複雑・ファジー小説

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ジャンヌ・ダルクの晩餐
日時: 2020/09/22 17:50
名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)

ボンジュール!マルキ・ド・サドです。

自分のことはサド侯爵、またはサドちゃんとお呼びくださいwwww
こんな私ですがどうぞよろしくお願いします!後お見知りおきを。
私はこれから名前に恥じぬようなダークな小説を書こうと思います。

コメントやアドバイスは大いに感謝です。

悪口、荒らし、嫌み、不正な工作などは絶対にやめてください。

私は小説が不器用なので全く恐くないと思いますがこの文を見て不快さを感じた場合はすぐに戻るを(人を不快にさせるのが一番嫌いなので)

タイトルに『ジャンヌ・ダルク』とありますが物語の舞台は近未来の日本です。


【お知らせ】

小説カキコ大会2016年夏では銀賞を受賞させていただきました!
更に2018年夏の大会では銅賞を受賞!
これも皆様の温かいエールの賜物です!本当にありがとうございました!


・・・・・・お客様・・・・・・

銀竹様

風死様

藤尾F藤子様

ふわり様

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.36 )
日時: 2018/12/29 19:38
名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)

 翌日

 予想した通り時間は早く進み嫌な明日がすぐにやって来た。今日は昨日よりも1時間早く起床した。この後のことを考えているせいかいつもの寝起きの悪さが少しも感じられなかった。緊張しているせいで無性に喉が渇く。

「姫川香織、出ろ」

「・・・・・・はい」

 やってきた数人の警官が牢獄の鍵を開けた後、お決まりの乱暴な力で引っ張りだされた。


 香織は2日ぶりに外に出た。天気はほぼ快晴。普通の人達にとっては平凡に見せかけた災難な日常。香織にとっては悪い意味で特別な日。久々に感じる外の空気は美味しくちょっとだけ釈放された気分になった。

(このままパトカーに乗って家に帰りたい。そして家族全員を抱きしめたい。特に茂。)

 無実の罪で手錠をかけられてからそういう事を考えてばかりだ。正気とは程遠い生活に変な癖がついてしまったのだと感じた。

「乗れ」

 香織はパトカーではなく護送車に乗せられた。テレビでやってたニュースで何度も見た事があるが実際に見たのは初めてだった。それが薄れていた不安症をかきたてる。護送車に乗せられ檻と変わらぬ扉は閉ざされた。窓の外から警察官達がこちらを睨んでいるのが見えた。

(警察の格好をした暴力団に攫われた気分ね・・・・・・)

 香織がそう思った直後にエンジンが掛かり車は走り出した。

 裁判所には予想した通りすぐに到着した。建物の前でマスコミが溢れかえっているのかと思ったがそうでもなかった。数人の人間がいるだけで特に変わったものは見当たらない。
 
「降りろ」

 護送車が停止し香織は車から引きずり出された。外で一度だけ大きく深呼吸し緊張を少しでも押し殺す。これから無実を勝ち取るためにも正確な証言をして戦わなければならないのだ。検察官の有力な言葉にも負けるわけにはいかなかった。そして何よりもやっていない容疑を決して認めない、そう硬く決意した。

(詩織、私のこと見守っていてね・・・・・・)

 香織は法廷に向かい足を進める。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.38 )
日時: 2018/12/30 14:53
名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)

 法廷の中には大勢の人が集まり傍聴席は満席だった。裁判官や検察官、弁護士も既に待機していた。どうやら香織が最後に到着した人間らしい。その中に見覚えのある人間も、家族だった。

「お姉ちゃん・・・・・・」

 父と母に兄と弟、皆悲しそうな表情でこっちを見ている。茂と目が合ったが思わず目を逸らしてしまう。隣にいる人達は詩織の遺族だった。親友の母と父と弟、確か名前は純介。特にスポーツよりも勉強が得意な子で詩織の家に遊びに行った時に何度か話をした事があるので知っていた。彼の母は死んだばかりの娘の遺影を握りしめている。笑顔の写真だ。まるで命が吹き込まれているようにも見えた。香織は被告人として法廷の中心に立つ。

「起立!これより裁判を始めます!」

 行われた裁判は思っていたよりも単純だった。似たような質問をいくつもされ何度も似たような答えを述べる。警察署と違い暴力がないためか異様なくらい集中できた。決して行き詰ることはなくスムーズに進んでいく。無論、香織はどんな質問にも真面目に答え無実を主張した。次に証人が呼び出された。現れたのは香織と同じくらいの少女。私服で見慣れない格好をしていたが同じ学校に通うクラスメイトだとすぐに分かった。

「質問します。被告人と被害者の関係はどんなものでしたか?」

「・・・・・・えっと、凄く仲が悪かったです。いつも殺してやるとか言っていたのを覚えています。私は恐くて香織さんには近づかないようにしていました・・・・・・」

 あり得ない言葉が証人の口から出た。だが動揺を隠せず嘘をついている事は一瞬で分かった。

「嘘よ!私はそんなこと一度も言った事がないわ!」

 当然、香織は強く否定する。

「静粛に。被告人は何も喋らないで下さい」


「ありがとうございました。もう下がって頂いて結構ですよ」

 役目を終えた1人目の証人はその場を離れた。そして次の証人が呼ばれた。

 次から次へと同じクラスの証人が呼ばれたがどいつもこいつも嘘の証言をする者ばかり、被告人にとって有力な証言など1つもなかった。だがここまで来るとあることに疑問に思えてくる。


 香織は開廷した時からこの裁判に違和感を感じていた。嘘の証言だけじゃなく弁護士がろくに弁護してくれないのだ。それに加え検察官が異常なくらいに攻撃的で裁判長が気味の悪い笑みを浮かべながら被告人を眺めている。

「ご協力ありがとうございました」

 最後の証人が去り嘘つき大会はようやく終わりを迎えた。だが不利な証言を多くされてしまった。致命的だ。このまま行けば確実に極刑に処される。だがここには味方が1人もいない。やってないと叫んでも意味がない。その後も裁判が続けられ状況は悪い方に転がっていくばかりだった。

「これにて今日の裁判を閉廷します」


 最悪な裁判が終わり香織はすぐに警察署に戻された。香織は弱々しい返事をするとそのままベッドの掛け布団に潜り込んだ。疲労を感じていたが全然眠くならない。明日が心配だからだ。翌日にとうとう自分の人生が決まる。そう思うと生きた心地なんか少しもするはずなんてなかった。

「お母さん・・・・・・お父さん・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・茂・・・・・・」

 家族の名を呟き静かに目をつぶる・・・・・・

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.40 )
日時: 2016/02/14 18:40
名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)

参照数800突破!

ありがとうございます。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.43 )
日時: 2018/12/30 15:07
名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
参照: ht

 法廷の様子は昨日とほぼ変わっていなかった。同じ席に両者の家族、まわりに座っている記者やマニアもほとんどが昨日と同じメンバーだった。詩織の遺影は母親ではなく弟の純介が抱えていた。父親は憎しみがこもった目で睨みつけている。皆、昨日と変わらない表情でこっちを見ていた。この広い部屋にいる人間は自分だけのような闇の深い孤独感に苛まれる。


「被告人!」


 裁判長が香織を呼んだ。今の声で彼女は我に返る。気がつくと香織はもう法廷の中心で立ち尽くしていた。

「大丈夫ですか?」

「は、はい・・・・・・!」

「今から判決を言い渡しますよ」

 そう言って裁判長は数枚の資料を手に取り数秒間書かれている内容を真面目な表情で見つめた。どうやら最後の確認らしい。それをすぐにガベルの横に置いた。そして口を開く。

「被告人は被害者を屋上に連れ出し主犯である男性に強姦させ屋上から突き落とさせました。これは紛れもない殺人教唆です。そして、その犯行に容赦というものは一切無くあまりにも卑劣で残酷なやり口だという理由で少年法は適用されません。」

「え・・・・・・!?」


「よって被告人を仮釈放無しの無期懲役に処します」


 その一言で体全体が無になり一瞬、たちの悪い幻聴だと思ってしまった。
それを聞いた背後にいる母親は我が子を失ったように泣き崩れる。その現実が現実だと理解したのは母の泣き声を聞いた直後の事だった。仮釈放無しなんて終身刑と言っているようなものだ。いや、実際言葉が違うだけで全く同じ事を言っている。もうかつての人生を送ることができないということは心ではなく体で感じ取った。冤罪なだけに受けたショックと屈辱は相当なものだった。強い金縛りにあっているかのように動かない。目の前が真っ暗になっていく・・・・・・!

「ふざけんなっ!お姉ちゃんが人殺しなんかするわけないだろ!!」

 納得しきれるはずもない弟の茂が怒鳴った。当然、目には涙が浮かんでいた。

「やめろ茂!」

「ちゃんと調べたのかよこの糞裁判官共!!賄賂でも貰ってんじゃねーのかっ!?」

「やめろと言っているんだっ!!」

 兄が怒鳴り茂も本格的に泣き出した。父は何も言わず下を向いているだけだった。香織の人生は終わった。愛する者も数日前の幸せなひと時も全て失った。でも心の奥底では嬉しかった。父も母も兄も妹も最後まで自分を信じてくれたからだ。少しも親友殺しの容疑者としては見ていなかったようだ。それだけが唯一の救いだった。香織は涙を流さず無理矢理微笑んだ。そして後ろを振り向き

「お父さん、お母さん、お兄ちゃん、それに茂。今までありがとう」

 それだけ言うと哀れな少女は家族に背中を向け法廷の外へ立ち去って行った。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.45 )
日時: 2019/01/01 20:00
名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
参照: ht

 3日後・・・・・・

 あれから数日経ったが香織にとっては2年の月日が流れたような感覚。今日もいつものベッドの上で寝たきりだった。さっき看守が起きろと警棒で鉄格子を叩いたが無視した。体が自由に動かないのだ。朝食も昼食も夕食も食べていない。気がつけばもう夜になっていた。このままじっとしていればもうすぐ4日目を迎える。ただじっと動かず1秒1秒過ぎていくのを待つ。

(水も飲みたくない・・・・・・)

 目から光も消え生きている感覚もない。香織はあの日から大分やつれていた。

「やる気が出ないけど少しは体を動かそうかな・・・・・・」

 こうなってから何十時間も経っているがこの姿勢ばかりしていると流石に疲れてきた。少し起き上がろうと力を入れて動かすと若い身体からポキポキと音が鳴る。生気が抜けていくのが分かり寿命が30年縮んだ気分になる。それでも何とか起き上がりベッドに座りそして背伸びをして大きく息を吐く。

「・・・・・・あれ?」

 香織はある事に気づいた。目の前にいるはずの受刑者の姿がないのだ。布団に潜り込んでる訳でもない。空き部屋になっている。不思議に思いベッドから立ち上がり鉄格子の間からまわりを檻の外を見回した。向かいだけじゃなくこの独房エリアにいるのは自分1人だけだ。

「どういう事・・・・・・?」

 まるで神隠のような出来事に香織はだんだんと不気味になってきた。それがすぐに不安に変わった。事情を知りたいがために看守を呼びたかったが恐くてその勇気は出なかった。さっきから感じ取っていたが漂う空気も変わっている。例えるならこの汚い場所が霊道と化したような。香織は不思議思いながらとりあえずベッドの方へ戻る。


「・・・・・・っ!」


 たった今何か音がした。水滴の音じゃない。足音のようだった。カツン・・・・・・カツン・・・・・・とゆっくり近づいてくる。1つだけ確かな事はこっちに向かってきている事。看守ではない気がする。気配が違う。香織は分からなかったが声を出したらいけない気がした。

「・・・・・・」

 この状況に関しては全く先が予想できない。一体誰がここを訪れたのか?音はだんだん大きくなり香織の体が震えた瞬間にその姿を現した。

正体は1人の男だった。年齢は30前半くらいの、どう見ても看守ではない。青いフリースシャツにに灰色のズボン。そして奇妙な骸骨の形状をした悪趣味な仮面。何とも表現し難い容姿だ。男は香織のいる独房の前で足を止め妖々しい紫の瞳で見下ろした。

 香織がキッと睨んだ瞬間、仮面の男が静かに口を開く。

「姫川香織、なんて哀れな少女だろうか」

 何故この男は香織の名を知っているのか?彼女は一瞬知人かと考えてしまったがやはりどう見ても全く知らない人間だった。

「お前の絶望はいわば一種の芸術だ。美しい・・・・・・私はお前が羨ましい。毒薬よりも贅沢な苦痛だ。今の私の感情を例えるなら堕天使の少女の嫉妬というところだろうか?」

「ケンカ売ってんの?よかったわね、あなたの目の前に檻があって」

 相手の挑発のような言葉に香織は怒りを露わにして言い返した。無実の罪で捕まったが今なら本当に人を殺せそうな程の殺意を抱く。

「更に私に対する殺意が加わった。負の感情は無限・・・・・・いや、それ以上か・・・・・・」

「・・・・・・」

 最早呆れて皮肉も言えなかった。ずいぶん芝居がかった口調をしていてそれに何か奇妙なオーラを感じ性格が掴めない。ただの変質者ではなさそうにも窺え瞳の色もカラーコンタクトレンズにも見えない。仮面もただの飾りじゃない気がした。

「骸骨の仮面・・・・・・嘘でしょ・・・・・・失礼だけど仮面のお兄さん。ひょっとしてあなた・・・・・・」

「お兄さん?・・・・・・顔に似合わず人に気を遣えるのだな。気に入ったぞ。そう、私は『ファントム』。今この国を騒がせているシリアルキラーだ」

 男は自分を見せびらかすように堂々と言い放った。香織は信じられない気持ちで一杯なった。本物の連続殺人犯なのか?だが不思議な事に嘘の発言には聞こえなかった。もしそれが本当なら彼は何しにここを訪れたのだろうか?まさか自分を殺しにと香織は感情を一変させる。

「心配するな、私はお前の命を奪いに来たんじゃない。助けに来たのだ」

「助けに来た?殺人鬼が私を?」

「とりあえず話をしよう。無論二人きりで」

「それならグッドタイミングね、どういう訳かここにいるのは私達だけよ」

 今度は香織が自分がやったように堂々と言った。

「お前の他の囚人達は違う場所に行ってもらった。私は人ごみは苦手なのでな」

「え?どうやって移動させたの?」

 やっぱり目の前にいる男を理解する事ができない。そもそも今、会話をしている相手が人間なのかも怪しく思いながら瞬きするとファントムは消えていた。

「・・・・・・あれ?」

「何をしている?会話する時ぐらい目を合わせたらどうだ?」

「え・・・・・・え!?」

 目の前から忽然と消えたと思いきやファントムはいつの間にか檻の中にいたのだ。香織の隣に座り真顔で見つめていた。

「さて、まずは何から話そう?その前にチョコはいかがかな?」


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