複雑・ファジー小説
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- 私は貴方たちを忘れない
- 日時: 2016/06/29 09:33
- 名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)
小鈴です。『貴方たちを忘れない』の続きを書こうと思います。
時代背景は幕末で登場人物たちも前回と同じ人たちが出てきますので読まれる方は前回からお願いします。注意としましてできるだけ史実にそい書いていきますが途中で捏造も入りますのでよろしくお願いします。
初心者ですので書き間違いもあると思いますが流してください。
主人公 楠 楓〈くすのき かえで〉十七歳少女
立川 紫衣〈たちかわ しい〉十七歳少女
この二人を視点にして書いていきます。
登場人物 大久保 利通。桂 小五郎。西郷 隆盛。新選組。土方 歳三。
他にもいろいろ出す予定ですので、楽しみに待っていてください。 時代は1867年のころからです。
追加 大久保利通〈三十七歳〉桂小五郎〈三十四歳〉
- Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.96 )
- 日時: 2016/12/16 21:18
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
どこか寂しそうに紫衣が言うので八重は首をひねる。それに気が付いた楓は説明をした。
「実は私たちの友人もそうだったのです。生きて欲しいと言い置いていかれたといっていました。でもあきらめずについていくことを決めました」
にこっと笑う。それは明るく太陽のように八重を照らした。温かい光をあたえてくる。
「紫衣さんたちはこのあとどうするのです」
ちらりと楓を見ると不敵に笑っている。苦笑する。
「私たちは先に進みます。このまま戦いの行く末をしっかりと見てこようと思います」
その言葉を聞いて八重は真っすぐに見つめて最後に言う。
「前に私も進みます。ここでお別れですね。お二人にあえてよかったと今心より思います。御武運を」
「「はい」」と言うと山本八重とはここで別れる。二人のその後は北へ北へと突き進んでいった。
少し話を戻す。新選組の斎藤一もここにいた。彼らは高田方面に護送されていく。
「あれは」
斎藤が気が付いた。人の間を縫うとそばに行く。
「おい」ふいに声をかけられた二人はびくっと体を跳ねらした。顔を向けると「「?」」不思議そうに斎藤を見た。実は二人は斎藤を知らない。
「話は聞いていた」
男の低い声に楓と紫衣は記憶をたどるがない。瞳をゆらして思い出そうとしていたがわからない。
「だあれ?」
と言うと斎藤は素早く辺りを見回してそっと小さく呟く。
「斎藤一。」
はっとした。名前は聞いたことがあった。新選組三番組。有名だった。
「斎藤さん。今はその名前は使わないで。「一瀬伝八」とでも名乗ってください」
誰だそれ。と内心突っ込みたくなる。
「生きてください。決してあきらめずに」
紫衣はそれだけは伝える。斎藤はこくりと頷く。
「出発だ」その声を聞き慌てて離れる。
「一瀬さん。原田さんと永倉さんに会いましたか」
「ああ、望月にもあった。感謝する」
それだけ言い去っていく。武骨なまでの武士であった。その姿に黙って頭を下げる。
「行こう」
「間に合うといいけど・・・」
不安げに口にしていた。もうすぐ、冬になる。空を見上げた。
- Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.97 )
- 日時: 2016/12/17 13:39
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
1868年9月22日会津藩降伏。奥羽越列藩同盟瓦解これにより本州の戦いは終わる。
10月22日榎本軍函館府軍と戦闘開始。
11月22日蝦夷地の平定。
大鳥は望月陽菜を蝦夷地に呼んだ。
函館の五稜郭にたどり着き土方の部屋の前にて息を吸う。かなり緊張をしている。数か月ぶりなのだ。胸に手を当てて気合をいれた。拳を握り西洋式の質疑応答をした。こんこんと扉を叩くと中より声がして開ける。
「失礼します。本日より土方奉行並みの小姓付きになった望月陽菜です」
そう挨拶した陽菜にあっけにとられていた。目を丸くしていたが陽菜から辞令を預かり難しい顔をして読んでいる。
「帰れ・・・。こんな辞令は認めねぇ」
鋭く見据えながら突き返した。何者も寄せ付けない眼差しに怯みそうになる。
「そうですか」
と言うとそれをやぶり捨てた。「おい」何をしていると言われても友達に勇気をもらいここまできた。
「土方さん。あなたの言葉は聞きません。大鳥さんの命でここにいます。」
拳を握りしめてきっと睨んできた。驚かされてしまう。こんな目で見られたことはない。
「お前」
言葉を失い陽菜に見とれてしまう。
「あの・・」
無言でこちらをみられているので出居心地悪くなる。背中を向けると
「ここは戦場になるんだ。兵士を指揮する司令官が女を侍らせるわけにいかねぇだろ。」
それは心からの叫びだった。
- Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.98 )
- 日時: 2016/12/23 19:22
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
背中を向けて強く拳を握りながらもそう言う。
「土方さん。なら、私のことは女と思わないでいいです。あなたの小姓として仕事をさせてください。それだけでいいです。」
どうかと頭を下げる。その言葉に内心歓喜している自分がいることを知るがあえて無視をした。
「足手まといだといってんだよ」
肩が震えてくる。必死に感情を押し殺しているというのにこいつは全て見透かしてきた。
後ろを向いた土方の肩が震えていた。それに気が付かないわけがない。
「あなたは嘘つきです」
「なんだとっ」
振り返って顔を見れば陽菜が勝利すると決まっているのに。ばっと振り返ってすごんでいる。『だめです。そんな顔には騙されません』
「本当にそう思っているのですか?」
「ああ」
眉間のしわをよせ鬼の形相をしている。そんなことくらいでは怯まなくなっていた。負けまいと強い目をして土方を見つめ返す。
『こいつ』ぎりっと歯をかむ。そのまま二人は見つめ続ける。
「わかったよ。本当にそれでいいのか」
折れたのは土方であった。ため息をつきながらそう言う。
「ただし特別扱いは一切しねぇ」
「はい。構いません」
と言う陽菜を見てようやく優しく笑ってくれた。
「たくっ。本当にバカだよ」
小さく呟く。
「これでいいのです。」
手を伸ばすと陽菜の頭をぐしゃりと撫でてやる。
こうしてほんのわずかな時間の中二人はともにいることを決める。土方は絶対に口にしないであろう。己の気持ちには気が付いているが・・・・陽菜もまた言えずにいた。いつにもまして仕事が忙しくなりそれどころではなかった。
土方の自室の前にて声をかける。
「土方さん。お茶をお持ちいたしました」
「入れ」
少年姿の娘が中に入ってくる。執務机の上には作戦会議のための資料が散らかっていた。どう見ても女にしか見えない望月陽菜を横目にため息をつく。
「はい」
お茶を出しているとふいにため息をつかれて首をひねる。
「あ、の?」
そう言う顔をしていると幼く見える。
「いいや、なんでもねぇ」
湯呑に手を伸ばし口をつける。やはりうまい。横目で見ながら『可愛い』と思うようになっていた。
何時まで理性が保つことができるのかと考えるようになる。土方にとってこの娘はもう、いなくてはならない存在になっていた。『とても口に出してはいえねぇよな』片手で口元をおおい視線をそらす。
「後悔しないか?」
「後悔なんてしません。私がそばにいたんのです」
「そればっかだよな。お前」
肩肘をついて頬をのせると陽菜をじっと見つめているそのあまりにも真剣な目に居心地が悪くなる。
「お前が責任を感じることなんてなーんもねぇだぞ」
そう言われて記憶が戻される。
井上さん、私のせいで亡くなってしまった。
「近藤さんたちから土方さんを頼まれていますし」
にこりと無理やりに笑うくせがついていた。
「そのことについてもだ」
いいんだよ。と言うと頭を撫でられる。その手は刀を握り続けていたためにタコができてごつごつしていた。陽菜はこの手がすきだった。大きな手で頭を撫でられることになれてしまっていた。
「わたし・・私ね。・・土方さんのこと・・・」
下を向きながら決意をして最後の言葉を言おうとした。
「言うなっ」
鋭くさえぎられた。びくっと肩が跳ねる。泣くかと思った。陽菜は泣くまいと唇を必死にかみしめていたのだ。次には土方の片腕に抱きしめられていた。
- Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.99 )
- 日時: 2016/12/23 20:48
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
「すまねぇ。例え聞いたとしても俺には答えようがねぇんだ」
思いを込めて抱きしめてやることしかできない。背中をぽんぽんと叩く。陽菜はそのまま頬を押しつけて泣き続けた。
「ただ。いつか。この戦が終わったらもう一度いってくんねぇか。その時は俺も答えてやれると思う」
片腕に抱き続けたまま言う。
「では、それまでは生きていてくださいね。絶対に聞いてもらいたいのですから・・・」
「わかっている。それまでは死なねぇよ」
優しい嘘を言った。そんなことありえない。この人が生きていたいなんて本気で考えているはずない。少しでも早く仲間の元にいきたいはずだ。彼は戦って戦って戦い続けた日々をおくっていた。死に急いでいるようにしか見えない。『それでもよかった。私はあなたのそばにいられるだけで嬉しい』好きと伝えることすら許されない。『私はあなたが好きです』心の中だけで伝える。
そんな陽菜を土方は黙って見ている。『バカだよ。本当に、お前は・・俺はお前に惚れているんだ』伝えてはかえって残酷だろうと土方は言わずにいた。拳を握りしめて再び仕事に向かう。
陽菜は頭を下げて去っていく。入れ違いに大鳥が中に入る。
「土方君はこのままで本当に後悔しないのかい」
言いながらため息をついてソファにどさっと腰をおろした。どういう意味なのかと睨む。
「望月君のことだよ」
仕事が忙しいと手で追い払う。
「どう見たって君たちは思い合っているようにしか見えないよ」
「だったらどうだっていうんだよ。関係ねぇだろ。あんたには」
「関係ならあるよ。僕はね。彼女に幸せになってもらいたいんだよ」
「なら、そう言えばいいだろ。あいつにこんなとこいねぇでいい男を見つけてそいとげろとな」
興味ないといいたそうにしながらも西洋の筆は今にも折れそうなほど強く握られていた。
「本気で言っているのかい」
「ああ」
不器用な男だ。まだ耐えようとしている。
「君自身にはできないのかい」
ばんと執務机を平手でぶったたいた。立ち上がると激情のまま叫ぶ。
「どうしろっていうんだよ。俺には無理なことくらいあんただってわかってんだろ。俺はいつ死んでもおかしくない。そんな男ができるわけねぇだろ。幸せになんて」
陽菜は大鳥と土方のためにお茶を用意していたが二人の会話に足を止める。お盆を両手で抱え立ちつくす。自然に下を向く。『土方さん』心の中で小さく呟く。しばらくしてドアを叩く。
「お茶をお持ちしました」
無理して笑い二人にお茶を差し出す。
「望月君。ありがとう」
「いいえ」
二人は穏やかに会話をしている。お茶だけだし席を外す。陽菜の背中を見つめている。『ああ、また俺は陽菜を泣かせているのか』うつむきいつもとかわらないふうをよそおっているが陽菜は肩を震わせている。
「土方君。聞いているのかい」
とがめるように眉をよせている。現に戻される。
「ああ、聞いているよ。大鳥さん。あんたは何しに来たんだよ」
見事に眉間のしわが復活していた。まさに鬼の顔が出来上がっていた。先ほどまでの憂いていた姿はどこへ消えたのだろうか。
「仕事はどうしたんだよ」
「ここにあるよ」
実はそのためにここに来ていた。
- Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.100 )
- 日時: 2016/12/25 16:03
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
「忘れてんじゃねぇよ」とその顔が言っていた。眉間に皺を寄せてこちらを睨んでくる。それがまた怖いこと。今すぐ回れ右をして逃走したくなる。
「ひ、ひ、土方君。これだよ」
手にしている書類を手渡し大鳥は出口に向かう。つまり逃走したのだ。
11月15日開陽丸は座礁してそして沈没をさせてしまう。
12月15日蝦夷地共和国成立。
1869年、明治2年となる。
開陽丸の沈没は旧幕府軍にとってかなりの痛手であった。唯一新政府軍に勝っていた軍艦を失ってしまう。
3月25日宮古湾海戦が始まる。この年紫衣と楓は19歳になる。陽菜は18歳になっていた。
蝦夷地にいる高官たちはこの失態をどうするのか。話し合いをしていた。「我らの兵力は2500に対し敵は7000と既に大きな差が付いている」
榎本が皆に目を向ける。一つのテーブルを囲むように高官たちが西洋の椅子に座っていた。新政府軍が甲鉄を手に入れていることを知っていた。
「海軍まで増強されては雪解けを待ち総攻撃を仕掛けてくる新政府軍には勝てないぞ」
「ならば、どうする?」
会議は暗礁に乗り上げてしまう。テーブルの上に海図を広げた。男たちはどうすればいいのかと真剣に話をしている。まさに八方ふさがりであった。これを切り抜ける作戦はないのかと考える。榎本のそばに座っている海軍の艦長である甲賀源吾がある作戦を口にした。
「ここは起死回生をかけて甲鉄艦の奪取を心がけようと思います」
土方がその言葉に鋭く切り返す。
「どうやってだ。兵力も軍艦も向こうが上なんだぞ」
「アボルタージュをしようと思う」
顔を土方に向けてはっきり言う。それは自信に満ちた顔であった。一語一語に力を込めて言う。何も策なく口にはしない男だ。
「アボルタージュとは?」
「つまり敵艦に接舷をしその軍艦を奪うというものだ」
はんりゅうの艦長が説明をした。最後をしめくくるのは回天の艦長である甲賀であった。
「どうですか?榎本総裁」
「使える軍艦はあるのか?」
地図を見ながら土方が言う。小さなコマを動かしながら説明をしていた。船の模型もそこに並んでいる。一つの船の周りに3つの船が並んであった。
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