二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスターXY 命と破壊の遺産
日時: 2015/07/13 03:02
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

”読者の皆様へ”

 はい、どうも読者の皆様、自分はタクと申します。どこかで、見かけた事があるかもしれませんね。二次で、ポケモンとか、デュエマの小説を書いていました。
 今作は、ポケットモンスターXYのストーリーをモデルとしたものです。
また、オリジナル要素が多々あります。そして、今作から後書きを付けることにしました。まあ、書く事がないときは、何も書いてないかもしれませんけど。応援、よろしくお願いします!

ポケモン第六世代を最初に飾るゲームソフト、XYのノベライズ化!! 最後まで是非、ご覧あれ!!

登場人物紹介>>12
 
プロローグ
>>01

アサメタウン編
>>09 >>10 >>11

ハクダンシティ編
>>21 >>22 >>23 >>40 >>41 >>42 >>45 >>47

ミアレシティ編
>>50 >>51 >>52 >>53 >>56 >>57 >>61

コボクタウン・パルファム宮殿編
>>62 >>68 >>69 >>71 >>76 >>77 >>79 >>80

コウジンタウン編
>>83 >>86 >>87 >>90 >>95 >>96 >>99 >>102 >>103 >>104 >>110 >>111 >>112 >>113

ショウヨウシティ編
>>114 >>115 >>119 >>120 >>121 >>124 >>125 >>126

シャラシティ編
>>127 >>131 >>132 >>133 >>134 >>135 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>145 >>146 >>147 >>149 >>152 >>153 >>154 >>155 >>156 >>158 >>161

ヒヨクシティ編
>>164 >>165 >>166 >>169 >>170 >>171 >>172 >>173 >>174 >>175 >>176 >>179 >>182 >>183 >>184

ミアレシティ編2
>>185


ss・短編置き場

1.木登り騒動 >>148

飽き性な作者ですが、応援よろしくお願いします。また、読者の皆様の意見を聞きたいので、コメントには感想を添えてくださると幸いです。

Re: ポケットモンスターXY 命と破壊の遺産 ( No.178 )
日時: 2014/12/05 01:53
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

竜さん

コメントありがとうございます。
ボーマンダはより、空への戦いに特化した感じがするんですよね。ガブリアスと似たような変化と言ったところでしょうか。

メガスピアーはまだ使ってはいませんが、サイクルをくるくる回す戦い方が良いらしいです。どの道、1撃では仕留められそうに無いですし。

自分はまだたくましさしかマスター行ってないんですよね。早くルカリオナイトを入手せねば。

それでは、また。

第八十三話:人形 ( No.179 )
日時: 2014/12/05 05:01
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

「さあ、次のポケモンを出しなさいな。最も、スピアーの槍がすぐにその胸を刺し貫きますわ」

 セルリアンは余裕綽々といった表情で言った。

「速い……しかもあの槍、かなりの殺傷力があると見た」

 さっきの光景を垣間見ていたクリスティはジュペッタに敵の掃除を命じながら呟いた。
 スピアーの槍には毒がうっすらと塗られている。しかし、その強さは体に入れば命の危険もあるのだ。
 モンスターボールに戻しておけば、一先ずそれは避けられるが、このままでは全滅である。

「テイル、その場を任せる」
「え、お前」
「スピアーの力加減、速さ、全て見誤っていたようだ。何せメガシンカは想定外だったからな」
「た、確かに」

 テイルは続けた。

「スピアーのメガシンカはカロス地方じゃ発見されてねぇからな」
「というわけだ。僕とジュペッタも加勢する」

 はぁーっ、と息を吐き頭を抱えてテイルは仕方なさ気に「しゃーねぇ、雑魚は任せろや」と背中を押す。

「ヤツの分析は完了した。もう、敵ですらない」

 頷いたクリスティは階段を上り、目の前のフロアへ---------

 ***

「行け、バシャーモ!」
「頼んだわよ、チルタリス!」

 カルムとセレナはそれぞれ、スピアーに対して有利な炎タイプのバシャーモと飛行タイプのハミングポケモン・チルタリスを繰り出した。
 しかし、相手の速さははっきり言って尋常ではない。
 動いた瞬間に倒されている可能性だってある。
 さっきのように。

「あーららら。弱点を突けば勝てる、安易な発想ですわね」

 挑発するセルリアン。自分が不利な状況なのに、だ。

「うるさい、一気に焼く!! バシャーモ、ニトロチャージ!」
「チルタリス、龍の波動で援護よ!」

 炎を纏い、飛び掛るバシャーモ。そして、紫色の波動でスピアー目掛けて放射するチルタリス。
 しかし。

「スピアー、守る!」

 直後にバリアが展開され、跳ね返されるバシャーモ。そこに隙が生まれた。

「毒突きですわ、スピアー!」

 見えた。スピアーの槍からどす黒い液体が大量に分泌されたのが。
 カルムの首筋に冷や汗が伝った。
 たったの1秒。それがとても長く感じられた。
 なのに、自分には何も出来ない。
 スピアーは体勢を崩したバシャーモにそれを食らわせ-----------られなかった。
 体が動かないようだった。見れば、槍の先にはジュペッタが。
 そして、カルムが振り向けば、そこにはクリスティが立っていた。

「失礼、横槍入れさせて頂いた。そいつの分析が終わったのでな」
「いや、分析って……!」

 ぎりっ、とセルリアンは歯軋りをした。
 邪魔者が入ったのが気に食わない。
 しかし、同じことだった。同様の手法でどんな敵も素早く突いて落とすのみ。

「どんなポケモンでも私のメガスピアーの速さには付いていけませんこと!」
「そいつは確かに素早い。しかし、ただ忙しく動き回っているだけでは僕のジュペッタには勝てない」

 そのとき、クリスティの腕にある腕輪-------いや、厳密に言えばそこに嵌められた石が光りだす。
 同時に、ジュペッタの首に掛けられた石も光り輝きだした。


「ジュペッタ、メガシンカ」

 
 直後、ジュペッタの周りに卵の殻のようなものが纏わりついた。そして、それが膨れ上がり、爆ぜて消える。
 ジュペッタの腕、顔には新たにファスナーがついていた。そこがジャキッ、と無機質な音を立てて開く。
 同時に奇声を上げて、体の中に詰まっていた負の力が溢れ出した。どす黒いオーラが漏れてくる。
 これが、メガジュペッタだった。

「同じことですわ! スピアー、毒突き!」

 しかし、セルリアンは臆していない。それどころか再びスピアーは攻撃態勢に。
 だが、それはクリスティとて同じだ。落ち着き払った表情で言った。

「ジュペッタ、鬼火」
「無駄ですわ! 撃たれる前に落とす----------」

 反論するセルリアン。しかし、そのときだった。
 メガスピアーが接近するよりも、遥かに速いスピードで青白い炎がジュペッタの体の回りから渦を描いて放たれた。
 そして、その炎を喰らい、スピアーは失速。そのまま途中で止まってしまった。

「メガジュペッタの特性は”悪戯心”。変化技を素早く出せる。そして、相手が物理的な技を主体にして戦うポケモンの場合---------先手で鬼火を打って機能停止にできる。何故ならば、鬼火を食らったポケモンは火傷状態となり-------」

 再び動こうとしたスピアー。毒突きをジュペッタに放った。しかし、ジュペッタはそれを片手で受け止めてしまう。

「その痛みが原因で体が動かしづらくなる。つまり、相対的に物理技の威力も下がる。貴様のメガスピアーはもう機能停止だ。諦めろ」
「し、仕方が無いですわね」

 悔しそうに引き下がるセルリアン。どうやら、1対1の戦闘ではクリスティの方が上手だと悟ったらしい。
 1対1では。

「ですが----------ミツハニー軍団、やってしまいなさい!」

 次の瞬間、カルムは妙な羽音を聞いた。クリスティも同じだ。振り向けば、大量のミツハニーの群れが。

「おーっほっほっほ! 何故、この私がこの発電所を任されたか、それはこの私が七炎魔将の中で唯一”群れ”を持つため! 群れレベルでポケモンを育成しているのは、世界広しと言えどこの私くらいでしょうね!」

 ぶんぶんぶん、ぶーんぶん、羽を鳴らしてとやってくるミツハニーをシビルドンに追い払わせ、テイルは叫ぶ。

「ま、まずい、クリスティ! あのアマ、この発電所の最下層に大量のミツハニーを忍ばせてやがった! ざっと見て数は----------数百くらい?」
「いや、アバウトすぎでしょ!」

 突っ込んだカルムの声虚しく、ミツハニーはどんどん襲い掛かってくる。しかも、彼女の手持ちにはまだビビヨンもいるのだ。
 というか、もう出てきている。

「おーほっほっほ! ミツハニーはただ闇雲に羽ばたいている訳ではないですわ! ”風起こし”であなたたちの方に風を向けていますの。”風”が貴方達の方に向かっている状態で私のビビヨンが眠り粉を放ったらどうなるやら」

 まずい。既にビビヨンは麟粉を浮かせて眠り粉を撃つ準備に入っている。しかもミツハニーが邪魔で、ビビヨン本体を叩けない。
 そしてとうとう、カルムは頭がぼんやりしてきた。眠り粉を吸ってしまったのだ。
 セレナもがくり、と膝立ちになる。
 と、そのときだった。どこからともなく一直線に飛んでくる蒼い光。それが天井にいるシンボラーを刺し貫いた。
 直後、シンボラーの体が硬直。そのまま落ちてくる。
 ガッシャァン、と床に勢い良く落ちてきたシンボラーの体は凍えて震えていた。

「冷凍ビーム……!?」

 怪訝そうに言ったセルリアンの視線はこのフロアのドーム状になっている部分。工事や検査の際の作業員用の足場があるのだが、そこに目が行った。
 見れば、貫禄ポケモン・ダイケンキの姿が。
 ヒステリックに叫ぶセルリアン。その顔は怒りの余り、青ざめていた。

「バーミリオン!! 貴方、まさか私の邪魔を!!」

 すぐに声は返ってきた。


「バーミリオン? 多分、人違いだコノヤロー」


 ただし、声の主は”男”だったが。

Re: ポケットモンスターXY 命と破壊の遺産 ( No.180 )
日時: 2014/12/07 03:08
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

 モノクロは一回の文筆量が多いので、小分けに何度もコメントするより一気に読んだ分をまとめる練習をした方がいいのでは、と思ったり思わなかったりしますモノクロです。

 そんなわけでざっくり感想を述べていくつもりですが、まずはイーブイ。まあこんなオチだろうとは思いました。
 ゲコガシラは確かにアクジェ覚えませんね……特に違和感がなかったので完全に見逃してました。タクさんの文章力にしてやられましたね(錯乱)。
 まああのあの蛙の進化形が水手裏剣や影討ち覚えますし、そんな理由でアクジェを貰えなかったのではないでしょうか。

 次は遂にヒヨクジムですが、なんというか、戦闘描写というか戦闘の速度があっさりしているというか、なんだかテンポが速く感じましたね、今回は。ジムよりもその後のフレア団戦の方に力を注ぎたかったのでしょうか。確かにカロスのジムリーダーは一部を除いてかなり影が薄いですけど。
 それはそれとして、ヒヨクジムの特殊ルールを見ると、モノクロが昔書いていた作品——モノクロの一作目に出て来るジムを思い出しますね。BWの二次創作だったんですけど、ライモンジムだけレールの上で戦う、みたいな変則ルールにしていた記憶が蘇ります。ああ懐かしい。もう流れちゃったけど。

 ……ところで、砂漠でローラースケート貰っても動けなくないですか? いや砂漠じゃなくて荒野ですけど、どの道、砂嵐吹き荒れる場所ではあまり意味をなさないような気がしないでもないです……気にし過ぎと言えばそれまでですが。
 そしてここでも出て来るクリスティ。何気に物語に関わってきますね、彼。そして相変わらず無能な下っ端たち。まあこれはお約束ですね。
 そういえばたまに思うんですが、タクさんって探偵キャラ好きだったりしますか? モノクロの作品で頂いたキャラクターや、別作品の番外短編でもそうでしたが、時折ミステリーなテイストの要素が出て来るので。
 ……あ、「〜ずら」は《屑男》と《スーパー・クズトレイン》の方言ですね。

 次いで、雑談板でも仰っていましたが、セルリアンのメガシンカポケモンはスピアー……メガスピアーですね。スピアーはポケスペで大分愛されているポケモンでしたが、随分と出世したものですね。たまにレートでも見かけます。
 種族値配分もC15とかなり潔い配分になっていたりで、そこまでしてスピアーを持ち上げたいか、と思いましたかね。個人的にメガスピアーはそれなりに好きですけど。
 ただ、スピアーがこれだけ優遇されているのにピジョットが……あんな中途半端なメガシンカ与えてやるなよゲーフリ、せめてもっとサブウェポン与えてやれよ、と思います。
 なお、スピアーの守るですが、必須というわけではないと思いますよ、モノクロとしては。
 勿論、あるのとないのとではかなり使い勝手や安定性は変わると思いますが、そもそもメガスピアー自体、対面で勝てる相手は限られるので、守ってメガシンカしたところで不利な相手にはどうしたって勝てません。相手としても初手守るは読みやすいでしょうしね。
 なのでその読みやすさを逆に利用してフルアタにする、もしくは剣舞で抜き性能を高める、という工夫もありっちゃありだと思います。ただ前述したように、守るは安泰性はあると思います。とりあえず安全にSを上げられるので、変に読み合いしたくない人や慎重な人なら守るを入れるべきなんじゃないですかね。
 ちなみにこんなこと言ってるモノクロのスピアーは守るを搭載しています。モノクロマジチキン。

 閑話休題。
 話が逸れ過ぎました。
 クリスティのジュペッタもメガシンカしてセルリアンに対抗していますが、まあ悪戯心持ちには勝てませんよね。モノクロもメガスピアーはヤミラミで封じています。
 ちなみにメガジュペッタはメガポケモンの中でもかなり好きな部類です。
 これまでのクリスティの作中での関わりも気になるところですが、ミツハニー軍団からカルムたちを救った謎のダイケンキ……あれ、これってまさか……
 なんとなく察しがついたような気がしますが、とりあえず次回の楽しみとします。
 自分語りが入ったせいで結局長くなってしまいましたが、今回はここまでとします。それでは。



余談:なにやらコンテストの話題が出ているので失敬させていただきます。モノクロもクチートで挑みましたよ、コンテスト。クチート一匹で全部門のマスターランク制覇及びルチアを撃破(過激表現)しました。絵画がクチート一色で幸せです。あ、挑んだクチートは勿論すべて同一個体です。最初期に育成した個体ではなく、ORASでコンテストのために新しく育てた個体ですけどね。クチートって結構技が豊富なので、技マシンをフル活用すればわりと全部門で勝ち抜けるスペックはあると思います。……まあ、ほとんど第一次審査で勝利が確定してましたけどね。ただ、エキサイトとコンボが重なって最大得点である16ハートを得点した時は驚きましたね。運が良かったんですけど、ここまで行くとは。コンテストはなかなか面白いシステムで、ポケモンの格差も表れにくいので、本当に好きなポケモンを輝かせることができる良システムだと思います。そのうち雑談板にモノクロが挑んだ時の記録を載せようかな。いつかコンテストでも対戦できたら面白そうですね。それでは、本当にこれにて。

Re: ポケットモンスターXY 命と破壊の遺産 ( No.181 )
日時: 2014/12/08 22:24
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

モノクロさん

コメントありがとうございました。ゲコガシラのアクアジェット、本当に自分が錯乱していました。というか勘違い? まあ良いか。

ヒヨクジム戦は仰せる通り、早めに終わらせたかったんですよ。どの道、発電所編で時間食うのは目に見えていますし。フクジには申し訳ないですが。
あの特殊ルールを参考にしたところもあります。というか、参考にしたのはどちらかというと七つの星と罪の方ですかね。全然生きませんでしたけど、設定が。

ミアレ荒野にはローラースケートで移動しなければ行けないエリアもあるので、敢えて此処でカルムにそれを持たせました。
クリスティ、実は栗須を元にしたキャラクターというのは実はフェイクだったりするんですよね……。下っ端が無能なのは仕方ありません。というかかませ犬ですし。

あ、探偵というか推理小説が大好きなんですよ。
シャーロック・ホームズとかエルキュール・ポアロとか。特にポアロは気に入ってます。ABC殺人事件とか。

メガスピアー、いつかは自分も実戦投入したいところです。
だけど、流石にメガジュペッタにはやっぱ勝てませんよ。悪戯心ってやっぱ強い。しかも小説でも結構使いどころがあるという。便利。

さて、ダイケンキが誰の手持ちなのか、そしてクリスティの人間関係は、いずれ明らかになります。というか前者は多分近々。

余談ですが、本当にコンテストでも対戦してみたいものですね。ダイパリメイクでもしかしたら実装されるかもしれませんよ。いつになるか知りませんけど。

それでは、また。

第八十四話:強襲・メガフーディン ( No.182 )
日時: 2015/01/05 19:47
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 直後、ミツハニーの動きが慌しくなる。何に従ってよいのか、分からず混乱し出したのだ。
 すぐさま、風の向きは変わった。眠気はそこで納まる。カルムは眠気覚ましにカバンの中に詰めてあったいつもの缶コーヒーのタブを開けて一気に口の中に流し込んだ。
 さらに、ミツハニー達が別々の方向に羽ばたいた所為か、風が一気に乱れた。
 つまり、ミツハニー達はそのまま眠り粉を互いに浴びることになる。
 騒ぎはすぐに収まった。
 口と鼻を手で覆っていたが、その間に1匹、また1匹とミツハニーが落下したのを見た。
 気がつけば、ミツハニーはぶつかり合ったり眠り粉を浴びたりで皆フロアに落ちていたのだった。
 再び、蒼い光が走る。慌てるセルリアンが回避の指示を出す前に、今度はビビヨンを撃ち貫き、射落とした。

「よーく当てたな、”ミルマ”」

 声の主がカルムには分かった。ブラックだ。彼が駆け付けて助太刀を入れてくれたのだ。思わず、「ブラックさん!?」とその名前を呼んでしまった。
 すると、彼がいる方にクリスティが叫ぶ。

「遅かったんじゃないか?」
「おいおい、いーじゃねぇか。いっつもはアンタが遅いんだから」

 この2人、知り合いというよりは旧知の仲、というか……友人に見えた。

「お膳立てはしたぜ。とっとと発電所奪還しちまいな」

 ブラックの声がクールに響く。フラットに「ったく、仮にも年上に……」と返すクリスティだが敵の方を見た。
 もう、セルリアンを守るものは無い。

「スピアー! やってしまいなさい!」

 しかし、それでも尚彼女は火傷を負ったスピアーで攻撃してくる。
 だが、カルムはそれを見逃さない。

「無駄だよ、此処で終わりだ! 火力が削がれたならば、もう怖くない!」

 バシャーモがスピアーの首根っこを掴んだ。
 もう、逃げられない。


「バシャーモ、放り投げてブレイズキック!!」


 直後、宙に放り投げられたスピアーは動く暇もなく、そのままバシャーモの炎を纏った脚に蹴っ飛ばされ、そのままセルリアンの方へ。全身が燃え上がり、まさに火炎弾。
 しかし、咄嗟に構えた彼女は、スピアーがぶつかる前に何とかボールの中に収めることができたのだった。
 しばらく呆然としていたセルリアンだが、

「……大失態、ですわ!! こんなこと、あって良い訳がない!!」

 ヒステリックに叫んだ。
 そのときだった。彼女の背後に”何か”が現れた。
 ローブで顔が隠れて見えない小柄の少女。
 見れば、それは七炎魔将序列6位のクローム、そしてその手持ちであるフーディンだった。

「……セルリアン。これは?」
「連中にまんまとやられましたわ。シンボラーもこのザマですわ」
「強がるけどあなた、幸運。この時間帯にあたしが様子を見に来なかったら、身柄を拘束されてもおかしくなかった」
 
 そして---------、とクロームは続けた。


「この発電所だけは奪われるわけには行かない」 


 そう言って、今度は自分が前に進み出る。

「セルリアン、引っ込んでて」
「ぐっ、下級が中級の私に命令を---------」

 はぁ、と溜息をついた彼女はギラリと鋭い視線をセルリアンに浴びせた。


「-------じゃないと、一緒に”処分”する。貴方も」


 ひっ、と小さな悲鳴が聞こえたのが分かった。実は七炎魔将というのは、序列があまり関係ないのではないか、と疑った。
 それでもヒステリックにセルリアンは言い返した。
 
「あ、貴方のような”欠陥品”が----------!!」

 今の言葉にカルムは少々耳を疑った。
 -------欠陥品?
 唯単に罵るだけならば他に言葉があるはず。今の言葉に少々意味があるように感じた。しかし、いずれもクロームをキレさせたことには変わらなかった様だ。

「……去ね」

 次の瞬間、セルリアンの体が浮き上がり、発電所の機械に叩き付けられた。後頭部を強く強打したようだ。

(やはり首領の判断は正しかった……! 落ちぶれとはいえ、彼女もまた---------)

 まるで今、フーディンは何もしていなかったように見える。
 吐血した彼女はそのまま地面に落ちた。

「……幾ら上司だからって、今の言葉は許さない」

 ふぅ、と息をついた彼女は言った。

「必要な電気を回収するまで残り僅か--------デリートする」

 平坦とした言葉ではあったが、同時に一連の言動にカルムは戦慄を覚えた。
 フレア団という組織、いや正確に言えば七炎魔将だが、オペラにせよネープルにせよ、人格が破綻してしまっているのではないか、と。

「ちっ、此処は何としても発電所を解放する!! シビルドン、行くぞ!」
「ジュペッタ、奴をどかすんだ!」

 ところが、次の瞬間だった。2匹とも体がカチコチに硬直し、そのまま動けなくなってしまう。
 
「サイコキネシスで動きを止めた。更に------------」

 吹っ飛ばされる2匹。それぞれのトレーナーの下へ。
 ローブで隠れて見えなかったが、クロームの右の耳にはイヤリング--------そこに耳の割に大きな石が嵌めこまれている。
 キーストーンだ。
 それに彼女が触れた途端、眩いほどの光と共に、フーディンの体が激しく輝く。
 卵の殻のようなものに包まれ、それが弾け飛んだ。
 そこにいたのはフーディンではない。
 頭には赤い鉱石が表れ、長く白いひげに瞑想のような組んだ足が特徴的なメガシンカポケモン、メガフーディンの姿が。

「メガシンカ、完了。更に----------」

 メガジュペッタの方を見たフーディンの体の回りにオーラが溢れ出た。

「金縛り」
「いや、特性:悪戯心でジュペッタが先に動く! 挑発で補助技を封じるんだ!」

 だが、クリスティは言っている途中で気付く。
 フーディンの方が遥かに速い。
 ジュペッタが動くことはなかった。
 金縛りが炸裂してしまったのだ。

「メガシンカ後の特性:トレースによって悪戯心をコピーした。しかも、メガシンカしたフーディンの素早さは、七炎魔の手持ちでは最速。もう、誰も止めることはできない」

 無表情のまま、淡々と語るクローム。先制技を撃ちあったとき、先に行動するのは誰か、答えはより素早さが高い方なのだ。

「ミルマ! 冷凍ビーム!」

 再び、狙い撃ちでフーディンを狙撃するブラック。
 しかし、次の瞬間フーディンの姿が消え、見失う。
 気がつけば-----------

「こっち」

 あたりを見回すが、声の主はいない。
 しかし、気配を感じ、その方向を向く。
 ブラックと、ダイケンキのミルマは戦慄した。
 ミルマの鼻先に、フーディンがいる---------------!!


「零距離、念動(サイコ)”爆弾(ボム)”----------BOM」


 強力な念動力が発動し、よって圧縮された弾が爆ぜた。爆発音と共にブラックが居た場所に煙が上がる。
 しばらく、唖然としてその光景に見入っていた4人だったが、すぐに何かが真っ逆さまになって落ちていく姿が見えた。
 作業用の薄いフロアが壊れたのだ。
 下は、奈落。何も見えない。
 落ちたが最後、だ。


「ブラックさぁぁぁん!!」


 カルムの声が響く。
 暗い発電所の最下層へ、ブラックは落ちていった-------------


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