複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 私は貴方たちを忘れない
- 日時: 2016/06/29 09:33
- 名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)
小鈴です。『貴方たちを忘れない』の続きを書こうと思います。
時代背景は幕末で登場人物たちも前回と同じ人たちが出てきますので読まれる方は前回からお願いします。注意としましてできるだけ史実にそい書いていきますが途中で捏造も入りますのでよろしくお願いします。
初心者ですので書き間違いもあると思いますが流してください。
主人公 楠 楓〈くすのき かえで〉十七歳少女
立川 紫衣〈たちかわ しい〉十七歳少女
この二人を視点にして書いていきます。
登場人物 大久保 利通。桂 小五郎。西郷 隆盛。新選組。土方 歳三。
他にもいろいろ出す予定ですので、楽しみに待っていてください。 時代は1867年のころからです。
追加 大久保利通〈三十七歳〉桂小五郎〈三十四歳〉
- Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.21 )
- 日時: 2016/07/28 17:21
- 名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)
言葉を選びながらも説明していく。
「夜は共に寝なくなっただろう。」
こくりと素直に頷く。
「意味はわかるか?」
問われてフルフル首を振るだけ。
「どうして?」
大久保に尋ねた。
「お前が何もわかっていないからだ」
これの意味はと素早く頭を回転させる。意味があるはず。真剣に話をしていたがやがて面倒になってきた。ため息をつく。
「大久保さん」
男の顔に変わる。その変化は楓とて理解できる。流石にそこまで鈍くはない。ただ男を心から信じていた。酷いことはしないと。いきなり肩を押されて畳の上に簡単に転がる。楓は大きく目を開き男を見つめた。焦点を彼に合わせると言葉を紡ぐ。
「何をするの?」
冷静になれたのはきっと意味があると思ったから。言葉もなく襟元を肌蹴させ肩に唇で触れた。
「どうする?」
そのままで問われる。冷静すぎる声に楓はついていけない。また手を動かしていく。わけがわからない。一度もこんなふうに触れたことがない。「いや」声が自然ともれ気がつくと泣いていた。
「嫌だ。やめて。怖い」
ふえと我を失い泣き叫ぶ。次には元に着物を正されて抱き起されていた。あやすように背中をとんとん叩かれる。
「これでわかったか?いかに信用におけるものとて男など簡単に獣になる」
泣きながらも大久保にすがりつき訴える。
「それでもいい。そばにいたい。」
その声にまたため息をつく。
「ならば・・・今夜からこの大久保の小姓となり伝令役を命じる」
「はい」
結局こうなるのだとあきらめてしまう。戦が始まる前の日のことだった。
- Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.22 )
- 日時: 2016/07/29 12:06
- 名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)
1月2日。
旧幕府軍が京に向け進軍を開始した。
伏見奉行所にて新選組が屯所に移動した。
この日の夜。
会津藩士らが伏見口にて集結した。鳥羽街道を進軍していた旧幕府軍〈別動隊〉は淀城にて本陣をおいた。
夜。朝廷側も旧幕府軍の京への進軍は知っていた。西郷と大久保らは長文の意見書を提出した。
1月3日。
朝。最右翼に土佐、その左翼に長州が真正面に本隊本願時太子堂がある。その左に御香宮神社をはさみ薩摩が布陣した。その道一つ挟んで新選組がいる伏見奉行がある。
薩摩が有利な地を求めて南下し鴨川にかかる小板橋を渡り東側に陣をおく。
正午。岩倉ら三職以下百官による緊急会議により「徳川家を敵とし討伐すべし」と朝議が決定した。
新政府軍は旧幕軍を止めるように鳥羽街道を南下し旧幕府軍が鳥羽街道を北上した。二つの軍が一つの街道を歩いていたのだ。出会わないわけがない。
午後4時。別動隊の滝川は赤池で薩摩軍に通行の許可を求める。
「朝廷の許可なくば通せない」
答えた。ようするに滝川が「通せ」と偉そうに言ったが「通さない」と答えたのだ。両軍はしばらく睨みあう。戦闘のきっかけは些細なことであった。
嵐の前の静けさであった。4時頃。薩摩本陣。
御香宮神社あたりの山の中。
「寝られる時に寝ておけ」
大久保は布陣図を睨みつけながら楓に指示を出す。兵士らの前だからと「上の名」で呼ばれていた。
「西郷どう思う」
西郷たちは本気で話をしている。
- Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.23 )
- 日時: 2016/07/29 13:52
- 名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)
「楓さあ。おいたちのこたあ、気にせじくいやんせ」
西郷をふくめた指揮官らはここに集まり作戦を練っているが一兵士たちは体を休めていた。いつ戦闘になるかわからない。
楓は気になり上から様子を見ていた。ここからだと軍の様子がわかるのだ。妙に静かだった。
長州本陣。
「君は先に休んでいなさい」
桂に言われて、不満そうに見上げた。
「いつ戦闘が始まるかわからない。」
そっけなく言い捨てられた。忙しいのはわかる。
「数ではこちらがが不利です。」
と言う声が聞こえてくるがあえて口をはさまない。
新選組本陣。
「食べられる時に食べておけ」
土方に言われた彼らは陽菜が握り飯を配っていく。
「どうぞ。皆さんも」
一兵士らに配ってから幹部たちにも配っていた。
「望月。てめえは食ったのかよ」
土方に言われ、とたん目を泳がすもはっきり答える。
「はい。私は食べました。」
「なら、後で食う。」
と握り飯をくるみ懐にしまう。洗い物を腕に抱え、陽菜は空を見上げた。とたん腹が鳴る。思わず片手でそこをおさえる。
「やっぱりか。」
腕を組み仁王立ちした土方がそこにいた。それだけで十分迫力があった。
「だって私は何もできないのです。戦闘になった時足を引っ張らないようにするしかできなんです。」
「いざという時腹が減って動けねぇんじゃ、意味ねぇだろう」
懐から取り出した握り飯を「ん」と陽菜へ突き出してきた。慌てて、
「駄目です。指揮を取る。土方さんこそ食べなくては」
断ってきたので無言で睨む。「怖い」でも引くわけにいかない。
「頑固もんだな。」
あきらめたように苦笑して半分に割って自分の口にほおりこんでしまう。次に陽菜の口に押し付ける。じろりと睨み脅してくるのだ。ぐいぐいとかなり乱暴だった。「ほらっ」と言われて眉をへにゃりと下げて口を開ける。指が唇に触れる。どきりとしたが男は真剣な目であった。
「ありがとうございます。」
言うしかなかった。不器用な人だ。
午後5時。
しびれを切らせたのは旧幕府軍だった。らちがあかないと判断し、強行突破をしようとした。
「しめた。これで戦の大義名分が立つ」
ほくそ笑んだ。すでに準備をしていた薩摩藩兵たちは指揮官の指示に従いミニエー銃をかまえていた。
「かまえっっ」
「狙えっっ」
「放てっっ」
旗を下したとたんにいっせいに発砲した。西郷の狙い通りとなった。
鳥羽街道にて先頭にいた見回り組らは白兵戦で戦うことになる。
「ひるむなっっ」
「かかれっっ」
こちらも合図を送る。しかし次々と倒れていく。
薩摩本陣。
大砲や銃撃の音に楓は飛び起きた。
「これはっ」
流石に息を飲むしかない。同じ国のもの同士の殺し合いに体がすくむ。両軍が激しくぶつかり合う姿がよく見えた。
長州本陣。
紫衣は体を休めていた。その時大砲の音と銃撃が聞こえてきた。慌てて体を起こす。
「はじまった」
覚悟はしていた。何度も見てきた。でも本当はいつも怖かった。気を引き締めなくては頬を叩いて動き始めた。
新選組本陣。
「土方さん」
原田が槍を片手に駆けつける。
「はじまったか」
土方は空を睨みつけると指示を出す。庭に隊士たちを集め反撃にかかる。あちこちに散っていく隊士たちに陽菜は一人落ち着かない。
大砲の音に耳をふさぐ。
「どうした?」
心配するよりからかいがふくんだ目で問いかけてくる。にやりと土方はした。
「望月。なんだ。今更後悔してもおせぇんだよ」
むう。とした負けずに震える体に力をこめ土方を挑むように見上げる。
「後悔なんてしません」
が再び大きな音がした。びくっとした。仕方なさそうに苦笑して誰もいないのを確認してから引き寄せる。
「大丈夫だ」
そう言われた。不思議とそれだけで不安が消える。頬を土方の胸元に押し付け目を閉じた。
伏見の方でも新選組も白兵戦で突撃をかけていたが命中率の高い銃撃にあい敗戦をしていく。山の方から休みなく打ち込まれていくのでどうにもできずにいた。しかし彼らとてやみくもに戦っていたわけではない。
- Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.24 )
- 日時: 2016/08/01 16:39
- 名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)
永倉は御香宮に斬り込み隊として選ばれた。十名ほどで決死隊として高さのある奉行所の塀を乗り越えて薩摩の本陣まで斬りこんで行った。
「後ろは俺たち十番隊がおさえるから安心して暴れてこい」
永倉は前にいる敵兵と斬り結んでいたがその声に後ろを見て、ふっと笑う。
斎藤も別の場所で「ひるむな。続けっ」鋭く指示を出す。
斎藤は雨のように降り続ける大砲を止めるために敵兵と戦う。
薩摩本陣。
「大変です。こちらに新選組が来ます」
「なんだとっ」
この知らせにざわついたが、すぐに体制を整えると新選組に向けて銃撃を浴びせた。
楓はその知らせに大久保を見た。
「あわてるな。すぐに体制を整えろ」
すぐにあらたに指示を飛ばした。うろたえてしまうこともなく冷静だった。
新選組。
永倉らは激しい攻撃にあい、これ以上突撃ができなくなる。あえなく撤退をした。奉行所の土塀を超えて戻ろうとしたが武装が重くて上がれなかった。
「これにつかまれ」
銃を下ろしてきたのでそれにつかまると軽々と引き上げた。
「すごい」
と島田の腕力に口を開けた。
皆が戻って来たのに永倉たちが戻らないので心配していた。
「永倉さんたちが戻ってきていません」
「新八は先陣をいっていた。」
皆が沈んだ顔になる。
「そんな」
陽菜が息を飲んだ。土方はただ部屋の中で目を閉じた。
「よっ。今戻った」
にっと笑い、永倉が戻ってきた。
「あいつら容赦なく打ってきやがる。」
永倉や原田たちは悔しそうに口にしていた。
「土方さん。どうすんだ?」
「このままじゃ。無駄に死人が増えるだけだ」
斎藤は静かに座って話を聞いている。高台からの攻撃は狙いたがわずに打ってきた。土方は拳を握りしめながら決意した。
「撤退だ。だが、まだ負けたわけじゃねぇ。必ず次は勝つ」
こうして新選組はいったん兵を撤退させた。
- Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.25 )
- 日時: 2016/08/03 10:25
- 名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)
戦が開始した当時。日和見を決めていた藩が多くいた。長州と薩摩の二藩での戦いだった。
「負ければこちらが逆賊となりどうなるか、わからん」
大久保がそう言う。
「そうですね。我々は幕府に反旗を翻しているのです。負ければ今度こそ滅びることになります。」
桂が後ろ向きなことをいう。布陣図を囲み真剣な目で話をしている。
「だからこそ、土佐には兵を出してもらわなくてはなりません。」
土佐の佐々木も口にして下を向く。難しい話をする時碁を打つ。それが大久保流だった。碁の対局相手は桂だった。話をしながら碁をひたすら打っていく。パチンと。
「それにしても・・・土佐藩め。いつになったら動くのだ」
大久保は部下の報告を受けパチンと打つ。
「他の藩も」
桂は表情を変えずパチンと打つ。
「動かんな」
迷わず次を打った。
「すみません。大久保さん。桂さん」
佐々木は謝罪を口にした。それに対して答えた。
「いいえ。佐々木さん。あなただけの責ではありませんよ。」
冷静に口にし次を打つ。
「そうだな。藩を背負っているのだ。佐々木君だけを責められん。」
腕を組み大久保が次を打つ。
土佐の後藤と乾の二人には荷が重すぎたか。
『どっちが勝つか、わからん、そんなものに兵を出すわけがなかろう。』山内容堂の言いそうなことだ。簡単に想像できる。腹が立つことこの上ない。ばんばんと大久保は自分の膝を叩いて苛立ちを誤魔化す。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32