二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスターXY 命と破壊の遺産
日時: 2015/07/13 03:02
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

”読者の皆様へ”

 はい、どうも読者の皆様、自分はタクと申します。どこかで、見かけた事があるかもしれませんね。二次で、ポケモンとか、デュエマの小説を書いていました。
 今作は、ポケットモンスターXYのストーリーをモデルとしたものです。
また、オリジナル要素が多々あります。そして、今作から後書きを付けることにしました。まあ、書く事がないときは、何も書いてないかもしれませんけど。応援、よろしくお願いします!

ポケモン第六世代を最初に飾るゲームソフト、XYのノベライズ化!! 最後まで是非、ご覧あれ!!

登場人物紹介>>12
 
プロローグ
>>01

アサメタウン編
>>09 >>10 >>11

ハクダンシティ編
>>21 >>22 >>23 >>40 >>41 >>42 >>45 >>47

ミアレシティ編
>>50 >>51 >>52 >>53 >>56 >>57 >>61

コボクタウン・パルファム宮殿編
>>62 >>68 >>69 >>71 >>76 >>77 >>79 >>80

コウジンタウン編
>>83 >>86 >>87 >>90 >>95 >>96 >>99 >>102 >>103 >>104 >>110 >>111 >>112 >>113

ショウヨウシティ編
>>114 >>115 >>119 >>120 >>121 >>124 >>125 >>126

シャラシティ編
>>127 >>131 >>132 >>133 >>134 >>135 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>145 >>146 >>147 >>149 >>152 >>153 >>154 >>155 >>156 >>158 >>161

ヒヨクシティ編
>>164 >>165 >>166 >>169 >>170 >>171 >>172 >>173 >>174 >>175 >>176 >>179 >>182 >>183 >>184

ミアレシティ編2
>>185


ss・短編置き場

1.木登り騒動 >>148

飽き性な作者ですが、応援よろしくお願いします。また、読者の皆様の意見を聞きたいので、コメントには感想を添えてくださると幸いです。

第六十六話:炎魔強暴 ( No.153 )
日時: 2014/08/12 18:06
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 ***

「おーい、おーい? 応答願うけど? ん?」

 少年は無線通信を使って先ほどからしきりに、ある人物の応答を待っていた。
 が、出る様子は無い。

「……流石に心配だな」

 そう呟く。
 フレア団の巣食う洞窟の中にまで来たものの、流石にこれはどうかと思った。
 今こそ岩陰に隠れているが、相当な数の下っ端がウロついているのである。

「ちっ、何なんだよ」

 彼でなくともそう悪態をついたであろう。
 下手をすれば袋のネズミになるがオチ。
 と、そのときだった。

「イクシャァァァ!!」

 轟く轟音。何かのポケモンの鳴き声だ。それも、とても強大な。
 それに釣られて、他の下っ端達も駆けて行く。

「急がないと」

 そう言って駆け出す少年。しかし、そのときだった。

「おーっと、待てよ。こっから先は立ち入り禁止だぜ?」

 身構えた。目の前に立っていたのは男だった。
 妙な笑い声を上げた男は詰め寄ってくる。
 男の姿の全貌は、ローブに隠されて分からない。しかし、背丈・声から大人の男、それも20代ほどだとは判別できた。

「ケカカカ、誰だテメェは。名乗りな、侵入者君?」
「はーあ。同じ悪の組織の幹部って言ってもこっちは大したこと無さそうだ」
「あ?」

 苛立ちを隠し切れない男。敵とはいえ、ガキに舐められたマネをされたのが気に食わないのである。
 同時に疑問も感じた。
 --------”同じ悪の組織の幹部”だと?

「悪の組織? あーあ、大体子供のごっこ遊びか」
「元だよ元。それに---------」

 --------舐めて貰っちゃ困るね。
 次の瞬間、少年はボールを投げた。中からは再び、親子ポケモンのガルーラが。
 頭にはメガストーン・ガルーラナイトが埋め込められたヘルメットを装備している。
 同時に、少年の手首に嵌められていた腕輪に装着されたキーストーンと、ガルーラナイトが反応した。

「ガルーラ、メガシンカ!」

 激しい光と共に、卵の殻のようなものに包まれたガルーラ。そして、い一気にそれが弾け飛び、粒子となって霧散した。
 ガルーラ本体に変化は無い。しかし、袋の中に居た子供が大きくなって飛び出してきたのだ。

「へーえ、コケ脅しじゃねえみたいだな」

 男は感心したように言う。

「『炎魔強暴(アエーシュマ)』」
「?」
「異名だけ教えておいてやる」

 ククッ、と男は喉で笑った。胸糞悪い。不愉快である。
 そしてその直後------------

「行け、ライボルト!」

 ボールを投げ、現われたのは放電ポケモンのライボルト。逆立った黄色の鬣が特徴的な四足歩行のポケモンである。
 また、それ以外の部分の体毛は青い。
 何より電気が体中を迸っているのが一番怖い。

「てめーがメガシンカするなら、こっちもだ。ライボルト、メガシンカ!!」

 直後、男のチョーカーに埋め込まれたキーストーンとライボルトの首輪に埋め込まれたメガストーンが反応する。
 激しい雷と共に、ライボルトが咆哮した。
 同時に卵の殻のようなものに包まれ、それが電気と共に弾け飛ぶ。

「メガライボルト。これでテメェをぶっ潰す」
「ふーん。口だけじゃなかったら良いけど」
「そうだな。逆に口だけだったら良かったと思わせてやる!」

 メガシンカしたライボルトの姿は巨大な稲妻のような体毛を身に纏ったというもの。いろんな意味でボリュームが増しているが、何より-----------

「電撃もボリュームアップだぁぁぁ!! ライボルト、10万ボルト!」
「ガルーラ、シャドーボール!」

 2体の技がぶつかり合った。
 電撃の影の弾。しかし、電撃が押し勝ち、ガルーラに襲い掛かる。

「一気に決めろ、もう一回10万ボルト!!」

 そういって、再び電撃を放ったが--------------ライボルトは足を動かすのが辛そう、というか身体を動かすことすらきつそうだった。
 思い当たる原因は地面技、特に地均しを喰らった際の素早さ低下が思い当たるが------------考えられないか。
 では何時の間に!?
 そう考えている『炎魔強暴』の耳に少年の声が響く。

「バカだな。地均しを気付かれずに放っていたことに気付かなかったのか」
「な、何ィ!?」

 全く、気付かなかった。

「待てよ、この戦法---------まさか、”あの方”のもの--------」
「ん? これはたまたま立ち寄った大会で見かけた戦法でさ。盗ませてもらったんだ」

 待てよ、と少年は声を止める。

「お前、そのときの誰かに似ているような---------誰だったけな」

 次の瞬間、目の前の敵の口角がニィーッと上がった。

「お前はライボルトが疲労したように見えたかもしれねぇが---------」
「!」

 電気。それも地面を這うように迸っている。

「俺のライボルトの電気は弱くなっていねぇぞ青二才が!」

 直後、それがガルーラの身体を伝わり、一気に駆け巡った。

「っ-----------しまった」
「喰らいやがれ、10万ボルト・俺様バージョン!!」

 雷の柱が現われる。それが一気にガルーラを覆った。
 そして一気に襲い掛かる。
 地均しで先にライボルトを狙うが、上手く技を出せない。

「無駄無駄無駄ァ!! 何で地面に電気が這うようになってるか知りてぇだろ? ああ!? よく足元見てみろよマヌケ面でよォ!!」

 足元------------しまった。僅かにだが水が靴の底までの高さに漬かっている。

「これが電気を通していたのか!!」
「俺様のヌオーだ。バックに潜ませていたのが気付かなかったのか、クカカカ」
「参ったね……!」

 少年は少なくとも焦りを感じていた。
 2体。
 敵は2体居る。
 こっちももう一体出して対抗するしかないようだ。

「良いよ。ダブルがお望みなら、僕だってコイツを出す」

 そういって、少年はボールを放った。中から出てきたのは、穴掘りポケモンのホルード。ホルビーの進化系でノーマル・地面タイプである。

「ほーう。相性の良い地面タイプを出したつもりかもしれねぇがどうやって勝つつもりだ?」
「うるさいな。やってみなきゃわからないだろ」

 ---------あーあ、あいつの口癖が移ってしまったよ。「やってみなきゃ分からないだろ」。あいつと会ってなきゃこんな言葉使わなかったろうにね。

「ま、勝てば良いだけだから」
「御託は良い。口だけなら良かったって後悔させてやるよ!!」

 再び、2人の間に戦闘の空気が流れる。
 ぴりぴりしてとても重い。
 なのに、この状況を楽しんでしまっている自分が居る。
 戦いは続いた------------そのときだった。

「イクシャアアアアアアアアア!!」
「来たか」

 くくっ、と喉で笑った『炎魔強暴』は確信したように言った。

「俺達の勝ちだ!! ライボルト、電撃で天井を落とせ!」
「なっ----------!!」

 直後、電気の柱が天井を破壊した。そして、岩が次々に崩れ落ちてきた------------

第六十七話:脱出 ( No.154 )
日時: 2014/08/12 18:11
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 ***

「いやぁ〜、今日も穴掘るっぺ」

 キーン、コーン、キーン、コーン、と工事現場で作業員がドリルで道路工事をしていた。
 12番道路。アズール湾へ続くこの道路は現在、整備の途中だった。
 何せリゾート施設を作るためなんだとか。

「ったくよ、にしても随分勝手だよな。コバルトって奴も」
「ああ。自分のプライベートビーチを作るために俺らをこんな暑い日に狩り出しやがって」
「まあ良いじゃねえか。俺らがおまんま食っていけるのもそいつのおかげなんだからよ。おい手ェ止めてないでどんどん掘るぞ!」

 アイアイサー!! と元気の良い掛け声を放ち、再び腕を振るう。傍には怪力ポケモンのワンリキーが岩や瓦礫を運んでいるので大助かりだ。
 さて、俺もやるかー、と1人の作業員が鶴嘴を振り上げたそのときだった。

 ズボッ

「すんませーん、ここってどこシティですかね?」

 突然、人の首がにょいっと生えてきた。
 あー、ここは街じゃないです、12番道路でして……と答えた彼。
 しばらく、沈黙が流れた。
 そして、ようやく目の前に広がる光景が奇妙なものだと気付く。
 あれ? これって生首じゃね? ナマの生首じゃね? 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!」
「おい、どうした!!」

 仲間の悲鳴を聞いたもう1人の作業員が駆けつけてくる。

「あのさ、お仲間さん気絶しちゃったんですけど」
「え? マジ? 運ばないとな、ったく生首でも見たのか----------生首?」

 直後、再び男の叫び声が響いたという。

 ***

 ずぼぼぼ、とその全貌が明らかになった。
 正確に言えば、フライゴンに乗った少年---------ブラックだった。後は、カルムを初めとしたメンツである。
 あの後、空中への脱出は困難になったので、フライゴンの”穴を掘る”で地面に潜り息が切れないうちにすばやく脱出したわけだが、窒息するかと思った一行であった。
 フライゴンは”高さ”だけでも2.0mある。そして頭から尾までの長さは更に長いので、人を多く乗せるのは楽勝だった。

「夏のホラー回も良いところですよ、作業員の皆さんあの後芋づる式にやってきて皆が気絶しちゃったじゃないですか」
「まあ良いじゃないか、カルやん。助かったんだから」

 ふぅ、とようやくシャラシティに戻って一息吐けたカルム。
 そこで博士が切り込んでくる。

「しっかし、カーマイン大佐が、七炎魔将の1人だったとは」
「それだけじゃねえっすよ。あの男は序列一位。今の俺達では、まず敵わないでしょうね」

 力の差は歴然だった。
 しかも、カーマインの養子であるシェナは更にその上の階級------------『絶望の使徒(ハッピーエンド・チルドレン)』の1人。
 また、それらが一体何者かは分からなかったのだが、セレナが口を開いた。

「……私、知ってます。あの『絶望の使徒』について」

 全員の注目がセレナに向く。
 
「以前、ある探偵の方にフレア団の事を聞かれて。それで情報交換と言う事で教えてもらったんです。『絶望の使徒』はいずれも社会から迫害された子供の能力者だって」

 1人は天候を自由に変えられ、
 1人はポケモンと心を通わせることができ、
 1人は命を直接奪うことができる。
 そして最後の1人は--------------不明。

「何てことだ、七炎魔将以上の階級があるなんてよ!!」

 テイルが怒鳴った。

「今後、それらが襲ってくるとも限らないが、いずれも人知を逸した能力を持っているってことですね」

 トロバも不穏な表情を浮かべる。

「怖いよ……旅を続けられなくなっちゃう」
「案外、大袈裟でもないかも、だねぇ」

 ちょっと待て、とカルムが言った。

「おいおい、もしかしたらそいつもフレア団の一員で、情報操作をしてるって可能性もあるんだぜ!?」

 しかし、そこにブラックが割ってはいる。

「その探偵は何と名乗った?」
「クリスティと言っていました」

 その言葉にブラックはピンと来たようだった。

「なーるほど。そいつの言葉は信用できるぜ。俺とそいつはちょっとした仲でな。詳しくは言えねえが」
「そうだったんですか!?」

 --------ブラックさん、本当に何者なんだ!?

「つーわけだから、俺はこれで」

 そういって、フライゴンのナックに飛び乗るブラック。

「フレア団を倒すのはこの俺の使命だ。何の能力を持っているか知らんがカルム。これ以上フレア団に関わるなよ」

 こういい残したのが気がかりだったが。

 ***

『---ガ----こっち----は----失敗だ。何とか-------抜け出して------たけど』
「そーか。御苦労だったな。つーかノイズ入ってるから良く聞こえない」
『だ-----ら言った-------よ、僕1人-------で-------ムリだ------て』
「そんなこというな、元四幹部さんよ」
『黙れ、バカ』
「あ、そこだけはっきり聞こえたわ」

 やはり、予想以上だったか、敵の戦力は。
 彼一人では食い止めることが出来なかったと言う事か。

「まぁ良いぜ。後は基地ごと叩いて助け出すだけだ。俺だけじゃねえ。クリスティの奴もいるからな」
『-----ま------そう、だけど』
「んじゃ、一応ヒヨクシティで落ち合うってことで」
『了解』

 フランクに返したその声は、どこか悔しげだった----------


後書き:ようやくこれにて、バトルシャトー編終了です。まだまだ掘り下げていない伏線は有りますが、何より謎の一部がだんだん晴れてきたところが読者の皆様には大きいでしょう。まあ一方で、あの少年2人の正体やクリスティとの繋がりも見えて来ましたし。
さて、何よりカルムはまだシャラジム突破に向けての修行といえる修行をしていませんからね。というわけで次回はその修行回になると思います。多分。
にしても、ここ最近で参照が増えていますが、それだけで作者のモチベーションはぐーんと上がる一方です。
今回は話自体は短めでしたが、次回はまた大きなボリュームでお届け出来れば、と思っています。それでは、また。

第六十八話:特訓 ( No.155 )
日時: 2014/09/17 18:52
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 ***

 あの日から2日経った。カルムはテイルに呼ばれて、シャラシティのカフェに来ていた。

「……何の用ですか」
「てめーに見せておきたいモンがある」

 ガサゴソとカバンの中から取り出したのは、石----------それもメガストーンだった。
 デンリュウナイトというらしい。
 しかし、光が若干褪せているように見える。
 色がくすんでいるのだ。

「メガストーンってのは、言うなればカロス地方そのものだ。石ってのは大地の一部だからな。その光が褪せているってことは---------」
「カロス地方の大地も相当危うい状態になっている?」
「正解」

 そして立ち上がった。
 一刻も早く、フレア団を倒さないとな、と続けた。

「シャラジムに挑むんだろ? ちょっと揉んでやる。着いてきやがれ」
「!」
「今の俺達じゃ、あいつらには勝てない。だけど、メガシンカさえ手に入れれば、それも可能となる」

 だが、とテイルは続けた。

「メガシンカの継承は今は出来ない」

 それはマスタータワーが襲撃され、キーストーンが根こそぎ奪われたからである。
 新しいメガストーンが採掘されるまでは、まだムリという訳だ。

「だから少しでも強くなろうって訳ですか」

 こくり、と頷くテイル。そして続けた。

「カーマインとシェナの件……残念だったな」

 俯くカルム。
 何故、こうなってしまったのか。
 何故、誰も彼を止められなかったのか。
 何故、自分は何も出来なかったのか。

「悔しい……です」
「だから取り戻そうぜ」

 立ち上がったテイルは、いつもの不敵な笑みを浮かべた。

「”俺達が一番大事なモノ”って奴を」
「!」

 どんっ、とカルムの胸に拳を当てる。

「俺はこの美しいカロス地方を」
「僕は大切な人を」

 ***

「つーわけだ。バトルすっか」
「結局それっすか」

 カルムは溜息をついた。
 また砂浜である。
 アズール湾の砂浜で今、カルムとテイルは合間見えていた。

「お前のワカシャモと俺のモココ。互いに進化後がメガシンカできるポケモンを所持している」
「つまり?」
「互いに鍛え合えば良いのさ」

 レベルも丁度同じ程度だしな、と続ける。
 しかし2回のバトルが2回とも海辺とは、何かの縁か。

「こいつはカロスに来るときに連れてきたポケモンの1匹。お前に見せるのは初めてだな」
「早く始めませんか?」
「ちっ、物腰は柔らかくなったが、生意気な餓鬼だ。行くぞ、モココ!」

 投げられたボールからはモココが現われた。一方のカルムはワカシャモを繰り出す。

「さーて。こないだみてーな漏電作戦は効かないぜ? 何せモココはシビルドンと違って、身体の綿以外は全てが絶縁組織になっていてな。もっとも綿が電気を通すのは----------発電するためのほかないけどな!!」

 バリバリバリ、とモココの体毛が逆立った。”充電”だ。電気を溜めて電気タイプの技の威力を上げるだけでなく、特殊技に対する耐久力も強める技。

「ビリッと来たァー!!」

 --------あんたが充電してどうする。

「ワカシャモ、グロウパンチ!」

 成長する拳をモココに放つワカシャモ。
 流石に速い。避け切れずに一撃目は喰らってしまったが、

「というわけで、エレキボール!」

 刹那、電撃の球体がワカシャモ目掛けて飛ばされた。
 それを胸で喰らい、膝を付くワカシャモ。
 
「すっげぇパワー持ってるじゃないですか、そのモココは」
「どーも、どーも」
「だけど、こっちも負けちゃいない! ワカシャモ、ブレイズキック!」

 脚に炎を纏わせ、一気に振り上げる。目の前のモココ目掛けて。
 しかし、ひょいと素早い動きで避けてしまう。

「隙ありだぜえええ!!」

 もくもく、とモココの首の周りの綿が泡立ち、それが飛ばされた。
 綿だ。綿がワカシャモを包み込んでいく。
 あっと言う間にワカシャモの身体は綿まみれに。
 
「綿胞子は、相手の素早さを下げる技。これをどう突破するつもりだ?」
「くっ……! なら、火の粉だ!」

 ふっ、と綿に火を吹きかけるワカシャモ。すぐにそれは燃え上がり、焼ける------と思われた。
 しかし、実際そうはならなかった。
 焼けた部分からどんどん綿が増えていくのだ。

「綿胞子。つまり、特殊な綿を増殖させる胞子を放つ草タイプの技だが、こいつは”菌類”の仲間で、しかも非常に成長及び繁殖が早い。つまり、燃やそうが何しようが無駄ってことだ!」
「んな!?」

 また、補足すれば草タイプではないモココが、その胞子を量産できるのは、同じくポケモンが技を使う際に使用する際に”パワーポイント”、通称PPと呼ばれるものを消費してエネルギーに変えているからである。
 ポケモンが炎を吐いたり氷を吐いたり電気を放ったりできるのは、全部このPPのおかげなのだ。
 
「エレキボール!!」
「避けろ!」
「無駄無駄無駄ァ!! エレキボールは自分の素早さが相手の素早さよりも高ければ高いほど威力が高くなる技! さあ喰らいな!」

 高速で追尾する電撃の弾。ワカシャモの特性:加速(あの後やっと知った)で素早さを上げればダメージは軽減できるかと思ったが、綿胞子でそれを封じられてしまう。
 レベルは同じはずだ。
 しかし、こればかりはトレーナーの力量の差か。
 電気が一気に流れ込む。
 悲鳴を上げるワカシャモは仰け反って倒れた。

「おいおい、これでお終いか? 違うよなァ!」
「ったり前でしょうが!! ワカシャモ、ブレイズキック!!」

 成長する拳を放とうとするワカシャモ。しかし、脚は完全に綿によって埋まってしまった。
 つまり、技を出すための後一歩が踏み出せないのだ。

「どうした、その程度か! てめぇの決意はその程度で止まっちまうようなちゃっちぃもんだったのか!」

 モココが再び充電を始めた。

「……これで終いだ。モココ、エレキボール!!」

 まずい、電撃の弾が特大サイズに大きくなる。
 
「格闘タイプにおいて、最も重要なのは……己の業で戦うこと」

 前に読んだ本にそう書いてあった。

「己の業……そうか」

 電気の弾が迫ってきた。次に喰らえば本当にお終いだが----------

「正面から来る飛び道具-----------なら、こっちから打ち返す! ワカシャモ、グロウパンチ!!」

 ----------脚が使えないなら、拳を使うだけだ!!
 電気の球をその拳で跳ね返す。電気が拳を伝う前に、それは弾けた。

「っ、やるじゃねえか! だけどそっから動けないだろ! どうやって決定打を与えるつもりだ?」
「ワカシャモ、気合溜め!!」

 直後、熱いオーラがワカシャモを包み込んだ。
 それだけで次に何が起こるか察する。
 更にワカシャモの身体が業火に包まれた。

「これはっ!?」
「ニトロチャージ。炎タイプの物理技だが、ここで習得するかよ!?」

 一気に内部から燃された綿は再生する暇もなく燃え尽きた。
 そして、今目の前には丸腰のモココの姿が。

「これで一気に決める! ワカシャモ、スカイアッパー!!」
「舐めるんじゃねぇ! こっちだって、突進だ!!」

 しかし、一瞬遅かった。
 ワカシャモの拳がモココの腹をしっかりと捉えたのだ。
 そのまま、太陽へ向けるように拳を突き上げる。
 スカッとする音を立てて、モココは吹っ飛んでいった。

「っ、戻れモココ」

 虚しいボールに戻す音が後に響いたのだった。


 ***

「この調子ならジムにも挑戦できると思うぜ、俺は」
「本当ですか!」
 
 その後のポケモンセンターでテイルはカルムに太鼓判を押した。ここ最近で相当強くなっている、と。

「メガシンカ親父が聞いたら喜んだだろうがよ、残念だぜ。キーストーンさえ奪われてなかったらな」
「全くですよ」

 何にせよ、ないものを欲しがるのは良くない。今はシャラジムに挑戦して勝つこと。それが最優先である。
 
「んじゃ、気張ってこいや」
「はい!」

 最初はテイルの事を好い加減な人だと思っていたが、本当に熱くて良い人なんだと実感した。
 そしてカルムはジムへ向かう。
 3つ目のジムバッジを手にするために!

第六十九話:VSシャラジム パート1 ( No.156 )
日時: 2014/08/24 00:29
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

「え? シャラジムに挑戦したい?」

 ジムトレーナーと思われるローラースケートの少年はカルムが挑戦すると聞いて怪訝な顔をした。
 まあ確かに大変な時期ではあるだろう。マスタータワーの襲撃があり、それで挑戦者の対応がしにくいのだろう。

「駄目だよ、今ジムリーダーは不在で……」

 いや、それどころかコルニ自体がいなかった。
 肩を落とし、日を改めようとするカルム。
 仕方ないか。

「誰が不在だって?」

 背後から凛とした声が響いた。

「コルニ、良いのかい!? 今、マスタータワーの改修工事で君も手伝わなきゃいけなかったんじゃ……」
「だいじょーぶ、もうすぐ終わるらしいから今日は抜けさせてもらった。それにね、その人はあたしの知り合いだからさ」
「なら良いんだが……」

 少年はふぅ、と溜息をついた。やれやれ、といった表情だ。
 こっちもやれやれである。大変なときにジム戦なんかして大丈夫なのだろうか。
 ふとカルムはコルニに話しかけられた。

「この間からどれだけ強くなったか、見せて欲しいんだ!」
「良いぜ、この間みたいにはいかない!」

 彼の闘志をビリビリと感じ取ったのか、コルニもにっと笑って「ついてきて!」とカルムを案内する。
 意気込む彼を待っていたのは、妙なバトルフィールドだった。
 見れば、広大なローラースケート場になっている。
 格闘タイプのジムなのだから、もっとサンドバックだの何だのが置いてある部屋にすれば良いのに、と思った。
 もっとも、ジムトレーナーがローラースケートの少年だった時点で大方予想はついていたのだが。

「で、大丈夫だったのか? 僕なんかのために時間を割いてしまって」
「おじいちゃんは言ってた。今が大変なときだからこそ、チャレンジャーにはいつも以上に全力で接しなさいって」

 そこまで言うならこちらも後に引けない。
 最も、最初から引くつもりなどないのだが。
 実力者相手は気が抜けない。とにかく、戦うしかあるまい。
 審判のジムトレーナーの少年が言った。

「バトルは3対3のシングルバトル。交代はチャレンジャーのみ認められます!」

 両者は頷く。

「それじゃあ、行くよ!」

 彼女は一度目を閉じた。
 そして叫んだ。


「命、爆発!!」


コルニ:シャラシティジムリーダー
『エボリューション ファイター!』


 ***

「私の先発はこの子! 頼んだよ、コジョフー!」
 
 モンスターボールが投げられ、中からは直立二足歩行の獣がカンフーの構えをとっていた。
 この世界にもポケモン以外の生命体は存在するが、その中でもオコジョという動物に似ている。

「格闘タイプか。有効打は少ないかな。なら、僕の先発はこいつだ! 行け、ニャオニクス!」

 -------------ありあまるサイコパワーを持つこいつなら、勝てる!

「んじゃ、行くよ! コジョフー、猫騙し!」
 
 バチンッ、とニャオニクスの目の前で手を叩き、蹴りを入れる。
 さらにそこから、

「グロウパンチ!」

 の追加攻撃。効果今一つとはいえ、いきなりニャオニクスは体力を多く削られてしまう。

「サイコショック!」
「させないよ、往復ビンタ!」

 連続でニャオニクスの横っ面を叩くコジョフー。集中を切れさせて、技を出せないようにしているのだ。
 最後に一発、強い一撃をお見舞いすると、ニャオニクスは吹っ飛んでいった。

「っ大丈夫か!」

 が、立ち上がり、まだまだやれると目が言っている。

「んじゃあ、こっから畳み掛ける! ニャオニクス、サイコショック!」

 念じ球が形成され、一気にコジョフーへ叩き付けられていく。
 だが、華麗に舞いそれを次々にかわしてしまった。
 まずい。敵の素早さは想像以上である。

「とりあえずここは、リフレクター! 物理攻撃の威力を抑える!」

 透明な壁を張り、物理攻撃にそなえる。
 これなら、ある程度の間は持つはずだ。

「グロウパンチ!」

 成長する拳を放つコジョフー。
 だが、壁は壊れない。しかし、コルニはそれでもなお笑みを浮かべて拳を突き上げた。

「そのままグロウパンチ、グロウパンチ、グロウパンチ!!」

 ドドドド、と連続で拳が打ち込まれた。更にその度に拳の硬度は増していく。
 そしてとうとう、4発目でリフレクターは破壊された。

「う、うそだろ!?」
「いっくよー! 往復ビンタ!!」

 一瞬で間合いを詰めるコジョフー。そして再び拳を振り上げる-------------

「なーんてな! ニャオニクス、チャームボイス!」

 突如、可愛らしい鳴き声を上げるニャオニクス。コジョフーの身体が立ち止まる。

「今だ、サイコショック!!」

 念じ球がコジョフー目掛けて飛んでいく。それが一気に破裂し、後には倒れたコジョフーの姿が。

「そ、そんな! フェアリータイプの技も覚えていたの!?」
「隠すのは大変だったよ。チャンスは無用心にヤツが近づいてきたとき。もしも耳でも塞がれたりしたらこの技は意味を成さなくなってしまうからね」

 それだけではない。
 チャームボイスは威力が低いため、決定打にはなりにくい。
 しかし、精神ダメージを与えて動きを止めた後に一瞬の隙が生じる。
 そこを縫って技を使うための集中をすれば良いのだ。

「そこで決定打のサイコショックを撃った訳さ」
「すごいよ、さっすが! だけど、まだまだここからだよ?」」

 好戦的に笑った彼女は、ボールを投げた。

「頼んだよ、ゴーリキー!」

 現われたのは怪力ポケモン・ゴーリキー。非常に大きな巨体と筋肉を併せ持つ格闘タイプのポケモンだが、はっきりいって美少女よりの彼女とは少々イメージが掛け離れている気がしなくもない。

「随分とゴツいポケモンだけど、エスパータイプのニャスパーの方が一方的に有利だろ」
「どーかなー?」

 ふふ、と声を漏らした彼女は、

「ゴーリキー、岩石封じ!!」

 と叫ぶ。
 途端に上から岩と言う岩が降ってきたからたまらない。
 あれ? 何このデジャブ。

「だけど、当たらなければどうってことはない! 避けろ、ニャスパー!」

 岩石を避けようとするニャスパー。
 しかし。
 避けられない。
 というか、身体が硬直して動けないのだ。
 
「ゴーリキーの特性は”ノーガード”! その効果は、互いのポケモンは絶対に技があたると言う事!」
「そ、そんな、ニャオニクス!!」

 ガラガラガラと音がしたと思えば、そこには岩がうず高く積み上げられていた。
 そして、ニャオニクスはその下敷きになって倒れていた。

「くっ、戻れニャオニクス!」
「これで5分5分じゃない?」

 厄介な特性、ノーガード。つまり、どんな技だろうが必ずこちらは喰らってしまう。
 加えて高い能力値。
 徐々に圧倒されつつあるカルム。
 それでも彼は次のモンスターボールに手を掛ける-----------

キャラクターファイル5:ブラック ( No.157 )
日時: 2014/08/24 20:46
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

「フレア団を倒すのはこの俺の使命だ。何の能力を持っているか知らんがな、カルム。これ以上フレア団に関わるなよ」

ブラック 男 推定10代後半
容姿:黒髪にゴーグルを付けている。白いシャツに黒い上着を羽織っており、シンプルな服装。左の手首にはメガリングが装着されている。
性格:まだまだ掴み切れていないところはあるが、気が抜けたような皮肉家。しかし、勝負になると熱くなるところがある。
解説:正体不明のポケモントレーナー。その目的はフレア団を倒すことらしい。要所要所でカルム達を助け、「フレア団に関わるな」と残して去っていく。ポケモンをニックネームで呼んでいる。カロス地方出身のトレーナーではないらしいが……。
一人称:俺
二人称:お前


手持ち

リオ(ルカリオ):♂
技:波導弾、神速、?、?
性格:勇敢、血の気が多い
特性:不屈の心→適応力
解説:彼の相棒で、どんな場所からでも確実に敵を追い落とす。ルカリオナイトを所持しており、メガシンカ後の特性:適応力は強力。

ナック(フライゴン):♂
技:大文字、流星群、穴を掘る、?
性格:無邪気、物音に敏感
特性:浮遊
解説:素早さに長けた戦い方を得意とする。オペラの所持しているフライゴンとは何か関係がある----------!?


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