ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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彼女が消えた理由。 完結 そして、
日時: 2011/08/31 01:40
名前: 朝倉疾風 (ID: 0nxNeEFs)
参照: http://lyze.jp/ix3x/

キャラ説明
>>79

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Re: 彼女が消えた理由。 ( No.49 )
日時: 2011/07/06 20:05
名前: 朝倉疾風 (ID: bMBSwVLq)
参照: http://lyze.jp/ix3x/

更新は割と速いですが、やらないときはけっこうやりません。
二日くらいあけると、ダダダダッと猛獣のように獣の如く
キーボードをタッチします。
ダダダダダッです。
こんな趣味の塊が参考になるのなら、嬉しいです。
西尾さん、入間さんの書き方いいですよね。
朝倉もお手本にしていきたいですけど、なかなかできない…。
>夜兎_〆さん


実は最初っから犯人はコイツだろと、決めておりました。
犯人を出すときはいつでもニヤニヤしてます。
たぶん、その時の朝倉は気持ち悪いと思います。
>紅蓮の流星さん


テストお疲れ様です。
朝倉はテストが終わって、まさにいまテストが返ってきています。
どういうことだ、あの点数。 もう朝倉はダメかもしれません。

こんな趣味の塊をありがとうございます。
もう……素直に嬉しいです。
>華京さん

Re: 彼女が消えた理由。 ( No.50 )
日時: 2011/07/06 20:45
名前: 朝倉疾風 (ID: bMBSwVLq)
参照: http://lyze.jp/ix3x/


6月の半ば過ぎの夜。 10時過ぎ。
わたしは陽忍くんの語る、わたしの物語を聞いていた。
客観的に捉えられる 「わたし」 は、どんなふうなんだろうと。

興味が勝ったのもある。

「キミは幼なじみである末長のことが好きだったんだ」

そして、10年前に歪んだこの人が、どういうふうに語るのかを見てみたかった。

「彼が好きだったにも関わらず、キミは思いを告げることはできなかった。 その理由は、関係を壊すことが怖かったとか、自分は幼なじみでしか見られてないとか、まあどうでもいいんだけど」

陽忍くんの語りが饒舌になっていく。 よく舌が回るなぁ。

「高校生になって、末長に彼女ができた。 それを知った徳実さんは、末長を応援しようと最初は考えた。 その彼女は両親を交通事故で亡くし、天涯孤独の生活を送っていたし、情がわいたんだろう。 嫉妬よりも、先に」

自分のことを紐解いていくのって、やっぱり抵抗あるな。
心に沿って過去を辿っていくのは、あまり好きじゃない。

「だけど、彼女の不幸な生い立ちは、すべて嘘だった」

思いだしていた。
クラスの女子から聞かされた、あの女の生い立ち。 悲惨すぎて声にでなかったけど、それよりも史人を騙していたことに対しての怒りが先にきた。

「彼女は母子家庭で、その母親が親友の夫と浮気していた。 挙句の果てには、その親友に惨殺されるというどうしようもない事件。 それが、10年前に起きたんだ」

顔色一つ変えず、自分の過去を語る彼。



「────園松ミユキの母親は、俺の母親が殺したんだ」



陽忍くんはそう言い放って、わたしを見た。 真っ黒な目だった。

「それを聞いて、キミはミユキが嘘つきだと末長に言った。 ミユキの母親は淫売で性悪だから、末長もミユキに騙されてるんだと、そう言ったんだろ」
「そうだよ」

思いだす。 史人にすべてを話したあの日。
彼はわたしの言うことなんか、信じてくれなかった。

「わたしと史人は小学校も中学校も違うかったから、10年前のそんなこと知らなかった。 まさか、身近にそんな事件の関係者がいたなんて。 あの女は危険だって、嘘つきだって史人に言ったの」
「────だけど、末長はキミを否定した」

そうだった。
あんなに怒った史人を見たのは初めてだった。
人が変わったようにわたしが嘘つきだと罵って、園松ミユキを信じると言い出した。

「だから、言ってやったの。 アンタはあの淫売女の玩具にされてるだけだって」

そしてその言葉が、史人を傷つけた。
傷ついてズタズタになって、わたしの頬を叩いた。
だから、

「だからとっさに花瓶で頭を殴ったの」

気づけばもう、史人は死体になっていた。
頭からダラダラと血を溢れさせて、白目をむいて、ヒクヒクと喉を上ずらせて、醜悪な顔で。

「後悔はしたけど、反省はしてないよ」

そう言うと、陽忍くんの目が鋭くなった……気がした。

「でも、どうしてわたしだとわかったの?」
「────駅のホームで、キミはミユキに嫌味を言ったんだよ」

嫌味ねえ。
ああ、あれか。


──陽忍くんだって、孤立している子がいると放っとけないタイプじゃん。

──すごく史人とそっくりだよ。

「あれ、ミユキに対しての嫌味だろ」
「態度に出てたかなあ」
「めちゃめちゃ。 あとは、吉川に10年前の事件のことを聞きまくってたし……

それにと、彼は付け足す。

「今回の事件、10年前の事件に少しだけ似てるからさ」

…………ああ、なにやってんだろわたし。
これじゃあ、悪役みたいになってるじゃん。 わたしが悪いわけじゃないのに。

「キミは、どうするの。 これから」
「────どうしてほしい?」
「自首してほしいかな」

悪いけど。
それは、できないんだ。

「わかった。 自首するね」
「うん。 それがいいよ」

蒸し暑い夜の中、わたしは彼と約束をした。
自首をする、と。
だけど、ごめん。 たぶん、無理だ。

わたしは、自首なんて絶対にしないもの。


彼の中で、永遠になるの。

Re: 彼女が消えた理由。 ( No.51 )
日時: 2011/07/06 21:10
名前: 朝倉疾風 (ID: bMBSwVLq)
参照: http://lyze.jp/ix3x/


第4章
『彼女が死んだ理由』



徳実柚木が自殺して、2週間が経った。



「もう7月で夏休みだけど……どっか遊びに行かねえ?」
「吉川、バイトあるんじゃなかったっけ」
「あーまあそうなんだけど。 まあ返ってくるテスト次第だな」

購買で買ったメロンパンにかぶりつきながら、吉川がグダグダとごねる。
7月に入って、恒例の席替えの日が明後日に迫ってきていた。

「ここの席がいいよなあ。 クーラーあんま効かんけど」
「どうせ授業中に携帯いじっても気づかれないからだろ」
「まあねえ」

吉川の視線が、俺の隣に行く。
俺も視線をそちらに向ける。 いつもの光景だった。

昼休みだというのに、園松ミユキは何も食べず、飲まず、爆睡している。
寝息のために上下する肩。 半そでからのぞく腕は白くて細い。

「幸せそうだよな」
「そうか?」
「うん。 なんか、新鮮だ。 いつも仏頂面しか見てないから」

吉川が微笑ましそうに彼女を見る。
自分を見つめる柔らかい視線に気づかずに、ミユキは眠り続ける。

「そういや、自殺した徳実が末長殺したかもしれねえんだろ。 なんか噂になってっけど」
「ああ…………そうかもしれないね」

彼女が死んだ理由。
それはきっと、本人にしかわからないし、理解できない理由だと思う。
自首すると言って、夜の中に消えた徳実さん。

俺は、彼女が自ら死を選ぶことに気づいていた。

「けっきょくウヤムヤだよな。 なんか……納得いかん」
「まあ、死んだ理由なんて本人にしかわかんないしね」

だから、深入りも詮索もしない。 警察に徳実さんが犯人だと言う気もない。
俺が立ち行っちゃならない場所があるから。

Re: 彼女が消えた理由。 ( No.52 )
日時: 2011/07/07 20:45
名前: 朝倉疾風 (ID: 4mXaqJWJ)
参照: http://lyze.jp/ix3x/



学校からアパートの自宅に帰ると、当然だけどミユキはいなかった。
俺が徳実さんと対峙していたあの晩、保護者である蓮奈さんが一週間の旅行から帰ってきたので、ミユキも家に帰ってしまっていたから。
誰もいないリビングの、誰も座っていないソファに腰掛け、いつもの癖で見もしないテレビをつける。

「彼女が死んだ理由……か」

頭の中に浮かぶのは、尋花のことだった。
彼女にも死ぬ理由はあったのだろうけど、どうだったかな。

10年前。
母子家庭である園松家に俺の家族は泊まっていた。 父は躊躇していたが、バーベキューをするのに男手が必要だという理由で、ついて来ていた。
一番楽しんでいたのが、母と尋花だったと思う。
ミユキは、俺のことが嫌いだったから。

その日の夜だ。
寝ている意識を無理やり叩き起こされ、目を開けるとミユキがいた。
ひどく混乱したように、

ーーーおかあさんと、アンタのおとうさん、変だよ。

そう囁いた。
見ると、母は隣で寝ていたけど、一緒に寝ていたはずの父の姿がなかった。
俺はミユキの手をひいて、隣の寝室に足を運んだ。

「ったく。 ガキがいるのに盛ってんなよな」

そこで見た、生々しい光景。
いつも無邪気に笑っていた尋花の、ひどくいやらしい声と、その上にいる俺の父親の姿。
けっして小学校にあがりたての子どもに見せていいものじゃなかった。 けれど、それ以前に尋花が汚れていく様子を見るのが、吐き気がするほど嫌だった。

尋花が、俺たちに気づく。
俺と目があって、そっと微笑んだ。
笑ってた。
あの無邪気な笑顔で。

そして、その表情が次に恐怖で引きつるのがわかった。
振り向くと、俺の母が立っていた。

「包丁持ってたよな。 あの人」

叫びと、怒鳴り声。 嫌な匂い。 裸で逃げ回る尋花と、父を殺して返り血を浴びた母が、それを追いかける。
キッチンのほうで、尋花が叫びながら謝る声が聞こえた。
うまく聞き取れなかったけれど、もうあれは完全にイッている声だった。

数分後、大量の血液に身を染めた母が次に狙ったのは、ミユキだった。
ショックで失禁し、震えで痙攣を起こしている彼女に、母はありったけの罵声を浴びせていた。

ミユキが、尋花と父の間にできた隠し子だと誤解して。

その罵声を聞きながら、俺の目線は廊下においてある、バーベキューセットに向いていた。
そこにある、使用済みのフォーク。
母がミユキ虐めに夢中の間、じっとそのフォークを見つめていた。

「ミユキを助けたかったのかねえ」

そして、母がミユキを殺す前に、俺が母を殺した。
フォークでありったけの力を使って、まず背中を刺した。 子どもの力だったけれど、フォークはなんとか刺さってくれた。
驚いた母が包丁を落とし、それを拾って、思い切り母の首を裂く。
血管を破ったのか、思っていたより、血がでた。



これが、彼女たちが死んだ理由。
そして俺らが生き残った理由。
あのあと数日間俺らは放心状態で、蓮奈さんが気まぐれで来てくれていなかったら、餓死していたかも。

「俺らは生き残ったわけだ。 あんな所で」

プチ自慢にはなるかもしれない。 なーんて。
ミユキの前だと口が割けても言えないけど。

Re: 彼女が消えた理由。 ( No.53 )
日時: 2011/07/10 16:42
名前: 朝倉疾風 (ID: 6FfG2jNs)



こんなどうでもいい過去を蒸し返すのは、やめよう。
俺はミユキがいればいいんだから。 俺のいる世界で、彼女が無事に一生を終えてくれたら、それでいい。
周りから壊されることも、干渉されることもない、俺の空間。
他人に押し付けるつもりはないけど、ミユキには受け入れてほしい。

彼女が俺のことを嫌いでも、俺たちには切れない関係があるのだから。





7月もそろそろ半ばを迎えるころ、世間ではもういくつ寝ると夏休みという雰囲気になっているだろう。
この高校だって、それは同じだ。

「あと一週間もすれば夏休みかぁ。 課題多いんだろうな」
「吉川、おまえは本当に課題のことになると憂鬱になるよな」

席替えをして、俺の斜め後ろになった吉川は、また一人でごねている。
隣の女生徒が若干ひき気味。

「てゆうか、なんで園松今日来てねえの」
「サボりじゃねえ」
「まじでか……。 気分屋だから?」

と、いうよりは。

「2回目も俺の隣だから、不登校かも」

担任のクジで決まった席は、2回連続でミユキの隣になった。
決まったときのミユキの顔。 思い出しただけで苦笑してしまう。

「明日には連れてくるよ。 ミユキを」
「できるのかよ。 そんなこと」
「無理やり連れて来る」

彼女は、俺の世界にいないといけないから。
それがたとえ俺の自分勝手なエゴだったとしても。
俺には、彼女しか見えてないから。


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