二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスターXY 命と破壊の遺産
日時: 2015/07/13 03:02
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

”読者の皆様へ”

 はい、どうも読者の皆様、自分はタクと申します。どこかで、見かけた事があるかもしれませんね。二次で、ポケモンとか、デュエマの小説を書いていました。
 今作は、ポケットモンスターXYのストーリーをモデルとしたものです。
また、オリジナル要素が多々あります。そして、今作から後書きを付けることにしました。まあ、書く事がないときは、何も書いてないかもしれませんけど。応援、よろしくお願いします!

ポケモン第六世代を最初に飾るゲームソフト、XYのノベライズ化!! 最後まで是非、ご覧あれ!!

登場人物紹介>>12
 
プロローグ
>>01

アサメタウン編
>>09 >>10 >>11

ハクダンシティ編
>>21 >>22 >>23 >>40 >>41 >>42 >>45 >>47

ミアレシティ編
>>50 >>51 >>52 >>53 >>56 >>57 >>61

コボクタウン・パルファム宮殿編
>>62 >>68 >>69 >>71 >>76 >>77 >>79 >>80

コウジンタウン編
>>83 >>86 >>87 >>90 >>95 >>96 >>99 >>102 >>103 >>104 >>110 >>111 >>112 >>113

ショウヨウシティ編
>>114 >>115 >>119 >>120 >>121 >>124 >>125 >>126

シャラシティ編
>>127 >>131 >>132 >>133 >>134 >>135 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>145 >>146 >>147 >>149 >>152 >>153 >>154 >>155 >>156 >>158 >>161

ヒヨクシティ編
>>164 >>165 >>166 >>169 >>170 >>171 >>172 >>173 >>174 >>175 >>176 >>179 >>182 >>183 >>184

ミアレシティ編2
>>185


ss・短編置き場

1.木登り騒動 >>148

飽き性な作者ですが、応援よろしくお願いします。また、読者の皆様の意見を聞きたいので、コメントには感想を添えてくださると幸いです。

第七十九話:カロス発電所へ ( No.173 )
日時: 2014/11/18 19:01
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 間一髪。フクジがカルムの手を引っ張り、ジムの中へ入れた。そして扉を閉める。
 もう少しでミツハニーの群れに襲われるところだった。
 
「落ち着くまで、もう少し此処にいなさい」
「す、すみません……」
「最近、フレア団とかいう組織が動いているという話を聞いてな。もしかしたら、それが絡んでいるのかもしれんのう」

 うーむ、とフクジが顎に手を当てた。
 彼もフレア団の事を知っていたのだ。

「しかし、正義感に任せて突っ走ってはいかん。出るにしても、まずは出所を伺わなければ……」
「そうですね、すいません」

 流石、年長者。落ち着きのある風格だ。

 ***

 しばらくしただろうか。ラジオなどで情報収集していたが、どうやらこの停電はカロス全域に広がっているらしかった。
 そして未だに復旧しない。
 
「ふむ、街の外の様子も心配だ。一応、住人は家の中に避難するように勧告が出たらしいが……」

 とフクジが言ったときだった。

 
 パリン


 音がした。何かが割れた音だ。見れば、ガラスの小さな破片が降ってくる。
 寒気がした。夥しい数の羽音が聞こえてきたからだ。

「ハニィーッ!!」

 ブゥゥゥン、と凄まじい数で襲い掛かってくる。
 これはもう終わったか、と思った。とりあえず、臨戦態勢に入る。
 バシャーモを繰り出そうとしたが、刹那。連中はエアスラッシュを放ってきてそうさせてくれない。

「まずったかな……!」
「ぐっ、わしの草ポケモンは虫・飛行タイプの奴らに対して不利じゃ、どうしたものか---------」

 外にも逃げ場は無いが---------仕方があるまい。
 とりあえず、戦場を広い場所に移すしかないだろう。
 と、ジムの扉を開けた瞬間だった。

「エモンガ、放電だ!」

 電撃が放たれた。
 危うく当たるところだったが、間一髪で避ける。
 そしてミツハニー目掛けて飛ばされたと思われるそれは、ジムへ侵入してきたそれら全部に当たり、後には黒焦げになったミツハニーの姿が。
 見れば、浮いているエモンガが後ろに居ると思われるトレーナーにピースサインを出してそのままリターンし、肩に止まった。

「てっ、テイルさん!?」

 そこには高い身長に癖のある茶髪の青年、テイルの姿があった。

「すまんすまん、ミツハニーの群れがジムに突っ込んだのが見えたからな。そしたらジムは閉まっている。するとすぐに開いてみれば、まだミツハニーの群れがいるからさっさと撃墜したわけよ、驚かせたな」
「いや、それは良いんすけど」

 困ったことに、とテイルは続けた。

「停電の影響でミアレを囲む全てのゲートが封鎖されちまってな。実は俺の知り合いの電気ポケモン使いもヒヨクシティが襲撃されていると聞いて応援に行こうとしたらしいが、その所為で来られなくなった」
「知り合いの電気ポケモン使い?」
「ああ」

 少しだけ、テイルの顔が曇った気がした。

「あいつはミアレジム・ジムリーダー。又の名を電気ポケモンの天才児」

 その名前に聞き覚えがあった。

「それって……」
「お前もこの旅の間に聞いたことがあるかもしれない。その名はシトロン」

 彼は続けた。

「下手したら俺の実力も上回るかもしれない程のポテンシャルを持つガキだ。それも、お前とは年はそんなに変わらん。ジムリーダーをやっていてもおかしくはないほど、な」

 だとすれば、何という少年だろうか。
 自分と同じくらいの年齢で既にジムリーダーをやっているなんて。

「さあ、行くぞ。13番道路、ミアレ荒野に。フクジさんは待機して街の方の安全を確保してください」
「ああ、すまないね、テイル君」

 テイルは駆け出した。カルムも後を追う。

「そういえば、マロンさんは?」
「此処に残るように指示しておいた! いくぞ!」

 ***

 13番道路、そして現在地はカロス発電所周辺。荒地の地下にはポケモンが生息しているらしく、ボコボコと地面が盛り上がった後があった。
 地面は意外にも平坦だが、砂嵐が常に吹いている。

「おい、カルム」

 テイルの声がして振り返ったカルムは、慌てて飛んできた”何か”を受け取った。
 それは、テレビでも宣伝していたローラースケートの入ったパッケージだった。

「こないだのお詫びがまだだったからな。パーティの件。あれは元々俺が誘ったものだ。あんなことに巻き込んでしまったのは、俺の責任だ」
「え、でも--------」
「どの道、これがあったら移動も楽になるだろ」

 すると、テイルも靴底を少し弄ると、すいーっと地面を滑るように走っていく。
 どうやら、底に車輪が付いているタイプの靴らしかった。
 カルムも急いでパッケージからローラースケートを取り出す。
 包装を破って、ゴミをパッケージにぶち込み、折りたたんでバッグの中に入れた。

「早くしねえと置いていくぞテメェ」
「ちょっと、待ってくださいよ!」
「おーら、とっととしろー」

 ローラースケートで滑るのは初めてだった。最初は転びそうになったが、すぐに慣れてテイルに追いつく。
 見れば、鉄パイプが道のようになっているエリアがあった。その先に建物が見える。
 とても細い鉄パイプに向かってテイルが跳ねた。

「この先が近道なんだ!」

 すいーっと、線路を走る電車のようにテイルは鉄パイプの上に飛び乗った。
 カルムも後に続く。
 はっきり言って、初めてでここまで出来るとはカルム自身も驚きだった。
 そしてパイプは坂道のように途中で急な傾斜になっていた。急にスピードが付いて戸惑っていたが、何とか滑り終えることができた。

 ***

 カロス発電所に続く地下通路。その入り口になる建物はたくさんある。しかし、今は大量のミツハニーに囲まれていた。
 
「ミツハニー、か」

 七炎魔将、中級。工作、参謀のセルリアンを思い出した。
 すると、侵入者が目に入ったからか、いざ排除とばかりにブンブン羽根を鳴らしてやってくる。

「エモンガ、放電!」

 テイルのエモンガが電撃を一気に放ち、ミツハニーを感電させる。バタバタバタ、と黒焦げになったミツハニーは地面に落ちていった。
 さて、扉に歩み寄ると電子ロックが付いているのが分かった。

「しかし、これだけの数のミツハニーをどうやって操作しているんだ?」
「確かに、そうですね」

 これだけが気がかりだった。普通、これだけの量のポケモンをこんなにも沢山動かすことは出来るのだろうか。
 と、そのときだった。

「あっれー、やっべぇーなー、発電所の鍵落としちまったなー」

 男の声が聞こえる。
 振り向けば、赤スーツを着てださいグラサン掛けた男だった。

「ふふ、だがスマートな俺はスマートに推理するのさ。鍵はここから歩いた大きな岩の前に---------」

 ガツンッ

 テイルとカルムのダブルパンチが脳天に炸裂した。
 明らかにフレア団の団員と思われるその男は、ばったりと倒れてしまった。

「あ、ありましたよ、カードキーです、テイルさん」
「とっとと入ろうぜ」

 ま、待てェェェ……。

 呪詛音のような声が聞こえる。見れば、さっきノックアウトしたはずのフレア団員が起き上がっていた。

「逃がすか、てめぇらぁぁぁ!! ゴルバット、アーボック! やっちまいな!」

 蝙蝠ポケモンのゴルバット、そしてコブラポケモンのアーボックが団員の投げたボールから現われて先回りされた。
 どうやら、倒さないと先に進めなさそうだ。

「おい、足引っ張るなよ、カルム」
「そんなこと、しませんよ」

 向き直った2人もまた、モンスターボールを手に掛ける。
 と、そのときだった。


「ランクルス、サイコキネシス」

 静かな声と共に、突如、アーボックとゴルバットの体が浮き上がった。

第八十話:同行者 ( No.174 )
日時: 2014/11/22 21:08
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

「失礼、横槍を入れさせてもらった」

 さっき降りた崖の方を見ると、時代に合わなさそうな茶色いコートに同色の帽子、そして口にはパイプを咥えた青年がいた。チッ、とライターの火を点してパイプの葉に火をつける。
 
「ランクルス、吹っ飛ばしてやれ」

 ランクルス、と呼ばれたポケモンの超能力で浮き上がった2匹のポケモンはそのまま自らの主のほうへ、文字通り”飛んで”いった。
 え、ちょ、おま---------ぎゃあああ、と断末魔が響き、下っ端の男が伸びているのが見えた。
 そして、男は自らもランクルスの超能力で浮かせてもらい、カルム達がいるエリアまで降りてきた。

「僕はクリスティ。簡単に言えば、君達の味方だ」

 クリスティは言った。
 その名前に聞き覚えがある。

「ブラック……さんの知り合いでしたっけ?」
「その通りだ。君たちの事は後日プラターヌ博士と会って知っている。そしてブラックとはフレア団を倒すという目的が合致しているため、協力している」

 テイルも頷いた。どうやら博士を通じて彼のことは少し知っていたらしい。
 彼はなかなか高身長だった。およそ190、と言ったところか。テイルより1回り高い。

「ありがてぇ、こんなところで助けを貰えるとは」
「どうも。あれから、こうも早く会うことになるとはな。さて、悪いが少々推理をさせていただきたい」

 推理? とカルムは首をかしげた。
 テイルは黙って聞いてろ、と言った。

「まず、何故これだけのミツハニーが群れを成してきたのか。発電所の入り口である建物を死守していたあたり、野生種ではなくフレア団のものと見て間違いないが------------」

 クリスティは言葉を連ねる。

「まず、先ほどミツハニーを何匹か倒したのだが、そのうちの1匹を少々調べてみた。しかし、やはりというべきかミツハニー達の聴覚器官の辺りに命令をするような音声装置が付いている訳ではなかった。どこを見ても普通のミツハニーだ。さて、これらのことから考えられることは3つ」

 1つ目は、とクリスティは続けた。

「フレア団員複数人の手持ちであること。しかし、発電所の外にフレア団員はさっきのアホしかいなかったので没」

 2つ目は、とクリスティは続けた。

「何らかの電波装置などでミツハニーの脳波を意図的に刺激していること。ミツハニーや他にアイアントなど、思考が単純で特に群れで行動するポケモンは、これらの影響を受けやすい。しかし、この方法だと1つの単調な命令しか下すことが出来ない。発電所のみならず、町を襲っているグループもいたので没。それぞれがそれぞれの任務をしていた。ここまで複雑な技術はフレア団と言えど作れまい」

 3つ目は----------

「指示の中継を、エスパーポケモンにやらせていること。その証拠に僕のランクルスがかなり強い念波が放たれていることに気づいた。それを追って此処まで来たのだ」
「なっ」
「僕の推理が正しければ、そのポケモンは発電所の中に居る。さあいくぞ」

 スタスタ、と歩いていくクリスティを見てカルムは呟いた。

「味方なのは良いとして、何か変わった人ですね」
「探偵なんだよ」
「探偵って本当はあんなんじゃないでしょ」

 胡散臭い感じはしたが、味方になってくれるなら尚心強い。

「しかし、ブラックさんと言いクリスティさんと言い、どうしてこうも素性の分からん連中ばかりなんだ? 俺らの味方ってのは」

 ***

「囲まれたな、こりゃ……」

 発電所に入ってすぐさま、赤スーツに囲まれることになるとは思わなかった。どうやら、自分たちは向こうにもかなりマークされているらしい、とテイルは苦く思った。
 かといって自分たちを倒すために力を注いでいる暇はないらしい。こっちから来たら即排除、といった感じか。

「お前たちは手を出さなくていい。今度はお前の出番だ、ジュペッタ」

 臨戦態勢に入るカルムとテイルを制止すると、ボールを投げるクリスティ。中からは人形ポケモンのジュペッタが現われる。黒い皮に口にはファスナーがついた不気味な姿だ。
 図鑑で見たら、やはりというべきかゴーストタイプ、と出た。

「おいおい、たったの3人でフレア団に挑もうだなんてたかが知れてるズラ。お前らはこの俺、『筋金入り(ハードコア)のダック』と頭の愉快なバックダンサー達がお仕置きしてやるズラ」
「おい、お前その語尾直せねえのか? 後お前、これ終わったら表に出ろや」

 『筋金入り(ハードコア)のダック』と名乗ったフレア団員の1人が笑った。もう1人が語尾に突っ込みを入れる。

「殺人トリックのように策を巡らせれば-----------たったの3人でも大きな組織を壊滅させることなど可能だ。イコール、数とは力を示さない」

 クリスティは続けた。

「まだ気づいていないのか? こうして僕が喋っている間にも、策は既に巡らせている」
「何を! ズルズキン、やっちまうズラ!」

 ダックが叫んで、ズルズキンが跳んだ。
 他の団員も自分のポケモンをけしかける。
 他にもマルノーム、ズルズキン、ニドリーノなど毒々しい見た目のポケモンが凶悪な形相で一気に襲い掛かった。
 しかし。
 敵のポケモン達の動きが止まる。それも、飛び掛った途端に空中で止まってしまったのだ。
 テイルは何かに気づいたようだった。

「これは……!」
「糸だ。ジュペッタの口のファスナーの隙間から体内の怨念が詰まった綿を糸にして吐き出させた。そうすることで糸のバリケードが完成した」

 糸は怨念そのもの。ワイヤー並みの硬度だと言う。今の間に蜘蛛の巣のように張り巡らされたと言う事だ。
 指を鳴らすと、クリスティは言い放つ。

「ジュペッタ、シャドークロー」

 ざくり、と音が響いた。ジュペッタは自分自身の糸に引っかかることはない。なぜならばそれは、元々ジュペッタの体だからだ。触れたとたんに吸収されていく。
 そして、影の爪を手から伸ばし、一気に4匹ものポケモンを抜き去った。
 バタバタバタ、と糸が消えると同時に4匹のポケモンは地面に落ちた。

「力とは知能・技術、そして純粋な腕力の3つ全てを総合したものだ。これにてQED、証明終了」

 クリスティが言った。そして次の瞬間に、糸がフレア団員達に絡みつき、即座に簀巻きにしてしまった。

「お、おいいい、放せぇーズラぁー!」

 しかし、シカトして彼は進んでいった。後にカルムとテイルも続く。
 が、カルムにフレア団員の1人が怒鳴った。

「おい、そこのガキ! ああいうガラの悪い大人ってお仕置きしてやらなきゃだめだと思うよな!? あと、この”ズラ”っていう語尾格好いいと思うズラ?」
「オーノーだズラ。お前達もうダメだズラ。逆にお仕置きされちゃったズラ。ついでにお前のその髪はズラかな?」
「つーかこいつどこの出身だよ」

 語尾を真似してやったカルムも、ダックに突っ込んだテイルもスタスタと歩いていったのだった。

「え?」

 きょとんとする団員達。
 そして、次の瞬間に、ぎゃあああ、と断末魔が響き渡った。
 糸から波紋ではなく怨念エネルギーが流れてフレア団員達に苦痛を与える。そしてばったり、とダック含める全員は倒れてしまったのだった。

「とまあ、これで力と数がイコールでは結ばれないことが証明されたわけだな」

第八十一話:蜂 ( No.175 )
日時: 2014/11/22 13:18
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 ***

「やりやがったな、こちとら病み上がりなんだが」
「るっせー、俺だって重症患者なんだよ、頭にぽっかり穴が開いちゃってるんだよ、気ィ使えやボケ」
「何を貴様」
「やんのかテメェ。言っておくけど、俺のルカリオはそこらの奴とは一味も二味も違うぜ? まずニックネーム付けてるところ」
「いや、それどういう違い? そんなことより、僕のジュペッタの方が--------」

 ***

「おい、クリスティ。何ぼーっとしてんだ」
「!」

 クリスティはテイルの声で気が付いたようだった。

「すまない、友人のことを考えていた」
「しっかしろよー、ったく」
「テイルさん、脇に部屋が」
「え?」

 フレア団員をぶっ倒した後、その部屋の扉を開ければ、そこには多くの作業員や研究員がいた。どうやら、フレア団に此処を乗っ取られ、ずっとここに閉じ込められていたらしい。
 先ほどいた何人かの団員に脅されて外に出ようにも出られなかったのだ。
 部屋の鍵が開いていたのは、さっきダック達が出た後に閉めなかったからだろう。無用心な連中である。
 しかし無関係な一般人を巻き込むというフレア団の行動に対し、カルムの怒りは湧き上がっていたのだった。
 さて、作業員の1人によると

「ああ、よかった! 助けに来てくれる人がいて! 七炎魔将とかいう連中2人がここのシステムをハッキングしてしまったんだ!」

 とのことだった。
 さて、ここでテイルの知識が役に立った。この発電所の貯めた電気を奪っているのならば、やはりシステムをコントロールして電気を逆流させるしか方法はないだろう。

「となると、やっぱメインコンピューターか」

 ということだった。メインコンピューター。まさにこの発電所の脳ともいえる場所。そこにやつらはいるはずだ、と。
 各々で方針を決め、とりあえずはそこへ行くことにした。
 さて。
 メインコンピューターの場所だが、どうやらこの発電所の中央にあるタービンの近くにあるらしい。

「じゃあ、行くか!」

 と、テイルが立ち上がったそのときだった。
 戸が勝手に開いた。
 見れば、ミツハニーが何匹もの群れを成して部屋へ入ってきたのだ。
 ---------やば、流石にあんなに暴れたら向こうにも気づかれていたか!
 さて、こんな狭い場所でエモンガの電気技など使うわけにはいかない。
 そしてカルムもクリスティも突然の強襲に動きが止まり、判断が一歩遅れてしまった。
 このまま全員、虫食いでガブリ、という運命しか思いつかない。

「イーブイ、スピードスター!」

 声が響いた。同時に、星型の弾幕がミツハニー達に襲い掛かる。
 さて、声の主はミツハニーを殲滅したのを見ると、部屋に押し入ってきた。

「大丈夫ですか、皆さ---------ってお隣さんにテイルさん、んでもってクリスティさん!?」

 知り合いが3人も”この部屋に”いたことに驚いた声の主の正体はセレナだった。
 
「驚いてるのはこっちの方だよ、何でセレナがここに?」
「いや、さ、実はカルムたちを追ってたんだけど、フレア団の下っ端達が倒れてたから先に行ったと思ったの。そしたら通路脇の部屋にミツハニーが入っていったから」
「この人たちが捕まってたんだ。助けていたところだよ」

 事情を説明したカルムはため息をついた。

「しかし、まぁ……また同行者か」
「とにかく、私を差し置いてフレア団のところに行くなんて、許さないからっ!」
「抜け駆けしたつもりはないっていうか、今までどこにいたのさ」
「アズール湾でポケモンを鍛えてたところに、停電のニュースが入ってね。さらにミツハニーがヒルトップエリアを襲っているっていうのも聞いたから、そいつら倒すついでにマロンさんにあなたたちの居場所聞いたの」

 そういえば、イーブイか。手に入れてからあまりボールから出していなかった気がする。
 1日置いてすぐにヒヨクジムに挑んだ所為だろうか。

「こいつもそろそろ鍛えないとな」
 
 と呟いたカルムはイーブイが入ったボールを眺めた。

「じゃあ、4人そろったんだ、とっとと行こうぜ」

 テイルが言った。研究員や作業員達は皆、外へ避難したのを確認し、進むことになった。

 ***

 さて、円状になっているこのメインパネルだが、中央には電気を貯める巨大な筒が貫いている。
 その天井には、なるほど鳥もどきポケモンのシンボラーの姿が。エスパータイプのこいつならテレパシーで何匹ものミツハニーに命令を中継することができる。
 だが、それらを差し引いても重要なのは、中央のフロアで椅子に腰掛けてコンピューターを叩いているドレス姿の女がいたことだった。

「あらあらあら、そんなに皆で押しかけてきて、いったい何の用ですの?」

 が、気付くのが速い。向いた女---------七炎魔将のセルリアンは言ったのだった。高圧的な態度で迎えて来るあたり、当然ながら歓迎してはくれなさそうだ。
 その周りには赤スーツの団員達の姿も何人か見えた。

「フレア団中級部隊であるスパイラル・ショックのリーダーのセルリアン、か」
「中級部隊? そういえば、これって一体何なんだ?」

 テイルがクリスティに尋ねた。

「ああ。僕の調査によると、フレア団は上級・中級・下級の3つに分かれており、それぞれ役割が違う。そして、それぞれ、3人、2人、2人の炎魔将が指揮を執っている」
「じゃあ、中級の序列というのは」
「その”部隊”の中での序列ということだ。つまり、”中級の3位””中級の4位”もいるのだよ。その中の3位、4位は七炎魔将には入ってはいないがな」

 一方、カルムは怒りに身を震わせていた。
 ここで会ったが、百万年目、今度こそ彼女を倒すと。
 セルリアンに向かって言い放つ。

「てめぇらの野望は”俺”が阻止する! お前も此処で倒す!」

 セレナも続けた。

「電気を使って何するつもりかは知らないけど、ここで止めるわ、フレア団!」

 しかし、「止める?」と目の前の炎魔は憫笑した。「無理に決まっていますわ」と言った。

「前に会ったときはスカウトのために生かしておくつもりでしたわ。ですが、今回は容赦しませんことよ」

 不適に笑った彼女は続けた。

「このセルリアン、貴方達ゴミ共を全力で片付けてみせましょう。スピアー、やっておしまいっ!」

 ボールを投げたセルリアン。中からは、ハクダンの森でも見た毒蜂ポケモンのスピアーが現れた。黄色と黒の警戒色で構成された蜂の体に真っ赤な単眼。
 そして極めつけは2対の前足から伸びた獲物を突き刺す巨大な槍(スピア)だった。
 さらに、周りにいたフレア団員も皆、ボールを投げてポケモンを繰り出してきた。

「くそっ、逆に囲まれたか!」

 焦るテイル。しかし、クリスティが落ちついて言った。

「では役割を決めるとしよう。僕とテイル君で周りの雑魚を、そしてカルムとセレナ、君達で奴を2人掛かりで倒す」
「え?!」

 カルムとセレナは一瞬、戸惑ったようだったが、頷いてすぐにセルリアンの方へ行った。
 が、テイルが反論する。

「ま、待てよ! それなら、実力者のあんたがセルリアンを相手した方が良い!」
「聞いた話によれば、カルムはセルリアンと戦ったことがあるようだ。こういう場合は情報で有利な彼が行ったほうが良い。そして、あのセレナという少女との相性も良い。安心しろ、危なくなったら僕も手を出す」

 そして、とクリスティは続けた。

「僕は何となく分かる。彼は、”あいつ”に似ている……!」
「あいつ?」
「……何でもない。これは僕の主観だ。分析もあったもんじゃない。気にするな」

 そして、クリスティはボールからジュペッタを繰り出して言った。

「では、雑魚の掃除と行こうか」
「そうだなッ!」

 ビキッ、とフレア団員の1人のこめかみに青筋が浮かんだのが見えた。

「誰が雑魚だ、テメェら。『筋金入りのダック』を倒したらしいが、俺らはそうはいかねえ」
「何? あいつ今後も名前だけはちょくちょく登場する感じ? 結構実力上の方?」
「だって、あいつセルリアン様のパシリだったし」
「やっぱ大したことねえんじゃねえか!!」

 団員達のポケモンが一斉に襲い掛かってきた。
 しかし。

「ジュペッタ、シャドークロー」
「シビルドン、ワイルドボルト!」

 瞬殺。たったの一撃で飛び掛ってきたポケモン達をなぎ払ってしまった。

「電気少年×探偵の即席コンビつーことで、今後ともよろしく頼むわグラサン共」
「貴様らには一瞬の記憶の隙も与えんがな」

 そして、階段を駆け上って敵のいるフロアへ行く2人を見送ったのだった。


後書き:オーノーだズラ、ORASが期末テストの所為で買えないズラ。テストが終わる12月1日あたりからようやくプレイ開始とかどんだけ遅れるの、俺。3DSのフレンドリストを見たら、ORASやってる人多数。悔しいことこの上ないですね、本当。というわけで前回から(今回は名前だけですが)登場している『筋金入りのダック』ですが、完全に前回のあれはジョジョのネタです。
そして、クリスティですが彼もまた重要な伏線を握る人物なんですね。さて、セルリアンの特徴ですが”ポケモンを群れレベルで育成”していることです。これが他の炎魔との最大の違い、そして個性となっているんですね。
それでは、また。ORASやりてぇー、あテスト勉強しなきゃ。

第八十二話:”守る” ( No.176 )
日時: 2014/12/04 19:34
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

「たったの2人で、この私に挑むと。少々私を見くびっていなくて?」

 セルリアンは余裕たっぷりに言った。

「スピアー1匹で十分ですことよ!」

 直後、スピアーが両手の槍を振り上げて威嚇してきた。

「だけど、ハクダンの森とかにフツーに生息してる虫ポケモンじゃないか」
「子供だからって、舐めてるんじゃないの?」

 言い返したカルムとセレナの2人はモンスターボールを投げた。両方ともニャオニクスを繰り出す。

「俺のニャオニクスの特性は”悪戯心”! つまり、素早く変化技を使うことで味方のサポートができる! ニャオニクス、リフレクター!」

 カルムのニャオニクスは物理攻撃を弾き返す透明な壁を張り、敵の攻撃に備える。
 それも、とても素早い動きで。

「セレナ、攻撃は任せたッ!」
「分かったわ、ニャオニクス、サイコキネシス!」

 強い念力をスピアーに放ち、宙に浮かそうとする。しかし、そのときだった。
 --------毒タイプにエスパータイプは効果抜群! 倒せるかもしれない!
 しかし、目の前のセルリアンは未だ余裕ぶった表情をしていたのだった。

「スピアー、”守る”」

 直後、スピアーの周囲360度にバリアが張られた。そのためか、サイコキネシスが効いている様子は全く無い。
 
「守るを使えば、数秒間の間、どんな攻撃からでも体を守り通せますことよ。そして、この間に--------」

 セルリアンのネックレスに嵌められた石が光る。それに彼女は手をかざした。そして、スピアーの胸にも石がある。目を凝らせば、それはただの装飾品ではない。

「……まさか、スピアーも---------」
「進化を超える進化、メガシンカの可能性も持ちますわ!!」

 叫んだセルリアンの手には、既にキーストーンが。その瞬間、激しい光がスピアーを包み込む。
 そして、卵の殻のようなものに覆われた。
 間違いない。メガシンカだ。
 殻は弾け飛んで消え、そこにいたのはスピアーではなかった。

「……メガシンカ、完了」

 メガスピアー。
 その姿は全体的に鋭角的で機械的だった。目つきはより鋭くなり、羽は4枚から6枚に、腕は4本に増えたように見えるが、下2本がメガシンカする前の脚の部分に相当するのでこれは脚で間違いないだろう。
 ともかく、殺戮的というか破壊的な、そんな雰囲気を思わせた。
 場に殺気が漂う。

「スピアーはメガシンカすると素早さが爆発的に上がりますわ。ですが、逆に言えばメガシンカ前はそこまで高くない。しかし、守るを使うことでより安全にメガシンカが可能」

 直後、スピアーがセレナのニャオニクスに踊りかかり、2本の巨大な槍で胸を切り裂く。
 鮮血が飛んだ。
 それほどまでに高い威力だった。
 しかも、全くその動作が目に追いつかなかったのだ。

「シザークロスの威力もご覧の通り。特性:適応力により自分とタイプが同じ技の威力が非常に高くなりますわ」
「ニャ、ニャオニクスーッ!!」

 セレナの悲鳴が聞こえた。気絶しているニャオニクスをボールに戻している。
 カルムも慄きながら押し出すように問うた。
 
「リ、リフレクターを使ってるのに、何で」
「スピアーの下の2本の腕で”瓦割り”を放ったからですわ。この技は相手のリフレクター・光の壁を破壊できますの」

 まずい。こうなれば、相手はこちらに弱点を一方的に突けてしまう。相手の素早さは異常だ。
 ニャオニクスでは追いつかないと判断したカルムは、ニャオニクスを引っ込める。

「くっ、戻れニャオニ--------」

 しかし。セルリアンの声が響いた。

「シザークロス!」

 直後、ざくり、と音がした。ボールを手に構えたカルムは、前のめりになって倒れているニャオニクスを見た。
 
「う、うわぁーっ!!」

 何という速さだ。
 ボールに戻す前に仕留めてしまった。
 カルムは目の前の惨状に声を上げるのが少し遅れた。

「このセルリアンのメガスピアー。物理攻撃力と素早さを総合すれば七炎魔将のどのポケモンよりも高いと自負しておりますわ。厳しいカーマイン様のメガハッサムも、麗しいオペラ様のサザンドラも、どっかのキチガイ刀女のメガフカヒレカスも 悔 し い で す が 確かに強い、チッ。ですが-----------」

  所々バーミリオンと(多分)メガガブリアスへの露骨な悪意も込められていている。相当彼女が例の刀女を嫌っている証拠である。
 ぎらり、と野心のこもった目でセルリアンは腕を振り上げた。
 自身の切札を有りっ丈の自信を持って証明するかのように。


「それらに共通して足りないのは、何よりも、”速さ”ですわ!!」

 彼女は叫び、高笑いを上げたのだった。

 ***

「ハクシュン!」

 バーミリオンはくしゃみをした。向かい合うオペラが大して心配していない様子で「大丈夫ですか?」と声をかけたので「るっさい、黙れ」とワンキック。

「誰かが私の噂話をしたような」
「何を。この世界に貴方様を恐れて噂話をする方なんて1人もいませんよ」
「や、黙れ。マジで殺したくなってくるから」

 彼らはとある森の中でバトルをしていた。何ってポケモンバトルに決まっていた。オペラはバーミリオンの修練に無理矢理つき合わされていたのである。
 別に今、特にすることも無い。
 向かい合うはオペラのサザンドラとバーミリオンのガブリアス。
 そして2匹が技を撃ち合う---------

「サザンドラ、ドラゴンダイブ」
「ガブリアス、ドラゴンクロー!」

 ガキィィィン、と2体の体がぶつかった。反動で吹っ飛ばされたのが解る。

「流石の攻撃力---------サザンドラは特殊攻撃力に優れているだけであって、やはり物理攻撃力も低くない」
「ええ。飛び道具一辺倒だけなど面白くないですし」

 ピキン、と2人の視線がカチ合った。
 咆哮する2匹の龍。

「ならば、これで再起不能にしてやる! ガブリアス、逆鱗!」

 ガブリアスは怒りのままに走り出した。
 目の前の標的1体を視界から定めて腕を振り上げる。

「では、これを掻い潜って来れますかね? サザンドラ、流星群!」

 しかし、オペラも負けては居ない。直後、上空から大量の隕石が降り注ぐ。森林を焼き、そしてガブリアスの頭上へ------------


後書き:ORASで相棒のボマー(ボーマンダ)でたくましさコンテストマスターランク優勝したぜ、ドンドコドン。コンテストでもメガシンカできるシステム作った人、あんたはノーベル賞貰って良い。どうも、久々の更新のタクです。相棒のボーマンダが好きすぎて変なことになってます。メガシンカを経て更にかっこよく……ダサい!? 何でや、戦闘機みたいでかっこいいやん! とまあ字数稼ぎのこんなのは置いておき、とうとう登場しました、セルリアンのメガシンカポケモン・メガスピアー。対戦でも先制技を持たない敵に対してはかなり強い……はず! 作中でも使っていた”守る”はメガスピアーを使う上ではシングルでも必須な技なので絶対覚えさせてください。さもなきゃ死にます。何がってメガスピアーが。理由は作中でも言ったとおりです。
そして久々登場の七炎魔将上級コンビ。この2人は作者の中でも好きなほうではあるんですよね。
そして、セレナとカルムのニャオニクスがそれぞれ倒されるシーンですが、作中でもポケモンに対して明確な流血描写を使うのは多分初めてです。ですが、それだけメガスピアーの攻撃力が高いということで。
多分、必要あらば今後も流血描写は使うかもしれません。ですが、ご理解を。
それでは、また。

Re: ポケットモンスターXY 命と破壊の遺産 ( No.177 )
日時: 2014/12/03 22:59
名前: 竜 (ID: Jgqeoa.s)

どうも、最近忙しくてろくに更新していない大学生作者の竜です。

ついにきたか、ORASからのメガシンカ。メガスピアー。
実はまだ実物はみたことないのです。かっこいいらしいのですが。

ボーマンダナイトはポケモンオフィシャルサイトで見たときはちょっとがっかりしましたが(見た目に)、いざみると結構かっこいい事に気づきました。

コンテストは全マスターランククリアして、ルチアも倒しました。コンテストでもメガシンカ出来るのはルチアと一緒に出たときに初めて知りました。(泣)

ちなみにですが、マスター制覇したメンバーを紹介します。

かっこよさ・・・お着替えピカチュウ・かっこいい

うつくしさ・・・グレイシア

かわいさ・・・ペロッパフ

かしこさ・・・ダークライ

たくましさ・・・シビルドン

ルチア撃破・・・ダークライでかしこさ



マスターはほぼごり押しと運でした。たとえばダークライの場合。

初手・・・ダークホールで緊張させる

二手・・・ゆめくいで初手との組み合わせコンボ達成。

三手・・・再びダークホール。(このとき運良くルチアチルタリスが緊張してくれて本当にラッキーでした)

四手・・・またゆめくいコンボ+会場盛り上がりボーナス

最終手・・・サイコキネシスで終わり


これでルチアに勝ちました。運がマジでよかったです。

ルカリオナイトGET!!


これからも更新頑張ってください!!

長文失礼しました。


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