複雑・ファジー小説

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私は貴方たちを忘れない
日時: 2016/06/29 09:33
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

小鈴です。『貴方たちを忘れない』の続きを書こうと思います。
時代背景は幕末で登場人物たちも前回と同じ人たちが出てきますので読まれる方は前回からお願いします。注意としましてできるだけ史実にそい書いていきますが途中で捏造も入りますのでよろしくお願いします。
初心者ですので書き間違いもあると思いますが流してください。

主人公 楠 楓〈くすのき かえで〉十七歳少女
    立川 紫衣〈たちかわ しい〉十七歳少女
この二人を視点にして書いていきます。
登場人物 大久保 利通。桂 小五郎。西郷 隆盛。新選組。土方 歳三。

他にもいろいろ出す予定ですので、楽しみに待っていてください。  時代は1867年のころからです。

追加 大久保利通〈三十七歳〉桂小五郎〈三十四歳〉  

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.51 )
日時: 2016/09/22 23:30
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

「ま、まておいらだっていろいろやっているんだ」
がくがく揺すられている勝を見てあわてて止める。
「か、楓ちゃん。落ち着いて」
後ろからはがいじめとされる。
「げほっ。・・・兎に角中に入るぞ」
前後に揺すられて意識が飛びかけている。そば屋の中へ入っていく。
胡乱な目を向けている楓に勝は『面白い女子だ』と思った。テーブル席に着いた。椅子を後ろに引いて席に着く。
「盛そば3つ」
注文した。店の者が受けて奥に引っ込んでいく。あちこちにそばを食べている客が見える。
「何をなそうとしているのです」
こちらは真剣に真実を探ろうとしていた。お茶をすする。この男の心を図ることができない。
「難しい話をそば屋でするんじゃねぇよ。」
そばだけを置いてまた引っ込んでいく。外の様子を探るが江戸はのどかであった。戦がせまっているとは思えない。
「あなたの真意はどこにある?一方に戦をけしかけて一方に戦を避けるようにと言っている。どちらを信じればいい?」
一段と声を低めて詰め寄る。紫衣はそばをすする。
「勝さん。私。それ知りたい」
もぐもぐ口を動かしている。小さな声でいったら勝はそばをすすり下を見た。
「おいらは・・」
「はい」
「他の奴にはいえねぇこと考えている。江戸は戦にさせねぇ。それだけは本気だ」
その時だけ強い目を向けてきた。
「私たちはそれが聞きたかったのです」
二人はほっと表情を緩ませる。
「勝さんの真意が知りたかったのです」
楓がいった。
「真意をね。それを知ってどうするつもりだ。」
油断はならないと勝は物騒な目になった。
「西郷さんより文を預かっています。」
「文?」
不審そうにそれに目をやった。そっと差し出してきたテーブルの上に置かれた文に目をやりながらちらと見る。文を裏返すと「西郷隆盛」とつづられていた。かっと目を開ける。
「なんだ。これは」
「さわがないでください」
思わず立ち上がりかけた勝に座るようにせいしたらおとなしく座った。


Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.52 )
日時: 2016/09/24 23:07
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

「落ち着いてください。勝さん」
「なんで、おいらがいくら待っても一度もこなかった文がここにあるんでぃ」
「待っていた?」
二人が顔を見合わせる。
「勝さんはもしかして文を出していたのですか?」
紫衣は首をひねりながらも聞いた。
「だとしたら一度も文なんて来ていないよ」
「そんなはず・・・。おいらは西郷に何度も書いてんだぜ」
ばんとテーブルを平手で叩く。
「おそらく・・・」
何を言いたいのかわかり、勝は舌打ちをした。楓の答えと同じだったからだ。
「あのやろう。やりやがったな」
悪態をついている。犯人に目星がついたのであろう。紫衣も閃いて言う。
「まさか」
「嫌がらせだろうね」
「くそったれ」
罵り出した。随分口が悪い。江戸の人間なんてこんなものか。
「待て。お前らは使者としてと考えていいのか」
こくりと頷く二人を見て冷静な顔になり文を読みだした。だんだん険しい顔になっていく。はらはらしている紫衣と冷静なままの楓。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.53 )
日時: 2016/09/26 18:03
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

【総攻撃の日は3月15日と決定とした。これについて何かあるなら連絡を】と書いてあった。綺麗な文字でつづられていた。
「わかった」
慌てて紙を用意して返事を書き始めた。そばを食べている場合でなくなる。
「できた」
最後に勝の名前と印を押す。もう一度読み返し間違いないのか確認して手早く折りたたんでいく。
「こいつを頼む。信じていいんだな」
不安げに瞳が揺れる。周りは全て敵だらけ誰を信じればいいのかわからない状態であった。
「「お任せください」」
返事を二人が声をそろえて言って笑う。

すぐに江戸を出るため関所に向かう。

「ここをとおさぬ」
「とおしてください」
「時間がないのです」
押し問答をしていた。来るときはなんなく通過できたはずなのに。腹の立つこと。
「おい。この二人はおいらの知り合いだ。通してやりな。」
勝の一言で門番が横にどいた。あらためて勝の身分が役に立った。

勝にはやらねばならないことがあったのだ。「弱腰、腑抜け、薩長のイヌ」罵られても一人でも戦うことを決めていた。

話は少しさかのばる。
1月11日に勝は江戸を駆け抜けていた。慶喜公の元に。
「だから・・・」
あせりでいっぱいであった。『おいらにどうしろと言うんだ』いきなり呼び出されたのだ。
「だからいったんだ。あんたがたこれからどうするつもりだい」
言いかけてやめた。
あの時を思い出すと
「誰もかもが青葉のようでこうまで弱っているのかと思うとおいらは涙がこぼれるほど嘆息したよ。」
なにしろどいつもこいつも疲れきった顔をしていた。
「おいらには荷が重すぎるぜ」

毎日戦っていた。
「いましばらくおまちください。」
江戸城に勝は抗戦派たちをおさえていた。
「お前は待てしかいわん」
勝を見下した目で見てくる。何を言われようとも耐えて何もしていないように見えるが江戸のために人を民を守るための戦いであった。
ある日バケツをひっくり返したような雨が降っていた。土砂降りの雨の中勝は一人江戸が見渡せるような場所に立つと町を見下ろす。
何時になく真剣な目でそして強く拳を握りしめていた。何を考えているのだろう。頭から濡れながら・・・。ここを火の海になんてさせてたまるか。焼け野原に何てさせられない。

江戸の藩士等はもちろん戦いがせまっていることは知っていた。
「皆。おいらにめんじて今は耐えてくれ」
頼むと薩摩藩士に頭を下げていた。ぽんと肩を叩かれて頷いた。しぶしぶ引いていく。民も仕方なく下がった。
「すまねぇ。今ここでいさかいを起こすわけにいかねぇんだ。こらえてくれ」
小栗にたいして早期停戦と江戸城の無血開城を主張をしていた。
11日に東山道先鋒総督参謀の板垣は八王子に着く。
12日に伊地知が板橋に13日に東山道先鋒総督の岩倉が板橋に入った。西郷は彼らを抑えて交渉していた。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.54 )
日時: 2016/09/27 23:01
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

1868年勝沼での戦いから数日後。橋のたもとで陽菜と永倉、原田たちは別れの挨拶をしていた。
「本当に行ってしまうのですか?」
「そんな顔をするな。」
「でも・・・」
陽菜は今にも泣き出しそうに瞳をうるませていた。
「最後まで守ってやれなくてごめん。お前のことはあの人が守ってくれるさ」
ぽんと原田は大きな手の平を頭に乗せられて撫でられた。とたんうろたえだした。斎藤もそこにいて口元を緩ませる。陽菜は目を丸くして顔を赤くさせた。
「え?あの」
やさしい目を皆がしていた。
「陽菜ちゃん。笑え。」
「笑えません。」
眉を寄せていた。
「こんな時こそ笑え。これが今生の別れってわけじゃねぇ。俺たちはどこにいたって仲間にはかわりねぇんだからよ。」
にかっと笑い永倉が陽菜の肩に腕を回した。
「はい」
陽菜はようやく笑う。原田と永倉は明るく手をふり去っていった。
3月12日のことであった。

翌日の朝。
「これから会談ですか。」
「ああ。行ってくる」
勝は馬上で二人と話をしていた。はら、はらと桜の花が舞い落ちていくく中皆がその美しさにみとれていた。ふいに視線を戻した楓が言う。
「私たちも行きます」
「おい」
馬上から二人を見下ろす。
「やはり責任は最後までおわなくては」
「馬には乗れないので後からいきます」
楓はにっと笑いながらも言うと紫衣も頷く。
「ああ、わかった」
何を言っても無駄と知っている勝は声を低めて前を見ながら
「気をつけろよ」
馬をいっきに走らせていった。その後を二人の娘が追いかけていく。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.55 )
日時: 2016/09/29 21:19
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

銃声がどこからともなく、鳴り身を伏せそれをかわした。会談場所にたどり着くと武器を構えた男たちが待っていた。
「何故わからんのだ。こんのぼんくらどもがっ」
勝は力の限り叫び馬から降り立つ。「どいつもこいつも」言い、勝は腰にある刀を鞘事引き抜きかまえた。
「バカものがっ」
怒鳴りつけ振り上げると目の前にいる男の腹を突きをくれてやる。
「そちらこそ何故わからないのだ。我らは何のためにここまでやってきた」
刀を鞘から抜き勝に本気の殺意を向ける。一人を蹴り飛ばした時に楓と紫衣が来た。
「紫衣。後ろにいて」
楓の言葉に素直に従う。こういう時役に立てないと知っている。
「勝さん助太刀いたします。」
この時二人は軍服を着ていた。腰に差している小刀を鞘事引き抜くと構え、にやりと笑う。
「お前」
勝は敵に背を向けていた。勝の後ろにいる男を狙い楓が素早く動いた。突きを入れて昏倒させる。
「やるな」
「はい。足は引っ張りません」
少しづつ前に進み「どけっ」「邪魔をするな」二人が暴れていく。
地面には負傷して動けない男たちが転がっていた。
「やるな」
勝はにやりと唇の端を持ち上げる。かなり悪い顔をしていた。
「なら、次々といくぜ」
わきにどかし刀を振り回した。
「邪魔すんじゃねぇよ」
「どいてっ」
強すぎる。楓は遠慮なくぶちのめしていく。後に残ったのは唸り声だけであった。


13日会談初日。
江戸にある薩摩藩邸で待っていた。部屋の中にいてあちこちから殺気が向けられていた。襖を挟んだ向こうでは薩摩藩士らが刀をかまえた姿勢で潜んでいた。勝は背筋を伸ばして前のみ見ていた。

庭から西郷が歩いてきた。娘らの姿をとらえて驚いた顔をした。


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