼女が酷似している彼女の
母親 「ヒロカ」 を見ているので、ミユキ自身を好き
になることは、無いと思います。
>NAHOさん
チヒロは性格腐ってます。 もう容赦ないです。
彼もまた、愛する「ヒロカ」を殺されましたから。
>△雨根りゆさん
- Re: 彼女が消えた理由。 最終章突入 ( No.216 )
- 日時: 2011/08/27 00:20
- 名前: 朝倉疾風 (ID: 0nxNeEFs)
- 参照: http://ameblo.jp/ix3x-luv/
♪♪
10年前から、わたしたちの時計は止まったままだった。
どこか諦めてたの。 わたしが、わたしとして生きることを。
ねえ、お父さん。 わたしね、
あんたこと、大嫌い。 おかあさんの次に、だいきらい。
♪♪
俺は自分に都合のいい夢でも見てるのか……。
ここにミユキがいるわけないのに。
「千尋……」 でも、そこにいるのは確かにミユキだ。
「どうしてミユキがここにいるわけ? 俺の部屋に居ろって言ったよなぁ?」
絶対的な存在を前に、ミユキの体が一瞬、ビクリと震える。
うつ伏せになっている俺の背中に腰をおろしているそいつは、けらけらと笑いだした。
「俺の言うことが聞けないの? 家に帰れって言ってんだよ」
「……今さら父親面かよ」
「なんだとゴラァッ!!」
思い切り頭を蹴られる、、、っ痛……なんか、すっげえ目眩する。
「俺はなぁ、ミユキとはもうずっと前からコンタクトとってんだよ。 それこそ、蓮奈の野郎に見つからないようになぁ。 お前らに復讐するためによッ!」
うわ、歯が欠けた。 口の中が切れて血の味がする。 やっべえ、けっこう情けなくねえか。
「ミユキもなぁ、おかあさんがコイツの母親に殺されて悲しいんだよなぁ? ヒロカが死んで泣いてたんだろう? 俺は知ってる! お前がずっとずっと苦しんできたことも、本当はコイツを殺したいほど恨んでるってこともよぉッッッ」
───わたし、アンタのことが大嫌い。
あれ、照れ隠しじゃなくて本当にそうだったのか。 ツンデレキャラだと思っていた俺の解釈は間違いだったっていうこと?
しゃあねぇな。
俺、超格好悪い。
「勘違いしてるの……おとうさんのほうだよ」
小さく。
とても小さい言葉が口から発せられた。
俺を蹴り続けていた園松チヒロの足が、止まる。
「わたし、復讐とかどうでもいい。 おかあさんのこと、本当は……あんまり好きじゃなかった。 いつもわたしのこと、いらないような眼で見てくる。 本当はわかってた。 ああわたし、復讐のために使われてるんだなって」
ちぃさんが言っていた。
ミユキを産んだ理由は、俺の父親の子どもだと、母に誤解させるためなのだと。
ちょうど同じ時期に俺を妊娠していた母に対しての、あてつけなのだと。
「おかあさんが死んで、どこかでほっとしてた。 もう終わるんだって。 わたしはもう自由なんだって。 …………なのに、おとうさんはわたしに電話をかけてきた。 陽忍千尋と、まだ関係は続いているのかって、わたしをまた、あの暗い場所に閉じ込めようとしたッ」
他の男と付き合って、普通な女子高生になろうとしているミユキを、この男がたしなめた。
普通なんて許さない。
おまえは、ヒロカの復讐を果たすためだけにある。
道具だ───と。
「み、ミユキ……俺は、そんなつもりはないんだ。 でも、お前だって憎いだろ? ヒロカはずっと愛されたかったのに」
「わたしも愛されたかった!!」
ミユキの、叫び。 近づいて来る彼女を、まるでヒロカの亡霊でも見ているかのように、園松チヒロが拒否する。
「く、来るなぁッ! 俺もなあ、ミユキ……お前を愛してるんだぞ? お前だけ……お前だけが俺の……俺とヒロカの……ッ」
「アンタが愛してるのは、ヒロカだけでしょ」
涙と鼻水を垂れ流し、ヒクヒクと震えている園松チヒロを見下ろして。
彼女は、ヒロカの口調で冷酷に言い放つ。
「ねえ、チヒロ。 わたし、あなたのこと、嫌いなの」
△
「ねえ、チヒロ。 わたし、あなたこと、好きなの」
突然そう言われて、ドキッとした。 動揺を悟られないよう、あえて視線は外す。
「ふうん。 ……でも、いちばんは陽忍千里だろ?」
「千里は別格よ。 というか、彼女を旧姓で呼んで。 陽忍だなんて聞きたくない」
長い髪をとかしながら、ヒロカが吐き捨てるように言った。
「ミユキ、いまそいつの家なんだろ」
「面倒だから預けてきた。 ……千尋、すごく大きくなってた」
「嫌味かよ、おい」
わざわざ俺と同じ名前をつけなくてもいいのに。 腹が立つ。
「ムカつくよね」
ポキリ、と音がして。
ヒロカが指を鳴らしていた。
「ムカつく。 ヘラヘラ笑ってわたしに懐いて来るの。 気持ち悪い」
「……指鳴らすと太くなるぞ」
「……殺してやりたい」
うっすらと目に宿る殺意。 それは、愛らしいはずの幼児にまで及んでいた。
「大丈夫。 俺がぜったい、ヒロカを幸せにするから」
「ありがとう、チヒロ」
復讐するんだ。 ヒロカの気が済むまで。
もしそれが終わったら、今度家族3人で旅行とかしてみたい。
「チヒロ、あのね、大好きだよ」
うん、俺も。
- Re: 彼女が消えた理由。 最終章突入 ( No.217 )
- 日時: 2011/08/27 00:45
- 名前: 朝倉疾風 (ID: 0nxNeEFs)
- 参照: http://ameblo.jp/ix3x-luv/
──彼女が、消えた理由。
横に転がる園松チヒロの死体を、一瞥する。
ミ ユキが殺したわけじゃない。
自殺だ、
ミユキの姿をヒロカと重ねて、その口から 「大嫌い」 と言われて、呆気なく彼は崩れて行った。
「ナイフ、所持してたとは」 「千尋が切られてたらどうしよって思った」
首がパックリ裂けていて、中からドロドロと赤い液体が流れ出る。
こんな人間でも、血は赤いのか。
「ッ、………」 「血、怖いんだね。 わかるよ、その気持ち」
ミユ キがそっと、俺を抱擁する。
心臓の音、心地いい。 モソモソと動いて、ミ ユ キが俺の額を舐めはじめる。
「なに……どうした」 「血、ついてるから。 痛そうだし」
さっきの悲痛な表情は消え、元の園松ミユキに戻っていた。
そっと彼女の体に触れてみる。 細い首筋、少し膨らんだ胸、平たいお腹。
そこにさしかかったとき、ミ ユ キが 「あ。」 と声を上げる。
「どうした?」
「…………わたし、妊娠してる。 千尋の子ども」
あ。
「え、そうなの。 俺、とーちゃんになるのか」
「そうだよ。 ていうか、産んでいいの?」
「ヒロカの好きにしたらいいよ」
ポンポンと頭を撫でる。 息をすると、ヒロカのに臭いが鼻孔をくすぐる。 良い匂い。
「 千尋」
名前を呼ばれて、ヒロカのほうを見る。
なんだよ、その顔。 なんだかショック受けたような顔だな。
「ヒロカ、なんだよその顔。 すっげえアホ面」
「わたし、ヒロカじゃないよ?」
震える声でそう言う彼女。 ヒロカじゃないっていうなら、一体だれだよ。
「何バカなこと言ってんだよ。 お前、ヒロカだろ?」
「わたし……ミユキだよ? 園松ミユキだよ。 ヒロカの娘だよ」
「────む、すめ?」
むすめ?
ヒロカにむすめっていたっけ?
あれ、なんだこれ。 なんか思い出せない。 俺は、陽忍チヒロだろ?
チヒロ、千尋? あれ、どっちだっけ。
ていうか、横で寝ころんでるやつだれだよ。 血だらけだけど。
あれ、あれれれ?
「ちひろ?」
──チヒロ、わたしチヒロが大好きだよ。
──ヒロカはお前も憎かったんだ!
──あなたの名前に、わたしと千里の字が使われてるの。
──お前へのあてつけだったんだよ!
ああ、ああ? こんなヒロカは知らない。 こんな、ヒロカは知らない。 ヒロカは知らない、だって、俺が知ってるヒロカは優しくて、温かくて、男と性行為なんてしないし、いつだって純粋で、
──チヒロ
俺の名前をよんで、
──ミ × キ と仲良くしてあげてね。
なのにそれなのにさあ、なんでだよ。
こんなのヒロカじゃない、ヒロカじゃない!
「チヒロ 「お前はヒロカだろ!? なあ、そうだよな! 答えろよッ」
じゃあここに居るのは誰だよ! ヒロカだろッ!
ヒロカは死んでもないし、ずっと俺と居たんだよ! 同棲だってしてたろ?
「痛いよ……チヒロ……」
「ヒロカだよな! ヒロカ、ヒロカ、俺なあずっとお前のこと大好きだったんだ! 俺、まだ6歳のガキだったけど、お前にすっげえ欲情しててさあ! ヒロカ、俺の子ども妊娠したの? すっげえ嬉しい!」
なのに、どうしてヒロカはこんなに悲しそうな顔をするんだよ。
俺が好きって言ってるのに、悲しい顔をすんなよ。
「あははははっ、なあ、ヒロカ、俺なあヒロカに作ってもらったハンバーグ、すっげえ美味しかったんだ。 また食いてぇなあ。 ヒロカ、すっげえ料理うまかったもんな! ヒロカ、ヒロカ」
ポロリと。
ヒロカの目から涙がこぼれる。
「……なんで泣いてるんだよ」
どこか絶望したような空虚な目。 俺をじっと見つめてくる。
しばらく口を微かに開け閉めしていたけど、口角を少しだけあげて、笑った。
「わたし……ヒロカだよ……チヒロ……」
そう言って、俺をまた抱きしめてくれる。
この匂いとぬくもりは、やっぱりヒロカだ。 俺がずっと大好きだった、ヒロカ。
なのに、どうしてヒロカはこんなに泣いてるんだ。
広い田んぼに響くほど、大きな声をあげて。 子どものように、ヒロカが泣く。
声が枯れてしまうのではないかと、心配にもなった。
だけど、大丈夫。
ヒロカには俺がついているから。
──その日、彼女は消えた。 自分の存在を消してまでも、彼を愛していたから。
- Re: 彼女が消えた理由。 最終話 ( No.218 )
- 日時: 2011/08/27 01:11
- 名前: 朝倉疾風 (ID: 0nxNeEFs)
- 参照: http://ameblo.jp/ix3x-luv/
──「彼女」が消えて、残ったのは
偽りのキミだった。
──彼女が消えた理由。
それは、陽忍千尋がヒロカを愛していたから。
──彼女が消えた理由。
それは、陽忍千尋がヒロカを求めていたから。
──彼女が消えた理由。
それは、陽忍千尋が現実を受け入れなかったから。
それだけ。
それだけの、理由。
一人の少女がアパートから降りてくる。
年齢は中学生くらい。 顔立ちは整っていて品があるのに、短い髪がどこか男の子のようだった。
部活に行くのか、背中にはバドミントンのラケットを入れた袋を吊るしている。
アパートの1階にある自転車置き場へ行き、ロックしていた鍵をあけて自転車に乗ったところで、
「陽忍美雪さん?」
男に声をかけられた。
振り返る。 少女にとって、見知らない男だった。
「あー、はい。 そうっすけど」
「ああやっぱりそうでしたか。 俺、安藤恵登です。 刑事やってます」
馴れ馴れしく話かけてきた、40代ごろの男。 華やかな容姿のためか、見た目より若く見える。
刑事、という普段であまり耳にしない言葉に、少女は少し警戒する。
「なんか、アタシに用ですか?」
「あの〜、ご両親についてお聞きしたいんです」
「……はあ」
どうして両親のことを聞かれなくちゃならない。
少女はそう思ったが、とりあえず了承する。 男はニコニコと笑いながら、
「ご両親のお名前は、陽忍千尋さんと、陽忍ミユキさん……であってますか?」
と確認をとってきた。
少女は少しため息をついて、迷惑そうに言い放つ。
「母の名前、ヒロカなんですけど。 人違いじゃないっすか?」
「────やはり、そうでしたか」
ボソリと言った男の声は少女には届かず。
怪訝そうな表情をして、少女は自転車で走り去っていく。
少女は、知らなかった。
少女の名前を「美雪」と決めた母親の心情も、未だに亡き者の幻影を見ている父親の歪みも、そして───
「あ、吉川サンにゲーム返しに行かないと」
自分がどうして産まれたのか。 その本当の意味も、なにもかも。
完
- Re: 彼女が消えた理由。 完結 ( No.219 )
- 日時: 2011/08/27 02:34
- 名前: スサノオ (ID: 5/5aatb0)
え…と…。
初めまして、なのですが……。
正直、圧倒されております。
朝倉様のお名前は度々目にしていたのですが、今回、あなた様の小説を初めて読ませていただいて、衝撃を受けました。
本屋に置いてあったら即、お金払ってお持ち帰りのレベルです!
すごいものを見てしまった。そんな気持ちです。いや実際そうなんですけど。
凄い、の一言じゃ片づけられないくらい素晴らしいです。
『包帯戦争。』の方も見させていただきます!
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