二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスターXY 命と破壊の遺産
日時: 2015/07/13 03:02
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

”読者の皆様へ”

 はい、どうも読者の皆様、自分はタクと申します。どこかで、見かけた事があるかもしれませんね。二次で、ポケモンとか、デュエマの小説を書いていました。
 今作は、ポケットモンスターXYのストーリーをモデルとしたものです。
また、オリジナル要素が多々あります。そして、今作から後書きを付けることにしました。まあ、書く事がないときは、何も書いてないかもしれませんけど。応援、よろしくお願いします!

ポケモン第六世代を最初に飾るゲームソフト、XYのノベライズ化!! 最後まで是非、ご覧あれ!!

登場人物紹介>>12
 
プロローグ
>>01

アサメタウン編
>>09 >>10 >>11

ハクダンシティ編
>>21 >>22 >>23 >>40 >>41 >>42 >>45 >>47

ミアレシティ編
>>50 >>51 >>52 >>53 >>56 >>57 >>61

コボクタウン・パルファム宮殿編
>>62 >>68 >>69 >>71 >>76 >>77 >>79 >>80

コウジンタウン編
>>83 >>86 >>87 >>90 >>95 >>96 >>99 >>102 >>103 >>104 >>110 >>111 >>112 >>113

ショウヨウシティ編
>>114 >>115 >>119 >>120 >>121 >>124 >>125 >>126

シャラシティ編
>>127 >>131 >>132 >>133 >>134 >>135 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>145 >>146 >>147 >>149 >>152 >>153 >>154 >>155 >>156 >>158 >>161

ヒヨクシティ編
>>164 >>165 >>166 >>169 >>170 >>171 >>172 >>173 >>174 >>175 >>176 >>179 >>182 >>183 >>184

ミアレシティ編2
>>185


ss・短編置き場

1.木登り騒動 >>148

飽き性な作者ですが、応援よろしくお願いします。また、読者の皆様の意見を聞きたいので、コメントには感想を添えてくださると幸いです。

Re: ポケットモンスターXY 命と破壊の遺産 ( No.168 )
日時: 2014/09/30 23:48
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

モノクロさん

どうも、コメントありがとうございます。
フクジの設定はアデクを基にしたところもありますが、やはりXYのテーマである生と死について触れさせるきっかけになれば、と思ってつけました。

ええ、イーブイのような小動物系が特に好きなんですよ。自分や家族が喘息持ちなんで、家で犬とか飼えないから、というのもあります。ただ、ここ最近は特にイーブイ好きがエスカレートしてるような気が。ちなみに自分もモノクロさんに対抗してモノクロさんが♀のクチートなら、自分は♀のサンダースにしようとしましたが、無理でした。折れました。ブイズの性別比率は本当にどうにかしてもらいたいものです。ちなみに、理想個体をこの間作り、世代交代しました。

ああ、たまに混じってしまいますね。4倍弱点とか、積む、とか。夢特性は流石に避けるようにしていますがね。

モノズのフラグは、まさに狙ったんですよ。はい。このイーブイがどっちに渡るのか、そして何に進化するかはお楽しみに。

ちなみに最近、メガゲンガーの強さに改めてハマっているところです。苦手な相手がはっきりしているので、道連れも打ちやすいですし。というか、最初は火力微妙だなーと思っていましたが、こいつの真の強さはアタッカーとしての性質ではなく、トリッカーとしての性質だったわけです。やっぱゲンガーつえぇ。

それでは、また。

第七十五話:疾風のアブソル ( No.169 )
日時: 2014/10/04 10:37
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 ゲコガシラが体に水を纏って突撃した。必死にサイコエネルギーを溜めた角で押さえつけたアブソルはかろうじて跳ね返すことに成功する。一方のゲコガシラも跳ね飛ばされた際に地面に手を突いて衝撃を緩和させたものの、想像以上のパワーだったのか、息を若干切らしていた。

「ゲコガシラ、怯むな! 水の誓い!」

 地面へ拳を放つ。途端に亀裂から間欠泉が吹き出てアブソルを吹っ飛ばした。
 流石の威力である。しかし、水さえも踏み台にしてさらにアブソルは高く跳んだのだった。

「アブソル、サイコカッター!」

 ぎゅんぎゅん、と超能力で圧縮された刃が風を切り裂いて次々とゲコガシラへ襲い掛かった。
 直感で感じる。
 これ、やばくねえか、と。
 肌が泡立ち、唇が乾く。
 この瞬間、次に出すべき指示は分かっていた。

「ゲコガシラ、電光石火!」

 向かってくる刃は2発。それらはこちらに向かうにつれ、互いの距離を狭めていく。ならば、こちらにやってくる前に電光石火で2つの間を通り抜けてしまえばいいのだ。
 地面を蹴り、一気にアブソルとの間を詰める。

「----------!」
「そのまま、蹴っ飛ばせ!」

 アブソルの横っ面にゲコガシラの蹴りが炸裂した。あまりにも速過ぎる不意打ち。流石のアブソルも何もできなかった。
 悶絶した表情をみせるアブソル。だが、今ので完全にキレたらしい。

「ごめんね、お隣さん。私のアブソル、ちょっと怒りっぽいからッ!! アブソル、辻斬り!」

 アブソルの刃が鋭く、妖しく光った。そして、今度はお返しと言わんばかりに地面を蹴り-----------消えた。
 一瞬で目の前から忽然と姿を消してしまったのだ。
 いや、違う。

 --------後ろだ---------!!

 気付いたときにはもう遅い。背後を切り裂かれたゲコガシラは衝撃で吹っ飛ばされる。
 何というスピード。まさか消えたようにみえるとは。まさか以前、ハクダンでテイルの手持ちを打ち破ったのはこのアブソルではないだろうか、と慄くカルム。
 見ると、背中には真一文字の傷ができていて、痛々しかった。
 尚も威嚇するような表情でアブソルが詰め寄っていく。

「ゲ、ゲコガシラ!!」

 声を掛けた。ゲコガシラも流石に参ってしまったようだ。何よりも背中の傷が痛そうである。
 かろうじて、立ち上がるも苦しそうな顔だ。
 
「どうする、お隣さん。相当痛がってるみたいだけど」
「……僕たちの負けだ、ゲコガシラ。無理したらいけな--------」
「ゲロゲーロ!!」

 直後、べしゃっ、とカルムの顔面に水がかかる。
 ゲコガシラが水を吐いたのだ。

「こ、このヤロー! 人が心配してやってるのに、水ぶっ掛けるヤツがいるかぁー!」

 だが、ゲコガシラの姿は「まだまだ戦える」と言っているようにも見えた。
 
「やらせてあげたらどうだい?」

 博士が言った。

「怪我はバトルに付き物。無理は禁物だけど、ゲコガシラがまだやりたいって言ってるんだ。できる限り、最後まで戦わせてあげようよ」
「博士……」

 --------しゃーねえな。
 カルムはハンチングの鍔をくいっ、と上げると、叫んだ。

「ゲコガシラ、飛び跳ねる!!」

 ゲコガシラがその声に応えるかのように地面を蹴り、上空へ飛んだ。一瞬、ゲコガシラが目の前から消えたと錯覚した

「それでこそ、カルムよ! アブソル、サイコカッターで迎え撃て!」

 超能力の刃が再び音を立ててゲコガシラへ向かう。しかし、これだけでは終わらない。
 さらに、自分からも刃にエネルギー纏わせて突っ込んでいく。

「サイコカッター2発に辻斬り! これで終わりよ!」
「いーや、足元を良く見るべきだったな、セレナ」

 次の瞬間だった。セレナは驚愕する。
 間欠泉が、アブソルめがけて吹き上げてくるのだ。

「そ、そんな! 今の間に水の誓いをもう一回使ったの!?」

 アブソルの体はゲコガシラの視界から消えた。一瞬で、間欠泉が脚に到達し、上に吹き上げられてしまったのだ。
 先に地面に着地したゲコガシラは勢いを失って落下してくるアブソルを見据える。
 
「ゲコガシラ、電光石火ァー!!」

 地面を蹴り、跳んだ。そして落ちてくるアブソルの腹をめがけて、拳を叩き込む。
 落下の力と、ゲコガシラの上昇していく力が相乗し、アブソルの全身に衝撃が走った。
 が、尚も動ける様子。

「ゲコガシラ、煙幕だ!」

 今度は煙幕だ。一瞬でアブソルの視界を煙が塞いだ。アブソルは周りが見えなくなり、混乱する------------が、ようやく視界が晴れ、安堵の息を漏らす。

「アブソル---------!!」

 主人・セレナの声でアブソルは我に返った。
 自分が落下”していた”ことに気付く。
 受身を取ることを忘れ、落下のダメージが諸に全身に叩き付けられた。

「ゲコガシラ、電光石火!」

 最後にゲコガシラが止めと言わんばかりに体当たりした。
 うめき声を上げたアブソルはそのまま、地面に倒れこむ。

「や、やったか!?」

 だが、尚も起き上がろうとするアブソルは、最後っ屁と言ったところか、サイコカッターをゲコガシラに飛ばして地面に倒れこんだ。
 一方、不意の一撃を食らったからか、ゲコガシラもまた、同時に地面に倒れこんだのだった。
 勝負は、引き分け、だった。

「あー」

 カルムは察したようにつぶやいた。これ、イーブイ掛かってるんだったよね、と。

「戻れ、ゲコガシラ。よく頑張ってくれた」

 カルムは微笑みながらゲコガシラをボールに戻す。一方のセレナも同様だった。

「何ていうかなー、引き分けか。お隣さんには勝ちたかったんだけど」
「同じだよ。それよりも、イーブイはどうしよっか」
「マーベラース! 素晴らしいバトルだったよ」

 パチパチ、と拍手しながら博士が歩み寄ってくる。

「皆が成長している姿を見て、安心したよ」
「それは良いんですけど、イーブイ……」

 そういえば、結局どちらが手に入れるのか、ということだ。

「あー、そうだね。引き分けだったからね」

 と博士が頭を掻いた、そのときだった。ピーピー、と博士のホロキャスターに着信が入る。
 開くと、化石研究所の所長さんからだった。

『いやー、すみません。イーブイ実はもう1匹いるんですけど、送り忘れてしまって。そっちに後で送っておいたんですよ』
「……」

 そのホログラムメールを覗き込んでいたカルムとセレナは絶句した。今まで、俺達は何やってたんだろ、というような微妙な空気が流れる。

-----------お隣さん、私たち何やってたんだろうね。
 -----------唯一ついえるのは、僕たちはもう……戦わなくて良いってことなんだ。うん。
 -----------あ、今度またバトル申し込むから。
 -----------うっそ、マジで?

 「ブイブイー!」という博士に抱えられたイーブイの喜んだ声が響き、場にはひたすら疲れきった雰囲気が漂っていたのだった-----------


後書き:ゲコガシラってアクアジェット覚えないみたいですね。今まで勘違いしていたので、全部電光石火に修正しておきました。というわけでセレナ対カルムですが、結局イーブイは2匹いたということで決着しました。にしてもアブソルってやっぱり格好いいですね。メガシンカしたら中二かっこいいとか言われますが、まさにそのとおりですよ。さてヒヨクシティ編はそんなに時間かけないと思います。後々の話のために。次はジム戦ですね。それでは、また。

第七十六話:VSヒヨクシティジム パート1 ( No.170 )
日時: 2014/11/15 17:19
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 ***

 セレナと別れた次の日。

「もう少し間を置いてもいいかな、とは思ったけど」

 カルムは呟いた。新たな手持ち・イーブイを手に入れ(セレナも後から送られた方を手に入れた)とうとうヒヨクジムに挑むつもりなのだ。
 さて、ここでスタメンの確認である。
 まず聞いた話によればフクジは草タイプのエキスパートらしい。
 そしてカルムの手持ちにはワカシャモという草タイプに有効打を思いっきり突けるポケモンがいる。
 こいつを選出しない手は無い。
 そしてバトルは3対3の形式らしい。
 そこで残りはモノズとニャオニクスを選出することにした。
 ヒヨクジムの入り口は山に掘られた洞穴のようだった。
 意を決して中に足を踏み入れる。
 
「わーお」

 思わず口を開いた。
 そこには縦に長く伸びた巨大なアスレチック・フィールドが展開されているではないか。
 それもロープやネットは蔦で編まれた天然のものである。
 すると前の方から老人の声がした。
 ジムリーダー・フクジがカルムの前まで歩み寄ってきたのだ。

「ふぉっふぉっふぉ、少年よ。よくここまで来たな。この広大なフィールドはわしが若い頃に設計したものだよ」
「わーお」

 もう一度口をあんぐりさせて言った。
 何この人すげえや。
 とか思っているうちに審判と思われる男も現れる。

「今回はこのアスレチックフィールド”全体”で戦って貰います。ルールは3対3のシングル。良いですか」
「ぜ、全体!?」

 思わず絶叫するカルム。
 この広大なフィールドを駆け巡れと言う事だろうが、余りにもぶっ飛んだ発想だろう。

「そしてチャレンジャーはポケモンと共にこのフィールドを移動、一方のジムリーダーは音声を発する無線ユニットを飛ばして最上階の部屋から指示を出して貰います。昔はフクジさんもポケモンと一緒にこのアスレチックで移動することになっていたのですが」
「最近は体にガタが来てしまってな。そこでミアレシティの電気タイプの天才・シトロン君に頼んで離れた場所からでもポケモンに指示ができるようにそれを作って貰ったんじゃ」

 こんこん、と自分の腰を叩くフクジ。体が老いて体力も落ちてしまったのだろう。
 そして電気タイプの天才・シトロン。似たような肩書きを前に聞いたことがある気がする。そして、ミアレジムのジムリーダーだったはずだ。
 ちなみに飛行ユニットを破壊したら反則で失格らしい。まあ薄々気づいてはいたが。

「電気タイプの天災……ですか」
「いや、字が違うぞ少年」

 ***

『それでは始めるぞ』
 
 目の前を飛ぶ飛行ユニット。そこからフクジの声が聞こえた。

『まだ名を聞いていなかったな。少年、名乗ってみなさい』
「カルム。アサメタウンのカルムです!!」
『良い声じゃ。では、行くぞ』



フクジ:ヒヨクシティジムリーダー
『今なお 花を 咲かせる 老樹』



 円盤状の床全4層からなるバトルフィールド。
 4層目にはフクジがいる小部屋があるため、その下の層3つを移動して戦うことになる。
 現在、カルムは第3層にいる。
 そして飛行ユニットも同じだ。ちなみに、この飛行ユニットにはカメラがついており、これを通してフクジは指示を出すらしい。

『行け、ワタッコ!』

 上の方からボールが放り投げられ、そのまま割れた。中からは綿草ポケモン、ワタッコが現れる。
 ワタッコは丸っこい体の上と左右に大きな綿をつけている。そして風に乗ってふわふわと飛ぶのだ。
 このジムの通気口から流れる空気がそのまま風となり、ワタッコが飛ぶことができる最高のフィールドとなるのだ。

「よし、まずはお前だニャオニクス!」

 図鑑を見た限り、ワタッコは飛行タイプも併せ持つ。接近戦は不利だ。そのため、飛び道具を持つニャオニクスならば有利だろう。

『こちらから行くぞ。ワタッコ。下に滑空してタネマシンガン!』

 と、意気込んだそのときだった。いきなり今までの階層からふわりと飛び降りたかと思えば、ワタッコは風に乗り、そこから大量の種を口から吐き出してくる。
 それも、円盤状の床の外側からだ。
 それは正にマシンガンのように、乱射されニャオニクス目掛けて飛んでいった。
 
「リフレクター!」

 特性:悪戯心のおかげで先制して物理攻撃を遮る壁を張り、何とか凌ぐ。
 そこから反撃----------ではなく、

「ニャオニクス、とりあえず逃げるぞ!」
『ほほ、円状のこのフィールドにおいて、場外攻撃を仕掛けられるワタッコから逃げることができるとでも思っているのかな?』
「下だ! 下!」

 加えて、ワタッコはかなりスピードも速い。当然、それは敵を追撃するときにも役立つ。
 ニャオニクス目掛けて一直線--------と思いきや、カルムとニャオニクスは蔦を滑り降りて下の階層へ。
 さて、ここで痛くなってくるのがルールだ。トレーナーもポケモンもネットに落ちたら、それぞれ即失格・瀕死扱い。そしてこのフィールドには多くのネットが張られている。それを飛び越えるにはジャンプするか、ぷら〜んとぶら下がったロープでイッツ・ターザンジャンプをやらないといけないわけだが、ここで困ったことがあった。
 ショウヨウジムで証明されているように、カルムはこの手の運動が苦手なのだ。走るのならばまだしも、握力・そして腕力が貧弱貧弱ゥ! なのだ。

「どーすんだ、これぇ!!」

 たたた、と駆けていく中、カルムは絶叫。そんな中、回り込んだワタッコが綿の胞子を吹きかけてきた。
 が、逆に言えばこちらから待ち伏せする手間が省けたということだ。

「ニャオニクス、サイコショック!!」
『むっ』

 くぐもった声が追いかけてきた飛行ユニットから聞こえた。
 大量の念じ球がワタッコへ襲い掛かったのだ。
 しかし、ワタッコの速いこと速いこと。全て避けてしまった。

『その程度、わしが指示を出すまでもないわ』
「くっ……」

 カルムとニャオニクスは身構えてリターンダッシュする3秒前。

「さあ、ワタッコ! 宿木の種じゃ!」

 プッ、とワタッコの口から種が飛ばされた。それはすぐに発芽し、ニャオニクスの体に絡み付く。
 この技は見たことがある。パルファム宮殿の大会で、ナツトキと戦ったときだ。

「くそっ!」

 歯軋りをする。目の前のワタッコの強みは何よりも速さだ。攻撃技ならばまだ壁で防げるが、補助技はどうしようもない。交代しても良いが、ワカシャモもここで余り消耗をさせたくない。
 異質なバトルフィールドにルール、そして素早い敵。技は避けられて当たらない。
 カルムは気づかないうちにどんどん不利な状況へと落とし込まれていたことに気づいた-----------

第七十七話:VSヒヨクシティジム パート2 ( No.171 )
日時: 2014/11/15 21:34
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 滑空しながら場外攻撃を仕掛けるワタッコは強敵だ。しかも、今のニャオニクスは宿木で体を縛られて動けない。

『ワタッコ、種マシンガンじゃ!』

 急降下したワタッコはそのまま大量の種を吹き出す。
 動けない的に大量射出されたそれは容赦なくニャオニクスの体を狙っていく。
 しかし。種の動きが止まったのがフクジには見えた。

「……こいつがエスパータイプだってこと、忘れちゃ困りますよ!」
『念力で種マシンガンの種を止めたか』
「そのまま、サイコショックで叩きつけろ!!」

 サイコショックは空気中の塵を固めて念じ球にし、物理的なダメージを与える技。
 やはりと言うべきか、種も一緒に念じ球となり、そのまま大量に作られたそれが、今度はワタッコの体を狙っていく。
 しかし、その動きの素早いこと素早いこと。
 全てそれらを避けてしまったのだ。

『危なかったぞ、流石に今のは。だが、今すぐ撃ち落してやるぞ』

 再び乱射される種マシンガン。流石に危険を感じたのか、カルムはさっきと逆の方向に逃げた。
 その中、カルムはふと目に留めた。
 ワタッコが先ほど乱射したと思われる種を。

『おっほっほ、時間の無駄じゃよ、そんな追いかけっこをしても』

 しかし、とうとう観念したのか、カルムとニャオニクスはワタッコの方に向き直った。
 フクジは笑みを浮かべ、叫ぶ。

『種マシンガンッ!!』
「サイコショック!!」

 一瞬、フクジは怯んだ。こちらの攻撃に合わせてサイコショックを撃ってきたのだ。仕方があるまい。攻撃を一時中断して、念じ球を避けることに専念する。
 が、そのときだった。
 ワタッコの体が大きくぐらついた。
 それも後ろから何かの攻撃を食らったかららしい。
 しかし、後ろには何も居ない。
 そして、怯んだワタッコにカルムが追撃を掛けた。

「ニャオニクス、サイコショック!!」

 普段ならば避けられる。
 しかし、前方、再三にわたる後方からの攻撃にワタッコは全身放火を食らった。
 そして、決して高くない耐久のワタッコはそのままダウン。
 飛行ユニットが持ったモンスターボールのビームに当たり、そのまま中へ戻った。

『……なるほど。後ろに落ちていた種マシンガンを利用して攻撃したわけじゃな』
「ニャオニクスのサイコパワーだと、普通ならば今みたいな攻撃であれほどのダメージは与えられません。遠い距離の塵を固めることはできませんから。ですが、その点ワタッコの種を集めるだけならば簡単です」
『ほっほっほ、近頃の若いもんの柔軟な発想には驚かされてばかりじゃわい。だけどのう……』

 と、そのときだった。ニャオニクスがいきなりバッタリ倒れてしまったのだ。
 
『わしのワタッコの宿木の種は、ちょいとばかしお前さんのニャオニクスにはきつすぎたかの』
「--------!!」

 何という生命力だろう。宿木がニャオニクス程度の体力を完全に吸い取るのにそこまで時間は要らなかったということだ。
 短期決戦に持ち込めて良かった、と安堵するカルム。
 次に繰り出したのは----------

「行け、モノズ!」

 モノズだった。
 一方のフクジ操る飛行ユニットは次なるボールを繰り出す。
 その中から象られたポケモンは、巨大な蛙のようなポケモンだった。背中には蕾を背負っており、花びらが見えている。

『わしの二番手はこいつ、フシギソウじゃ』

 フシギソウ。一見、動きは鈍そうに見えるが、どうだろうか。
 何より、このフィールドを駆け回ったりジャンプするなどの跳躍力があるのだろうか。

「先手必勝、モノズ! 竜の息吹!」
『フシギソウ、避けなさい』

 モノズの口から放たれたブレスを難なく飛び跳ねて避け----------そのまま降りてこない。
 見てみれば、蕾から伸びた蔓の鞭で下にネットが張ってある所謂”落とし穴”がある所の天井にぶら下がって、そのままぴょいっ、と距離をとってしまった。
 そして---------

『フシギソウ、ソーラービーム、撃ち方始め!』
「なっ!?」

 しまった、とカルムは気づいた。奴は十分に距離をとってから時間を稼いでフルパワーのソーラービームを放つつもりなのだ。
 急いで走っていくカルムとモノズ。今のうちに邪魔をすれば阻止することができるかもしれない、と思って。
 しかし。

『掛かったな。フシギソウ、眠り粉!』

 フシギソウはソーラービームのチャージを辞めた途端に粉をばら撒く。それを吸ったモノズの動きはだんだん遅くなり、しまいにはうとうととまどろんで寝てしまった。
 カルムも少々吸ってしまったが、何とか持ち堪える。

『吸わない方が良いぞ。お前さんまで寝てしまうからな』
「く、くそッ」
『そして今度こそ、ソーラービーム!!』

 まずい。モノズは未だに目を覚ます様子が無い。
 そのまま成す術もなく、無慈悲にビームが照射され、モノズを直撃した。
 爆音が響き、あたりに煙が立ち込める。
 しかし、それでも尚。モノズは未だに寝たままだ。

「く、そっ……」

 まるで嬲り殺しに会うかのような戦法。
 さらに、天窓を見れば快晴。光を吸収して光線を放つソーラービームは、ほぼノーチャージで繰り出せるのだった。
 慌てて戻そうとする。しかし。

『フシギソウ、ソーラービームじゃ』

 光線が射出された。
 2撃目を食らったモノズはとうとう起きず-------というか戦闘不能になっており、仕方なくカルムはモンスターボールを取り出した。

「……ありかよ、こんなの」

 悔しげに言ったカルムはモノズをモンスターボールに戻した。

『ほっほ。無闇に突っ込むからこうなるのじゃよ。それに眠り粉などによる催眠戦法は対策しとらんモンが悪い。文句は言えんぞ』
「そーですね。文句は言いませんよ。これだって立派な戦法だってことですから。でも、こいつを見てあんた、いつまでも余裕ぶっこいてられますかね?」

 カルムにはまだ、3匹目が居る。
 まだ、負けたわけではない、と自分を奮い起こし、最後の希望に賭ける。

「行け、ワカシャモ!」

 ふむ、とフクジの声が聞こえた。

『炎タイプのワカシャモか。まあ良い、速攻で眠らせて---------』
「ワカシャモ、ニトロチャージ」

 ドスッ、という音が響いた。まるで、火の玉のようになって突貫したワカシャモがフシギソウの体に体当たりしたのである。
 
『むっ、何のこれしき! フシギソウ、眠り粉!』
「ワカシャモの特性は”加速”! 一度走り出せば速度が落ちることはありません! よって、眠り粉を繰り出す前に-----------」

 
 畳み掛ける!!

 ワカシャモが一度、フシギソウの顔に拳を入れて怯ませ、そして止めの体勢に入る。


「二度蹴り!!」

 
 強靭な脚がフシギソウの体を一度、そして体に衝撃が伝わる前にもう一度炸裂した。
 効果はいまひとつといえど、これは一溜まりも無いだろう。
 筋肉が受け流せる衝撃の許容範囲を超え、そして最後に火の玉となって突貫した。

「これで終わりだ、ニトロチャージ!!」

 効果、抜群。
 燃え盛る体を植物の体で止められるわけもなく。
 フシギソウはそのままネットへ叩き落されたのだった。

『ほほう、やるのう。じゃが--------』

 そのとき、ワカシャモの体に妙な宿木が絡み付いているのが分かった。
 それも、先ほどとは違って頭を中心に絡み付いていく。

「これは---------!」
『”悩みの種”じゃよ。相手の特性を”不眠”に変えるんじゃ。ただ、この戦法とは相性が最悪じゃから最後っ屁というやつじゃ』

 これが草タイプの戦い方。はっきり言って、とても厭らしい。
 補助技をまるで蔓のように絡めていくのだ。
 またもや不利な状況で戦わされることになったカルムは、少なからず焦りを感じていたのだった。

第七十八話:VSヒヨクシティジム パート3 ( No.172 )
日時: 2014/11/16 12:44
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 さて、ネットに落とされて戦闘不能扱いになったフシギソウ。しかし、まだ動けるようだった。弱点の技を食らっていたにも関わらず。はっきり言って恐ろしい耐久力だ。
 このまま長期戦に縺れ込んでいたら危なかった。
 モンスターボールにフシギソウは戻され、回収される。
 そして、3つ目のモンスターボールが上から投げられた。

『わしの3匹目。そろそろ老樹が大花を咲かせるときじゃ。行け、ゴーゴート!』

 と、飛行ユニットから声が聞こえた途端、物凄いスピードで、ゴーゴートが駆け下りてくる。
 それは、メェークル牧場で見せた穏やかさとは掛け離れた姿だった。
 いきなりの戦闘開始に戸惑うカルムだったが、すぐさま声を発した。

「ワカシャモ、ニトロチャージ!」
『加速とニトロチャージで上がってしまった素早さはこれで封じてくれよう。ゴーゴート、ワイルドボルト!』

 刹那、ゴーゴートが電気を纏い、突貫した。火の玉となったワカシャモを突き飛ばす。
 間一髪、穴には落ちずに済んだが、感電した所為で脚がやられたらしい。
 麻痺状態になっていないだけ、まだマシだが。
 ---------つーか、今までのジム戦での麻痺発生率100%だったからな。敵味方関係無く。
 
「草タイプのくせして、電気技まで使えるのかよ」
『さらに、これだけでは終わらせんぞ。ゴーゴート、地ならし!』

 地団太を踏むように脚を鳴らすゴーゴート。その振動がワカシャモに伝わった。
 体が衝撃に襲われる。さらに、脚はガクガクになって最早使い物にならないだろう。

『わしが炎タイプと当たったときの対策をしていないとでも思ったのかな?』
「さ、流石ジムリーダー……!」

 戦慄を覚えたカルム。弱点を突かれるポケモンの弱点を突く。基本だが、これが意外と後々になっても役に立つのだ。しかし、まだ終わってはいない。脚は完全に封じられたが、それならば動かなくても使える技を---------ってそんなのなくね、と気づく。

「二度蹴り、ニトロチャージ、スカイアッパー、ブレイズキック……ダメだ、これじゃあ……!」
『珍しい。ワカシャモの時点でブレイズキックを覚えているのか』
「げっ、聞かれてた」
『しかも特性が加速、と来た。まあ良い、これで止めじゃ』

 バチバチ、と音がした。ゴーゴートが再び発電を始めたのだ。
 まずい。ここで起き上がらなければ、間違いなくワカシャモは負けるだろう。

「立て、立つんだ、ワカシャモ-----------!!」


 ***

 ワカシャモは思い出していた。シャラジムでの戦いを。
 ぎりぎりのところでルチャブルに負けたことを。
 あんな屈辱はもう味わいたくは無い。
 まして今度は、有利なタイプの相手に負けるなど、もってのほか。
 負けず嫌い、というワカシャモの性格が、それまでに蓄えていた経験と結びつき、とうとう自身の力を次の次元へと進めたのだった。
 気が付けば、ワカシャモはゴーゴートの体を片手で受け止めていた。
 電撃が走っていようが関係ない。
 自分の主のためか、いや自身の勝利のために、彼女は戦っていた。
 そのまま、ゴーゴートを投げ飛ばして再び立ち上がった。

「ワカシャモ……!」

 カルムの声が聞こえる。
 そして自身の体の内側から聞こえる新たな鼓動に胸を震わせていた。
 体全体が熱い。
 そして、体全身からあふれ出る熱と炎。
 確信した。自身がもう一度進化を遂げることを!

 ***

「これは……!」
『まさか、進化じゃと』

 余りにも早すぎる第二の進化。しかし、あれだけの強敵との戦いを経てきたのだ。
 おかしくはなかった。
 次の瞬間、ワカシャモの全身を纏っていた炎が弾け飛んだ。
 そこには、轟々と燃える炎を手首から放ち、凛々しくもスマートな体つきをした鳥人の姿が。
 急いで図鑑を見たが、認識を弾いてしまう。
 
『猛火ポケモン、バシャーモ。アチャモ系統のポケモンの最終進化系じゃ。まさか、この土壇場で進化するとは……!』
「なるほど。なら、形勢逆転だっ!!」

 バシャーモに進化したことで、先ほどまで負っていた脚の傷は治ったのか、さらに加速していくバシャーモ。悩みの種さえも燃え尽きたらしい。

『良いじゃろう。最後に一騎打ちじゃ! ゴーゴート、ビルドアップ。からの-------ワイルドボルト!』

 筋骨隆々となったゴーゴートの体。そして、地面を蹴って電気を纏い、バシャーモへ突貫する。
 しかし。一度燃えた炎に油を注げば、そう簡単には止まらない。バシャーモの意地で盛った炎は、むしろ滾りを増すだけだった。


「バシャーモ、ブレイズキック!」


 カルムの声がしたコンマ数秒後。
 電撃ごと、ゴーゴートの体は蹴り飛ばされ、そのままネットのある穴へと叩き落されたのだった。

 ***

 ジム戦はカルムの勝利に終わった。ジムの扉の前に立つ2人。

「まさか、あの土壇場で進化するとはのう。若いモンにはまだまだ負けんと意気込んでいたんじゃが」
「いえ、まだまだですよ、自分も」

 照れるカルム。そして、フクジが小箱を取り出した。
 蓋を開ければ、そこにはバッヂが。

「ヒヨクシティジム、ジムリーダーに勝った証。プラントバッヂじゃ。受け取りなさい」
「ありがとうございます!」

 ついに手に入れた3つ目のジムバッヂ。はっきり言って疲れがこみ上げてくる。
 これでまだ3つ目とは。先は、まだまだ長い。

「さて、次はどの街に行くのかな、カル---------」

 とフクジが声を掛けたそのときだった。
 天井の照明が、ボン、と音を立てて消えた。
 停電らしい。

「はて。この近くには発電所があるんじゃが、どうしたことか」
「発電所、ですか」

 そういえば、思い出した。プラターヌ研究所にバーミリオンが襲ってきたときのことを。
 
『研究所の方も上手くやってくれたか』

 戦慄が走る。
 まさか、これはフレア団の仕業ではないか、と。
 大分前に発電所をのっとり、そして今停電が起こった。
 関連性は高いだろう。
 ダッ、と踵を返してカルムは走り出した。

「ど、どこに行くんじゃ!」
「発電所に行って来ます!」

 と、言って飛び出た矢先-----------カルムは足を止めた。


「何だ、これ……」

 
 一瞬、思考が停止した。何故、これが今此処に? と。
 街には、大量のミツハニーが群れを成して飛んでいたのだった。それも住人たちを襲撃しているという事態に----------

「一体、何が起こっているんだ!!」

 ***

「大変なことになったな……」

 少年は、コンピュータのキーボードを叩きながら、そう呟いた。眉間には皺が寄っている。傍には電光ポケモンのルクシオが主人を見上げるように座っていた。  
 碧眼はなぞるように画面の字を追っていたが、すぐさま視線を落としてルクシオの頭をくしゃり、と撫でた。

「ごめん、君にも最近忙しくて構っていられなかったから」

 カタカタ、とキーボードを打ち終わった彼は声を掛けた。

「やはり僕が直々に出向くしかないでしょう」

 立ち上がった少年は言った。そして置いていた大きなリュックサックを背負った。


「今こそ、サイエンスが未来を切り開くときですから!」


後書き:というわけでヒヨクジム戦完結ですが、今度は発電所の方の騒動に巻き込まれていくことになります。というわけで次回、発電所編スタートです。後、フクジがウツドンじゃなくてフシギソウを使っているのは、ウツドンの形容に困ったからなんですよ。あれどうやって文にしろと。難しい。
フシギソウの方が案の定描写は簡単でした。駆け足のジム戦でしたが、この後の方が長くなりそうですし。最後に出てきた少年の正体は……流石に分かりますよね? 
そして、参照が驚きの10000突破! ありがとうございます、いつも読んでいただける皆様のおかげです!
それでは、また。


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