複雑・ファジー小説
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- ジャンヌ・ダルクの晩餐
- 日時: 2020/09/22 17:50
- 名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
ボンジュール!マルキ・ド・サドです。
自分のことはサド侯爵、またはサドちゃんとお呼びくださいwwww
こんな私ですがどうぞよろしくお願いします!後お見知りおきを。
私はこれから名前に恥じぬようなダークな小説を書こうと思います。
コメントやアドバイスは大いに感謝です。
悪口、荒らし、嫌み、不正な工作などは絶対にやめてください。
私は小説が不器用なので全く恐くないと思いますがこの文を見て不快さを感じた場合はすぐに戻るを(人を不快にさせるのが一番嫌いなので)
タイトルに『ジャンヌ・ダルク』とありますが物語の舞台は近未来の日本です。
【お知らせ】
小説カキコ大会2016年夏では銀賞を受賞させていただきました!
更に2018年夏の大会では銅賞を受賞!
これも皆様の温かいエールの賜物です!本当にありがとうございました!
・・・・・・お客様・・・・・・
銀竹様
風死様
藤尾F藤子様
ふわり様
- Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐 ( No.280 )
- 日時: 2020/12/25 22:19
- 名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
「佳奈芽は毎日のように私に罵声を浴びせ、学園全体に悪い噂を流しました。私が中年男性と援助交際していると黒板に大きく書かれたり、他のクラスメイトの所持品を鞄に忍ばせて窃盗の濡れ衣を着せた事も・・・・・・ネットのアダルト提示版に顔写真を投稿された事は今でも拭えないトラウマです」
「酷過ぎるわ・・・・・・人間のする事じゃない」
「ネットに顔写真を載せる・・・・・・ここまで来ると、香織さんの人生を殺していると言っても、過言ではありませんね」
卑劣極まりない凶行の連続に愛利花は唖然とし、慎一も耐え難い怒りを募らせる。
「ネット社会が常識化し、満足な教育が不足したこのご時世、ゲーム感覚で犯罪を犯す奴が増えてやがるんだ。遊ぶ事しか能がない10代のガキがサイバー犯罪を犯せる病んだ時代なのさ」
博仁が狂気で溢れ返った世間に愚痴を零す。
「犯罪レベルの行いを平気で実行できるくらいだから、今まで殺してきた奴ら同様、相当な変質者なんでしょうね」
「ええ、喋る際、語尾に"にゃあ"と付け足す頭の幼稚なバカです。重度の同性愛者で"レズソープ"に通っているという噂もありました」
「真っ正面からの変態じゃねえか・・・・・・」
「君をいじめていたクラスメイトって、冗談抜きで変人揃いだね。香織、君が通っていた所は本当に学校だったの?」
あまりにも不純な人物像に博仁と姫川も全身に寒気を走らせ、気分を害した面持ちを作る。
「あの変質者には散々陥れられ、嫌なくらい苦汁を飲まされた。今度はあいつが死をもって償う番よ」
「その殺意が本気なら、暗殺計画の実行は明後日が最適だな」
「え?どうして?」
博仁の理由がはっきりとしないこだわりに愛利花が首を傾げる。
「知りたきゃ、こいつを見ろ」
博仁は自分のスマホの画面に皆の注目を集めさせる。見ると、何かしらのイベントのサイトらしき派手なブログが記載されていた。
「"理想のマスカレード"?マスカレードって仮面舞踏会って意味ですよね?これが今回の標的とどう関係してるんですか?」
慎一がタイトルの文字を声に出して読んで、ついでに解説を求めた。
「最近、見つけたんだ。これはな、参加者がアニメやゲームのキャラクターコスチュームを着て、パーティーやゲームを満喫する娯楽イベントなんだ」
「ようするに、コミケみたいなものですね」
メイフライの物の例えに博仁は"とんでもない"と批判的に言って
「天下のコミケがこんなしょぼいイベントと同列に並べられたんじゃ、泣いちまうな。この舞踏会に集まる連中も大半が正気とは程遠い奴らばかりだろう。何故かって?何を隠そうこの舞踏会の主催者は紛れもなく"佳奈芽"なんだ」
「な、何ですって・・・・・・!?」 「はあ!?」
衝撃的な告白に部屋にいる人間がざわつく。香織と聖だけが妙に落ち着いていた。
「あり得ないわ!いくら小規模なイベントだとしても、普通の人間にそんな大掛かりな催し物を立ち上げられるはずがない!」
「香織さん。佳奈芽は渚や楓のように裕福層の人間だったんですか?」
メイフライが考察のヒントに必要な質問をする。
「いいえ、あの女は異常人格を除けば、どこにでもいる一般人と同じです。家は敷地が広いだけで、決して裕福な家庭環境ではありませんでした」
「では、宴を開くための資金はどこから調達したのでしょうか?」
聖が実に疑わしそうに言った。
「恐らく、森川詩織を差し出した際に周から受け取った報酬金で立ち上げたイベントに違いない。人の命と引き換えに娯楽イベントを開くなんざ、性根が腐り果てて蛆がたかってるな」
「僕も人に対して、久々に本気の殺意が沸いたよ。またもや、対物ライフルの出番かな?」
外道の極みとしか言えない卑劣な身勝手さに博仁も怒りを募らせた。姫川もこればかりは許せないと言わんばかりに佳奈芽の抹殺に決意を固める。
「つまり、明後日に開かれるコスプレパーティーに潜入して、佳奈芽の暗殺を図ろうという魂胆ね?面白そうじゃない」
スリルが味わえそうなスケジュールに香織の口がにやりと引きつる。
「しかし、潜入するとしても向こうは香織さんの顔を知ってます。恐らく、あなたが命を奪いに来る事も想定しているはずです。堂々と正面ゲートから入れば、即座にばれてしまうのでは?」
「慎一、話を聞いてなかったのか?あのな、コスプレパーティーだぞ?ただの私服で出向くバカがいるかよ?会場に参加したいなら、嫌でも変装する必要がある」
「ちょっと、待ちなさい。問題はもう1つあるわ。その衣装と招待チケットをどこで手に入れるかよね・・・・・・」
博仁は愛利花の不安を安堵へとあっさりと覆した。
「その件に関して、胸に心配を溜める必要はないぞ?チケットは勿論、使えそうな衣装もとっくに調達しておいた。この部屋の連中全員に配っても、まだ余るくらいにな」
「流石、隠れ家一の工作員・・・・・・」
随分と手回しがいい働きに姫川は呆れているのか、尊敬しているのか、どちらもはっきりしない言い方をする。
- Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐 ( No.281 )
- 日時: 2021/01/01 21:52
- 名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
「潜入方法については解決したわね。後はこっちから死神のラブレターを渡しにいくだけ。舞踏会には、いつものメンバーで行く。聖。契約は成立したのだから、あなたにも早速、舞台に上がってもらうわよ?」
「承知しました。当日まで準備を整えておきますので」
「待ちなさい。もう1ついいかしら?」
すると、愛利花がまたもや、まとまりかけていた話の流れを乱す。
「何だ?まだ、何かあるのか?」
「その舞踏会には私も連れて行ってくれない?香織の手伝いがしたいの」
「・・・・・・は・・・・・・はあ!?どうしたんだよやぶから棒に・・・・・・!?」
予想すら視野に入れていなかった唐突過ぎる要求に、博仁は語頭を詰まらせた。いつもの冷静さが欠けた相手とは裏腹に彼女は落ち着き払ったまま
「衣装は余ってるんでしょ?・・・・・・前から嫌な気分だったのよね。あんた達だけを危険な目に遭わせて、自分だけが心配を抱えながら、仲間の帰りを待つ毎日が。私も香織の復讐ゲームに参加したパーティの1人よ。待機ばかりさせられる日々はもう、うんざりよ」
「あのなぁ・・・・・・遊びじゃねえんだぞ」
「知ってるわ。知ってる上でお願いしてるの」
説得も意味を成さないだろう後に退かない態度に博仁は唇を噛む。その覚悟に釣られて、立候補者がもう1人現れた。
「お、俺も同行させて下さい!」
「し、慎一さん!」
メイフライが頭を横に振って異議を唱えるが、彼も覚悟を曲げようとはしなかった。
「俺も香織さんの復讐に加わった身です。それなのに、自分は命を懸けるどころか、暇だけを持て余してる。次の計画に役立つコレクションがないか探してみます。絶対に足手まといにならないと約束しますから」
「ああ・・・・・・い・・・・・・お・・・・・・!」
「静流・・・・・・まさか、お前もかよ・・・・・・?」
静流の立候補に関しては、博仁は肝を潰さず、代わりに呆れた声を細くする。
「静流ちゃんごめんね。あなたはだめ。私達は遊ぶためにパーティーに行くんじゃないのよ。連れて行ったところでリスクを伴うわ」
愛利花の反対にメイフライも追い討ちをかけるように、否定文の台詞を淡々と述べた。
「愛利花さんと慎一さんならともかく、静流ちゃんに限っては強く反対です。酷な言い方ですが、この子は幼くて何より戦う術を知りません」
「もう1つ付け加えれば、敵陣のど真ん中でただの女の子を守れる余裕なんてない。控えさせた方が大きなメリットになるね」
姫川も最悪な事態を避けるため、非情になる。
「ああ・・・・・・い・・・・・・お・・・・・・いい・・・・・・あい・・・・・・!」
しかし、静流も諦めを認めず、しつこい要求を行う。
「この子、どうしますか?」
メイフライが、子供のわがままに困惑していると
「まあ、いいんじゃないか?」
「しょ、正気!?何、ふざけてんのよ!?バカじゃないの!?」
無責任が過ぎる博仁の容易な博仁に愛利花が食って掛かった。全く同じ感情を抱いた香織達も批判的な視線を浴びせる。
「これだけの忠告を促しても、こいつは前線に行きたいと駄々をこねているんだ。チームは連帯責任だが、死ぬのは個人の責任だ。だとすれば、例えこいつが落命したとしても、俺達に非はないはずだ。1人置き去りにされたこいつがへそ曲げて上にチクらねえとも限らねえしな。どっちかと言えば、そっちの方が心配だ」
「体の不自由な女の子に対して、酷い発言ね」
香織が敬遠の眼差しで毒舌を責め立てる。
「これだから私はこの下品しか取り柄のないクズを好きになれない。この部屋の中で最低な人間はあんただけよ」
「じゃあ、誰がこいつの面倒を見るんだよ?最初に宣言しておくが、俺は絶対に無理だぞ。香織やメイフライの達のサポートに回らなきゃならん。最も重要なポジションだ」
「その役目は僕に任せてくれませんか?」
慎一が進んで静流の子守りを引き受けようとするが
「大丈夫か?確かに、この中では1番の適任者かも知れんがな。戦闘に不向きな奴に押し付けるのも本音を明かせば心配だ。事実、お前は前回、死にかけたからな」
博仁は納得するものの、過去の二の舞の予感に不安を捨て切れない様子だ。
「平気ですよ。この子の事はしっかりとついていますし、なるべく安全な場所で待機してますから」
「静流ちゃん。いい?会場に入ったら、絶対に慎一お兄ちゃんの傍にいて離れない事。それが約束できないなら、あなたをここに置いておく」
「あう・・・・・・おう・・・・・・うう・・・・・・!」
「決まりだな。狂気の舞踏会にはここにいる奴ら全員で行く。異論がある奴は残れ。拒否権を行使したいなら、今がラストチャンスだぞ」
博仁の言葉に賛同するものは1人もいなかった。恐れのない戦意を証明する沈黙がし~んとした空気が時間と共に流れていく。
- Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐 ( No.282 )
- 日時: 2021/05/05 20:02
- 名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
香織達を乗せたバンは7人目の標的である荻野 佳奈芽が主催する舞踏会へと発った。一般人のイベントと聞いて、訪れる者は十数人程度だと想定していたが、その予想は裏切られた。車内からでも、パーティー会場の盛り上がる賑やかな声がはっきりとこちらに聞こえてくる。ここへ来る途中の歩道にも大勢の訪問者が列を成して歩いていた。全員が仮装していたため、簡単に見分けがつく。
大半が埋め尽くされた駐車場にバンを止め、博仁は外に降り立つ。車両のバックドアを開けると、香織達に混ざって変装の準備を整える。
「凄い人だかりだね?昔、やった野外ライブを思い出すよ。あの頃は楽しかったな」
姫川が盛大な会場が連想させる過去を懐かしむ。一方、メイフライは着替える手を動かしながら、生真面目に会場の状況を述べる。
「民間人が多過ぎる。派手に武器を使えば、関係ない人達を巻き込んでしまう可能性があります」
「そうね。彼らに被害が及ばないよう、慎重にターゲットを葬りましょう」
愛梨花も忠告を促しながら、派手な帽子を被る。
「策を練るのはコスプレした後でも遅くはないぞ。で、俺の衣装はどこだ?」
慎一が残った分を提供する。しかし、男には似合わないだろう衣装が大きな不満を煽った。
「はあ!?何で俺が白魔導士なんだよ!?別のはないのか!?」
「早い者勝ちよ。あんたは最後なんだから文句言わない」
渋々と服を脱ぐ様子に香織とメイフライ、姫川が静かに笑う。
「しかしさ。一応、対物ライフルを分解して持って来たんだけど、会場に持ち込めるのかな?
香織だって、今日は日本刀とショットガンを隠れ家に置いてきたんでしょ?」
「大勢が集まるにしても、所詮は一般人が立ち上げたしょぼいイベントだ。セキュリティーは緩いと思うぞ。万が一、検問所があったら、その時は潔く諦めよう」
「香織様。私はあなたと行動を共にします。あなたの身に何かあっては、大変ですので」
聖は身辺警護の役割を提案する。
「私はファントムだから、そう簡単にやられはしないわ。でも、あなたと組むのも悪い手段ではないわね」
「香織、お前は標的に顔が割れている。外に出たら、常に素顔を隠していろ。聖もだ。周の罠がないとも言い切れん」
しばらくもしないうちに全員の仮装が完了した。全員の手にチケットが配られ、小型の銃器とナイフを忍ばせる。姫川の対物ライフルは怪しさをカモフラージュするため、可愛いデザインのサックに詰め込んだ。
「ああ・・・・・・う・・・・・・いお・・・・・・う・・・・・・!」
出発が待ち切れず、静流が愛利花の手を引く。
「準備はできたな?全員、聞け。会場に足を踏み入れた時点で戦いは始まっている。怪しまれるような行動は絶対に避けろ。可能なら標的は密かに殺害し、武器の使用はあくまでも最終手段にしろ。腐れ切ったパーティーを台無しにしてやる。行くぞ」
香織はエディスの仮面で素顔を隠す。バックドアが開き、外への入り口が開かれる。
舞踏会への入り口は大勢の来客がぞろぞろと長蛇の列が続いていた。参加者は誰もが、中高年くらいの年齢層の少年少女ばかりで、子連れの親子は見当たらない。派手な花飾りが飾られたゲートの前で雇われたスタッフがチケットの確認を行っている。
「『理想のマスカレード』へようこそ!誰もが虜になる幻想の楽園へとご招待します!楽しい思い出をいっぱい作っていって下さいね!」
数分の時間を要して、香織達の順番が回って来た。ゲートの手前に立った途端、わざとらしい歓迎を受ける。
「理想のマスカレードへようこそ!おやおや、仮面で顔を隠すなんて、かっこいいですね!あれ?そちらのお兄さんは白の魔導士ですか?よく似合ってますよ!チケットを拝見してもよろしいですか?」
「心配いらない。ちゃんと、持ってる」
どうせ、お世辞だろうと分かり切った好評に、博仁は少し恥ずかしい気分になりながら、言われた物を差し出す。
「は、結構です!素敵なパーティーをレッツエンジョーイ!」
愛利花やメイフライも次々とチケットは意見を済ませ、後列に押されながら会場へと流れ込んだ。香織達は舞踏会の光景を目にした途端、唖然とせずにはいられなかった。会場は非常に盛んで、仮装した人間達の楽しい賑やかさが、痛いくらいに耳に響く。
広い草原の庭に点在する長いテーブルには豪華な料理が並び、普通では味わえないメニューが食欲をそそる。土産物を売る小店に立ち寄る友人同士の集まりや記念撮影に夢中になるカップル。一般人が開催したパーティーとは思えないほど、娯楽イベントが満載だった。正面の遠くには、これから有名な歌手がライブをするかのような立派なステージが建てられていた。
「控えめに言って、楽園ですね・・・・・・」
慎一は本格的な会場に魅了され、思考が巡らず単純な結論しか出せなかった。
「僕が開催したライブよりも、サービスが満載だ。楽しめるコーナーがたくさんあって、本当にファンタジーの世界に迷い込んだみたいだ」
姫川も苦笑し、どこか悔しさを感じながらも、正直な評価を述べる。
「ちょっと2人共、見惚れてる場合?ここに来た目的を忘れないでよね?」
呆れた愛利花が2人を我に返させ、やるべき任務に集中させる。
「あ・・・・・・おお・・・・・・いいあ・・・・・・い・・・・・・!」
いても立ってもいられなくなり、遊ぶ群衆に加わろうとした静流をとっさに引き留め、博仁がこれからの作戦を伝える。
「ここで一旦、別々に行動を取ろう。手分けして佳奈芽の居所を探すんだ。各員、会話のやり取りは無線で行う。奴を見つけ次第、すぐに香織に知らせろ。いいな?」
「しかし、探すと言っても、仮装した人間がこれだけいるんですよ?香織さんみたいに素顔を隠してる者も人間も少なくない。それ以前に、香織さん以外は佳奈芽の肝心の顔を知らないんです。それすらも把握できない状態じゃ・・・・・・」
メイフライは、こちら側が抱えた問題の数々を指摘する。
その刹那、一瞬のノイズ音がしたかと思うと、どこからか陽気な音楽の演奏が流れ会場全体に響き渡った。香織達を含む舞踏会の出席者達は反射的に気を取られ、あらゆる方向を見回す。賑やかさが絶え、一帯はしゅんと静まり返る。
- Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐 ( No.283 )
- 日時: 2021/05/30 19:01
- 名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
『"にゃっほー!世界一、キュートなおにゃんこ少女、佳奈芽だよ~!今日は私の最高の舞踏会に来てくれてありがとにゃー!豪華なパーティーは楽しんでくれてるかにゃ~?"』
「変態のお出ましだな」
虫唾が走る幼稚な喋りに、博仁は声の主を敬遠する。放送は途切れず進む。
『"これから、最高のゲームを開催するにゃー!ルールは簡単!皆がいるこのパーティー会場に隠れんぼしている私を探し当てるだけ!見事に佳奈芽ちゃんというお宝を見つけ出したラッキーな人には、豪華な賞品をプレゼントするにゃー!あ!でもでも~、他の人の仮面を無理やり外したり、ケンカなんかしちゃだめだよ?ルールを破った人にはきついお仕置きをしちゃうにゃー!"』
「実にくだらないお遊戯が始まるみたいですね」
メイフライも鼻で笑い、皮肉を吐き捨てる。
『"パーティーに来たお客さんの中には、私の事を知らない人が山ほどいるよね?心配はご無用にゃ!会場にはキュートな私のお顔が載った指名手配のポスターがそこらじゅうに貼られてるにゃ!私がどこにいるか分かったら、スタッフさん達に正解の答えを教えてね!それじゃ、ゲームを楽しむにゃ!レッツ、カーニバル~!"』
ゲームの開幕を知らせる音楽が流れ、放送は終了した。
「自分が開催したゲームであの世行きになるとは、因果応報だ。見事、クリアを果たして、奴の心臓を景品として頂くとしよう。他の奴らにとっては、とっておきの暇潰しだろうが俺達にとっては命を懸けたデスゲームだ。真面目に挑んでもつまらん。遠慮なく、ルールを破らせてもらおう」
博仁が口を意地悪くにやけさせ、如何にも悪巧みを練った顔を作る。
「時にゲームはルールを捻じ曲げた方が楽しいからね」
姫川も軽々しく、まとめ役との意見を揃える。
「パーティーの出席者の中に有力な情報を手にしてる奴がいるかも知れん。俺は聞き込みを試みる。愛利花とメイフライも情報収集や探索に当たってくれ。姫川、お前はあの家の屋根に上って、会場を見張っていろ。いざという時のためにスナイパーを配置したい」
「了解。あそこは見晴らしがいいし、目立ちにくいから好都合だ」
「慎一も俺達と同じ役目を任せたいところだが、静流の子守を頼みたい。こいつはすっかり、遊園地に連れて来られたお子様だ。悪いが、こいつの面倒を見ててくれないか?」
「分かりました。この子に付き添いながら、俺も怪しい人物を探します」
「私と聖は会場の立ち入れないエリアを探ってみるわ」
「異議を唱える理由はないな?よし。各自、任務開始だ。くれぐれも注意を怠るなよ?」
「よいしょっと」
姫川は佳奈芽の家の屋根に上ると、狙撃ポイントに就いた。サックから分解された部品をばら撒き、1つ1つ組み立てていく。やがて、ライフルの形状が完成すると、50口径の弾薬が詰まった弾倉を装填し、長距離スコープを調整する。
「さてと、高みの見物と行こうか」
うつ伏せになり、いつでも撃てる姿勢を整えると、スコープ越しに会場を一望する。照準は博仁を捉えていた。
彼は情報を集めるため、豪華な料理に手をつけながら周囲に溶け込む。山積みになったスコーンの1個を頬張り、辺りや仲間の動きに気を配る。すると、そこへ1人の客人が彼の様子を窺いながら歩いて近づいてくる。おどおどと内気な性格が分かりやすい魔女の格好をした少女だ。
「あの~?」
博仁は食物を含んだ口を動かしながら、怪訝な顔でこちらに関心を持った人物に注目する。
「もしかして、それ・・・・・・白魔導士ですか・・・・・・?」
少女は緊張し切った言い方で仮装の内容を聞いてきた。
「え?あ、まあ・・・・・・そうですね」
博仁は男には似合わない格好に恥をかきながら、肯定する。
「あの・・・・・・もしよろしければ、写真・・・・・・一緒にどうですか?」
「・・・・・・え?あ、ああ・・・・・・構いませんよ」
少女は嬉しそうにポケットから女子が好むような可愛い柄のスマホを取り出す。撮影画面を自身に向け、個性のないポーズを取った博仁を隣に加えると、シャッターボタンを押した。
「ありがとうございました。あの、よかったら食事も一緒にどうですか?」
(マジかよ。ここには殺人を犯しに来たんだぞ・・・・・・普通、このタイミングでリア充のフラグ立つか!?だが、異性に迫られるのも悪い気はしないな。しばらくは付き合ってやるか)
博仁は厄介な事態に遭遇しながらも、異性との関係を深められた事に満更でもない気分を味わう。
「勿論、俺でよければ」
博仁は友好的にワイングラスにジュースを注いだ。更に豪華な料理を更に盛り付け、少女の手前のテーブルに置く。
「わあ!親切にありがとうございます!」
「いえいえ。これくらい、当然の行いです」
すっかり、紳士になり切った博仁も自分の分のジュースを注ぎ、グラスを合わせて互いに乾杯を交わす。
「ところで、お嬢さん」
「はい?どうしましたか?」
「俺は今、このゲームの主催者である佳奈芽さんを探しているんです」
「あ!例のゲームですか?こういったイベントは他では、なかなか味わえませんよね。佳奈芽さんは一体、どこに隠れているのでしょう?」
「いきなり、探せと言われても、こんな広いエリアの中から1人の人間を見つけるのは、かなり苦労します。せめて、ヒントか何かがあればいいんですけどね」
「それなら私、いい事を知ってますよ!」
少女は飲みかけのグラスを置くと、コスチュームのポケットを漁り、ある物を取り出す。それは舞踏会の参加者全員が所持しているだろう招待券だった。
「チケット?」
博仁は首を傾げ、見せられた所持品を指さす。
「このチケットに答えが書かれているらしいんです。でも、なぞなぞみたいで分かりにくいんですよね。あなたはこの問題解けますか?」
博仁は一時、チケットを借りて、顔に近づけ、確認する。特に関心がなかったせいで気づかなかったが、確かに謎めいた文字が書かれていた。
『"羊も狼も手を繋いで踊ろう。歌うのは小鳥。私は舞台裏で旋律を奏でる"』
(妄想好きな子供が書きそうな詩だな。本当に何を意味しているのか分からん。暗号文は苦手だ。頭痛がしてくる)
「何か、分かりましたか?」
博仁は否定の返事を返し、少女にチケットを返却した。ちんぷんかんぷんで、どうしようもない苦笑が相手に移り、互いに笑い合う。
「あは!あははは!こんなの、解ける人いませんよね!?」
「はっはっは!ええ、この暗号が解けるなら、俺は今頃、ミ〇〇ル9に出演できますよ!」
博仁はタイミングを見計らうと、少女に"ちょっと失礼"と断りを入れ、距離を置いた。まわりから怪しまれてないか注意を払い、右の片耳を塞ぎ、忍ばせておいた無線で連絡を取る。
- Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐 ( No.284 )
- 日時: 2021/06/10 19:55
- 名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
「俺だ。聞き込みで早速、有力な情報を得た。参加者全員に配られたチケットにゲームのヒントが記されている。内容が謎かけになっていて、俺にはさっぱりだった。そっちは何か収穫はあったか?」
無線を通じて、すぐさま返事が来た。
「"いえ、残念ながら。愛利花さんと共にゲームコーナーのエリアにいますが、佳奈芽を知らない人がいなくて迷宮入りの状況です"」
「"1人1人、仮面を剥いで回るわけにもいかないものね。ねえ?そもそも、この舞踏会は不正で塗り固められたイベントなのよね?ゲーム自体もインチキだという説も考えられるんじゃない?"」
愛利花は仮説を推測し、面倒極まりないこのゲームに対して完全に嫌気が差していた。
「さあな。その理屈が正しいなら、参加者全員が損をさせられていた事になる。いくら頭の悪い佳奈芽でも、せっかくのパーティーを台無しにする真似はしないだろう。とにかく、そっちは引き続き、調査を続行してくれ。何か分かったら、また連絡する。姫川、お前の視点に変わった物は映らないか?」
「"今のところ、異常は起こってない。変わった人がいるのだとすれば、唯一、民家の上で対物ライフルを構えている僕くらいだね"」
博仁は射撃の体勢を保ったまま、異常がない事ををジョーク混じりに伝える。
「博仁ったら、女の子といちゃついちゃって。あの枠に入れないのが、虚しく思えてくるよ。博仁は問題なさそうだな。ちなみに慎一くんと静流ちゃんのペアは・・・・・・」
「おえ・・・・・・お・・・・・・あえあ・・・・・・い・・・・・・!」
静流は本来の目的など意に介しておらず、料理を貪る。静かで陰気な少女らしからぬ食い意地をまがまがと見せつけていた。
「これ?これが食べたいの?」
慎一は幼子のわがままに振り回され、骨を折っていた。不審な存在を探そうとするも、それどころじゃない有様だ。
(違う意味で忙しいせいで、やりたい事に集中できない。ここは遊びに来たわけじゃないのに。やっぱり、静流ちゃんをここに連れて来るべきではなかったな・・・・・・)
後悔した本音が芽生えた矢先、静流に異変が起こる。
「うう・・・・・・うう~・・・・・・!」
「ちょっと!どうしたの!?静流ちゃん!まさか・・・・・・喉に詰まらせちゃったの!?」
静流は必死に頭を横に振った。足踏みを繰り返し、下半身を押さえている。
「え?もしかして、トイレ?あ~もう、そんなに欲張るからだよ。ジュースも飲み過ぎ」
手間をかけさせられる事態に慎一は呆れ果て、トイレはどこかと、向かわせたい場所を探す。
「どうした?そのガキ、気分でも悪いのか?」
困惑している最中、1人の女に声をかけられる。執事らしい仮装をしているが、まわりにいる人間と違って、珍しく素顔を隠していない。短い髪を生やし、外見からボーイッシュな雰囲気が漂う。容姿は美しいものの、口調がモラルに反し、目つきも親しみやすさが湧くようなものではなかった。
「実はこの子、料理を食べ過ぎてしまって・・・・・・トイレに連れて行こうとしてたんです」
丁寧に事情を話す慎一。女は"ふーん"と納得して、生理現象に苦しむ静流を少しばかり見下ろすと
「トイレの場所、どこにあるか知らないんだろ?私が案内してやるよ」
「そんな、申し訳ないです!見ず知らずの方にご迷惑をおかけしては・・・・・・!」
「私に気遣いなんていらねぇよ。遠慮すんな。困った時は助け合うのが人間だろ?お前はここでケーキでも摘まんでろ。ほら、行くぞ?ガキ」
「ああ・・・・・・う・・・・・・うええ・・・・・・え・・・・・・!」
静流は早く楽になりたい一心で会場を後にする少女の後ろについていく。慎一は不安を捨てられず、やはり心配だと言わんばかりに同行しようとするが
「あの!それって騎士ですか!?すごくかっこいいです!」
「私、これ知ってます!ゲームのキャラクターですよね!?」
「一緒に写真撮りましょう!よかったら、LINE交換します!?」
「・・・・・・って、うわっ!?」
急に何故か、今までこちらに無関心だった大勢の仮装女子が群がって来たのだ。少女の群れは道を塞ぎ、慎一を囲んでちやほやと絡む。人ごみの間から、だんだんと遠ざかる2人の姿をやがて見失った。
静流と女はグッズ売り場の隅にある目立たない化粧室に入る。そこは賑やかな会場とは物静かで人気もなく、不気味を感じさせる空間だ。
「ここがトイレだ。さっさと用を済ませろ。こっちだって、せっかくのパーティーを楽しみたいんだ」
不機嫌さが浮き沈みする荒っぽい言い方で女は事を促す。
「あ・・・・・・い・・・・・・あお・・・・・・う・・・・・・!」
静流は自由の利かない喉を使って礼を言うと、急いで便座のある狭い一室に入ろうとした。
「ひぅっ・・・・・・!」
途端に静流は、いきなり肩を掴まれた感触にぞっと身震いさせる。
「・・・・・・なあ?ちょっと、いいか?」
後ろにいる女の声が先ほどとは違う。肩を圧迫する手が一層に深く食い込み、静流を逃がさないよう、強く押さえつけた。豹変した態度には、加虐を楽しむ悪意を確信させる。
「お前・・・・・・"姫川 香織"とはどんな関係なんだ?」
「・・・・・・っ!」
予想だにしていなかった1つの問いに静流の表情が凍り、背筋に痛感の寒気が走る。何故、この女は香織という人間を知っているのだろうか?理由など知る由もない・・・・・・が、明白なのは、この女が害意の塊に違いないという事だけだ。
「あう・・・・・・ええ・・・・・・!」
静流は枯れた声で叫んで、手を振り払おうとするが、力の差で所詮、悪足掻きにしかならなかった。必死の抗いも空しく、両肩を掴まれ、ついに壁に背中を打ちつけられてしまう。胴体に受けた衝撃と圧迫で口と目が強制的に、がっと開いて無色の体液が溢れ出す。刀身の長いナイフが首の皮に傷を入れたのは、その直後だった。
「あ・・・・・・がっ・・・・・・ぐぇ・・・・・・!」
静流は痛みと恐怖に耐えられるはずもなく、下半身からも体内に溜まっていた排泄液をだらだらと漏らした。
「喉を裂かれたくなかったら、騒がない事が賢明だぞ?トイレは済んだな?来い。ちょっとばかり、付き合えよ」
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