複雑・ファジー小説

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私は貴方たちを忘れない
日時: 2016/06/29 09:33
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

小鈴です。『貴方たちを忘れない』の続きを書こうと思います。
時代背景は幕末で登場人物たちも前回と同じ人たちが出てきますので読まれる方は前回からお願いします。注意としましてできるだけ史実にそい書いていきますが途中で捏造も入りますのでよろしくお願いします。
初心者ですので書き間違いもあると思いますが流してください。

主人公 楠 楓〈くすのき かえで〉十七歳少女
    立川 紫衣〈たちかわ しい〉十七歳少女
この二人を視点にして書いていきます。
登場人物 大久保 利通。桂 小五郎。西郷 隆盛。新選組。土方 歳三。

他にもいろいろ出す予定ですので、楽しみに待っていてください。  時代は1867年のころからです。

追加 大久保利通〈三十七歳〉桂小五郎〈三十四歳〉  

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.41 )
日時: 2016/08/30 12:59
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

「おい、話がとんでいるぞ」
大久保が呆れた声をかけて楓は続きを話す。
「紫衣は知り合いだったと聞いた事があり勝さんは幕臣でありながら別のことを考えている人です」
「お前は何故。知ったような口を叩くのだ。」
「別に小耳にはさんだだけです」
「情報元はどこだ」
「朝日奈さん」
ここで奴の名が出るとは嫌な顔になる。
「詳しく話しますか?」
「いい。知りたくない」
ぐったりしていた。
「ああ、あの彼ね」
板垣退助も知っている。
「またあったの?」
ようやく落ち着いたようでひょっこり出てきた。紫衣に聞く。
「南方がいなくて良かった」
いたらまた騒ぎになっていただろう。苦笑する木戸に紫衣はあいまいに頷く。
「でもこの話。あいまいではっきりしないそうです。実際に話してみないと答えはでないと言っていました。」
「そういえば・・いつ勝さんにあったの?」
ふいに思いついたのか問われた。
「昔。江戸にいた時」
小さい声でぽつんと答える。そっと木戸の様子をうかがう。怒っているのかその顔ではわからない。
「小娘。お前も知っていたな」
大久保にじろりと睨まれた「何故黙っていた」と責めるように見られた。
「紫衣が勝さんを知っていると答えたらどうなっていたと思うの?気が付いていないとでも。疑いをかけていたくせに」
淡々と答える。そしたら驚いたように目を見開く。
「ならば何故・・・」
大久保は疑問を口にし楓を見て口を閉ざす。人前ではここまでが限界だった。
「席を外す」
楓を見てそういう言う。「ついて来い」と背を向けた。皆と少し離れる。昼間と言うのにそこは薄暗い。お互いの顔が見えるぐらい。足を止めると振り返る。
「もう一度聞く。何故あの時」
「同じ布団で寝たのかって?」
言葉を重ねるように最後をしめくくる。遊んでいるような軽い口調で「おい」それが気に食わないと「真面目に答えろ」頬をつねられた。
「いたい」と左の頬をつねる手をはたき落とした。今度は殺意をこめた目つきをよこした。「怖っ」人って本気で腹を立てたらこんな顔になるのかと思った。
「おい、あんまりなめた口をたたくと本気でしめるぞ。小娘」
「はい。すみませんでした」
素直に謝るべきと本能がつげた。身の危険を感じた瞬間だった。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.42 )
日時: 2016/08/30 22:31
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

「何故。あんな真似をしたんだ」
「それについては簡単です。私はただあなたを知りたかった。それだけです。」
こいつ・・・。ぎろりと再び睨まれる。忌々しいと。
「もしあの時私がお前を抱いていたらどうしていた」
ついにろこつな言葉がでてくる。冷静に楓は答えた。
「抵抗しましたよ。もちろん私は足を怪我していましたしもしそうなっていたらあなたをそれまでの男と見限ったでしょうね」
つまり試したのだ。自身の体を使い。身を売るような真似をしてまで大久保という男の理性がどこまでなら耐えることができるのか知ろうとした。簡単に女の体に現を抜かすようなら用無しと判断をして藩邸を去り男を見捨てていたであろう。
「無茶をするものだ。私だったから良かった。それを他の男にしていればお前など簡単に組みふせられていたぞ」
「世話になっていた南方さんに恩を返せるならそれでも良かった」
口にしたとたん。だんっと強く木に突き飛ばされた。痛みに顔をゆがませると微妙な顔をして大久保が立っていた。なんだかひどく心が傷つけられたみたい。
「お前がよくとも私は納得などしない。このバカもの。何故もっと自分を大切にしない」
苛立ちとどうにもならない感情に振り回されているようだ。
「ごめんね。それって今度のことも含まれているよね。」
そっぽを向き拳が握りしめているのを目にして足を半歩前に出して頬へ両手を伸ばしてこちらを向かせるとそのまま抱きかかえる。背の低い娘が背丈のある男を抱きかかえるのはかなりきつい。それでも今は抱きしめてあげたかった。いつだって一人で全てを抱え込んでしまうから。
下を向いてうなだれている。
「私はここにいるよ。」
耳元にささやくその背中をなでていく。今だけは甘えてほしい。
「何をしようとしているのか知っているよね」
優しく話しかけていく。
「江戸にいきます」
ぴくと反応した大久保はすがるように強く腕をつかんだ。
「いってどうする」
「使者として勝海舟の考えを聞いてきます。」
声を張る楓に何を言っても無駄とわかる。もう、決めてしまっている瞳の色だった。


Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.43 )
日時: 2016/09/01 14:19
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

今の目の前にいるのが本当の大久保なのだろう。その言動で多くの誤解をされがちだ。心配だった。肩に手を置き体をはなす。じっと目を見下ろしてくる。苦悩だろうか。しんとしたその目の色には何も見えない。身をかがめてきた。何をするつもりかとじっと目を見つめ続けていた。頬を指先でもてあそび少しずつ近くなる距離に楓は目を閉じた。
そのまま口づけをかわす。一度はなれもう一度と重なる唇。楓はただ酔いしれていった。後ろの木に背中を押しつけてひたすら受け止めている。こんなところを人に見られたら大変だと知っているのにやめない。
「大久保さん。」
小さい声で呼ぶ。息が乱れてずるりと力が抜けて足が震えて立っていられない。
「どうした?こんなものじゃないぞ」
怒っているのか傷ついているのかわからない。声色にびくっとして顔をあげた。血の気が引いた。彼は息なんて乱していなかった。
「ここで・・最後までするの?」
怯えながらもいった。怖い。そうだ。これは男への恐怖だ。
「お前はそれでもいいというのだろう。」
ああ。と納得。この人を傷つけてしまったと。こういう言い方の時、私を傷つけさらに自分を追いつめていく。それをわかっているのかと尋ねたい。
「自虐に走るのはやめて。そんなことすれば傷つくのはあなただ。どうしてわからないの」
彼を睨み襟をつかんだ。とたん目をそらす。つかんだまま唇に触れた。
「私はね。あなたが好きだ。あなたに会えて良かったと思っている。」
挑むように睨み必死に想いを伝える。
驚いたように固まっていたがようやく我に返る。
「わかっている。お前が私を好きだと。疑ってはいない。先をこされてばかりだ。」
襟から手をはなした。どういう意味なのか。子供のような無垢な顔だった。
「好きだ。だから・・・手をはなすべきだと。」
落ち着いた雰囲気で言う。
「ありがとう。」
やさしい顔をして笑う。
「言って来い。」
「はい」
もう、いつもの男だった。こうして送り出していく。

女は好きだから男の役に立つために別の道を歩いていく。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.44 )
日時: 2016/09/03 10:56
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

紫衣は一人悩む。『私はどうすればいいの?』勝海舟は知っている。楓は直接会い話をしたいと言った。なら『私も一緒にいくべきだ』でも木戸を一人にさせられない。考えていることが伝わったのか。
「楓についていけ。」
冷静すぎる声に後ろを振り返る。いつの間にかそこに彼がいた。何か言おうとしたが声にならない。この人は嘘を言う。優しいやさしい嘘を言う。
「もう、私は君は必要ない。だから江戸にいってくれないか。君は幸せになるべきだ。」
薄っすらと笑みさえ浮かべて残酷なことを言う。ちらりと見ると拳は握りしめられていた。
「木戸さん」
思わず名前を呼んだ。苦痛なんて見せない。それさえあなたは隠してしまう。「ねぇ。隠さないで私がいるよ。あなたを支える」と言いたいのに、あなたはそれさえ何も言わせてくれない。
「幸せってなんですか?」
それだけを言う。悲し気に笑い木戸に問う。声は僅かに震えてかすれてしまう。
「ここにいてはいけないのですか?」
初めて自分から動く。冷静な顔をしたまま立っている木戸のそばに一歩距離をつめる。かなり近くなる。背の高い男の肩に手をのせた。背伸びをしたそのいきおいのまま自分の唇をそれに重ねた。すぐにはなれた。
何をするつもりかと思い身構えていたら不意打ちだった。本当に突然。唇に温もりが触れはなれていく。しばらくそのまま固まっていた。
ふっと思い出した。初めて口付けをした日。唇に触れただけで紫衣は驚愕していた。それを今度は自分からとは。
「何をしたのか。わかっているのか」
何時になく低い声を出す。その声に怯えてたのかびくっとした。今度は木戸から動く。耐えていたのがバカらしくなる。後ろの木に押し付けるように体を抱きしめる。顎を持ち上げるとそのまま唇を重ねる。一度離れて深く長く今度は我を忘れるようにして重ねていく。その熱さにおぼれていく。息ができずに胸をたたく。それでもはなしてくれない。
「木戸さん」
息が乱れて立っていられない。肩で息をしていた。木戸は黙って紫衣を腕に抱きしめていた。
「まったく。君はバカだ。」
「え?」
小さな声だった。よく聞こえない。顔を上げたら切なさをふくんだ瞳で見つめられていた。
「俺は君を手放すべきだと思った。だから・・・」
「いいえ。私はそばにいます。必ずあなたの元に帰ります。待っていてください。」
ばっと顔を上げた。二人は抱きしめ合う。この温もりを忘れないように頬を押し付けた。

2月5日に伝習隊の歩兵隊400名が八王子方面へ脱走した。のち大鳥圭介軍に合流した。
2月7日夜。旧幕府軍の歩兵の一部脱走。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.45 )
日時: 2016/09/03 11:49
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

新政府側。
江戸に向かう軍艦の中に負傷した兵たちが船に乗せられようとしていた。
「わしらはまだ戦えもす。西郷さあに伝えてくいやんせ。」
などと言い暴れていた。それを見た大久保が一括した。
「足手まといだ。どうせ怪我をしてなにもできんのだ。おとなしく国へ帰れ」
そのくらいしかできん。ひどく酷薄なことを口にして背を向けている。
「んなっ」激しく反発が生まれていく。大久保と西郷を慕う兵士らは亀裂が生まれ始めていた。慌てて藩兵がおさえつけている。その騒ぎを聞き楓が現れた。
「何の騒ぎですか?」
兵士数人が大久保につかみかかろうとしていたが本人は抵抗せずに平然としていた。人事のようにされるがままだ。それがかえってあおっているとは知らず。きっと言いたいことは好きに言えばいいと考えで。
この人のことだ。全て受け止めるつもりでいた。戦いたい。悔しい想いを一番に理解している。中村に視線を向けた。「説明して」困っていたのだ本当に。今までを簡単に説明を聞く。
「すみません。通訳をします。怪我をしているのです。無理をなさらず体を治して必ず戻って来いっと大久保さんは言いたかったのです。」
「嘘だ」
「そんなこと」
「言ってなかった」
「おいたちのこと。役立たずといったんだ」
彼らに向かいもう一度言う。
「大久保さんは素直ではないんです。それにそう言ったら皆さんは素直に帰りましたか」やさしく諭されて知らずに力が抜けていく。楓はちらっと見たら彼はそっぽを向いていた。後味の悪さに兵士らも手を放す。五代、西郷が「うんうん」頷いている。中村は感動している。瞳をうるませていた。
「おい、そんなわけないだろう。」
訂正をしてくるが遅かった。すっかり皆が「そうだったんだ」と熱い目で見つめていた。伊地知、大山らもあっけにとられている。
「彼らには家族がいるのです。生きているうちに会わせてやりたいと配慮だと思います。」
大久保は無言でぺしと叩く。
「なに。間違っていた」
ちらと横目で見たら耳が赤い。
「ふん」
鼻を鳴らした。
「余計なことを言うな」
「顔を背けているのは言いずらいことだから・・・」
ん?見てみた。少し首を傾けて。
この顔が小憎らしいと額を指ではじいた。ぴんと。
「こら。いい加減にして。この暴君さまめ・・・」
小さな声で最後は締めくくったはずなのにしかっり聞こえていた。耳を引っ張られていく。
「いたい、いたい、いたい」
悲鳴を上げるのに。「無視ですか。」そしらぬふりをしそっぽを向いている。皆が「巻き込まれるのはごめんだ」といっていた。


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