複雑・ファジー小説

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私は貴方たちを忘れない
日時: 2016/06/29 09:33
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

小鈴です。『貴方たちを忘れない』の続きを書こうと思います。
時代背景は幕末で登場人物たちも前回と同じ人たちが出てきますので読まれる方は前回からお願いします。注意としましてできるだけ史実にそい書いていきますが途中で捏造も入りますのでよろしくお願いします。
初心者ですので書き間違いもあると思いますが流してください。

主人公 楠 楓〈くすのき かえで〉十七歳少女
    立川 紫衣〈たちかわ しい〉十七歳少女
この二人を視点にして書いていきます。
登場人物 大久保 利通。桂 小五郎。西郷 隆盛。新選組。土方 歳三。

他にもいろいろ出す予定ですので、楽しみに待っていてください。  時代は1867年のころからです。

追加 大久保利通〈三十七歳〉桂小五郎〈三十四歳〉  

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.36 )
日時: 2016/08/24 14:23
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

「ああ。味方を見捨てて敵前逃亡とは後世が我々をどれほど非難するでしょう」
「やかましい。後世など、どうでもよい。このようなくだらん戦に付き合いきれるか」
と言っていた。「徹底抗戦」を説いていたはずなのにわずかな側近たちを引き連れて密かに城を脱走した。大阪湾に停泊していた幕府の軍艦開陽丸に乗船し江戸に向かう。

旧幕府軍は必死の思いで大阪城まで走っていた。
「大阪城に行けば慶喜公がおられる」
誰もが信じて疑わないでいた。そこまでいけば巻き返せると考えていた。しかし「将軍は」とっくに江戸に逃げていた。午後10時ごろだった。
「総大将が逃げた」
「バカなそんなことが」
部下を見捨てて「敵前逃亡」した後だった。
「土方さん」
陽菜はただ寄り添い震える手を誰にも気が付かれないように包みこむ。
はっとした。すぐに指示を出す。
「長居は無用だ。今のうちに移動するぞ」
すぐにここを去ると声を張る。他の藩も同じように
「やっていられない」
「やめた」
「国にかえる」
と言いバラバラに国元に帰っていった。
榎本は慶喜に謁見をするため開陽丸を降りた。入れ違いに慶喜らは船に乗り副艦長に命じて8日に出航した。11日に江戸に帰る。置いて行かれた榎本は富山丸に大阪城から「書類」「武器」「弾薬」「金18万両」を積み込んだ。12日に大阪を出た。榎本は14日に品川沖に入港した。

1月7日には慶喜追討令が9日に長州軍に大阪城を接収された。10日に新選組軍艦富士山丸に乗り江戸へ。
旧幕府軍は完全に朝敵となった。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.37 )
日時: 2016/08/25 23:19
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

新選組側。
江戸に向かう軍艦の中。波の音が聞こえてくる。船室では怪我のために布団で横になっている人がいる。
「山崎さん。しっかりしてください。」
「望月君に頼みがある。」
息をみだしてかなり苦しそうに言葉を伝えてくる。かすれてよく聞こえない。そばにより耳を傾ける。この船には負傷した多くの兵が乗っていた。近藤、沖田もここにいた。陽菜は必死で看病を続けていた。
「なんですか?」
山崎の頼みを聞こうと明るく笑い励ましていた。
「皆を頼む。沖田・・さん。それと土方・・さんを・・。あの人はいつも・・一人で何もかも抱えてしまうから・・」
薄れゆく意識をつなげながらなんとか口にしていく。
「それは山崎さんにしかできないことです。早く良くなって土方さんを手伝って差し上げてください。」
陽菜は泣くのをこらえるために背中を向けてそう言う。
「いつまでも・・横になって・・楽をしてはいられない・・・か」
微かに笑ったのが背中ごしに伝わる。「そうです」振り返ると山崎は息をしていなかった。悲鳴を上げた。声を聴き皆が集まってきた。
陽菜は山崎の手を両手で握り泣き叫んでいた。
「陽菜」
土方が陽菜を呼ぶ。顔を上げた。瞳の中にうつしたとたん涙でぐしゃぐしゃとなりながら助けを求めてくる。慌てて抱き止めた。立ってなんていられない。力が抜けてしまう。力強く背中を抱きしめてくれた。陽菜はそれに甘えることしかできずに黙って土方は受け止め続ける。
土方は陽菜の温もりにすがるように抱きしめていた。少しでもこの痛みが癒えるように・・・。

山崎は水葬にすることになる。甲板に出て山崎を陽菜も見送る。どのくらいそうしていたのか体が冷たくなってくる。なのに土方は戻ろうとしない。拳が強く握りしめられたまま海を・・その先を見ていた。ただ後ろ姿だけ見ていた。
「土方さん。中に入りましょう。」
心配になり声をかけた。
「ああ。お前は先にいっていろ。後からいく」
こちらを向こうとしないその背中が心配だった。
「私もここにいます。」
ようやくこちらを見てくる。とたんきつくなってくる目つきに固まりそうになる。
「おい、聞いてなかったのか。俺は後から行くから先に戻れ」
「いやです。」
「なんだと」
低くなる声音にさらに怯えそうになったが引くわけにいかない。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.38 )
日時: 2016/08/26 22:54
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

「いくら土方さんでもこのままでは風邪を引いてしまいます」
負けずにそれだけを言う。そんな陽菜に驚いていた。
「江戸の女だな」
「え?」
「いいや。なんでもねぇよ。」
苦笑して髪を撫でられた。それが少し不満だった。
「土方さん」
だから軽く睨む。その顔を見下ろした土方はなぜか重たくてたまらなかった心が軽くなっていた。「ははっ」自分はいつの間にか笑っていた。まだ笑うことができた。
「ありがとうよ。陽菜。お前のおかげだ。楽になったよ。」
「よくわかりません」
首をひねり不思議そうにしている。
「でも子供扱いはしないでください。私は17歳になっているのですから」
それだけはと伝えてくると微笑む。
「江戸に着いたら戦のやり直しだな」
遠くを見据えた。

新政府側。
「ようやく。片がつきましたね」
「まだだ。奴らを倒すまでは終わらん。」
楓と大久保はお互いに見つめ合う。
「大久保さんは・・・徳川慶喜公をどうするつもりですか?」
「むろん。慶喜公の首をとるまで終わらせるつもりはない」
楓はその言葉を聞き眉をよせる。お茶を出す。大久保好みの激渋茶であった。その色具合を見て「よし」と一つ頷き口をつける。京での戦がようやく終わりを見せた。次は江戸へ向かい進んでいく。
「ですが、恭順を示している慶喜公を殺しては・・それこそ大義名分が成り立たなくなります」
顔をしかめて言うとぎろり睨みつけられた。この顔は知っている。楓の正論に腹を立てたのだ。
「西郷だけでなく皆もそのつもりだぞ。」
鼻を鳴らして唇の端を持ち上げるとにやりとした。今度は面白がっている。
「明日になったらお願いがあります。薩摩、長州、土佐藩の指揮官たちを集めてください。」
「いいだろう。話だけなら聞いてやろう」
偉そうに言われてむっとした。頬が膨らむ。
「その顔を見るとまだまだ子供だな。」
笑われた。皆がここで転がり寝ている状態だ。楓も小刀を抱き目を閉じた。この戦場になれていた。楓には策があった。それには紫衣あっての策であった。そのまま考えをまとめていく。勝負は明日の朝だ。



この話はとりあえず鳥羽伏見の戦いとその後の江戸城無血開城や会津の戦いと続いて書いていくつもりです。話は戦いがどんどんと進み新選組側の視点と新政府側の視点で書いていきます。
戦いに勝った側と負けた側の気持ちにできるだけ傾けていきたいと思います。それぞれの思いがあったと思うのでこのあたりはあくまでも作者の創作ですのでそのまま流してください。それでは読んでくださっている方ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.39 )
日時: 2016/08/28 16:13
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

朝。会議のために土佐の板垣に薩摩の伊地知に朝廷の岩倉たちが集まる。長引く内紛に過酷な処分は国益に反すると穏やかな処分にするべきという寛典論と厳しい処分を断行するべきという強硬論に分かれていた。
「慶喜公を切腹させるべきだ」
強くうったえてきたそれに賛成したのは大久保と西郷だった。
「謹慎させたくらいで許すのでは生ぬるい」
大久保が答えた。
「ではどうしても将軍の首を落とすというつもりですか?」
皆を見回して鋭く問う。
「皆も同じ意見ですか?」
責めるように眼つきを細めた。それに意見するのはすいっと片手を上げた木戸〈桂〉だった。
「私は楓の意見に賛成だよ」
真っすぐに彼はその意見を貫いていた。誰に言われたとしても曲げない意思がある。
「将軍を切腹させてはますます彼らをその気にさせてしまいます」
「江戸への攻撃は決定事項だ。今更中止になでけん。ほいならっでこんまま軍は進めていく。」
西郷の言葉に楓は口を横に引き結ぶ。
「それは戦をする口実にしか聞こえないよ」
強く責めるように睨む。
3月15日を総攻撃の日と決まった。大久保と西郷の二人は・・・。
「この男の死をもって幕末の動乱に終止符をうつ」
という考えであった。
「今更後には引けぬ」
強くうったえてきた。畳みかけるように威圧してきたので嫌そうに顔をしかめた。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.40 )
日時: 2016/08/29 17:33
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

「それは承知しています。恭順を示しているのに攻撃を仕掛けてはあとあと問題になりますよ」
西郷へ詰め寄った。「うむ」とうなり難しい顔をした。それでも旧幕府軍は戦う気満々だった。皆も同様に押し黙る。もう、あと一押しだ。
「江戸への攻撃はもう少しだけまってほしいと言っているのです」
楓はちらりと大久保を見たら面白そうな顔をしていた。『この古タヌキ・・・絶対楽しんでいる』拳を握りしめた。
「ここで一つ提案です。紫衣。」
楓はかやの外にいた友を呼ぶ。いきなり呼ばれて驚いてしまう。目の前で指揮官たちと一歩も引かぬ攻防戦をしていた。
「ねぇ。勝さんを知っているよね」
一度に皆の注目を集めた。視線がこちらに向く。
「え?どちらの勝さんですか?」
目を白黒させてこういうので精一杯だった。
「江戸にいる幕臣の確か・・・勝海舟という人」
曖昧な記憶を呼び起こすと言ったとたん。
「あの勝海舟か」
伊地知が大きい声で言った。あまりの剣幕に二人はびくっとした。
「落ち着いてくれ伊地知君」
座り直すのを待ってもう一度話をした。
「しかしあの方は幕臣だ」
木戸が表情を変えず答えた。
「知っています」
小さな声だった。それでも木戸は聞いてくれる。
「何が?」
優しく声で問いかけれれた。
「私昔。勝さんにあったことがあります」
とだけいい下を向いてしまう。
「知っているだとっ」
皆の視線が突き刺さり怯えた彼女は木戸の背後に隠れてしまう。

これでは話ができない。人見知りでなおかつ怖がりな性質はまだそこに存在する。
「それにしても木戸君はずいぶんとなつかれたものだな」
岩倉がからかいまじりに言った。彼らは二人が娘であると知っている。
「それはどいう意味ですか?岩倉卿」
表情を変えずにくるりと岩倉を見た。薄く笑ってはいたが実際には目が笑っていなかった。
「木戸君は相変わらず真面目だねぇ」
板垣は小さく笑う。
「すみません。面白みがなくて」
淡々と口にした。


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