複雑・ファジー小説

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私は貴方たちを忘れない
日時: 2016/06/29 09:33
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

小鈴です。『貴方たちを忘れない』の続きを書こうと思います。
時代背景は幕末で登場人物たちも前回と同じ人たちが出てきますので読まれる方は前回からお願いします。注意としましてできるだけ史実にそい書いていきますが途中で捏造も入りますのでよろしくお願いします。
初心者ですので書き間違いもあると思いますが流してください。

主人公 楠 楓〈くすのき かえで〉十七歳少女
    立川 紫衣〈たちかわ しい〉十七歳少女
この二人を視点にして書いていきます。
登場人物 大久保 利通。桂 小五郎。西郷 隆盛。新選組。土方 歳三。

他にもいろいろ出す予定ですので、楽しみに待っていてください。  時代は1867年のころからです。

追加 大久保利通〈三十七歳〉桂小五郎〈三十四歳〉  

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.126 )
日時: 2017/02/17 17:37
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

「君はこのまま相原と名乗れ。土方歳三は死んだことにする。いいな」
つまりここにいるのは怪我をした患者。土方と言う男はいないということだ。カルテを書いていく南方に二人は背中に飛びつく。
「ぐっ」と声がしてベしゃと前の机につぶれる。
「流石は先生」
「話が分かる」
「おい、私の上から降りろ」
二人は慌てて飛び下りた。いかに優れた医者とはいえ二人分の体重は支えられなかった。ちなみに南方は元武士だ。筋肉もある。刀も扱える腕前はある。
「先生。ありがとうございます」
陽菜も涙ぐみながらもお礼を言う。しかしここは中立を保ってはいるが新政府軍がいつ来てもおかしくない。
「よかったです。あいはらさん?」
陽菜はなれない名前を口にしてベッドに横になっている彼に話しかけた。刀を枕元に立てかけてある。
「今から君は私の弟子だ。いいな。望月陽菜。」
決定事項だというように宣言をした。今一意味が分からない。
目をぱちくりさせている。
「あの、どうして・・・」
「ん?」楓が陽菜を見た。
「そのほうが都合がいいの」
「でも私はこの人のそばにいたいのです」
悲痛な声を上げる。
「わかるよ。陽菜ちゃんの言いたいことは、でもね。」
楓は厳しい現実を包み隠さず告げる。
「後ろ盾がなくてはあなたは無事ではすまない。」
「え?」
紫衣も続き声を低めてこういう。
「きっと投獄される。」
「覚悟の上です」
すると残酷な声が止めをさす。
「女と男では対応が違ってくるんだ。名前を偽ろうが旧幕府軍の人間には間違いない。とすれば捕虜にされることになる」
「はい」
真面目に話を聞く陽菜の姿に南方も隠さずに話す。土方はすべて任せるというように目を閉じている。狸寝入りだろう。
「まともな上官階級の人間ならうまくとりなして丁重にあつかってやるだろうが普通はそんな配慮はない。下手をすれば欲のはけ口にされる」
余りにもはっきり口にされて固まる。同じ女の楓と紫衣もだ。
「まさかそこまでするのか」というようにだ。ここまでは考えていなかったらしい。
「それは君たちも同じことだぞ。油断するなよ」
警告された。こくこくする三人。
「大変だな。保護者も」
くっくっくっと楽し気に喉を鳴らす男に恨み言を言う。
「人事か。君の同じだろうに」
「まったく肝心なことにはわかっていないんだ。陽菜は」
「相原さん・・・」
情けない声で男を呼ぶ。
「それはそこの二人も同じだ」
「先生。ひどい」
ぶうっと二人は頬を膨らませる。

紫衣はあの会津を思い出していた。八重の悲痛な声を・・・。
「いやです。私は尚之助様のそばにいたいのです」
川崎は冷ややかに妻である八重を置いていった。『きっと川崎様は八重様に生きていて欲しかった』だからどんなに泣かれようとも振り返らなかった。連れてはいけない。
そっと腕に触れる。ばっと陽菜は彼女を見た。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.127 )
日時: 2017/02/19 12:39
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

小声で陽菜を呼ぶ。「こっちに」外へ促す。がらっと開け閉める。
廊下に出ると二人は向き合う。
「陽菜ちゃん。土方さんはあなたに生きて欲しいと思っている。先生に頼みたいと」
「そう思う」
楓が廊下に出てきている。
「先生の弟子として相原さんの世話をしていればいいんじゃない」
陽菜はその言葉に紫衣を見た。優しく頷かれる。こうして女たちは働くことを決める。

南方からふいに言われてた。
「風呂にいけ」
と言われた三人は仕方ないというように風呂場に向かう。
「先生もお風呂にいった方がいいですよ」
ずけずけものをいうのは楓。
「匂うか」
こくり皆が頷く。ちなみに土方は綺麗に手拭で体をふかれて今は休んでいる。
「先生。着替えるものはありますか」
そうだな言いながら南方は荷物の入っている扉を開けた。それは両手で持ち開けるものだった。しかしそこからが悲惨だった。物たちが上から降ってきたのだ。悲鳴がぎっやぁぁぁと漏れる。
「先生っ」半ば恨みがこもった声で物の下じきからはいでてくる。
「なにこれっ」
「どうして降ってくるの?」
「うーん。わからん」
首を捻るだけだった。とにかく埋もれている中から小柄な少年兵の服を漁り出す。
「これを使え。ないよりましだろう」
「あの・・これをどうするつもりですか」
無言で首を振る紫衣。楓はあきらめたような目でいた。
「陽菜ちゃん。たぶんこれ。先生にやらせると同じになるよ」
「おい。だから私はできないんじゃない。やらないだけだ」
「「「・・・・」」」無言で南方を見た。
「なんだ。その目は」
と言って怒りながら歩いていく。
「ついてこい」
歩きながらそう言うともう、背中を向けている。慌ててついていく。廊下に出ると南方が風呂場まで案内しながら口を開く。真面目な話だ。
「とりあえずそのまま男装を続けていろ。その方が都合がいい」
長い髪を頭の上でしばり軍服を着ているだけの陽菜。楓は体系を誤魔化すためさらしをまいて首の後ろに適当に一つに縛る髪。だが、楓だけはしっかりと男に見えるようにしている。紫衣は長い髪を左に一つにまとめている。それだけでは男に見えない。
「この髪はうっとおしいな」
楓が長い髪をまとめたままつかむ。ぶつぶつ言う。
「懐刀あるから切る?」
紫衣までもそんなこと言う。
「おい、やめろ。私が怒られるだろ」
顔をしかめると反転した。仁王立ちになる。
「だってこんな長い髪している男はいないよ。」
鋭い突っ込み。
「ね。そう思うでしょう」
同意を求めてくる。
「男に見えないかな」
陽菜は南方に目をやる。
「見えないが・・・だからといって」
見えないとはっきり言われてぐさっと刺さる言葉に二人は肩を落とす。
楓はそんなことは知らないとばかりに不敵に笑う。この顔は勝手にやるつもりだなと察し黙る。人の話など知らないと聞く耳持たない。
「どうなっても知らないぞ」
警告だけ伝えている。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.128 )
日時: 2017/02/21 19:42
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

風呂場の前に立つと木の札を手にする。くぎが柱に刺さっている。そこに木札をかける。
「ここに木札を置いておく」
黒文字で【入浴中入るべからず】書いてある。南方は言うだけ言うと去っていく。
三人は脱衣所に入るとかごの中に着ている軍服をいれていく。髪をほどいてから体に湯をかけていく。手拭で汚れた体を綺麗にしている。すべての汚れを落とした姿は女だった。それぞれの個性が現れている。さっぱりできたみたいで嬉しそうだった。着替えをすませた三人は鏡の前に立つ。髪の雫をはらい一つにまとめると紫衣は懐刀で迷うことなく切り付ける。バッサリと長い髪に束は紙でつつみ髪紐でくるんで懐にしまう。目にした楓たちはあっけにとられている。
「先に切るなんて」
ふふと笑うと友の手から懐刀を受け取り楓が髪を切る。ばさりと首の後ろから下を切っていた。
「楓ちゃん。そんなに短く」
陽菜は驚きに口をぱくぱくとさせている。
「陽菜ちゃんはどうするの?」
しばらく迷いばっと面を上げると覚悟を決める。ばさりと次には切り落としていた。三人ともに短くなる髪型を気に入る。
「これでいいよね」
仕上げとばかりに湯で短くなった頭を洗い流す。手拭で髪をわしわしとふいていく。
「これから短い間かもしれないけどよろしくね」
楓が頭をふきながら空いた片手を差し出した。「?」よくわからずこてんと首をひねる。
「シェイクハンド。だよ知らない?」
と言うがイングリッシュがわからない陽菜は目を丸くさせている。
「こちらの言葉で握手と言うの」
紫衣が追加で説明をしていく。手と手を握り合わせるという。手と手を握ると言われ思い出す。両手をパンと合わせる。
「大鳥さんがあの人にしていた」
「うん。たぶんそれだと思う。大鳥さん?は知らないけどきっと西洋の知識があるんじゃないかな」
「うん。そうだと思うわ」
「陽菜ちゃん。言葉遣いは気をつけてね。」
忠告をしてくるのは紫衣だった。必要な言葉は必ず伝えてくる。
「ほら同じようにして」
左の手を差し出して待っている。おずおず片手を差し出すとぎゅと握り合い上下に動かす。

三人ともに着替えを終えて南方が待つ部屋に向かう。だんだんと近くによるうちに声が聞こえてくる。それも南方による地獄の特訓が行われていたのだ。彼は遠慮も容赦もしない。勉強ばかりはできようが実践で使えなければ意味がないと毒を吐く。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.129 )
日時: 2017/02/23 17:28
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

戻ってきたらそこは地獄だった。新人医師たちへの訓練が行われていた。
「おら、ぼさっとしてんじゃねぇよ。できねぇならすっこんでいろ。でくの坊」
容赦ない罵詈雑言が飛ぶ。
「新人。そこの使えねぇ奴を廊下に捨てて来い」
初めて血を見た新人は貧血になり倒れた。他の仲間が腕を持ち引きずっていく本当に廊下に捨てにいく。鬼かと思った。医者となった南方医師のしごきは本物であった。遠慮はしない。使えないと判断したら落第の烙印をペンと額に押す。そう言うところは木戸と同じ。
「命がかかってんだよ。勉強のできる奴なんていらねぇ。役立たずはすっこんでいろ」
怒鳴りつけられてびくびくしている新人たち。

気合いを込めて三人は現場に突入していく。白い軍服を身につけ自分のできることをする。
「先生。手伝います」
「こいつらの方がよほど使える」
三人を見てそう言う。南方は能力はあるものは認める。ないものは見捨てる。その中に必死にくいついていく新人もいた。振り向いた南方の目に飛び込んできたのは散切り頭になった三人の頭に固まる。
「なんだ。それは」
次には「その頭はなんだっ」と叫んだ。
「こんなに切ったら元に戻るのに時間がかかるだろう」
「「「はい」」」」正座をさせられて怒られていた。うなだれて話を聞いている。

その後の話。寝ている土方のお見舞いに来た三人は・・・。
「どうですか。体は」
ベッドに横になっていて薄っすらと目を開けていく。かっと目を開けた。飛び起きる。絶句した。次には鬼の形相になる。
「なんだその頭は」
怒鳴りつけられる。
「あの、その」
「言い訳はいらねぇ。どうすんだよ」
「すみません」
陽菜は素直に謝る。
「ここにいるにはこれが調度いいのです」
ぶすくれた楓は膨らませる。ぷうっと。すうっと息が吸う。
「バカか。」
予想をはるか超える大音量。きーんとなり慌てて両耳をふさいだ。うるさいというように。紫衣は大人しく怒られている。
「自分で切った?」
理解できねぇと目で見られた。陽菜は肩をしゅんとした。
必死に説明をして納得させた。疲れたように沈む。がくりと額に片手をあてている。
「すみません。相原さん」
「その名はなれねぇな」
小さく呟く。額から手をはずし苦笑した。

これより数日は穏やかに過ごせていた陽菜と土方は共にいるようになる。世話をしていた。だいぶ体調がよくなりつつあるが無理は禁物だ。

「相原さん。食事を持ってきました」
「ありがとう」
穏やかに笑い陽菜に目を向ける。途端に眉を寄せた。トレイにのせて膝の上にゆっくり置いた。
「あの、なにか」
嫌いなものでもあっただろうかと不安な顔をした。
「陽菜。お前寝ているのか」
目の下にくまができている。手を伸ばし陽菜の頬を撫でていく。それだけで赤くなる。その手から逃げるように顔をそらす。
「私だけではありません」
と言う。そのままめまいをおこしてぐらっと後ろに倒れていく。
「おい」土方がベッドからおりて腕をつかんだ。そのまま気絶した。


Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.130 )
日時: 2017/02/24 15:50
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

南方の自室。
南方たちは働き続けていた。西洋の時計で夜中の十二時を指していた。ここ三日間寝ていない三人は目の下にくまができていた。
「ここはもういい。君たちは休め」
「「平気です」」
声をそろえてそう言う。
「頑固だな」
「先生にはかなわないよ」
ふんと鼻を鳴らす。
「どうなっても知らないぞ」
楓は足元が危なげにもたついたが気合で立つ。ふうっとため息をつき疲れたように一度下を向くが面を上げて動いていく紫衣。
そんな日知たちを見ていた新人たちは
「あの人たちいつ休んでいるんでしょう」
皆もはたと我に返る。
「先生たちはたふなのか。」
不思議そうにしていた。

ぐらりとついに力尽き二人はそのまま倒れる。
「だから言ったんだ」
最後に南方が愚痴をこぼす。

気がついたら布団の上で寝ていた。ここは和室になっている。枕元に南方が座っている。
「負担をかけたくなかった」
「あいつらも使い物になってきたところだ。私も休む」
そのまま目を閉じると寝に入る。ぐうぐうと寝息が聞こえてくる。座り込んだまま寝ることが出来るほど疲れていた。
二人もそのまま寝る。

どのくらい休んだか南方は目を覚ます。二人はまだ寝ている。『さて陽菜をさがすか』部屋を出ていく。陽菜はどこをさがしてもいない。どこかで倒れているのかと心配になる。陽菜のことも弟子として可愛がっていた。廊下は朝日が差してくる。最後に土方のいる部屋に入る。こんこん戸を叩く。声をかけてがらりと開けた途端に目にしたものは・・・。絶句・・・。『何故ここにいる』拳を握りしめる。
「なにやってんだよ」
渾身の叫び声をあげた。


土方は陽菜を自分の腕にしっかりと抱え込んでそれはそれは穏やかな顔をして寝ていた。南方がきたことにも気が付かずに。陽菜は土方の腕の中で幸せそうに頬を土方の胸にすりよせていた。

南方が叫んだとたん土方はがばと体を起こして構えた。

別の部屋で寝ていた二人も飛び起きた。
「なにごと」
「ん?」
体を起こし不思議そうに顔を見合わせる。まだ寝ぼけている。眠い目をこすりながら声をした方に向かう。
その頃の新人たちは何事かと起きてきたが、なんとなく空気を察し部屋に戻る。

「先生朝から何事です」
楓が入り口に立ち南方に問いかける。
「こいつら同じ布団で寝ていたんだぞ」
「いいじゃないですか。そのくらい」
楓がそういうと紫衣もこくり頷く。
「おい、まて」
つっこみを入れる。
「相原君」
土方へ冷たい目を向けている。
まだ寝ぼけている土方は頭をかきながら説明をする。
「先生。こいつはずっと働きずめでくまができていた」
「わかっていた」
己の責任を感じてくしゃりと顔をしかめる。
「相原さん。先生を責めないで。」
「うん?」
後ろにいた陽菜が土方にくってかかる。
「それに寝ないで働いていたのは先生たちも同じです」
平気そうにしているから忘れていた。
「そうだな」苦笑を浮かべて陽菜の頭を撫でていた。きゅんと目を閉じる。大きな手の平の感触を感じていた。大人しく陽菜はされるがままでいた。
「おい、話をすりかえるな」
「先生。落ち着いて」
楓と紫衣が両側から押さえつけている。
「それに一緒に寝るぐらいいいじゃないですか」
聞きづてならないことを聞いた。
「なんだとっ」
「私も昔。桂さんと一緒に寝たことあります」
「は?」目を点にさせる。さらに驚くべきことがおきる。
「私も大久保さんと共に寝たことあります」
口をぱくぱくさせている。何も言えなくなる。


それを見た土方はぼそりという。
「先生も大変だな」
と視線を外しながら陽菜の頭を撫で続ける。




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