複雑・ファジー小説
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- 私は貴方たちを忘れない
- 日時: 2016/06/29 09:33
- 名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)
小鈴です。『貴方たちを忘れない』の続きを書こうと思います。
時代背景は幕末で登場人物たちも前回と同じ人たちが出てきますので読まれる方は前回からお願いします。注意としましてできるだけ史実にそい書いていきますが途中で捏造も入りますのでよろしくお願いします。
初心者ですので書き間違いもあると思いますが流してください。
主人公 楠 楓〈くすのき かえで〉十七歳少女
立川 紫衣〈たちかわ しい〉十七歳少女
この二人を視点にして書いていきます。
登場人物 大久保 利通。桂 小五郎。西郷 隆盛。新選組。土方 歳三。
他にもいろいろ出す予定ですので、楽しみに待っていてください。 時代は1867年のころからです。
追加 大久保利通〈三十七歳〉桂小五郎〈三十四歳〉
- Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.136 )
- 日時: 2017/03/15 19:04
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
少しの休みをはさんで再び歩き始めた。川の反対側に渡らなくてはいけない。見た目深さはない。
「土方さん。ここに注意書きが・・・」
地図のはじに書かれていることがあると言う。
「めんどくせぇ。先に行く」
土方は川へと端を踏み入れた。見事に罠にはまる。「どわっ」叫ぶ。ざぶんと水しぶきがあがる。そこだけ深くなっていたらしい。
「だからいいましたのに」
呆れた目をしている楓と眉を下げている陽菜。紫衣はランプを片手に困っていた。
「それを先に言えっー」
土方は水浸しになりながらも叫んだ。
「大丈夫ですか?」
「ああ」
土方は腰くらいになった。川の深さに乾いた笑いを浮かべている。陽菜たちを腕に抱えて反対側にわたっていく。ようやく水場から離れられたと思ったら新政府軍とばったりと出会う。しばらくお互いに見つめ合う。土方は陽菜の腕をつかむと全力で走り出した。楓は友の手首をつかみ走る。
「まてっ」
「まてっと言われて待つバカはいない」
何時かと同じセリフを吐きひたすら逃げていく。
「はぁはぁ。な、んか私たち・・・こんなんばっか」
つい愚痴をこぼした。走って走ってたどり着いたのは崖の上だった。思わず足を止める。後ろは新政府軍が迫ってきている。前を見てから後ろを振り返る。ちっと土方は舌打ちをした。
「どうしよう」
陽菜が土方に縋り付く。
「困ったなぁ」
全然困ったように見えない。紫衣は前と後ろを見比べている。
「さぁ。いよいよ逃げ場がなくなったなぁ」
「おとなしく投稿しろ」
「そのいいかただと私たち何かした見たい」
大変不本意であると楓が言う。しかしその間にも頭の中は計算していた。正面から土方が陽菜を抱きしめる。横にいる二人に視線を投げかける。無言で頷く。
「いくぞ。そのまましがみついていろ」
耳元にささやくと地面を蹴った。楓もほぼ同じに腕をつかみ走る。
「息を止めて」
崖から一気に飛び降りた。それと同じに水しぶきが二つあがった。
ばしゃ。どぼーん。
彼らは迷うことなく崖下に飛び降りていく。
- Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.137 )
- 日時: 2017/03/16 23:43
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
崖の上から男たちは下をのぞいた。
「これなら生きていないだろ」
「そうだな。」
「俺たちの役目は終わりだな」
と言って去っていく。
しばらくして四人は水面に顔を出した。ぶはっと息を吐き出した。しかし川の流れが速い。ぷかぷか浮いていたが異常事態を知る。「ちょっと」慌てて腕をつかんで沈みかけている彼女を引き上げたのは楓だった。
「紫衣。どうしたの?」
「私。泳げない」
「ええっ?」
楓は力を抜いて浮いていた。
「陽菜は泳げるか?」
土方が腕の中にいる女に問う。
「わかりません」
不安そうな答えが返る。出来るだけ体の力を抜いて浮いている。
「楓はそのまま行けそうか?」
「はい。」
「ならそのまま流れにそっていくぞ」
水に沈まないようにしながら泳いでいく。川の流れが緩やかになってきたところで水から出た。四人は見事に寝れネズミと化していた。ぼたぼたと頭から水をかぶっていたため雫がしたたり落ちていく。荷物から手拭を取り出して頭だけでも手早くふいていく。例えるなら野良犬のように汚れていた。
ぬれた着物は適当に乾かしてそれでも進んでいく。
新政府軍本陣前。
物陰に隠れて様子をうかがう。
「どうします。相原さん」
「俺に答えをきいてんのかよ」
土方と楓の二人は悪だくみを画策していた。
「紫衣ちゃん。嫌な予感がするの」
「私も同じ意見」
にやりとしている二人から後退した。
「ここまで来れば前進あるのみ」
「同感だ。精一杯。暴れるとすっか」
何て楽しそうに口にしているのか。もう、あきらめた。
「やる気になっているんだけど」
「もう、無理よね。私も手伝う」
小さな声で淡々と言う。
「わ、私もお役に立てるようにします」
陽菜は覚悟を決め強い目で拳を握った。
「陽菜は俺のそば離れるんじゃねぇ」
土方に言われてこくりとした。
「紫衣は私とね。」
「うん」
隣に立つ。ちらりと目で合図を送る。
「いくぞ」
刀の鞘は抜かずにそのまま土方と楓は構える。もう、人を斬る必要がなくなったのでそうした。勢いをつけて本陣に突っ込んでいく。
武器を構えた兵士たちが何人もいたがスペンサー銃や最新の銃の弱点を知り尽くしている彼らにかなわなかった。身を隠しひらりと舞うように横に飛んでいき兵士たちを蹴り倒していく。その動きについていけないのだ。銃での攻撃は接近戦は不利になる。気が付いたら目の前にいて横から体当たりをされていた。縦横無尽に動き回り一人一人を確実に地面に倒していく。たったの四人に圧倒されていた。刀を振り回しているのは土方と楓だ。容赦なんてない横に身軽に飛んでいき鞘で殴り倒す。紫衣は関節技を披露した。構えたと同時に動き腕をつかみひねりあげた。素早く首筋に手刀を決める。後ろの気配に回し蹴りをいれそのまま昏倒。ふう、息をつく。陽菜は戦いには向かないので土方に敵の位置を伝える。
本陣。
「敵襲。敵襲」
伝令係が走り回ってきていた。いきつく暇なく声を張る。
「なにごとか」
新政府軍の指揮官である黒田はここにいた。薩摩、長州、土佐などの藩の上官たちも集まってきていたのだ。降伏のための準備に追われたいた。油断はしていたわけではない。
「敵がいきなり襲ってきまして」
「なに?数は」
その言葉に上官たちは怯える。そう言う話は歴史上でもあったのだ。あの関ヶ原の合戦の時にもあった。僅か数人で突撃をかけてきたではないか。ここには幹部クラスがそろっている。それを全て殺せばあるいは旧幕府側にも勝利が得られる。
「はっきり言え」
大久保が一喝した。状況を把握しなくてはならないのだ。
「はい。四人です。ですが恐ろしく強い」
「四人だとっ?詳しく話せ」
立ち上がったまま大久保に迫られてひっと声を震わせる。
「は、はい」
声が裏返ってた。
「小柄の三人と一人は成人男性かと思われます。」
「うん?」気になり聞き返したのは佐々木である。
「どういう意味ですか?」
佐々木は丁寧に男に聞いた。
「三人はまだ若く子供のように見えたもので。あと示現流も使っていました」
それを聞いたものはばっと大久保を見た。作戦会議のために集まる男たちは思い当たることがある。「まさか」全員が心で思う。楓か。と叫んだ。かろうじて声にはしなかった。
- Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.138 )
- 日時: 2017/03/19 18:07
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
大久保はかなり思い当たる事があり無言で己の額を指でとんとんとしていた。
「何かいけないこと言ってしまいましたか」
大久保たちの様子に伝令役はうろたえる。
「いいや。君は悪くありませんよ」
佐々木はそう言うが視線を外していた。ここに来るまでの噂がかなりあった。女とばれずにいたことがすごいのかそれとも男ですら従えてしまう彼女たちがすごいのだろうか。どちらであろう。そんなことを考えていた。
「どんな四人組だ」
別人であることを期待しているように思える。
「くわしく教えてくれないか」
木戸さんもそう言う。
「一人は成人男性で鬼のように強いです。示現流を使っているのは小柄な少年でもう一人は素手で当身をくらわせ倒しています。ただ一人だけ小刀を使っていますが戦うことになれていないようで男のそばにいます」
報告をいっきにして頭を下げた。
ここから西郷たちが会話をしていますが薩摩弁を話しています。作者の都合により通常の言葉使いにさせていただきます。
「一ついいですか?嫌な予感がするのですが」
黒田がぼそりと言うも西郷ですら視線をはずす。
拳が震えている。二人の男は怒りを押さえつけていた。
「あのバカ者たちを今すぐ捕らえよっっ」
キレた大久保は怒鳴り散らした。災難だったは彼の部下である。
その頃。
「だいぶ片付きましたね」
「こいつら口ほどでもねぇな」
はっはっはと高笑いを浮かべていた。地面に転がるのは新政府軍の兵士だけだった。打ち身だけでほとんど無傷で倒していた。四人が強すぎたのである。奥の方から部下を連れた男が現れる。
「そのくらいにしてやってくれないか」
「あんたがここの隊長さんかい?」
不敵に笑いこちらを振り返った頬には泥がついていた。何て楽し気にしているのか。薄汚れた者たちを見てもわからなかった。楓は片手を上げた。
黒田はにこりと笑う。片手をおもむろに振る。次には四人はこうそくされていた。「捕らえよ」片手で合図をした。あっけなく捕れられていた。二人がかりで楓の両腕をつかんでいた。男二人に地面に押さえつけられている。
「はなせー」
文句をたれて頭を振る。
「やはり楓さんか」
自然とため息をつく。ということはちらりとなりを見た。間違いない。
「その髪。どうしたんだ」
膝をついていまま面を伏せていたかわからなかった。顔を上げた時さらりと短くなった髪が流れた。
「これは木の葉か。それと土もついている。」
からまりまくっていた楓の髪の毛を手早くととのえる。
「黒田様。今は何も答えようがありません」
小さく答える。紫衣を見ても絶句した。
「覚悟はしております」
彼女もそう言う。
- Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.139 )
- 日時: 2017/03/21 17:55
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
佐々木もそこにいた。あまりにも汚い姿に何も言えない。
「・・・」
目をむいたのは何故かバッサリと短く切られている髪の毛を目にしたからだ。そこから視線を無理やりそらしたらどこか見たことある人物に目が行く。
「あれは」
とたんきりきりと目を吊り上げていく。
視線を感じて土方は佐々木を下からじろと睨む。
二人は無言でばちばちと火花を散らす。
『土方さん?』居心地が悪い感じをし楓たちに助けを求める。うるんだ目で楓たちを見ている。
その目を見て楓が動く。
「お二人共もやめてください。陽菜ちゃんが怯えています」
いさめたはずなのになんで睨まれなくちゃいけないの?土方は眉間に皺をよせすごみ佐々木はくわっと睨む。
「怒っている」と紫衣は判断した。
「まったく説明してくれるかな」
声まで低くなる。しかし楓は恐れない。真っすぐ見返すことが出来るただ一人の人だ。
「尋問したければどうぞ」
それだけをいってのけた。しーんとなる。
忘れてはいけない。ここにいるのは何も知らない兵士もいるのだ。普通にとうただけでは答えない。答えられないということだ。
「一つ聞いていいかな。その髪どうしたの」
「自分で切りました」
聞いたとたんめまいをおこした。
「大丈夫ですか」
拘束されながらも楓は落ち着いていた。
ごっほんと咳払いがした。
「五稜郭にいきましょう。話はそれからです」
参謀としての言葉で言う。
ようやく拘束がとかれた。陽菜は土方の背に隠れる。刀を全て奪われていた。
「この後は降伏のために五稜郭にいきます」
淡々と説明を受けていく。四人は歩いていく。皆に囲まれて。
「丁寧にあつかえ尋問がまだすんではいない」
それとなく兵士たちをおさえる。意地の悪い奴は捕虜を適当にあつかう。蹴りつけたり転ばしたりするのだ。
「私たちどうなるのですか」
「大丈夫」
と言い陽菜を抱きしめる。
五稜郭にたどり着いた時。入り口に立つ男たちを見て後悔した。
「なんですか。あれ」
「恐ろしすぎる」
思わず紫衣もこぼした。
- Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.140 )
- 日時: 2017/03/22 23:07
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
五稜郭についた時。
門の外に立っていた男二人見た。仁王立ちしている。
「なんです。あれ」
地獄の門番に見えた。正しくは幻が見えたのだ。大久保と木戸であった。
「捕虜を捕らえたときいた」
「ああ」
黒田は引きながらも四人を差し出す。木戸は般若の顔をし大久保は鬼の形相をしている。
「そこの二人は牢にほうりこんでおけ」
大久保は憤怒の顔で命じてきた。
「その前に薄汚れたなりをどうにかしろ」
「きたないよね」
二人にはっきりと罵られてさすがにへこんだ。逃げてきたのにまた戻されるとはむなしくなる。
そののち。大久保は楓を強制的に連れていく。
「ちょっ。いたい。手をはなしてください」
抗議をしたのに怒り狂っている男には聞こえていない。後ろの襟をつかむと歩いていく。やばいと本能が告げる。転がったらそのまま引きずられかねない。器用なことに後ろ歩きで突いていく。
異様な光景をみせていた。
木戸は左の手首をしっかりとつかみそのまま歩き出した。
「木戸さん。痛い」
力がかなり強い。指がくいこみ痛みが走る。逃がさないと言っているようだ。
「とりあえずその汚れをどうにかしてくれないか」
とだけ言われた。「かなり、怒っている」ぎりぎり握りしめてくる指に何も言えなくなる。大人しく従うべきと知る。恐らく風呂場に行くのだろう。
土方と陽菜はあっけにとられていた。兵士の男がちらと視線を向ける。
「とりあえずお前たちはその汚れをどうにかしろ」
案内をするため先に歩いていく。
「え、あの」
どうしようと土方を見てくる。汚すぎるのか短く切られた髪のせいなのか。女とばれていない。助けを求めて見てくる。
「どうした。はやくしろ」
いかにも面倒だとその顔は言う。ふうとため息をつくと耳元にささやく。
「いくしかねぇだろ」
「はい」
大きな目が戸惑い泳いでいた。声をかけてきた兵士が早くと催促してくる。慌ててついていく。しばらく歩いていきよく知っている風呂場にたどり着く。恐らく仲間たちは別のところに集められているはずだ。男は監視のため入り口にいる。脱衣所に入り情けない声を出す。
「相原さ〜ん」
横を見ると今にも泣きだしそうな陽菜がいる。不覚にも吹き出しそうになる。ぷっ。片手で口をふさぐ。
「笑わないでください」
むうっと頬が膨らむ。忙しい女だ。気を取り直して身をかがめて告げる。
「陽菜。覚悟を決めろ」
「そんな〜」
「幸い気が付いていねぇようだ」
「ですが・・・」
真っ赤になり自分の体を抱きしめて震えていた。小娘には刺激が強すぎであろう。男である土方は平気でも女である陽菜には無理だ。
「俺が先に入るから後から来い」
外にいる監視が怪しんで乗り込んでくる可能性もあるのだ。そうなってしまえば女だとばれる。さっさと着ている着物を脱いでいくと中に入っていく。背中を向け見ないようにしていた。こうなれば覚悟を決め陽菜も着物を脱いでいく。手拭で体を隠して中に足を踏み出す。がらっ。扉を開ける。背を向けてくれていた。ほっと肩の力を抜いて手早く体と髪を洗う。
「・・・・」
「・・・・」
お互いに無言でいたが陽菜が声をかけた。
「あの」
「おわったか」
「はい」
場所を譲ってくれた。はじによってくれた。ただ水の音だけがした。ばしゃりと。跳ねる音に体がびくっとした。お互いに緊張をしているのがよくわかる。急いで湯から上がり着替えを済ませていく。
その後二人は部屋に閉じ込められる。
「ここは」
「どうやら個室になっているらしい」
全てに鍵が付けられて私物は何もない。ベッドしかない。
「陽菜。疲れていねぇか」
ずっと動いていたのだ。先に休ませることにした。
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