複雑・ファジー小説
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- ジャンヌ・ダルクの晩餐
- 日時: 2020/09/22 17:50
- 名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
ボンジュール!マルキ・ド・サドです。
自分のことはサド侯爵、またはサドちゃんとお呼びくださいwwww
こんな私ですがどうぞよろしくお願いします!後お見知りおきを。
私はこれから名前に恥じぬようなダークな小説を書こうと思います。
コメントやアドバイスは大いに感謝です。
悪口、荒らし、嫌み、不正な工作などは絶対にやめてください。
私は小説が不器用なので全く恐くないと思いますがこの文を見て不快さを感じた場合はすぐに戻るを(人を不快にさせるのが一番嫌いなので)
タイトルに『ジャンヌ・ダルク』とありますが物語の舞台は近未来の日本です。
【お知らせ】
小説カキコ大会2016年夏では銀賞を受賞させていただきました!
更に2018年夏の大会では銅賞を受賞!
これも皆様の温かいエールの賜物です!本当にありがとうございました!
・・・・・・お客様・・・・・・
銀竹様
風死様
藤尾F藤子様
ふわり様
- ジャンヌ・ダルクの晩餐 ( No.81 )
- 日時: 2016/08/17 12:58
- 名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: .uCwXdh9)
サドさん
こんばんは、銀竹です^^
遅くなってしまいましたが、「ジャンヌ・ダルクの晩餐」、更新分すべて拝読致しました。
かなり作りこまれた、秀逸な作品ですね。
正直、途中からアドバイスしなければならないということを忘れて、普通に楽しみながら読み進めていました(笑)
復讐という重いテーマを中心に紡がれていく、ダークで重厚な物語。
ジャンヌ・ダルクを彷彿とさせる香織の生き様、詩織の死に様。
あらゆる部分でサドさんのこだわりと、作品への愛を感じました。
私はあまり現実を舞台にした作品は読まないのですが、この作品がもつ世界観は本当に好きですね。
演出も、大変素晴らしいと思います。
特に、序盤のストーリー(>>1)に目を通してから、マルキ・ド・サドがエディスの仮面の絵を描くまでの流れ。
そしてファントムが登場する場面……本気でしびれました。
十分自信を持って良い作品かと思います。
さて、アドバイスを、というお約束でしたので、僭越ながら挙げさせて頂きます。
まず、作品のリアリティについて。
設定自体は素敵だと思うのですが、リアリティがないな……と思ってしまう箇所がいくつかありました。
日本は日本でも、数十年、数百年くらい先の話ならば、一種ファンタジーとして見ることもできたのかもしれませんが、2020年という大分身近な数字を出されてしまうと、やはり現実を意識せざるを得ません(^^;)
東京オリンピックを控えているのに、国の治安・経済が悪化するような事態が突然起こるだろうか。
たった二年でここまで急速に国が腐敗するだろうか。
色々と首をかしげる点が多かったです。
他にもいくつか不自然に思うこと、現実味がないと感じた描写をいくつか挙げさせて頂きます。
・いじめに遭っているにも拘わらず、香織を「剣道部の主将を務める学校のスター」と記すのは、些か違和感を感じます。優等生気質、というだけならともかく、いじめられっ子をスターとは一般的に呼ばないかと。また、香織がいじめっ子たちに手首を切り裂かれる描写がありましたが、普通県大会にも出場するような実力者にそんなことをしたら、周囲が黙ってませんよね。もしこれを、国民の心根が腐っているせいだと言うならば、今度は、そこまで腐敗した国で部活の大会なんて開催するだろうか……という疑問に繋がってくるので、どちらにせよおかしいかなと思います。
>>15:手首の傷だけならともかく、鏡で見て分かるほど暴行の跡があるのに、香織がいじめられていることに家族が全く気づいていないというのは、おかしいかと思います。また、あれだけ深々と手首を切りつけられたら、一週間じゃ痛みは引かないかと。
>>17:手首の傷の具合からして、翌日から部活復帰は無謀すぎます。
>>22:本当はこのことを父親にも話したかったのだがそうはいかない。
父が働かなければこの家庭では食べていけない。
例え家族が数人死んだとしても帰宅する訳にはいかないのだ。
→父が冷徹仕事人間でないなら、おかしいです。たった一日早退しただけで、クビになるような会社に勤めていたのだとしても、普通、妻が倒れたら帰ってくるでしょう。家族のために働いているのに、家族を数人犠牲にしたら元も子もありません。病院に行かないというのも、ちょっと不自然かと思います。母の容態にも寄りますが、いくら医療費が高くとも、普通の愛ある家族なら借金してでも救急車を呼びます。
>>56:岡山県なんてここから600キロ以上もあるのよ?高速道路を使っても8時間は掛かるわ。→岡山県に行ったこともなく、運転免許も持っていない子が、いきなりこんな具体的な数字を出してくるでしょうか……?突然言われた他県までの距離と移動時間なんて普通言えません。
>>59:博仁が珍しく間違えてしまったのか?→一人称表現である前提のお話ですが、香織は博仁と初対面なのに、どうして博仁が日頃から間違えの少ない(珍しい)人間だと分かっているのでしょう。
>>64:「了解!」「了解!」「了解しました!」「了解です!」→括弧を連続して使う場合は改行したほうがいいです。また、目上の方に了解、は使いません。
・ブラックジョークにて、男女共同部屋というのはどうなのでしょう。
次に、地の文について。
全体的に、一人称と三人称がごちゃまぜになっています。それが原因で、特に序盤、視点が変わるたびに「ん? 今誰の話?」と混乱することがありました。一人称か三人称か、統一したほうが良いです。
>>9:ずっと香織視点だったため、河川敷で相手を待っていたのも当然香織だと思っていたのですが、待っていたのは実は詩織で驚きました。香織が待っていたと思っていたのに、現れた待ち人が香織だったのでびっくり。視点を変える場合は、もう名前を明かしてしまうか、香織の特徴や詩織の特徴を描写して、今描写の中心となっていることが別人に変わったことを提示しないと混乱します。
説明文(地の文)について。
国が腐敗し正常に機能していないのは分かるのですが、それを理由に、物事を押し通してしまっているような感じが所々しました><
何故、どうしてこうなったのか、もっと説明が必要なのではないかなと思う部分がありましたので、挙げておきます。
>>4:看守って、刑務所の職員ですよね。私がシャラントン精神病院に関して無知なだけかもしれませんが、仮にも病院に、何故看守がいるのでしょうか。
>>4:マルキ・ド・サドは、ジャンヌの話をする二人が、何故チェス盤を取りに行くと分かったのでしょう。二人がチェスをしようとする描写、あるいはサドがそう予想した理由を書いた方が良いです。
>>12:舞踏会の仮面、という説明ではどんな仮面か分かりません。雰囲気は伝わりますが、舞踏会の仮面といっても色々ありますから、もっと具体的に、色などを使って説明(例:紫紺を基調とする蝶を模した仮面)すると分かりやすいです。他にも、「普通の普段服の格好」、「18世紀のヨーロッパ衣装のようだ」というような曖昧な表現が多用されていますが、普段着も色々ありますし、歴史に詳しくない読者は18世紀の衣装なんてぱっと浮かびません(;´Д`)容姿の描写をするならば、もっと具体的なほうがいいです。
>>37:映像で見るよりもリアリティーがある。→実際に目の前で見ているわけですから、リアルなのは当たり前です。リアリティーという表現は不適切かと思います。
>>68:朝のはずなのに静寂だけが聞こえていた。→静寂は聞こえません。
会話文や表現について。
会話文と地の文は違います。地の文では使われる表現、流れでも、会話文にすると違和感があったりリアリティがなくなったりすることもあるので、少し文章を変えてみると良いかもしれません。
>>5:感染症にかかったら大変だから・・・・・・
→間違え、ではないのですが……女子高生の口調を考えると、少し違和感があります(笑)
衛生的な日本の室内でのお話ですから、傷口からくる感染症といえば破傷風くらいですし、その前に心配すべきは化膿や出血多量では(;´・ω・)
>>10:父の仕事の都合で渡米するのに、帰ってくるのが2年後か10年後か分からない……というのは、あまりにも幅広すぎて違和感があります。父の仕事、どれだけ不安定な仕事なんだろうと思ってしまいました。
>>11:考えてみれば学校帰りの会話ばかりでどこかに遊びに行ったことなんてほとんどなかった。→こう書かれているのに、「何言ってるの!?前見に行ったらすごく恐くて香織ちゃん泣きながら途中で抜け出しちゃったよね?」と、前にも一緒に映画に行った描写をするのは微妙かなと思います。遊びに行ったことが皆無、とは確かに書かれていませんが、滅多に遊びに行ったことのない2人が思い出作りに……という意味を強めるなら、前に遊びに行った話は出さないほうが良いかと。
誤字・脱字について。
私が見つけた範囲ですが、一応お知らせしておきます。
>>1:事件の数分後に歩は現場に駆け付けた警官によって逮捕されてしまう。→歩ってどなたでしょう? 香織ちゃん?
>>4:「報復のジャンヌ・ダルク」か・・・・・・」→「『報復のジャンヌ・ダルク』か……」
>>33:夢の中で詩織と再開した。→再会した。
>>34:目の前にいる守も奥にいる裕子もまだ眠気がとれていないのか話しかけてては来なかった。→「て」が多い
>>38:(零課の奴・・・・・・!)→零花
>>43:一瞬達の悪い幻聴だと思ってしまった。→質(たち)
>>46:マスクはそこそこ似合って(いる)が私服との組み合わせがあまりにも合わないのでかっこよさが全然伝わってこない。
>>47:彼と話していると暗号の解読に挑んでいるような、そんな頭痛にかられる。(。)
>>47:ファントムは君の悪い笑みを浮かべ言った。→気味
>>49:そうと決まるとファントムは左手で仮面を掴み→文が切れてます
会話文の前にこうして地の文が切れている箇所が多々あります。故意かもしれませんが後の文につなげない限りは、不自然なので直した方が良いと思います。
>>54:ちなみに伊東博文もその年に暗殺された。→伊藤
>>56:それに乗せてもらえば隠れ家まで(い)行ける。
>>57:異常なくらいの静けさで不気味さえ覚える。
→不気味ささえ。更に言うなら、「異常なくらいの静けさに、不気味ささえ感じる」
>>60:……得体の知らない機械の手入れをする者や……。→得体の知れない
>>60:闘心が伝わってくる。→闘争心?
>>62:ノンフィクションでしか見たことない展開を体験している。→ノンフィクションは事実のことです。フィクションではないでしょうか。
>>65:香織はたった今指を刺された自分の寝床に足を運ぶ。→差された
>>68:はらただしい嫌がらせだ。→腹立たしい
>>71:もしやる気のない雨の日が再び訪れたら→やる気の出ない?
>>80:散らばっていた電子器具をいい加減に片付けいい加減なスペースを作った。→いい加減、が重なってます。もし故意に重ねたいのなら、「いい加減に片付け、いい加減にスペースを作った」
最後に、文章のルール、書き方について。
・「」の中に更に括弧を使う場合は、「」ではなく『』などを使う。
・会話文の終わりに句点は一般的に使いません。
が、使っている作家さんもいらっしゃいますし、私個人的には使ってもいいと思います。ただし、会話文の最後に句点を入れるなら、「……」の終わりにも句点を入れましょう。……の最後に句点はいらない、というルールはないかと思います。
・全体的に読点がなさすぎて、読みにくいです。入れたほうが良いと思います。
例:コレクションと呼べるだけあって決して多くはないが、少なくもない様々な道具が端っこに並べられていた。(>>80から抜粋)
・段落を変える場合は、文の最初に1マス空白を入れましょう。
・これは私の好みですが、「!」はあまり連続で使わないほうがいいと思います(・_・;)2つくらいまでがちょいど良いかと。多く使いすぎると、なんだか安っぽい叫びに見えます。あと、時々!や?が半角になっていたので、全角で統一したほうが見た目が良いです^^
・!や?を使ったら、そのあとに1マス空白を入れましょう。
・w、(笑)、♪、などの記号は文章中に用いないほうがいいです。
・「」を連続で使う場合は、改行しましょう。
・ルールではありませんが、親スレに目次を作ってくださると読みやすいですね。
以上です。
な、なんだか重箱の隅をつつくような指摘……そしてとてつもなく長くなってしまい、申し訳ありません(;´・ω・)
お気を悪くされましたら、土下座しますっ
偉そうにズケズケと申しましたが、あくまで私個人の意見・感想ですから、参考程度に聞き流して頂ければ幸いです。
私が言ったからといって、無理に修正する必要もありません。
今回はアドバイスを、ということだったのでこのように述べましたが、ぶっちゃけ私も「伝わればいいや、細かいことは気にしなーい!」派なので、そんなに細部まで気にしてません。
読み込みが甘かったり、ろくなアドバイスになっていないかもしれませんが、さらっとご覧頂いて、気になった部分だけ気にして頂ければ十分です。
冒頭でも申しましたが、本当に面白いです。
私なんかがアドバイスをするなんておこがましい……胸を張って執筆していって良い作品だと思います。
この作風、是非今後も書き続けてほしいですね。
長々と失礼いたしました。
これからも執筆頑張ってください(*´▽`*)陰ながら応援しております!
- Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐 ( No.82 )
- 日時: 2016/08/17 21:11
- 名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
なんて言ったらいいか・・・・・・
私なんかの作品にこんなに必死になってくれて・・・・・・
これにあったお礼の言葉が見つかりません。
これほどありがたい助言をもらえるなんて思っていませんでした。
すべての文章を読んだという知らせを受け未だに驚きを隠せません。
ちなみにこの小説は現実をジャンルにした作品ではありません。
フィクションとノンフィクションが混ざっています(笑)
確かにちょっとショックを受けるような言葉もありましたが全て正論なので意見を承諾します。
私も小説を楽しく書いているのですが決して得意ではないのです(笑)
でもすごく助かりました。
完璧にはできませんが悪いところはほとんど直しました。
それにしてもこんなに誤字があったなんて正直笑ってしまいましたww
全部修正したのですがわざわざ見つけてくださって感謝しています。
本当にありがとうございました。
これからはあなたの技術も活用させてもらいます。
今後ともこのマルキ・ド・サドをよろしくお願いします。
- Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐 ( No.87 )
- 日時: 2016/09/07 12:27
- 名前: 名無 (ID: jWLR8WQp)
2016年度 夏の小説大会
複雑・ファジー部門
銀賞
受賞おめでとうございます
- Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐 ( No.88 )
- 日時: 2016/09/07 17:38
- 名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
上記の知らせを受けた時は一瞬『無』になり直後に『嘘だろ!?マジ!?』と歓喜してしまいましたww
正直本当にびっくりしました。今でも信じられないくらいです。
去年の秋に『ちゃんと書けるかな〜』という勢いで書いた『ジャンヌ・ダルクの晩餐』がまさか銀賞を受賞するなんて夢にも思っていませんでした。
しかも序盤のストーリーだけでww
ここだけの話ですが私は大会には興味なかったんです。
誰も評価してくれないだろうなという感じでただ投稿しているだけでした。
私が銀賞を受賞できたのは自分の実力ではありません。
全て読者の皆様のお陰、それ以外はないのです。
私の作品を受け入れ指導しこのサイトの一員として認めてくれた。
その優しさの結果です。
ですからこの銀メダルは私の物ではなく読者の皆様、藤尾F藤子様、銀竹様の物です。
大勢の皆様に支えられ今まで以上に自信がつきました。
『ジャンヌ・ダルクの晩餐』はまだまだ続きます。
出来ればまた新しい小説を書く予定なのですがそっちの作品も見てくれたらとても幸いです(笑)(『プロスペル・ド・ラカーユ』の件につきましては本当に申し訳ありませんでした。)
感謝の気持ちで頭が上がりません。苦労して書いた甲斐がありました。
あまりにも嬉しくて幸せです。一生の思い出にします。
これからもこのマルキ・ド・サドをよろしくお願いします!
本当にありがとうございました!!
- Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐 ( No.90 )
- 日時: 2019/01/15 20:19
- 名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
2ヶ月後・・・・・・
「香織、それとメイフライはいるか?」
博仁が部屋に入って来た。賑やかな空間が一瞬で静まり返る。彼は2人の存在を確認すると一旦後ろを振り返り何かを確認し再び室内に向き直り
「2人共、黙って俺について来い」
「どうしたの?何かあったの?」
ただならぬ様子に愛利花が前に出る。
「お前はいい、2人だけに重要な用がある」
いつもより深刻な内容を抱えているかのような眼差しは消えかけていた香織の緊張感をかき立てる。
「・・・・・・分かりました」 「分かりました」
呼ばれた2人はベッドから降り靴を履き部屋から出た。
向かった場所は隠れ家の入り口だった。数台の車がそれぞれのガレージに並んでいた。夜になっても作業服を着たエンジニア達が点検をまめに行っている。2ヶ月前に香織をここに連れてきた黒いバンだけが何故か入り口の手前に配置されていた。
2人は不思議に思った。出撃命令も出されていないのにどうしてここに案内されたのか?久しぶりに外に出て夜のドライブを楽しむつもりか?と香織は思ったがやはりそれはないだろうと考え直す。
「お疲れ様です博仁さん、メンテナンスは既に終わりました」
エンジニアの1人が敬礼をしながら言った。"ご苦労"と簡単に礼を済ませ作業員達を下がらせた。念のためどこかに異常がないか自ら確認すると車のバックドアを開けた。いくつか荷物が入っていたため狭かったがちょうど2人分の座るスペースはあった。
「乗れ」
「ちょっと待って下さい!どこに連れていく気ですか!?」
疑問を持ったメイフライが博仁の前に出て言った。
「心配するな、夜風の心地いい散歩だ。すぐに戻ってくるし外出許可も司令官から貰ってある」
「・・・・・・」 「・・・・・・」
「それとも大勢の警備隊が巡回する昼にドライブするか?その方がスリルがあって楽しいかもな」
香織は何を思ったのか黙ったまま言われた通りバンに乗り込んだ。
「香織さん!?」
「行きましょうメイフライさん一緒のドライブしませんか?」
メイフライもしぶしぶとバックドアに潜り込んだ。エンジンがかかり出入り口のゲートが開く。博仁は無線のスイッチをオフにしてバックミラーを調整する。
「出発するぞ?」
アクセルを踏みバンは隠れ家から出る。月の光も届かない夜の闇に黒い車はカモフラージュのように溶け込んでいった。でこぼこな道を走る音もやがて聞こえなくなった。
相変わらずこの森は気味が悪い。心霊スポットにならないのが不思議なくらい。例え幽霊が出なくてもここでは一夜を過ごしたくないと誰もが言うだろう。頼れるのは正面のライトだけ、それだけが唯一の命綱だった。
「よかった・・・・・・何とかバレずに済んだな・・・・・・」
博仁が安心したように言った。
「え?何がですか?」
「あの頭の硬い司令官の事だ。こんな事に許可なんか出しやしないだろう。つまりこれは無断出撃、立派な違反行為だ」
「・・・・・・気は確かですか!?3人とも極刑に処されますよ!?」
香織も驚きを隠せなかった。彼女自身、本当にただのドライブだと思い込んでいた。どういうつもりか分からないままバンは森の中を進んでいく。
「俺も香織の復讐劇がなんか面白そうだと思ってな。劇の脇役を演じたくなったというわけさ」
博仁が運転に集中しながら理由を話し始めた。
「勘に狂いがなければ森川詩織の殺害事件、大きな裏がありそうだ。表では解決できない何かが・・・・・・香織、誰々に復讐するんだ?名前を言え」
香織は零花を含む標的の名前を上げた。
「『竹之内 零花』、『山田 伊織』、『藤堂 冬美』、『宮元 なぎさ』、『菊田 由利子』、『北見 楓』『荻野 佳奈芽』、『小山 桜』、『岡本 みゆき』、そして『黒幕の男』・・・・・・」
「立派なキルリストが作れそうなほどの人数だな。そいつらを殺す前に尋問すれば黒幕の正体が分かるんじゃないのか?」
香織はそうなる事を願った。黒幕を葬らない限り詩織の敵を討った事にはならないからだ。下っ端をいくら殺害してもトカゲのしっぽ、本体を斬らなきゃ意味はない。どんなに惨い手を使ってでも男の正体を吐かせるつもりでいた。
「竹之内 零花の居場所はもう分かってる。部下を使って密かに調べさせた。奴はこれからここから離れた別の山の麓にある道場に向かうはずだ」
「そんな事まで分かるんですか?」
博仁は"そうだ"と得意気に答えた。
「ブラックジョークの情報収集の技術は神がかりレベルだ。それがこの組織の最強の理由と自慢でもある」
「その道場までどれくらいの時間が掛かりますか?」
「ざっと40分くらいだ、埼玉は意外と広いからな。横にケースがあるだろ?2人分の装備が積んである、これも持ち出すのにはヒヤヒヤしたぜ」
獣道を抜ければコンクリートの山道に入り更にそこを下れば久しぶりの街に出る。緊張が始まった。これから殺人という復讐劇がいよいよ幕を開けるのだ。人を傷つける行為に対する罪悪感だけではなくかつて無抵抗な自分をいじめた相手に立ち向かえるのかという恐怖もあった。暗闇だけの外をガラス越しに眺める。
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