複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

私は貴方たちを忘れない
日時: 2016/06/29 09:33
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

小鈴です。『貴方たちを忘れない』の続きを書こうと思います。
時代背景は幕末で登場人物たちも前回と同じ人たちが出てきますので読まれる方は前回からお願いします。注意としましてできるだけ史実にそい書いていきますが途中で捏造も入りますのでよろしくお願いします。
初心者ですので書き間違いもあると思いますが流してください。

主人公 楠 楓〈くすのき かえで〉十七歳少女
    立川 紫衣〈たちかわ しい〉十七歳少女
この二人を視点にして書いていきます。
登場人物 大久保 利通。桂 小五郎。西郷 隆盛。新選組。土方 歳三。

他にもいろいろ出す予定ですので、楽しみに待っていてください。  時代は1867年のころからです。

追加 大久保利通〈三十七歳〉桂小五郎〈三十四歳〉  

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.101 )
日時: 2016/12/25 18:22
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

「回天、蟠龍、高尾の3つの軍艦を使おうと思う」
自軍の艦船から敵の艦船に対し戦闘員を乗り移らせて攻撃をする海戦術である。制圧したのちに甲鉄を奪うという破天荒な作戦を立てた。
「それしかないか。それにしても君も無茶な計画を立てるね」
大鳥が甲賀に小さく笑いかけた。甲賀は不敵に笑い続きを言う。
「このくらいやらなくては勝てませんよ」
「そうだな」
「では、最後に斬り込み隊はどこの隊が行うかだが・・・」
「俺たち陸軍隊が引き受けよう」
「土方君。これは危険な賭けだ。失敗すれば多くの犠牲がでる」
榎本が言う。
「榎本さん。戦場に立てば危険なことは常について回ります。切り込みならば誰にも負けないと自負しています」
「わかった。ならばそれでいこう」
榎本はそう締めくくり会議を終わりにさせた。


土方は一人廊下を歩いていく。自分の部屋にたどり着いてから扉を開けらと陽菜が待っていた。
「土方さん。おかえりなさい。どうでした?」
「ああ」
そう言いながら上着を脱ぎ陽菜に手渡した。この作戦のための計画を練り直す。執務机の横にお茶を置いたのは陽菜であった。
「明日。俺は回天に乗ることが決まった」
はっと大きく目を開いた。次にはキリと口元を引き締めて「明日ですか?」と聞いた。
「ああ、いよいよだ」
「御武運を」
と言い頭を下げる。

その日の夜である。少年兵や多くの兵たちは準備のために意気揚々と桟橋に向かう。

3月20日函館湾から南下していき22日夜暴風雨にあいお互いの艦を見失うことになってしまう。

そのころ甲鉄艦の艦長は呑気に酒を飲んでいた。

24日には回転と高雄は再会できた。明日の朝夜明け前に両艦で宮古湾に侵入することを約束した。しかし高雄は機関の故障により作戦の参加ができなくなる。

別の場所にて薩摩の黒田は部屋の中にいた。楓と紫衣も同じところにいた。会津を離れてからの二人は薩摩兵士らと合流していた。甲鉄を入手できたことにより勝利を確信していた艦長や他の兵たちは浮かれて気を緩めていた。その気の緩みをよくないと二人は感じていた。だから総司令官としての感想を黒田に問いかけた。






Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.102 )
日時: 2016/12/26 17:15
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

「どう思いますか?黒田さん」
「うん?」
質問の意味がいまいちわからないと聞き返してきた。
「黒田さんとしての感想です」
がやがやとしている方に顔を向ける。
「随分たうんでいうごと思うがじゃっどんそれもしようがなか」
〈随分とたるんでいるように思うがしかしそれもしかたない〉
紫衣も随分とにぎやかな人たちと思う。
「それだけではありません。」
顔を元に戻して感情のこもらない声で続きを言う。
「海図をお持ちですか?」
と言われて黒田は真面目な顔になると海図を懐から取り出して畳の上にばさっと広げた。畳は4、5畳の広さだった。3人は肩を寄せ合うようにしてそれを見る。
「どう思いますか?」
「さきほどからそればかりだな」
黒田に苦笑されたが楓は海図に目を落としたまま動かさない。まるでそこに何かがあるように一点だけを見つめ続けている。他人には図り知れない頭脳の持ち主であった。
黒田も見てみるもわからない。紫衣にもただの海図にしか見えない。
「楓ちゃん。何が言いたいの?」
ついに聞いてみた。
「もしこの不利な状態の中敵ならばどうするかと思って」
それだけでは何を言いたいのかわからない。
「視点を変えて見てみろってこっか?」
黒田が楓に鋭い目を向ける。紫衣は首を横にさせてから楓に聞いた。
「楓ちゃん?今は勝っているのはこの湾に停泊中の甲鉄があるからよね。もしこれを奪われたらどうなるの?」
なんとなく言っただけだ。それを聞いた黒田は違った。
「そやいけん。もし奪われたらおいたちとて勝てうかわかんなくなう」
黒田はすぐさま切り返してきた。
「じゃっどん、そげなこっか可能か?」
〈しかし、そんなことが可能か?〉
と言い唸り始めてしまう。腕を組むと難しい顔をした。
「あります。以前、土佐の坂本さんからその話を聞きました。その話を思い出しました。敵艦を奪う作戦です」
土佐の坂本といえば有名な話だ。坂本竜馬と聞いて黒田は目を見開いた。坂本とも知り合いとは知らなかったのだ。随分と顔が広いことだ。
「そいはいけんな作戦だ?」
問いかけられた眼つきは刃のように鋭いものだった。遠い記憶を思い出そうとしている。
「坂本さんが?」
目をまん丸にして口もぽかーんとさせていた。
どんなやり方であったか。楓は思い出せずにいた。
「だめです。思い出せません」
降参ですと両手を上げた。肝心なことが抜けていたのだ。
「名前は思い出せんか?もしくはやり方を?」
だんだんと黒田は楓につめよっていく。
「あのですね。そんなにつめよってこないでください」
じりじりと迫ってくるので後退して距離をかせぎながら記憶をつかみ取った。
「あ、思い出した」
声をあげて慌てて説明をした。お盆と湯呑を手にして始める。
「おぼんを甲鉄と湯呑を他の艦とします」
お盆を畳の上に置き湯呑を他の艦と例える。湯呑もとい軍艦を少しずつ甲鉄につめよっていく。真剣そのものの目で黒田たちは見ている。甲鉄に突っ込んでいく姿が見えたであろう。模型ではなく実際にこれをやられた場合は被害はどのくらいであろう。
「これは」
息を飲んだ。知らなかったこんなやり方があるとは。
「こんな感じだと思います。海軍ならばもっと効率のいいやり方を知っているではありませんか」
「アボルタージュ」
ぼそりと口にしたのは紫衣だった。やはり知っていた。
「こんの名前か?」
こくり一つ顎を引く。
「私も知っています。あれは皆さんが集まっていた時に話をしていたのよね?」
最後は友人に確認をした。にこり嬉しそうにした。楓も思い出したらしい。

「大久保さんたちは呆れた目を向けていましたが」
回想を始めていく。昔を語るのは懐かしく切ないのだ。今は亡き大切な人たちのことだから。


Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.103 )
日時: 2016/12/27 14:21
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

何度心に誓いを立てたであろう。私たちはあの日々を忘れない。
ここから回想を始める。
坂本がにししと笑い酒を飲みながら口を開く。その間に楓が中岡と佐々木に酒を注ぐ。
「これが成功したら向かうところ敵なしぜよ」
機嫌よくおちょこに口をつける。坂本はだいぶ酒が回ってきたのか頬を染めている。二人の酒を注ぎながら坂本にくりと向ける。
「その名前は?」
よくぞ聞いてくれたといわんばかりに前のめりになると声を高々に言った。
「あぼるたーじゅじゃ。」
「あ、あぼるたーじゅ?」
聞きなれない言葉を必死にたどると手持ちの紙にメモをとる。
「楓さん。わしにも酒を注いでくれんか?」
からになったおちょこを差し出してくるも無視をした。手元に目を落としている。
「もう少しだけ待ってください」
「楓さん。竜馬はいいから僕にくれないか」
「ぬう。後から入ってきておいて佐々木抜け駆けはなしぜよ」
「何を言ってんだ。お前はさっき紫衣さんについでもらったばかりじゃないか」
ぐぬぬと二人はくだらない言い争いをし睨み合いをしていた。

「がはは。相変わらず、土佐はにぎやかな連中だな。」
高杉は楽し気に三味線をべべんとひく。
「高杉君は三味線をひくのか」
大久保は片目を大きく開く。

「桂さん。どうぞ」
そう言い紫衣は桂にと酒を注ぐ。
「ありがとう。紫衣」
まわりの空気をいっさい無視をした桂は優しく手を伸ばした。「え?」ふいに手を伸ばされて戸惑い声を上げた。頭に手をのせられる。次には撫でられていた。自然に桂の口元はゆるめられていた。

それを目撃した南方は驚愕した。『あの桂があんなに穏やかに笑うことが出来るようになるとは』寂しいがそろそろ頃合いだろう。

大久保は無言で坂本たちを見つめている。坂本は気が付かないのか楽し気に楓と話をしている。切なそうに見ているのは中岡であった。大久保は憤怒の形相になっている。『あれはもはや人の顔ではない』ただ興味があるのは海軍のことのみだ。
「話の続きをさせて、あぼるたーじゅとはすなわち何ですか?」
「うん?すなわちだまし討ちぜよ。第三国の旗を掲げて接近しそばにいくと自国の旗をすぐさま上げて接舷し戦闘員を乗り移らせて攻撃することぜよ」
「だまし討ち?そんなこと許されるのですか?」
「海の上ならみんなーが平等ぜよ。万国公法にも認められとる」
「万国公法なんてあるんですね。」
キラキラとした目で坂本を見上げている。坂本は慌てて目をそらした。情けなさすぎだ。そらした目が大久保をとらえた。まるで親の仇を見るような目でこちらを睨んできていたのだ。「ひっ」慌てて目をそらした。
「こ、ここ、今度。中岡を通じてその本をか、かしちゃる。今はた、たのむき大久保さんのところに戻ってくれんか」
半泣きになり楓に訴えた。よくわからないがこてんとしたらくるりと反転させた。ようやく大久保の状態に気が付いた。楓は平謝りをさせられていた。

回想終了。


Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.104 )
日時: 2016/12/29 17:45
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

楓は坂本がにししと笑い皆がそれぞれが楽し気に酒を飲んでいた。それを思い出し胸が痛くなった。本当に楽しかったのだ。中岡がいて坂本や高杉たちがいた。

説明を聞いた黒田がくわっと言った。
「アボルタージュ?それはいかん。こん作戦なら、甲鉄は奪われもす」
そう言い慌てて部屋をあとにした。それを見送った二人は静かに口を開く。
「これが吉と出るか凶と出るか。わからない。そう言えば陽菜ちゃんは土方さんとともにいるはずだよね」
切なそうに目を閉じる。
「そうだと思う。でもどちらかなんて選べないでしょう」
紫衣は黒田の出ていった方に目を向ける。

別の部屋にて酒を飲んでいる甲鉄の艦長は楽し気にさわいでいた。その場所に現れた男がいた。憤りを込めて襖をスパーンと開け放つ。
「随分と気を緩めとうな」
いきおいのまま叫ぶ。
「黒田さん。なんだいきなりやってきて」
そこにいたのは長州兵士だった。
「まぁ。落ち着いて酒でも飲んで」
別の男は黒田の肩に手を置きなだめようとしたがそれを跳ねのける。
「こげんに飲んでいざちゅう時に戦えんでは話にならん」
「なんだとっ。陸軍のくせに偉そうに」
ばっと立ち上がり兵士が黒田の襟をつかむ。火花を散らした。
「アボルタージュって知っとるか?」
と言われて答えられない。
「なんだ。それは」
皆に聞こえるように声を張り上げる。
「そんなことも知らんのか。誰ぞ。いうてみ。」
皆はとっさに視線を外した。その様子をみて何も知らないらしい。
「海軍の艦長なら知っとうと思うたがそげんこっも知らんのか?」
怒鳴り散らしてさらに言う。説明をするのもバカらしいとふんと鼻を鳴らす。
「楓さんや紫衣さんの方がよほどものを知っとる」
中島は聞きなれない名前にいぶかしむ。
「誰だ。その人は」
気が付いたらここに用はないと出ていっていた。残されたものたちは茫然としていた。言い返すこともできなかったのだ。
「お前たちの中に知っているものはいないのか」
「名前ぐらいならば聞いたことがあります。楓さんと紫衣さんとは女性でありながらも戦場を駆け回り作戦や医術で手を貸してくれているとその上大久保様、木戸様、後藤様、板垣様がとも親しくしていると聞いています」
「なんだとっ。女でか。」
女と聞いて差別の目をあからさまに向けるもの。もしかしたら自分たちよりも優れている可能性もあることに気が付かされるものがいた。簡単に言えば嫉妬である。

船の上にて
「黒田さんのいうこともあり得ますね。僕はその人たちにも会ってみたいですね。」
「ああ、楓さんと紫衣さんですか?私たちのような低い身分の者でもあってもらえるのですか?」
そんなことを話していたら海の向こうに船がこちらに向かってきている不思議に思い双眼鏡でのぞく。星の旗が上がっている。外国船か?


回天はじりじりと甲鉄に寄っていく。薄暗闇の中じりじり寄ってきている船に気がつかない。

その時双眼鏡をのぞいた見張りの一人が
「なんだあれは」
と言う。その船は真っすぐにこちらに突っ込んできていた。
「あれはいかん。敵艦だ。」

その日旧幕府軍は回天のみで攻撃に切り返えざるおえなくなった。宮古湾にしのびより25日午前4時接近していく。星条旗をかかげた油断を誘う次にその旗を下げ日の丸の旗を上げた。
「敵襲。敵襲」
あわてて空砲で味方に知らせた。そのままそれは止まることなくつっこんでくる。回天はたったの一艦で甲鉄の横腹に斜め後方から突入した。
がっつんと大きな音がした。回天は上に甲鉄が下になり3メートルの高低差があった。この高さに回天の突入部隊はためらいを見せる。その間に甲鉄の備え付きのガトリング砲が火を吹いた。


Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.105 )
日時: 2017/01/04 12:18
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

いきなり突っ込んでこられた甲鉄の兵士らは一時混乱をしたがすぐさま攻撃態勢に切り替えた。
「敵襲。敵襲」
そう叫び、すぐに甲板に備え付きのガトリング砲を回天に向けると「ハンドル」を握り回す。一分間に160発連続的に発射が可能になっている。最新式の武器である。それにより甲鉄に乗り移る前にほとんどのものが倒されていく。それでも土方たちは刀を握りしめ突撃をかけた。
「怯むなー今だ。いけー」
土方は激を飛ばし次々とガトリング砲が降り注ぐ中突っ込んでいく。土方を見た兵士らはそれに続く。しかし多勢に無勢であった。集中的に攻撃を浴びせられてついに撤退を余儀なくされた。 

回天の艦長である甲賀は腕や胸に攻撃されても大声で指揮を取り続けるが、額を撃ち抜かれて即死する。
「甲賀さんー」
部下の叫ぶ声がする。それを見た海軍奉行の荒井郁之助は「もはやこれまでだ」と作戦の中止を決める。
「撤退だ。」
軍艦を操作して切り離しをかける。
「撤退だ。皆戻れー」
あちこちで声をかけていく。その声により皆は戻ろうとしたがその間にも銃弾が降り注ぐ。
「早く。それにつかまれー」
回天より縄を投げられる。少しづつ離れていく船に土方は「くそったれ」と悪態をつき攻撃を止め刀を鞘に納めると縄をつかんで銃弾の雨の中走り抜けていく。そうして土方は回天へと舞い戻る。

楓と紫衣はとある場所から双眼鏡を使い軍艦の様子を視ていた。
「アボルタージュ」
紫衣がぼそり呟く。
「見事だね。流石は土方さんたちだ。」
「これ、案を出したのは誰だと思う?」
「海軍なら知っているんじゃない?」
「でも・・・。」
何が言いたいのか理解する。そう実は新政府軍の海軍は知らなかったと黒田は怒り心頭のままそう言われた。
「あはは。でも、向こうは必死だろうからね。そうなればどうなるかわからないよ。」
それは覚えのあることだった。長州も同じことがあったはずなのに余裕に酔い忘れてしまっている。
「長州は一度苦い思いをしているのに勝利は全てを忘れさせる」
皮肉をこめて楓は言った。


ここまでにします。
新しい年になりました。今年もよろしくお願いします。引き続き話を書いていきたいと思います。今書いているは1869年明治2年の話です。3月25日宮古湾海戦です。いよいよ戊辰戦争最後の戦いになっていきます。どこまで話を書いていけるかわかりませんが最後まで書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。作者小鈴より。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。