複雑・ファジー小説

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私は貴方たちを忘れない
日時: 2016/06/29 09:33
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

小鈴です。『貴方たちを忘れない』の続きを書こうと思います。
時代背景は幕末で登場人物たちも前回と同じ人たちが出てきますので読まれる方は前回からお願いします。注意としましてできるだけ史実にそい書いていきますが途中で捏造も入りますのでよろしくお願いします。
初心者ですので書き間違いもあると思いますが流してください。

主人公 楠 楓〈くすのき かえで〉十七歳少女
    立川 紫衣〈たちかわ しい〉十七歳少女
この二人を視点にして書いていきます。
登場人物 大久保 利通。桂 小五郎。西郷 隆盛。新選組。土方 歳三。

他にもいろいろ出す予定ですので、楽しみに待っていてください。  時代は1867年のころからです。

追加 大久保利通〈三十七歳〉桂小五郎〈三十四歳〉  

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.61 )
日時: 2016/10/13 13:40
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

「ああ、だろうな。」
永倉が言う。
「何を企んでいうんだ」
面白そうに原田が言う。
「楓ちゃん?」
紫衣は目をぱちくりさせていた。楓の頭の中で考えていることは今はわからない。気分がいいらしく鼻歌まで歌っている。
「近藤さんの首取り戻したくない?」
原田、永倉、陽菜は息を飲む。
「私は好きにやらせてもらうよ。敵だとか味方だとかどうでもよくなっちゃった」
不敵に笑う。その顔は生き生きとしていた。
「なんでそんなこと」
純粋な疑問だった。陽菜に聞かれて腰に手を当てた楓。
「いったでしょ。どうでもよくなっちゃった」
お茶目に片目を閉じた。
「やるか」
拳を永倉はこつんとぶつけて原田に言う。
「ああ、やろう」
原田もやる気になった。まるで子供に戻ったみたいに楽し気だった。
「私もやります」
「陽菜ちゃんは危ないよ。」
楓が言うが首をふり聞かない。変なところで頑固であった。
「わかった」
折れたのは楓だった。作戦はこうだ。夜中に首を取り換えるという簡単なこと。
「おい、マテ取り換えるってどうやってだよ」
永倉がいうとにやりとした。嫌な予感がした。男二人。常識から外れたことをする。
「墓地にいけばいい。首なら嫌と言うほど手に入るじゃない」
「げっ」
「まじでいってんのか」
夜中に墓あらしをしろという。
「なんか、祟られそう」
陽菜も引いている。
「どうせ罪人なんだから、死んだ後に人助けできてきっと喜んでいるよ」
いや、むしろ死人は安らかな眠りから覚まされ怒るのではないだろうか。楓の恐ろしさを知った。
「確かに死んだら関係ないかも・・・」
「そいうこと」
悪い顔をしていた。一見おとなしそうに見えるかの娘もかなり過激であった。
「俺らも人は斬ってきたが墓あらしまではしたことねぇよ」
ぼそりと永倉がいい体を震わせる。かつて壬生の狼と言われた男たちは自分たちより年下の女に命じられたまま墓をあらすことになった。原田も顔色が悪い。
「お寺にいくのですね」
陽菜も悲壮な顔をしながら覚悟を決めた。


手には提灯を持ち顔を隠すために手ぬぐいを鼻から下をおおう。ここで彼らは立派な墓あらしとなった。寺に不法侵入し罪人の眠る墓の前で手を合わせる。まさか死んでからも墓をあばかれなおかつさらし首にされるとは思うまい。
「さぁ、やってちょうだい」
男二人は頷くと一心に土を掘り返す。紫衣と陽菜は誰も来ないように見張りをしていた。風呂敷を広げているのは楓だ。
「なんか」
「何も言うな。これも近藤さんのためと思え」
たそがれたかんが二人をおそう。そこには哀愁がただよっていたという。掘り返した首を風呂敷の中におさめる。

この日の出来事は二人の中では永久的に抹消させた。誰に聞かれても知れぬ存ぜぬをとおしたらしい。


さらされている場所にやってきた。やはり見張りがついていた。3人の男だ。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.62 )
日時: 2016/10/17 22:49
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

物陰に潜んでいた彼らは
「俺たちがあれをどうにかすればいいんだな」
いきようようと永倉が刀に手をかけている。
「殺さないでね」
「ああ、余裕だな」
とんと槍のえを地面につける。原田はきらきらとした目をさせていた。墓あらしよりこちらの方がいいに決まっている。まさに水を得た魚という状態だった。
「貴様ら」
「なんだ」
二人は声もなく昏倒させていく。
「なんだ。貴様ら」
原田と永倉武器を構えていた。永倉は足をすいっと突き出した。すると見事にそれに引っかかり転がっていた。昏倒させるた一撃を加える。原田は大きな体に似合わず軽い動きで横によけた。槍のえを正面にかまえると男の胸に渾身の突きをいれて吹き飛ばした。もう一人に槍を向けた時には楓が刀の峰にさせると示現流をお見舞いしていた後だった。
「それは、示現流か?」
原田は槍をかまえたまま目を大きくさせて固まる。楓はにいと笑う。
「半次郎さんに教えてもらっていたのです」
できてよかった。といった。それは一撃必殺技だった。
「今の内です」
紫衣が言う。近藤の首を風呂敷につつみだす。もう一つの首をそこに置いた。
「なあ。こんなことして大丈夫なのか」
「いいんじゃない」
軽く答えていく。
「この後どうするつもりですか」
腕に抱えた近藤の首は寺に供養を頼む様だ。
「その後は?」
「俺たちにはまだやることがあるんだ」
強い目をして永倉が言う。
「奇遇ですね。私たちもやることが残っているんです。江戸で」
紫衣も頷く。彼らと別れることにした。
「陽菜ちゃんはどうするの?」
「え?」
戸惑っていた。陽菜は実は土方に江戸に残るように言われていた。


Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.63 )
日時: 2016/10/18 16:33
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

宇都宮での戦いから数日後。
「俺たちは会津にいく。陽菜。お前はもう江戸にいき別の道をさがせ」
土方にはっきりと江戸に残るように言われてしまった。
「でも、」
何か言おうと口を開いたら問答無用に断言された。
「もう一度言う。お前はここに残れ。」
厳しい声で命じてきた。土方の顔を見たらもう何も言えなくなる。わかるからこの人の本心が・・・だって辛そうに眉をよせそれでも厳しく己を律しようとしている。拳をきつく握りしめていた。我儘を言えなくなる。そばにいさせてください。と陽菜は目を閉じてやがて答えを口にした。遠くにその人の背中が小さくなるまで見送る。声を殺して涙をこぼしていった。


「私にはやることはもうありません」
悲しげにつぶやくことしかできない。紫衣は見つめてから誰にいうわけでなく視線を外した。
「後悔しないよう生きろ。って昔高杉さんがいっていた。」
後悔?途端に瞳が揺れる陽菜に楓が自分の気持ちを言う。
「これは私の勝手な考えだから聞くだけ聞いて、人生は一度きりしかない。だから生きているうちにやりたいように生きる。それが・・・」
にこっと明るく笑いながら続きを言った。
「私の信念であり誠・・・」
誠?楓は迷いはない強い目をして陽菜の肩をぽんぽんとたたいた。
「信念であり誠ですか。人生は一度きり・・そうですね。私も決めました。土方さんを追いかけたいです」
陽菜の目にも強い意志が再び戻った。
「原田さん、永倉さん連れていってください」
「決めたんだな」
優しく笑い、原田は長身をかがめて頭を撫でている。
「よし、いくか」
永倉はにかっと笑いかたをたたく。
「二人とも死んではいけませんよ。生きることをあきらめないでください」
それが願いであり祈りであった。
「わかっている」
「あきらめたわけじゃねぇよ」
敵同士であったはずなのに心配を別れをつげるその日までしていた。
「紫衣。原田さんたちと先に会津に行ってくれない」
「え?」驚きに振り返る。
「どういう意味?」
聞き返したら説明をされた。
「自分の目でこの先の戦争の行く末を見てきて」
「楓ちゃんは?」
「まだね。少し江戸に残って様子を見ておきたいの。何もなければすぐに会津にいくよ」
片目を閉じて言った。感だ。何かが起きると。友を巻き込むわけにいかない。楓を見ていた彼女は心配そうに言う。
「無茶はしないでね」
これは忠告だ。いつも自由に好きなように行動する友から本当は目をはなしたくなかったが、言いたいことも理解するので忠告で済ませた。ここで二人は別の道をたどっていく。
走っていく紫衣の後ろ姿を見送るとくるり踵を返していった。背筋を伸ばして真っすぐに前を見ていた。きりりと引き締められていく姿は一人前の軍人であった。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.64 )
日時: 2016/10/19 17:37
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

楓は一人で考えをまとめていく街の中がものものしい。江戸は将軍直属の軍隊がいたはず、おとなしく従うのだろうか。将軍は水戸にすることになった。後ろから刀をさした集団が歩いてくる。町の人らはなにやら嬉しそうだった。楓は道のはじによける。
「あれは・・・」
我がもの顔で歩く姿に記憶をたどっていく。すうっと左目を閉じた。はっとした思い出した。若者たちが多い。15、16歳あたりだろうか。
「彰義隊。」
なぜここにいるのか。腕を組み考えている。『将軍警護をしていたはず』近くの人が話を始める。
「聞いたかい、上野の方で戦が始めるらしい」
ひそひそとしている。ふっと面を上げた。
「どういうことかな。江戸での戦は終わりではないの」
気になり噂をしている人に聞いた。
「いいですか。聞いても」
「なんだい。兄ちゃん」
「戦って本当にですか?」
「ああ、」
合点がいき説明をしてくれる。
「向こうに立札が立っていたよ」
あんたも早いとこ逃げた方がいいよ。といい分かれていく。
「立札?」
少し首をひねりながらも言われたところに向かう。〈来る5月15日に上野の山にいる賊徒の討伐を行う〉という立札が出ていた。札の前には多くの人があふれてなかなか前に行けなかった。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.65 )
日時: 2016/10/21 12:43
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

永倉と紫衣と陽菜の3人はようやく会津にたどり着く。永倉、陽菜は新選組のいる本陣にいく。永倉達とわかれて紫衣は会津の町を歩き始めた。娘姿に変わり城下を観察をする。
「どこもかわりない。町並み」
薬や必要のものを買うため店に入る。次は宿を探す。右見て左見ても同じようなつくりなので迷ってしまう。
「困ったわ。ここはどこかしら」
地図を見ながら小さく息をついた。その時気配を感じて後ろを向くと少年たちが立っていた。たまたま遊びに来ていた彼らは春の陽だまりのような女性に見とれた。
「ここにいきたいのですが、道を教えていただけませんか」
声をかけたらびしりと固まってしまう。会津の藩は十の掟があることを知らない紫衣は戸惑う。
「・・・もしかして話せないのですか?」
まさかと思いながらも聞いてみたら大げさなくらいに全員が首を振る。4人のそろった動きに目を丸にした。思いつき懐からメモを取り出して携帯用の筆を使いかいていく。
〈話かけてはいけなかったのですか〉
見せたら慌てて皆が両手を振る。違うということらしい。
〈ではお話させていただいても?〉
見せる。こくりと皆が頷く。
〈僕たちには決まりがあります〉
一人があわててかいて紫衣に見せた。綺麗な文字だった。
〈決まりとはなんですか〉
聞いてみたら、別の少年が年上の少年に目を向けた。
〈十の掟です。えっと、あなたは会津の人ではないのですか〉
かわるがわるにかいてくる少年たちは興味しんしんに目をしている。小さく笑い、紫衣は彼らに返事をかいていく。
〈旅をしているので今日ついたばかりなのです。道に迷ってしまいまして〉
紫衣は髪に紫陽花の簪を色は紫の青っぽい。着物は薄紫に小さな花がある。
〈私たちがご案内してもいいのですか〉
控えめに小さな文字がつづられている。
〈はい、お願いします〉
少年たちにお願いしている。ぱんと両手を胸の前に合わせた。何か閃いたようだ。
〈名前を聞いてもいいですか〉
少年たちは顔を合わせる。さらに疑問を聞いてみた。
〈十の掟とはなんですか〉
〈必ず守らなくてはいけないものということです〉
こくりと頷き納得する。
〈僕、飯沼貞吉です〉
素直に名乗ってしまう。
〈僕は酒井峰治といいます〉
酒井と少年が名乗ると次に伊東又八と篠田儀三郎と聞いた。
〈立川紫衣です〉
名を告げた。その後に宿に案内してくれる。

それは戦が起きる数か月前の話だった。まさに奇跡のであいだったのだ。


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