ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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彼女が消えた理由。 完結 そして、
日時: 2011/08/31 01:40
名前: 朝倉疾風 (ID: 0nxNeEFs)
参照: http://lyze.jp/ix3x/

キャラ説明
>>79

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Re: 彼女が消えた理由。 ( No.59 )
日時: 2011/07/12 21:01
名前: 風(元:秋空  ◆jU80AwU6/. (ID: L0.s5zak)

お久し振りです。
徳実さんが犯人で有る事に驚くと同時に、理由を聞くと納得が出来て本当に、書き方が上手だと思いました。
第二部も期待です^^

Re: 彼女が消えた理由。 ( No.60 )
日時: 2011/07/12 21:20
名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: nx/9fFvO)

第二部って響きはなんだかとてもワクワクします。そんな流星。
てか、来た。白髪キャラきた。白髪ってなんかブラックジャックの時代からロマンを感じます。

もうすぐ念願の夏休みです。今年の夏はこの作品で乗り切れそうな気がします。
宿題なんて千切られて投げられて何処かに飛んで行ってしまえばいい。

Re: 彼女が消えた理由。 ( No.61 )
日時: 2011/07/12 21:46
名前: 朝倉疾風 (ID: Y6JFMuC.)
参照: http://lyze.jp/ix3x/

第2部も頑張ります。
わたし、頑張る。
うおーっ!
カタカタカタカタ
>風さん


白髪です、白髪。
白いです。 おじいさまです。

夏休みになると、「時をかける少女」が
無性に見たくなる。
チアキに、ゾッコンです。
>紅蓮の流星さん

Re: 彼女が消えた理由。 ( No.62 )
日時: 2011/07/12 22:27
名前: 朝倉疾風 (ID: Y6JFMuC.)
参照: http://lyze.jp/ix3x/



第1章
『傷が抉られ、身が弾けて』



夏休みが始まって2週間が経った。
俺、陽忍千尋。
ただいま入院中なう。

「しっかしなんだね。 いきなり電話がかかってきて何事かと思ったけど。 なんでアイス買いに行って入院なわけ。 行動に脈略がほしいわ」
「いやそれ俺に言うな。 いきなり襲撃してきた奴に言え」

ため息混じりの蓮奈さんが、病室のパイプ椅子に座って苦笑している。
ミユキはアイスを舐めながら、無言で退屈そうだ。

「警察に言わんでええわけ?」
「────おもしろおかしくされるから、いい。 犯人はわかってるし」
「ありゃ。 誰さ」

答えようと息を吸うと、

「千尋の兄さんだった」

変わりにミユキが答えてくれた。
吸った息は言葉にならず、二酸化炭素として吐き出される。

「兄さん……アンタ、兄貴なんていたっけ」
「年は離れてるけど、いる」
「へえ。 アンタの兄貴ねえ。 見たことないな。 似てるの?」

似てる……だろうか。
俺は母親似だけど、兄は父親似だったと思う。
どうだったかな。 10年間まともに会ってないから、わからない。

「どうだろう。 性格は似てるって言われたかな」
「最悪の性悪だ。 わたしはコイツより、あっちのほうが嫌いかも」

ミユキが感情的に兄への怒りをあらわにする。

兄。 俺の、おにーさま。
名前は、五鈴。
五鈴と書いて、「いすず」 と読む。

俺と10歳ほど年が離れていて、両親と本気で仲が悪かった。
高校生になって、自分でバイトしながら独り暮らししてた、そんな兄。
両親の葬式のとき、顔は見せていた。

「性格が腐ってんのかぁ」
「俺が言うのもアレだけど、性格悪い」
「───自覚はあったんだ、千尋も」

俺が自覚ナシでミユキを苛めているとでも思ったか。

「んで、なんで兄貴はアンタの足の骨を折ったの?」
「俺が知りたいわ、ンなもん」

全治2週間だと言われた。 リハビリ込で、夏休みは完全に病院通いだ。 ちくしょう。
だけど、あの兄貴がここに戻ってくるなんて……ありえない。

「なんか、変な胸騒ぎがする」
「おー漫画みたいじゃん。 ワクワクするよ、アタシ」
「俺のこういう胸騒ぎは、よくあたるんだよ」

ざわざわと。
心の波紋が揺らいで、焦りを掻き立てる。
この感覚は……10年前にも体験した。

「嫌いだな。 そういう予期不安」

ミユキが、舐め終わったアイスの棒を、ごみ箱に捨てる。
噛まないのかと、自分の癖が他人の癖ではないことを知る。

「千尋のはよくあたるもの」

Re: 彼女が消えた理由。 ( No.64 )
日時: 2011/07/16 16:07
名前: 朝倉疾風 (ID: /QbsIKZ4)
参照: http://lyze.jp/ix3x/



入院生活は本当に退屈だ。
やることと言えば、テレビを見たり、高校の課題をやったり、一人トランプをしたり、恋人(仮)といちゃこらしたり。

「────ッ!」

痛いのか、おもいきり手首に爪を食いこませている。 病院内だから叫ばないようにと告げ、ハンカチを噛ませている。
病室には俺たちしかいないけど、一応。 ミユキの悲鳴は大きいから。

「さ、いあく。 死ね。 死んじゃえばいい」
「死ぬのは嫌かな。 ミユキが俺を殺してくれるのならいいけど」
「殺人犯になるのは嫌よ」

冷や汗を浮かべたミユキの口元が、微かに緩んだ。
その表情がひどく官能的で、ゾクゾクする。 俺って変態なんだと実感させられる。
口の中でミユキの肉を転がしながら、血の味と共に飲み込む。

「────好きな子のでも、苦いな」
「悪趣味。 そういう所、本当に最悪」
「前に蓮奈さんに言われたわけよ。 俺は本当はミユキのこと大嫌いで、もともと好きだった尋花の面影を追ってるだけだって。 本当にそうだとしたら……少し残念かもな」

この感情が、本当はなんなのか分からないまま。 こうして体を重ねることは、むなしいだけなのに。

「わたしを、おかあさんだと思ってこうしてるの?」

今度は軽蔑の面が表れた。 コロコロ表情が変わるくせに、笑顔は見せてくれたことないな。
こういう色めいた表情もするんだけど……。

「まさか。 尋花のことはもう何とも思ってない」

未練タラタラだけど。

「なら、ねえ。 どうして、こんなことしてるの」
「どうしてだと思う?」

甘く苦い悦楽を楽しみたいとは思っても、恋しいとは思わない。
幼い頃に焼きついた、尋花と俺の父親の汚らわしい行為を、いま俺たちがしていると実感すると、少し自虐的になる。

「どうして、俺たちはこんなことをしてると思う?」
「わからない」
「ミユキは俺のことが好き?」
「大嫌い」

大嫌い、か。
それもそうか。

「じゃあ、アンタは?」

俺の腕の中で、首筋を血に染めたミユキが尋ねる。

「アンタは、わたしのことが好きなの?」

俺はキミのことが大好きで、大嫌いだ。


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