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彼女が消えた理由。 完結 そして、
日時: 2011/08/31 01:40
名前: 朝倉疾風 (ID: 0nxNeEFs)
参照: http://lyze.jp/ix3x/

キャラ説明
>>79

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Re: 彼女が消えた理由。 ( No.14 )
日時: 2011/06/25 17:06
名前: 朝倉疾風 (ID: STEmBwbT)
参照: http://lyze.jp/ix3x/


「じゃあわたし、こっちだから。 バイバイ」



電車から降りてすぐに、徳実さんと手をふってわかれた。
ずっと話してみて、案外淡白な子なんだと好印象を抱く。
甘ったるく喋る女子ほど、面倒くさいことはない。
駅にある駐輪場に停めてあった自転車に乗って、自宅へと帰る。

駅から、俺の住むアパートはけっこう近い。 自転車でスイスイと行けば、20分もかからない。 電車での時間が長くて退屈だけど。
人通りの少ない田舎道を走りながら、生ぬるい風をうける。 正直、汗だくのシャツがへばりついて気持ち悪い。

「はあ、夏はやく過ぎてくれないかねえ」

ほぼ無意識にペダルをこぎながら、俺の住処、もとい古アパートに到着する。
自転車を停め、無用心に鍵をかけなかった。
エレベーターがないので、3階まで階段を使わないといけない。
暑い。 この距離が長い。 エアコンのタイマーセットしてたかな。 今日はたぶん、お客さんが来るんだろうけど。

やっと階段を登りきり、鍵を出しながら、ふと扉の方をみて、

「あ、ぇ…………ん?」

ミユキが扉の前で突っ立ってた。
あら、けっこう速いのな。 もう少し時間がかかるかと思ってたんだけど。

「どういうつもり?」
「どんだけチャリこいだわけ。 もうちっと時間かかる予定だったんだけど。 俺、クーラーいれてるか自信ねえんだわ。 暑かったらごめんな」
「質問に答えて」

三白眼で思いきり睨まれる。 その手は震えていて、いまにも殴りかかってきそうな勢い。

「おばさんが旅行中の間、きみを預かってほしいと言われた。 今日から一週間。 素敵な同棲生活のはじまり」
「そんなこと、わたし叔母さんに聞いてない。 さっき家に帰ったら鍵がしまってて、ポストの中に置き手紙があった。 そこで初めて知ったの」
「俺から言うって言ったから。 んで、俺はミユキに言わなかった。 ミユキは絶対に嫌だって言うからな」

誰かに依存しないとまともに生活できないミユキにとって、一人で留守番なんてできるはずない。 そこはミユキの叔母さんもわかってるわけか。
こいつ、昔から甘えただったからな。

「ちなみに拒否権はないよ」 「す、末長くんの家に泊まらせてもらう」

冗談だろ。

「末長は死んだし、まして他人の面倒を一週間も見てくれるわけないだろ。 末長の家族の人が迷惑する」
「末長くんのお母さんは優しいよ。 わたし会ったことある」
「さっきまで死んだら終わりとか言っておいて、いざ自分が困ったら助けてもらおうってか。 性格悪過ぎ」
「あんたに言われたくない」

それもそうだ。 否定しない。

「ミユキ、言うこと聞いてくれないと、怒るよ」

俺は人より性格が悪い。 タチが悪い。 思い通りにことが進まないと、イライラするし八つ当たりもする。
だから、ミユキが嫌がろうが何しようが、どうでもいい。

「おいで」

Re: 彼女が消えた理由。 ( No.15 )
日時: 2011/06/25 18:32
名前: 朝倉疾風 (ID: z2eVRrJA)
参照: http://lyze.jp/ix3x/



人を罵ったり、いたぶったりする時、人はどんな顔をしているんだろう。
苦痛で悲鳴をあげる相手を見て、苦しくなるのか。
歓喜な恍惚とした表情で、相手を罵倒しながら、優越感に浸るのか。
それとも。

「痛い?」 「△&@&,;$&▽&@.:/$&$!!」 「ごめん。 なに言ってるのか、わかんねえ」

顔を見れば痛がっているのは明白、なんだろうけど。
ジタバタさせる足の上に乗って、遠慮なく体重をかける。 首筋にある新しい噛み跡は、いま俺がつけた。
血が、流れて。 白い彼女の首を、染める。

「暴れるから、手加減なしでやっちゃった」
「死ね! 最悪……っ、ふつう肉まで噛む? こ……これ、なに、血? 病院、びょーいん」
「思ったより傷は浅いよ。 落ち着けって」

原因の俺が言うことでもないけど。
ミユキが顔面蒼白で俺を突き飛ばし、ふらつく足で立ち上がる。 逃げるのかと思ったら、俺の部屋のクローゼットを開け始めた。

「なにやってんの」 「薬箱探してんの。 はやく手当してよ」

甘えたなミユキちゃんは自分で怪我の手当もできないってか。
混乱気味にクローゼットを引っ掻き回すのに見飽きて、ミユキの手首を掴む。

「そこじゃねえよ」

抵抗しないミユキを、台所まで連れて行く。 食器棚から薬箱をだして、ミユキを椅子に座らせる。
傷の手当をしながら、無気力になっている彼女に話しかける。

「なんでミユキは俺にだけ依存しねえの」

「昔のミユキは俺にも優しかった。 笑ってくれたのに」

「正直、末長が殺されてよかった」

あんたが嫌いだから。
昔のあんたは今ほどじゃなかったから。
末長くんはあんたよりわたしに優しい。

そんなことをポツポツと言われた。
首に包帯を巻きながら聞いていたら、爪で傷跡をほじくってやろうという衝動に襲われて、耐えた。

「末長のこと、本気で好きだったわけ?」
「あの人はいつもわたしが特別だって言ってた。 わたししか見えないよって。 だから、うん」
「俺も、ミユキしか見てねえんだけど」

ずっと昔から。
それこそ、あの日からずっと。

「あんたは嫌い。 わたしの嘘に全然騙されてくれない」

そういえば、末長が神妙な顔でミユキのことを語ってたとき、なんか全然生い立ちとか違ってたよな。
両親、事故で亡くしてなかったし。

「末長はカンペキに騙されてたよな」
「いい人だから。 わたしが嘘の不幸自慢をしても、疑いもせず、慰めてくれた。 殺されたって聞いたときは残念だったけど、すぐ別の人を見つける」

そこまで言って、ミユキが少しだけ肩を震わせた。
何かに怯えるような目で、俺を見る。 あきらかに、警戒している目だった。

「あんたじゃないよね」

その目が、俺はあまり嫌いじゃない。

「あんたじゃないよね。 末長くん殺したのって」

Re: 彼女が消えた理由。 ( No.16 )
日時: 2011/06/25 20:14
名前: 華京 ◆wh4261y8c6 (ID: ThA8vNRQ)
参照: 元るりぃ・桜音ルリ

包帯戦争の頃もリアルタイムで、影でこっそり読ませていただいておりました、華京と申す駄作製作機でございます。
読み終わった後に鳥肌が立ちました、更新が楽しみです。
ミユキちゃんの
「あんたは嫌い。 わたしの嘘に全然騙されてくれない」
というセリフがお気に入りです。
最近季節の変わり目という事で体調を崩しやすいのでお体にはお気をつけくださいませ。

Re: 彼女が消えた理由。 ( No.17 )
日時: 2011/06/25 22:21
名前: 朝倉疾風 (ID: STEmBwbT)
参照: http://lyze.jp/ix3x/

心温まるコメント、ありがとうございます。
包帯戦争はわたしにとって、「ちゃんと完結した作品」なので、1年ほど経ったいまでも覚えてくださる人がいて、うれしい限りです。
そのうえ、朝倉の体の心配までしてくれるなんて……。
ありがたいです。
近々、小説見に行きます。
決して駄作じゃありませんから。

Re: 彼女が消えた理由。 ( No.18 )
日時: 2011/06/26 02:16
名前: 夜兎_〆 ◆8x8z91r9YM (ID: 9Gb.eK5t)

おお。
朝倉sの文はやっぱり雰囲気がどことなく狂っていてゾクゾクしますw
「おいで」とか「痛い?」 とかなんだか鳥肌立ちました。


「あんたは嫌い。 わたしの嘘に全然騙されてくれない」、と言う台詞僕も好きですw


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