二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスターXY 命と破壊の遺産
日時: 2015/07/13 03:02
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

”読者の皆様へ”

 はい、どうも読者の皆様、自分はタクと申します。どこかで、見かけた事があるかもしれませんね。二次で、ポケモンとか、デュエマの小説を書いていました。
 今作は、ポケットモンスターXYのストーリーをモデルとしたものです。
また、オリジナル要素が多々あります。そして、今作から後書きを付けることにしました。まあ、書く事がないときは、何も書いてないかもしれませんけど。応援、よろしくお願いします!

ポケモン第六世代を最初に飾るゲームソフト、XYのノベライズ化!! 最後まで是非、ご覧あれ!!

登場人物紹介>>12
 
プロローグ
>>01

アサメタウン編
>>09 >>10 >>11

ハクダンシティ編
>>21 >>22 >>23 >>40 >>41 >>42 >>45 >>47

ミアレシティ編
>>50 >>51 >>52 >>53 >>56 >>57 >>61

コボクタウン・パルファム宮殿編
>>62 >>68 >>69 >>71 >>76 >>77 >>79 >>80

コウジンタウン編
>>83 >>86 >>87 >>90 >>95 >>96 >>99 >>102 >>103 >>104 >>110 >>111 >>112 >>113

ショウヨウシティ編
>>114 >>115 >>119 >>120 >>121 >>124 >>125 >>126

シャラシティ編
>>127 >>131 >>132 >>133 >>134 >>135 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>145 >>146 >>147 >>149 >>152 >>153 >>154 >>155 >>156 >>158 >>161

ヒヨクシティ編
>>164 >>165 >>166 >>169 >>170 >>171 >>172 >>173 >>174 >>175 >>176 >>179 >>182 >>183 >>184

ミアレシティ編2
>>185


ss・短編置き場

1.木登り騒動 >>148

飽き性な作者ですが、応援よろしくお願いします。また、読者の皆様の意見を聞きたいので、コメントには感想を添えてくださると幸いです。

Re: ポケットモンスターXY 命と破壊の遺産 ( No.118 )
日時: 2014/02/08 22:14
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

青虎さん

初めまして、青虎さん。タクと申します。コメントを頂き、うれしい限りです。これからも応援よろしくお願いします。それでは、また。


白黒さん

コメントありがとうございます。

作風については、色々と模索中で、はっきり言って自分でも何がいいのかがわからない状態です。
最終的には、ラノベのような作風を目指しているのですが、まだ自分の理想としているものとは程遠いといった感じです。
最初は、このサイトの先輩として白黒さんの小説の書き方を参考にしていたところはありましたが、次第に自分のスタイルも見出していきたいという思いが強くなって今に至ります。
また最近、ライトノベル作法研究所というサイトを参考にして書いているところがあるので、その影響でしょうか。

話を変えますが、本当に、やっとショウヨウシティです。此処までくるのに長かった……。
また、新キャラ2人についてですが、まずクリスティについては以前そちらのデュエマ小説に投稿した栗須を基にしている感じです。
そして、もう一人のほうもお察しの通りですが、彼の場合「何故今此処にいるのか」といった点に注目してみてください。ヒントとしては、XYの時系列がBWと殆ど同じということです。

フリルも、キャラ崩壊していないか、心配でした。こういう幼い感じのキャラを手がけることが少ないので。まあ、こんな感じでよければよかったです。

今日一日親戚の結婚式で忙しかったため、ゆっくり小説を見ることが出来ていませんが、そちらの小説にも後でコメントを入れておこうと思います。

それでは、また。

第四十三話:セルリアン ( No.119 )
日時: 2014/02/09 19:30
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

「モノズ、大丈夫かぁー!」

 竜の息吹を至近距離で受けたのだ。普通のドラゴンポケモンならば、立っていられるはずが無い。
 だが、カルムは知っている。

 モノズのガッツは、その程度ではないことを。

「ガルルル……!!」

 一度復活した龍は、折れる前よりも雄雄しく、そして気高い生き物となる。
 何故ならば、今受けた一撃が自分が折れた一撃に比べれば、何とも無いことを知っているから。
 何度も大きな心と体の傷を負い続けたモノズは”痛みを知る”ことが出来ていた。
 だからこそ、もっと自分が強くなれるし、今の自分の主人の下ならば尚更だと。

 だから、報わねば成らない。

 自分が勝つことで。


「モノズ、気合打め……かーらーのッ」

 
 ”竜の怒り”!!

 紫色の怒りを込めた光線が発射された。砂浜をえぐり、砂煙を起こす。
 竜の怒りとは、炎によって固定のダメージを与える技。ドラゴン技の中でも初級に位置する。
 そして、そこに佇んでいたヌメラを容赦なく包んでいく。

「わわっ、すご……」

 瞬く暇も無く。ヌメラは一瞬にして怒りの炎に焼かれていた。

 そして、炎が過ぎ去った後は、丸焦げのヌメラ焼きが完成していたのであった。
 ぷすぷす、と音が立っているのが分かる。
 焦げた臭いが辺りを漂っていた。

「ひゅー、助かったァ。クソッ、何が最弱のドラゴンポケモンだ、冷や冷やしたぜ」

「あーあ、戻って。ヌメラ」

 残念そうにヌメラをボールに戻すフリル。

「まけちゃった……でも楽しかった」

 にっこりと、笑顔で彼女は言った。
 その言葉で、カルムは忘れていた何かを思い出す。
 ボールのスイッチを押して、「がんばったな」とモノズを中に戻した。

「楽しかった、か」

 -----良いか、カルム。楽しむことを忘れてはいけないのだ。何事も。

 いつか、恩人がそう言っていた。
 勝つだけがバトルではない。
 最近、勝つためだけに固執していた気がする。

「じゃあ、勝利って何だよ」

 呟いたが、見つからなかった。
 だけど、同時にそれでも良いと思った。 
 これから見つければいいから。

「ありがとな、僕も大切なモノを思い出せた気がする」
「そう? よくわかんないけど、よかった。また、バトルしよっ」

 答えは決まっていた。


「ああ!」

 そういって、彼女の小さな拳と優しくあわせたのだった。
 再戦を誓って。
 次に会う時は、互いに強くなってから、と。


「気楽なものですわね? Mr.カルム」

 
 声が聞こえた。鋭い、女の声だ。
 咄嗟に振り向く。
 目に入ってきたのは、女の服装。
 それも、所謂ゴスロリといわれるドレスのようなものだった。
 御伽話のお姫様が着ているような、青を基調としたカラーリング。そして、白いフリルのような装飾。
 女の髪は美しい金だった。それに、燃える炎のような赤のカチューシャを嵌めてある。
 
 極めつけは、フレア団の紋章が施された胸元のブローチだった。

「あんた、何なんだッ」
「見て分かりませんこと? 私はフレア団七炎魔将。中級工作部隊”スパイラル・ショック”の1人。【炎魔羅刹(パリカー)】ことセルリアンとは、私のことですわよ?」
「フレア団だとォ?」

 怪訝な目でカルムは、女・セルリアンを睨み付けた。はっきり言って、炎をモチーフとしたフレア団に有るまじき服装だった。
 
「中級ねェ、そして。しかもそれが単騎で挑んでくるとは」

 見たところ、部下らしき人間は見なかった。

「はっ、何を申すかと。侮ってもらうのが一番困りますわ。中級=上級より弱いという方程式は、フレア団では通用しないことッ!」

 高圧的な態度で、セルリアンは言い迫ってくる。お嬢様タイプといったところか。
 フリルが袖を引っ張ってくる。

「ふれあだん? きいたことあるけど、ハッピーになりたいって、いい人じゃないの?」
「バカ言うな、こいつらは何やかんやで色んな悪事を働く悪い連中だ。独りよがりな幸福を求めるのが、どんなに悪いことかッ!」

 歯を食いしばってカルムは答えた。
 ポケモンを奪われて沈んだ町の人々。
 オペラに何度も傷つけられ、二度と癒えることのない心の傷を負ったモノズ。
 そして、戦いを強いられ、傷つけられた仲間達。

 許せることなど、1つもない。

 なのに、女は言った。

「我々の同志にならないかと持ちかけに来ました」

 その瞬間、何かが切れた。

 前にも感じた脳が沸騰する感覚。


「頭沸いてるのかてめーらは」

 嘲笑ってやった。

「今更僕に何のようだよ」

 哀れみの眼差しも向けてやった。


「そうやって、幾つの命を傷つけたッ!!」
「……」
「そうやって、何人の人の心を傷つけたッ!!」
「……」
「黙ってんじゃねえよ」

 ボールを握る手を強めた。ボタンを潰すように乱暴に押して、投げる。


「黙ってんじゃ、ねえよッ!!」


 ボールからは、ゲコガシラが飛び出してきた。対象を睨みつけている。主君の仇を自らが代わって討つといった使命を既に心得ているようだった。
 流石、トレーナーとは以心伝心といったところか。
 
「私の本日の行動は、導入に過ぎませんこと? あくまでも、紹介のようなものです。」

「だから、まだ覚えておく程度でいいですわ」と、セルリアンは補足した。しかし、「唯……」と言葉をつないでいく。

「貴方が抵抗した場合、それ相応のおもてなしを、という命は受けていますがね!」

 そういって、セルリアンもボールを構える。

「私の命令は、絶対ッ! 忠誠を誓え、我が僕よ! お行きなさい、ミツハニー!」

 
 ***


「フレア団は、あるポケモンを狙っている」

 クリスティは続けた。

「それも、とても珍しい……言うなれば幻のポケモンだが、それを使えば」

 セレナは唾を飲んだ。一体、何が起こっているというのか。


「亜空間の摂理さえも歪めてしまう。唯、正確に言えばそれはフレア団の中でも、野心の大きい”裏切り者”の狙いらしいがな」

「裏切り者?」

「そうだ」とクリスティは相槌を打った。

「フレア団に居るうちに、己の野心が育ちすぎて、ついに反旗を翻そうとしている愚か者だ」

後書き:今回、オリキャラ登場から更にフレア団七炎魔将登場です。フリルのような精神的に幼いキャラを書くことは少ないのですが、キャラ崩壊は無かったのでよしと思っています。
そして、新たな炎魔・セルリアン。彼女は所謂お嬢様系我侭キャラという奴ですが、かなり高慢です。
さて、次回の更新もお楽しみに。それでは、また。

第四十四話:交戦・虫の兵隊 ( No.120 )
日時: 2014/10/04 09:41
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 ***

 セルリアンが繰り出したのは黄色い六角柱の底辺に顔があり、それが三つくっ付いて一対の翅が生えているポケモン、ミツハニーだった。
 ミツハニーは性別によって少し容姿が違うと聞いた事がある。
 この場合、真ん中の顔に紅いマークが無いため、オスと判断するべきであろう。
 
「丁度もう一人いらっしゃるみたいですし、そちらの方もお相手させて上げなくてはね!」

 そういうと、ボールを投げる。中からは、ビオラとの戦いでも見た事のあるポケモンだった。
 まさしく、ビビヨンだった。
 しかし、色が違う。ビオラが所持していた固体は紅い鮮やかな模様だったが、こちらは和を連想させる雅な模様だった。

 ビビヨンというポケモンは地方によって羽の模様と色が違うのである。

 さて、問題はフリルのポケモンだった。
 さっきモノズが倒してしまったため、もう彼女のポケモンは居ない。
 別に、カルムがもっとポケモンを出してもいいのだが、逆に総力戦でぶつかり合って勝てる相手ではないことは分かっているのである。
 だから、不測の事態が起こりやすい上に経験が少ない多対多先頭は避けたい。

「フリル、コレを使って」

 そういって、回復道具を投げた。元気の欠片だった。
 元気の欠片はトレーナーの道具である。瀕死のポケモンに元気を与える効果を持つ。
 

「僕が用意できるのはここまでだ」
「うん」

 頷くと、フリルはこつんと黄色い欠片をボールに当てる。光とともに欠片は消失した。

「たのんだよっ、ヌメラ!」

 さっきのヌメラを繰り出して、応戦に向かうフリル。
 善悪の判断こそ、まだ付いていないらしいが、結果的に仲間に着いていく性分らしい。
 そのため、共闘することになった。

(純粋な奴ほど、仲間になったときに頼もしい。ここでフリルを味方に……いや、仮に敵に回ったとしても脅威ほどではねぇな)

「余所見が多いことッ」

 ミツハニーは、羽根を勢い良く羽ばたかせて大きな音を立て始めた。
 うるさい。耳が壊れそうに成るくらい。

「これはッ、ポケモンの技!?」
「虫のさざめきですわ」

 ゲコガシラさえも頭を抱えている。
 ヌメラはどうともないようだったが。

(そりゃそうだよな、軟体生物に音技は効かないよな)

 もっとも、ハイパーボイスなどの衝撃波レベルになってくると話は別であるが。
 空気が震えて波が出来る。
 音とは空気が震えることで起こるのだと、今しばしば改めて噛み締めたカルム君であった。

「やられてばっかじゃ、トレーナーの名がすたるってもんだ!! ゲコガシラ、電光石火!」

 地面を蹴り、突っ込んでいくゲコガシラ。
 しかし、次の瞬間だった。


「ビビヨン、メロメロですわ!」

 
 ハートが現れてゲコガシラの回りを囲む。そして、ハートが回りまくる。
 しばらくした後、ゲコガシラは---------

「ゲ〜ロ、ゲロォ〜」

 見る影もなくなっていた。
 酔っ払ったおじさんの如く、ふららふらと目をハートにして。
 完全に、スイッチが入ってしまったようである。

「へー、異性のポケモンを誘惑して惹き付ける技かー。 なんて特殊な技なんだー。うわー、すげー」
「いや、それにかかった貴方のポケモンは、単なる特殊バカですことよ? ていうか、全然すごいって思ってませんわよね? 棒読みたらたら状態ですことよ? ビビヨン、ドレインキッス!」
 
 ふわふわと飛んでいくビビヨン。そして、ゲコガシラの頬に甘い口付け。
 そして、唇を離すビビヨン。精気が抜けていくかのようにゲコガシラは倒れた。

「おいおい、何が起こったんだ?! 前にも同じような光景をどっかで見たような……」
「唯のデジャブでは? それより、貴方のポケモンはもうだめですすわね」

 悔しそうに唇を噛み、カルムはゲコガシラをボールに戻す。
 相手は異性のポケモンを手駒に操る強敵。
 
 -------あ、同性ならよくね?

 安易だが、その通りだった。
 この場合、ビビヨンはオスのゲコガシラをメロメロにしたため、性別はメス。
 ならば、答えは一つ。

「プラスル、行って来い!」

「貴方は少々、フレア団七炎魔将を舐めているのでは? オペラが以前、このようなことを申しておりましたわ」

『この前のカルムって餓鬼、少し手を抜いたら調子に乗って私にダイレクトアタックを仕掛けてきたんですよ。まさに、プギャーって感じですよ。クッソワロタ』

 ネットスラングと呼ばれる言語が混じっていたが、あからさまに馬鹿にされたことだけは分かった。

「オペラがネットスラングをつけて話すときは、必ず余裕があるとき。つまり、以前貴方が戦ったオペラは完全に手を抜いていたということですことよ? 上級は、相当な実力を持ったトレーナー、つまりこの地方の四天王ですら互角に戦える。中級は、そこまでは及びませんが、少なくとも-----------」
「ごちゃごちゃ煩いよ」

 鶴の一声。
 カルムが完全にぶち切れた顔で自分を睨みつけていることを、セルリアンは一瞬で理解して見せた。

「俺が知りてえのは、おめーらがドンだけ強いとか……」

 爆音。
 ヌメラの竜の息吹が、ミツハニーを打ち落としたのだ。

「俺らが勝てないとかそーゆー結論じゃねえよ」

 唯一つ。
 

「何故、おめーらがどうして逐一俺を不愉快にさせるかってことだけだ!!」

 電撃が、プラスルの小さな体から放たれた。
 避けようとするビビヨンだが、蝶は基本飛ぶのが遅い生き物。

 避けられるわけが無い。

 まして、光と互角の速さを持つ”電気”に対しては。


「プラスル、10万ボルトッ!!」

 紫電の束がビビヨンに降りかかった。
 不覚を突かれた。
 しかし、まだまだ慌てるレベルではない---------!!

「いーや、まだ終わりじゃねえぜ」
「!?」
「電気っつーのは操りようによっちゃぁ、どんなことも出来るらしいぜ。熱を作ることも、音を作ることも出来るし、場合によっちゃ」

 ---------光の槍だって、自由自在さ。


「プラスル! 奴を逃がすな、電気を右手に集めろ!」

 プラスルの拳に電気が集結してバチバチ鳴った。


「そのまま、放てェー!!」


 投げるように放った電気は、槍の如く鋭く鋭利に尖り、空気を貫いて飛んでいく。
 そして、ビビヨンの体さえも貫通した。
 弾けたように、ビビヨンの体は爆発し、そのまま黒焦げになって地面に落ちた。
 10万ボルトは以前、テイルと戦った後に見よう見真似でプラスルが覚えたらしかった。
 見よう見まねで技って覚えられるんだ、と軽く感動したカルムだったが、さらなるアレンジを特訓で加えさせていたのである。

「10万ボルト・改。唯放つだけじゃ、無駄が多いけど電気の触れる面積を少なくすれば、その分一気に電気は一箇所から流れ込む! 圧力の法則と同じようなものだ」
「う、くっ! 覚えてなさい!」

 倒れた二匹をボールに戻した後、セルリアンは噛み付くような目でカルムを睨んだ。

「くっ、プラズマ団という組織がイッシュ地方で暴れ、勢力争いの最中だというのに……!」

「セルリアン、時間」

 不気味な声が聞こえた。
 また、あの少女である。
 フードを被った、炎魔・クロームだった。

「”ボルテック・サンダー”は大人しく私の援護をしていなさい!」
「見くびるな。私も忙しい」

 そんなやりとりが交わされた後、2人はテレポートしたのか、蒸発するように消えてしまったのであった。

第四十五話:ショウヨウジムへ ( No.121 )
日時: 2014/02/15 18:49
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

「に、逃がしちまったか……!」
「ねーねー、カルムー?」

 少女、フリルが話しかけてきた。ミツハニーを倒してくれるなど、なかなかの活躍はしてくれたので良いだろう。
 
「何で、ふれあ団はカルムを仲間にしようとしたのかな」
「……さーな」

 いや、分かっている。自分の中に秘められたクソみたいな能力の所為で、故郷を追われたことも。仲間をこんな戦いに巻き込んでしまったことも。
 ----何、僕はあいつらの仲間になるつもりは無い。それに、この世界を連中の好き勝手にしてられるかってんだ!

「なぁ、フリル」

「何?」とあどけない返事が返ってくる。その約束を、繋がりを大切にしたかったから。

「また、バトルしような」
「……うんっ!」

 屈託の無い笑顔で、フリルは確かにそう返したのだった。


 ***

 セレナはクリスティと別れた後、とっととジムに向かうことにした。
 カルムは居ないようだった。ジム戦もせず、ほっつきまわって見知らぬ大人と話していたことを問われるのが怖かった。
 何より、カルムと出くわすと変なことになってしまうのではないか、と考えていたのだ。

『それは君が彼のことが好きだから、では不十分かな?』
 
 違う、とは言い切れない。だけど、まだ断言は出来なかった。

「さっさと済ませちゃお……」

「アレ? セレナ?」

 一番聞きたくない声を聞いてしまった。

 間違いなく、カルムだった。

「まだジム戦やってなかったのか?」
「あ、うん! そうなのよ、だけどちょっとポケモンたちをもっと鍛えないといけないかな……と思って。」
「あっそ。んじゃ、僕さっきポケモン回復させてきたばっかりだから、とっとと行ってくるわ」

 緊張はいつの間にかカルムからは消えていた。セレナは真逆だったが。
 そして、セレナはヒップホップする胸を押さえて、ジムの中に入っていくカルムを見送ったのであった……。


 ***


 壁。
 壁が確かに聳え立っていた。
 だが、その壁には確かにいくつかの突起が見えた。手を掛ける事が出来る程度の穴も開いていた。
 極めつけは、壁に大きな岩場が突き出ていることだった。
 通常のバトルフィールドほどの大きさだ。

「良く来ましたね、チャレンジャー」

 声が聞こえた。男の声だった。見れば、浅黒い肌に、ジュエルのようなものを埋め込んだ特長的な髪型、そして何よりスポーツマンを思わせる高い背。だが、がっちりとしているわけではなく、すらっと細身を帯びた体つきだった。黒いシャツが、よりそれを際立たせていた。
 ポッキーのような細い指の先には、彼の副業が関係しているのか、チョークの粉が薄く白く纏わりついている。
 また、ズボンのベルト付近にはその副業であるクライム用ロープを引っ掛けるための金具らしきものをつけている。
 そして、カルムはその声が足場にあることに気付いた。ざっと見て、この地上から5m程はある場所だが。

「そこに安全ロープを垂らしています。ここまで上ってきてください」
「……は?」

 思わず、耳を疑った。つまるところ、このジムリーダーは経験の無いド素人にロッククライミングを要求しているというのか。

「安全ロープはあります。それでは、どうぞ」

 さもなければ、挑戦は受け付けないといった様子だった。
 良く見ると、岩場の端に、鉄製の梯子が見える。そこに足をかけてフィールドに乗って来いということだった。
 
 だが、カルムという男は非常にこの手の筋力勝負が苦手である。
 別に運動が苦手だとか、どういうわけではない。
 だが、握力に自信が無いのである。

「だぁー、もうやってやるッ! 僕はカルムッ! アサメタウンのカルムです!」
「元気が良い。よろしいことです。それでは、自らの手で私への、ジムリーダー・ザクロへの挑戦権を勝ち取ってください。貴方の前に立ちはだかるこの壁を登りきることで。ただし、一度でも両方の手と足が離れて宙吊りになった瞬間、ロープが自動的に貴方を下に戻す仕組みなっています。お気をつけて」


 ***

「ぜひゅ、ぜひゅ、もう無理……ヒィヒィ」

 手が痛い。もう、五回目である。好い加減に手が千切れるかと思った。ザクロは、

(この試練にここまで苦戦する人は初めて見ました……)

 と口に出しそうになった程だった。しかし、未だに諦める気配は無い。弱音を吐いているものの、まだ諦める様子はない。
 必死に掴み、手が千切れそうな痛みに耐えて尚這い上がろうとしているのだ。

「うああっ!」

 また、足と手が離れた。ロープによって地面に戻されるカルム。
 だが、それでも尚向かっていく。

(ですが、逆にここまで粘るチャレンジャーを見たのも初めてです)

「まだまだだぁッ!」


 ***

「へっへっへ、どんなもんだッ……!」

 汗が流れ落ちる。だが、確かに上りきって見せた。手が焼けるようにと痛むものの、それは日頃自分が鍛えていない所為なのであって。

「貴方の壁に立ち向かう姿、確かにその目で拝見させてもらいました」
「こんなもんですよ。ショボかったでしょ、初対面なのに嫌な醜態を見せてしまいましたね……」
「いえ、素晴らしかった。」

 ザクロの反応は、思ったものとは少し違うような気がした。

「目の前に聳え立つ壁がどれ程大きいのかは人によります。ですが、自力で登りきれば皆同じ。クライムとは、上りきれさえすれば取り敢えず”看破した”というステータスが平等に付くスポーツです」

 このザクロという人物は、人の諦めず立ち向かう心を見ているかのようだった。

「途中辞めようと何度思っても、貴方は”辞めなかった”。本当に律されるべきは、自らの苦難を、成すべきことを棚上げして逃げてしまうことです」

 とても大きい器だった。


「貴方は諦めずに、ここまで辿りつきました。今度は、その心。ポケモンバトルで試させて下さい」


ザクロ:ショウヨウシティジムリーダー
『ワイルド マイルド ロッククライマー』


後書き:ポケモンの小説なのに、ポケモン的要素が一つも無かった今回です。まず、フレア談のことからですが、階級にも異名が付いているわけです。ただの余計な設定ですが。
さて今回は、タダのジム戦前の前置きです。それ以上でもそれ以下でもありません。さて、次回ですがいよいよショウヨウシティジム戦です。お楽しみに。

Re: ポケットモンスターXY 命と破壊の遺産 ( No.122 )
日時: 2014/02/15 20:54
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 どうもモノクロです。そろそろ高校入試のシーズンで、投稿禁止日が近づいています。

 フリルはやはり負けましたか。まあヌメラは彼女の手持ち最弱ですからね。ドラゴン最弱でもありますし、ドラゴン対決じゃモノズには敵いませんか。
 そしてバトル後に現れたのは、フレア団の炎魔ですか。セルリアンとは、水タイプでも使いそうな名前ですが、使うのは虫タイプが中心になっていますね。

 しかし、自信満々に繰り出したのがミツハニーで、しかも性別が雄って、これは笑うところなのでしょうか……? ビビヨンはともかく。
 でも、虫のさざめき(でしょうか?)を使用しているあたり、レベルは高そうですね。

 そしてセルリアンを退けた後はジム戦ですね。ザクロは思った以上にいい人で、少し意外でした。いや、普通にゲームでもいい人でしたけど。
 ザクロは岩タイプの使い手なので、ゲコガシラがいるカルムにとっては有利そうですね。ただ、それでも油断ならない相手ではありますが。
 久々のジム戦で、どのようなバトルが展開されるのか、楽しみにしています。
 それでは。


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