複雑・ファジー小説

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私は貴方たちを忘れない
日時: 2016/06/29 09:33
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

小鈴です。『貴方たちを忘れない』の続きを書こうと思います。
時代背景は幕末で登場人物たちも前回と同じ人たちが出てきますので読まれる方は前回からお願いします。注意としましてできるだけ史実にそい書いていきますが途中で捏造も入りますのでよろしくお願いします。
初心者ですので書き間違いもあると思いますが流してください。

主人公 楠 楓〈くすのき かえで〉十七歳少女
    立川 紫衣〈たちかわ しい〉十七歳少女
この二人を視点にして書いていきます。
登場人物 大久保 利通。桂 小五郎。西郷 隆盛。新選組。土方 歳三。

他にもいろいろ出す予定ですので、楽しみに待っていてください。  時代は1867年のころからです。

追加 大久保利通〈三十七歳〉桂小五郎〈三十四歳〉  

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.106 )
日時: 2017/01/06 10:45
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

函館政府側。
帰りの船の中。やはり無茶な作戦だった。「失敗した」だがこれしかなかったのだ。この先を考えれば、くっそ悪態をつき拳を握りしめる。
この戦いはわずか30分のことだった。まわりを見渡すと負傷兵が甲板に座り込んでいた。
「申し訳ありません。我々がふがいないばかりに作戦を遂行をすることができませんでした」
そう言うと下を向く皆も悔しいのだ。
「お前らはよくやってくれた」
土方は片膝をつくと仲間たちを励ます。とたんにうめきだす。

敵艦に追われた高尾は羅賀海岸に乗り上げ自沈してしまう。結果は残りの2軍艦での帰還となる。朝日がのぼるころになり戻ってきたのだ。それに気が付いた陽菜は慌てて出迎えた。
「おかえりなさい」
桟橋に立った土方に言う。
「ああ」
それだけ言う男に嫌な予感がする。ただけが人が運ばれていくのを見ている。
「失敗した」
はっとし横に立った。土方は朝日を見続けている。そっと横顔をうかがう。彼は強い目をしていた。
「まだ負けたわけじゃねぇ」
「はい」陽菜は頷いた。

4月9日新政府軍1500名が江差の北にある乙部に上陸。土方は二股口に向かう。
「陽菜。行ってくる」
五稜郭を出る時そう言うが陽菜は決意をした目で言う。
「やはり私も一緒に行ってはいけませんか」
はぁとため息をつかれ苦笑される。
「駄目だといってもついてくるんだろ」
ぱっと花が咲く「はい」と言う。

新選組の者たちはとある場所に待機を命じられていた。敵の兵糧を守っている陣地だ。物陰に隠れて合図を待っている。
「なぁ。土方さんまだかな」
うずうずしている。草むらから出たくてたまらない。
「待ってください。指示がまだです」
せっかちな彼を押しとどめている。

一方敵陣の中には楓がいた。おそらく敵ならばここを襲う。
「ここには兵糧がおおかた集められているのですか?」
そこを守る少年に問いかける。快く答えてくれる。
「あ、楠さん。そうです」
楓は真剣な目をして腕を組むと片目を閉じた。これは考える時の癖だ。
『だとしたら間違いなくここを狙う』難しい顔になり黙り込んだ楓に不思議そうな目を向ける。
「あの?」
声をかけられて彼に視線を流す。
「なんですか」
「いいえ。」慌てて首を振る。きょとんとした。とたんに普通の娘に戻ってしまう。
『この方は時々何を考えているのかわからない。子供のように無邪気に見える時もあれば先ほどのように自分たちの上官よりも優れた才を発揮する』
「何を考えていたのですか?」
この少年は礼儀正しい唯一の人だ。他は楓を軽視する。話など聞いてはくれない。
「古関さんは平気ですか?私と話をしていて」
とたんに彼は屈託なく笑う。
「ははは。平気ですよ。楠さん。僕は下っ端の人間ですから」
楓もつられてにこと笑う。ならよかったと。この顔に古関は見とれる。『なんでこんな方が戦場にいるんだろう』不思議でたまらない。楓はランプを手にしていたので手元とお互いの顔が見える。
「どうして」
「うん?」
「皆わからないのでしょう。楠さんのすごさが」
「仕方ないですよ。それは私が女だからいけないのです」
儚く切なそうに笑みを唇にのせた。
「兵糧の話ですが皆に伝えてもらえますか?・・・・」
がさりと音がした。ばっと立ち上がると早口で言う。
「古関さん皆に急いで伝えて警備の強化を」
それだけ言い暗闇に走り去っていく。古関はすぐさま指示に従う。

草をかき分け姿を現したのは頭上に翻る旗を見た。〈誠〉と書かれていた。「新選組」小さく呟く。

「いくぞー」
「はい」
皆が突撃をかけてきた。刀を握りしめている男に『土方さん』心の中で言うとすぐさま楓は声を張り上げた。
「夜襲だ。」
その声に兵士達が出てくる。辺りを素早く見渡した。古関を探すが見つからない。彼らに目的はコメや酒類だろう。連携された攻撃にあっけにとられている。新選組に腰を抜かしてしまっている。小刀をかまえるとい合いをした。目の前の敵を切り捨てる。人の気配にばっと振り返ると刀を向ける。
土方は次々と斬っていく小柄な少年に驚き刀を突き付けた。顔を見てやはりと眉を寄せる。
「なんでてめぇがここに?」
小さい声でささやかれた。眉間のしわを見ても楓は不敵に笑う。周りの騒ぎが嘘のように二人は静かに相対している。
「好きなように行動します」
「あいつもか?」
あいつとは紫衣のこと。にんとした肯定の意味であろう。
「ふぅ。まさかこんなとこにいるとはな」
刀を下す。
「あれぇ。いいんですか」
挑発しているかのような言い方をした。
「女は斬らねぇ」
「ふむ」納得したにかそうでないのかわからない返事をした。
「私もあなたにこれを向けるわけにいきませんしよかった」
小刀を下げる。顔を横に向けると声を低くさせると真剣な目を土方に戻す。
「今度はこっちの負けのようです」
「前回の宮古湾海戦では惨敗だった」
「さすがにそれは無理ですよ。よくたった1艦で突撃をしかけようとしましたね」
呆れた目を向けている楓をぎろりと睨む。




Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.107 )
日時: 2017/01/10 19:40
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

まるで見てきたように口にした。
「おい。」じろり睨み渋い顔を作る。気が付くと周りの騒ぎが静かになっている。どうやら片が付いたようだ。土方はここで分かれる。楓は微笑して、小さく手を振る。『おかしな女だぜ』たいした頭の持ち主と土方は認めている。こうなると見越してここまできたのだろう。もし『あいつがこちら側の人間だったら・・・』考えても仕方がねぇ。土方は仲間の元に走っていく。

4月10日台場山にて新政府軍着陣16か所に胸壁を構築する。
4月12日陸軍参謀黒田たち2800名が上陸。彼らは4か所から函館へ向け進軍を開始。
4月13日二股口では土方がなんとか700名を後退させることに成功していた。山の中土方は陣地をめぐり兵士たちをねぎらっていた。

いろいろと敵陣からかっぱらってきたのだ。土方は仲間の元に行くと声をかける。
「皆こっちに来てくれ土方さんより話がある」
島田が仲間を集める。仲間たちはすぐに集まってきた。
「お前たちは実によく戦ってくれているこれからも頼む。薩長の連中に徳川の中にも骨のある人間がいることを思い知らせてやれ」
皆が拳を突き上げて「「おおっ」」と声を上げる。
「ささやかだが酒を用意した。大した酒じゃねぇ。なにしろさっき敵から分捕ってきたもんだからな」
どっと笑いが起きた。おさまるまでまち続きを言う。
「好きなだけ飲めと言いたいところだがあんまりへべれけになってもらっては困る。一人一杯までとする」
とたんにわぁと歓声を上げた。
「器をもって並べ」
島田が声を張る。その姿を陽菜は離れて見守っていた。
相馬や野村もそこにいて優しく見守る。
「皆土方さんを慕っています」
「よかったです。あんなにも仲間に囲まれて」
暖かな目を土方たちに向けている。
「望月くんも嬉しそうですね」
土方は木の階段に腰をおろしている昔話をしている。時折楽しそうに笑い声も聞こえてくる。
「はい」と返事をしたらこちらに土方が話を終わらせ戻ってくる。ぺこんと頭を下げる。
「陽菜少しいいか?」
そう言われて意味が分からないのか横に首を傾ける。彼はすでに歩き始めている。皆に目で伝えられて慌てて追いかけていく。陣地から離れていくということは皆に言えないことがあるのだろう。ランプを掲げて歩く姿に迷いはない。すると見事な桜の木があった。薄暗闇の中幻想的な景色に二人は声を失い見上げている。『綺麗』言葉もなく陽菜は両手を胸の前に握りしめていた。『・・・』土方も同じく見とれていた。舞い落ちていく桜の花びらが一枚一枚それが綺麗だった。
「私土方さんは桜に似ていると思っていたんです」
「桜にか?・・嫌どちらかと言うとお前に似合うと思うんだが・・・」
いいのかなこんなにのんびりしていてちらっと横目で見たらふっと小さく笑われた。「え?」なんで笑うのか意味が分からない。目を丸くさせた。
「そう言えばここに来てからよく笑うようになりましたね」
「そうか」短くなった後ろの髪を土方はいじくりながらまた笑う。木の根元に腰を下ろした。陽菜も隣に座る。彼は空を見上げながらなんてなく言う。
「楓にあった」
空には雲が見えた。陽菜は横顔を見つめた。
「楓ちゃんに?」
「ああ、俺たちが兵糧をぶんどりに言った時にそこにいた。やっぱり面白れぇ女だ」
くすくす楽し気に言っている。
「あいつは俺たちの行動の先を読んで警備を強くしようとしていたんだ」
なんて嬉しそうに話をしているのか。少年のように生き生きいていた。
「女にしておくにはもったねぇくらいだ」
近くにいるのに遠い。陽菜は自然とうつむいていく。それに気が付かない男ではない。肩を抱き寄せる。すると彼の腕の中に包み込まれる。
「なぁにしょぼくれてんだよ」
はっとして面を上げるとからかうようにのぞき込まれた。
「あの?」
困ったように眉を下げてぷいとそらした。
「俺はお前のそばにいるんだぜ?」
それでも彼から視線をはずしたままでいた。腕の中で静かにしている。彼の言いたいこともわかるのだが納得できない。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.108 )
日時: 2017/01/13 20:33
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

「最後まで見届けるんじゃなかったのかよ」
と言われてすぐさま言い返す。
「もちろんあなたのそばをはなれません」
それだけは譲れないと拳を握りしめる。くっと喉の奥で楽し気に笑われた。
「どうして笑うのですか?」
ムッと頬を膨らませる。
「いいや。それでいい」
目を細めて頭を撫でられる。ちらと上目づかいに見ると土方はとても嬉しそうで何も言えなくなる。
「あいつらも同じなんだろうぜ」
ふいに声質が真面目なものになる。
「え?」
「楓も紫衣も最後まで見届けるつもりでいるんだろう」
ふいに切なくなり涙がにじむ。それがあふれてしまわないように空を見上げた。
「そろそろ戻るぞ」
土方が立ち上がり陽菜に片手を差し出す。迷いなく手を重ねる。土方はその手を放すのが惜しいと重ねたまま歩いていく。陣地に戻った時には手を放される。

兵士達は体を休めていた。どこからともなく鈴の音が響いた。いっせいに飛び起きる。陣地内は不安につつまれる。

新政府側。
「楠さん。すみません。せっかく忠告をしていただいたのに」
食料、酒など見事に奪われていた。古関はしょんぼりと肩を下げている。ははは。と乾いた笑いを楓は浮かべていた。
「まぁ仕方ありません。古関さんの責ではありませんのでそんなに謝らないでください」
がっくりと地面に膝をついている彼の肩をたたく。ものの見事に奪い取られていたのだ。笑うしかあるまい。

こちらは陣地。
次の作戦をねっていた。いかにしてここを突破すればいいのか。出来るだけ後ろにいて口を挟まないようにしている。軍医としてここにいるのだから。
「どうやってここを攻めればいいのか」
高官たちは悩む。
「鈴を使っては?」
紫衣はぼそりという。いっせいに視線が集まる。びくっとして近くにいた南方に隠れる。
「そのこころは?」
腕を組んだままどこか偉そうな南方が後ろにいる娘に問いかける。ちらと横目で見られる。次にはじろりと皆を睨む。「こっちをみるんじゃねぇ」と言う視線を受けて慌てて顔をそらす。
「あ、あの鈴を使えば少ない人数でも多くいるように見えるのではありませんか?」
「確かにだが、それをどうやって使う?」
「皆さんに鈴を多めにつけて山の中を歩きます。敵兵がどこにいるのかわかりませんが動揺をさそうことはできます」
「そうか。その手があったか」
がばっと立ち上がる。「ひっ」といいまた隠れてしまう。
「さっそくやってみよう」
流石はこの男だ。高官は新しいことをよしとする考えのもと話を聞く耳を持っている。素直さには感服させられる。女と見下すことをしない。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.109 )
日時: 2017/01/14 15:51
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

あちこちから鈴の音がして不安になっていく。陽菜は土方にすがりつく。視線を走らせている。片腕に陽菜を支えて立ち上がった。
「落ち着け。本当に包囲したなら音なんか出さねぇですんだろ。動揺した方が負けだ」
土方に言われて皆落ち着きを戻していく。「鬨の声をあげよ」兵士たちはいっせいに「えいえいおうー」と言った。それにひかれた敵兵も声を上げる。
「ほらな。あんまりいねぇだろ」
皆に笑顔が戻る。


「すみません。失敗しました」
報告を受けて拳を木に打ち付ける。せっかくの案も兵士たちが失態をおかせば水の泡になる。叱責を甘んじて受けるほかなかった。気の毒な兵士だった。

4月15日
市村鉄之助は仲間の中で年がまだ若い。土方は陽菜とともに彼の元に来ていた。
「鉄はいくつになった?」
「16です。」
「無理に飲む必要はねぇよ」
「いいえ。私だってこれくらい」
仲間についでもらった酒を目を閉じて一気に飲みこもうとしていた。
土方が器を奪い取ると市村の代わりに飲んでしまう。
「先生。なにを」
するのですかと言う言葉は陽菜により封じられてしまう。
「大丈夫です。実は土方さんも飲めない人です」
「おい」じろりと睨むも流してしまう。
「陽菜。なにばらしてんだよ」
「ここだけ秘密にしてくださいね」
戸惑い陽菜を見たらにこりと優しく笑いかけられた。
「まったく。なぁにやってんだよ」
「「すみません。」」二人の声が被る。お互いに顔を見合わせる。
「大事な話がある。ついてこい」
そう言われて市村たちは陣地を離れる。土方を先頭にしてランプで夜道を照らす。
「新選組は好きか?」
「もちろんです。ここの他に私のいるところはありませんでした。」
「私。私も新選組が好きです。ここは私のいる場所です」
必死に市村と陽菜は言葉をつむいでいく。不安を感じているのか。前のめりになっている。
「落ち着け。陽菜、鉄。」
二人をなだめて切なそうに目を細める。
「そうだな。そんなやつばかりだった。」
いつの間にか陣地を見渡せる場所に来ていた。そこからは皆が楽し気に騒いでいる姿が見える。木の陰に隠れ土方は黙って見つめている。市村と陽菜は土方の前にいる。彼は途端に思いを断ち切るように顔を二人に向ける。
「頼みを聞いてくれないか二人にだ」
はっとなり片膝をつける。
「はい。どんなことであろうと」
「お任せください」
陽菜も市村に続きそう言う。立ったまま土方は声を低めて
「つらい仕事になる」
それでも揺るがないで市村は言う。
「どのようなことでも覚悟はできております」
刀を握りしめたまましゃがみ込んで二人の肩に手をのせる。
「日野にいる。佐藤彦五郎という男にこいつを渡してくれ」
話ながら懐から写真を突き出した。
「ちょっと待ってください」
「だからつらい仕事だといっただろ。これを二人で持っていくんだ」
厳しい声で告げられた。
「土方さん。待ってください」
それは聞き捨てならないと抗議をした。陽菜はとてもではないがそんなこと受け入れられるはずなかった。首を激しく降る。
「約束したではありませんか?新選組の行く末を見届けろと私にしかできないことをしろと」
責めるように腕をつかむ。市村も同じように抗議をはじめる。
「それだけは嫌です。かんべんしてください。私だけ逃げるわけにいきません。」
「これは逃げるんじゃねぇ。仕事だといっただろ。俺たちが薩長相手にいかにして戦ったのか。多摩にいる人にも伝える必要があんだよ」
それでも嫌です。皆と共に戦わせてくださいといいきかない。
土方はかつての鬼と言われていた男に戻った。素早く抜刀すると真っすぐに鉄に刀を突き付けた。冷徹な声でこう言う。
「これは命令だ。てめぇも局中法度はしってんだろ。命令に背くものは斬る」
絶対零度の眼差しを鉄に向けて喉元に突き詰めたまま微動だにしない。これは脅しでなく本気の目であった。
「誰かが伝えなきゃならねぇんだよ。お前が伝えねぇで一体誰が伝えるっていうんだ」
手紙と一緒にもう一度写真を渡すと素直に受けとる。小さな声で「わかりました」と言う。陽菜は今だに泣きながらも嫌だと言い続ける。
「陽菜。これは命令だ」優しい声音で言い直すがひたすら首をふる。
「新選組のことなら市村さんだけでもいいではありませんか?」
「陽菜」強い声になる。
「どうしても背くのなら斬る」


Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.110 )
日時: 2017/01/17 08:52
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

引き締められる口元に冷徹な眼差しに陽菜は一度は引きそうになる。その気配に押される。強く手の平を握り締めると挑むように睨み返す。
「嫌です。・・・どうしても離れなければならないというのならあなたに斬られた方がましです」
言いながら陽菜は泣いていた。『望月さん』市村は知らずに彼女を見つめていた。土方も本気だが陽菜も本気だ。
「なんで、わかんねぇんだよ。俺はお前を死なせたくねぇんだ」
「あなたこそどうしてわかってくれないのですか?」
二人はお互いに譲れないと睨み合う。

もうすぐ、この戦は終わる。それもこちらが負けての終結になる。陽菜だけでも生きて欲しいそれだけを願った。
「戦で負けたものはどうなるのか知ってんのか?」
市村は土方を見た。
「斬首または捕虜にされるのでしょ」
「それだけじゃねぇ」
首を振られる。よくわからないと目を丸くした。
「敗者となったものは売られる可能性もある」
まさかそこまでするのか驚きを隠せない。ただ殺されるだけならましのほうだ。女である陽菜はどんな目にあわされるかわからない。楓と紫衣がいたならかばってもらえるがいるとは限らない。
「それでも私は最後までともにいたいです。」
お願いしますと必死に懇願してくるのだ。はぁとため息をつくと空を見上げる。『たくっ。かなわねぇなこいつには』思いを断ち切るっようにしてもう一度その目を見た。
「いいのか」
「私はそばにいたいです。」
やがて説得するのをあきらめる。
「わかった」
で仕方なく折れるのは土方の方だった。
「たくっ。泣くなよ」
「すみません」
二人を見てほっと肩の力をぬき市村は土方に頭を下げると強い目をさせる。
「日野へいきます」
「ああ。頼んだ」
「はい」
彼は走り出した。ここで分かれる。もう会えなくなると知りながらその背を見送る。


4月22日
再び攻撃が始まるが土方たちはこれを撃退させる。
4月23日
新政府軍は正攻法をあきらめて急な山をのぼり側面より小銃で撃ってきた夜の徹しての激しい撃ち合いとなる。
4月25日
新政府軍は撤退していく。二股口を迂回するための道を山の中に切り開いていく


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