複雑・ファジー小説

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私は貴方たちを忘れない
日時: 2016/06/29 09:33
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

小鈴です。『貴方たちを忘れない』の続きを書こうと思います。
時代背景は幕末で登場人物たちも前回と同じ人たちが出てきますので読まれる方は前回からお願いします。注意としましてできるだけ史実にそい書いていきますが途中で捏造も入りますのでよろしくお願いします。
初心者ですので書き間違いもあると思いますが流してください。

主人公 楠 楓〈くすのき かえで〉十七歳少女
    立川 紫衣〈たちかわ しい〉十七歳少女
この二人を視点にして書いていきます。
登場人物 大久保 利通。桂 小五郎。西郷 隆盛。新選組。土方 歳三。

他にもいろいろ出す予定ですので、楽しみに待っていてください。  時代は1867年のころからです。

追加 大久保利通〈三十七歳〉桂小五郎〈三十四歳〉  

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.16 )
日時: 2016/07/16 20:55
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

「仕方ないでしょ。男の姿だったし」
楓はむうとくれてしまう。
「だが、わかりやすいかったぞ。」
南方は優しく楓をなだめてくれる。「ぴすとる」を腰にさして両手を腰に当てていた。
「お前、それどこから持ってきた?」
素朴な疑問を口にしてきたのは大久保だった。だいぶ怪しんでいる顔。
「どこからっていいでしょう」
くるくると楽しそうに指に引っ掛け回す。何故かこの娘に合っていた。にんと目を細めて得意そうにしていた。
「まさか。私のものを勝手に拝借してきたわけではあるまい?」
口にしながらも嫌な予感がしてくる。他の皆も同じ意見だ。『やる。この娘ならそれくらい』

想像してしまう。
『あら?こんなとこにいいものが・・・よし。これをちょっと借りよう』
と言いながらも大久保の机の引き出しを開けて勝手知ったるなんとかだ。「ぴすとる」を手にして軽い足取りで彼の部屋を後にする。

そんな姿が思い浮かんでしまう。るんるんいいそうな感じで去っていく。
「こら、失礼なことを考えているな。そんなことするものか。まあ・・・弾は拝借したけど」
「やっていたか?」
皆がそう思った。
「それを見せてくれる?」
佐々木に言われたので「安全装置」を確認してから手の平に乗せた。
それは見覚えがあった品物だったからだ。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.17 )
日時: 2016/07/18 10:26
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

額に手の平をあてているのは桂で大久保は青筋を浮かべていた。
「いつも言っているだろう。勝手に人の部屋に入るな。ものを漁るな。泥棒か。貴様は」
「あのねえ。いつものことだから今更目くじらをたてないでよ。大事な書類には手を出してないしだからあなたは気が付かなかったでしょ。」
この娘の小賢しいこと。ぎりと拳が握られる。怒りのためかフルフル震えていた。紫衣が恐る恐る聞く。
「それは・・いつも?」
「さっきも言ったと思うけど、いつもしている」
「このっ。・・・どあほうがっっっ!!!」
ついに切れた男が頬を引っ張りまくる。いつもの光景だった。


「やはり・・・これは」
「どうした。佐々木」
佐々木は息を飲んでいた。手の平に乗るそれを南方が見つめている。
薩摩藩から送られた「スミス&ウエッソン」であった。二十二口径の五連発式。
「竜馬の「ぴすとる」です。」
「ん?」
しばし無言でそれを見た。
「楓。もしかして坂本からもらったのか?」
南方が楓に声をかける。
大久保から逃げてきた彼女はにこりと笑う。全てそれで伝えた。坂本から中岡にそして楓に伝わっていった。
「紫衣もあるでしょう。」
感のいい友にこくり頷く。
「高杉さんの「ぴすとる」は今も大切にしまってあります。桂さんが私が持っていたほうが喜ぶと言っていました。」
切なそうに桂を仰ぎ見る「うん」と顎を引いてくれた。ようやく彼女の様子に気が付くと目を大きくさせる。
「その姿は一体?」
忘れていた。今更だ。こってんと笑みをたたえた。笑って誤魔化そうとしたが無理だった。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.18 )
日時: 2016/07/18 11:17
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

桂の羽織に包まれたていた。温かい。ほっと唇をゆるませる。袖をとおさずに襟元を握り鼻をよせた。この香りと温もりは安心する。
「帰ろう。それについてじっくり聞くからね」
にこりと笑われた。背後に黒いものが見えた・・・・気がしてぞくっとした。土方は鬼みたいだった。「なんだろう。この人は別の恐怖があった」と思ったがあえて口にしないでいた。賢明な判断をした。
静かに淡々と怒っている人のほうが一番恐ろしいと思った瞬間だった。
桂の羽織に包みこまれながらも紫衣は怯えていた。

おまけ。
「どうして、そんな姿になっているのかな」
微笑みながら問われて彼の前で正座をしていた。
「ううー。それは・・深いわけがありまして」
誤魔化そうとしているがじっとりと見てくる。
「怒りませんか?」
ちらり上目づかいで桂を見た。
「それは話を聞いてみないとわからないよ」
「はい。実は・・・・」
簡単に説明をした。
「なるほどね。新選組隊士を助けたか。」
責められると目をきつく閉じる。
「仕方ないね。君は」
呆れたようにため息をつくと頭を撫でた。ゆっくりと面をあげたら優しい目をした彼と目が合う。
「それで着ているものを布がわりにして血を止めたのかい?」
「はい」
今はしっかりと新しい着物になっていた。桂が用意してくれた。
「君はいつもそれだよね。自分のことより人を気にかける。」
心配になる。遠い目をした。


十二月九日。王政復古の大号令がおこる。その月の十八日近藤が墨染で御陵衛士の残党に狙撃された。二十五日西郷は配下に命じて江戸市中にて辻切り、強盗、火付けなどをやらせた。明らかな挑発に庄内藩が反応した。三田の薩摩藩邸を焼き討ちにした。徳川慶喜はついに明治新政府との戦いを決めた。西郷の計略が見事に成功した。

1868年1月。鳥羽伏見で戦が始まる。伏見奉行所にて新選組は陣をおく。指揮官は土方であった。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.19 )
日時: 2016/07/19 14:48
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

戦が始まる前。新選組目線。
「陽菜。お前はもう、ここからはなれろ。これから戦となる。」
土方は自室で少年姿の娘に言う。1868年。陽菜は十七歳となっていた。下を向き袴を握りしめていた。
「いいえ。」次には顔を上げてきっぱりと言う。
「私はここにいます。皆さんのお役に立ちたいです。」
もう一度頭を下げて「お願いします」と迷うことなく言う。その気迫におされたのか。
「たくっ。バカな奴だな。今なら逃げられるっつうのによ」
苦笑して土方は折れてしまう。頭を下げ続ける陽菜の頭の上に手の平を置き撫でる。面を上げた陽菜は今にも泣き出しそうなほどうるませていた。

長州目線。
「紫衣。君はここから出た方がいい。」
突然桂の自室に呼ばれそう言われた。なんだか、あわただしくなってきていた。紫衣は十八歳だった。いつまでも子供のままではいられない。着物の裾を整えて答える。
「おことわりです」
意思の強い双眸で見返す。
「私はここにいます。医師として。西洋では軍医と呼ばれる人がいます。」
きっぱり言い返してきた。
「しかし・・・それは男の場合だろう。君は女人なんだよ」
「なら男として扱ってください。特別扱いしなくていいです。」
連れていってください。と願いをこめて深く頭を下げた。
かんじんなことをわかっていない。
「それは無理があるよ。もう、男には見えなくなっているんだ。」
意味が分からない。瞳をぱちぱちさせていた。大切にしすぎたためによくわかっていなかった。男と女では違いがありすぎた。小さな手をつかみ肩を触らせる。
「あの?」
何か言いたそうに正面にいる桂から視線を外した。
「ちゃんと見て。わかる?違いが」
直に触れて理解しろと伝えたがこれはどちらにとっても我慢大会のようになっている。桂は抱きしめて温もりをもっと感じたい。そう思った。理性でもってこらえていた。紫衣は恥ずかしくてたまらなかった。
しっかりとした体つきだった。
「違う」
ぼそりと呟く。こんなにも綺麗な人でも男なのだとわかってしまう。
手だってこんなにも大きい。筋肉があり力もある。だんだんとうなだれていく。
無言となり頬を赤く染めて動かなくなってので心配になる。
「大丈夫?」
優しく問われたのでそのまま頷く。
「でも・・はなれたくない」
しぼりだすように口にして拳を握る。それがこの娘の本心だった。
「戦となれば皆が殺気立つ。君のような女人がいればどうなるかわからないだ。私はそばにはいられない」
指揮官が女をはべらせるわけにはいかないのだ。
「わかっています。」
これだけ言っても駄目なのか。きつく握りしめていた拳に小さな手が重なる。はっとしたように紫衣を見る。気づかれないようにしていた。桂とて本当ははなしたくないと思っていた。
「私付き小姓となり軍医として怪我人の手当てに当たれ。」
きっぱり命じられた彼女はぱっと花が咲いたように笑う。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.20 )
日時: 2016/07/24 20:43
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

薩摩目線。
「楓。ここから出ていけ」
いきなりそんなことを言われた。情勢など嫌ほど理解している。大久保の言いたいこともわかる。
「出ていけって?どこに行けと」
泣かないように唇をかみしめた。大久保は気づかれないようにきつく握りしめていた。爪がくいこみ血がにじむ。
「南方君と共に行けばいい。話はつけてある。」
決定事項だった。
「嫌です。私のことを悪いようにしないといったのはあなただ。」
責めるように眉をよせて叫ぶ。心では『一人にさせられない』と心配だったのだ。いつも仕事で忙しくて寝ている暇さえない。
本当ならばもっと早く手を放すべきだった。太陽のような娘。その明るさに救われていた。
「私はあなたのそばにいる。」
はっきりと言い大久保を睨み続ける。
「駄目だ。ここはもう、戦になる。」
「そのくらいわかっている。足は引っ張らない。」
必死にくらいつきすがりついてくる。
「私はね。大久保さん。軍師になろうと思う。あなたの背中を支えるようにしたいの。邪魔はしないからだって、大久保さんは放っておいては食事はしないし眠ろうとしないでしょう。」
ぴくと反応をした。ぎろり睨みつけると。
「放っておけ。お前に心配されるほどやわにできておらん」
憮然と答えてくる。
「だったら胃の方は大丈夫?また、痛くなったりしていない?」
それこそ余計なお世話だった。ぴきっと音がした。気がする。「ひっ」と楓すら怯える。後ろになにやら真っ黒ものが見えた。『まずい。本気で怒らせた』殺ろされる。本当にそう、思った。
「よ・け・い・な。真似をするなと言っているだろうがっ!!!」
怒髪天をつく閻魔大魔王が降臨した。
「お、大久保さん」
あまりの怒声に『何が起きたんだ』と藩士たちが集まってきた。いつもならば決して近寄らない大久保の自室。そっと中を探った。「見ていない」「聞いていない」を貫いてそれぞれ戻っていく。今のあの人に話かけてはいけない。暗黙の了解だった。

叫んだのちに冷静になった。
「女が戦についていくなんて聞いたことがない。」
「この前。萩の地での戦にはいったよ」
「それとは違う。いつ終わるかわからん。」
「男の姿になる」
「無理だ。」
即答され首を振る。もう十八歳になっていた。
「無理じゃない。軍服を着て髪を切ればいいでしょ。」
あきらめない。
「体つきが違うだろう」
冷静だった。腕を組み眉をよせて睨んでいた。
「女とばれればどうなるかわかっているのか?」
「・・・?」
無言で首をひねっている。自然とため息がでた。「甘やかしすぎたかも知れん」今更悔いても遅い。心を鬼としなくてはならなくなった。分かりやすく説明をする。


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