複雑・ファジー小説

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私は貴方たちを忘れない
日時: 2016/06/29 09:33
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

小鈴です。『貴方たちを忘れない』の続きを書こうと思います。
時代背景は幕末で登場人物たちも前回と同じ人たちが出てきますので読まれる方は前回からお願いします。注意としましてできるだけ史実にそい書いていきますが途中で捏造も入りますのでよろしくお願いします。
初心者ですので書き間違いもあると思いますが流してください。

主人公 楠 楓〈くすのき かえで〉十七歳少女
    立川 紫衣〈たちかわ しい〉十七歳少女
この二人を視点にして書いていきます。
登場人物 大久保 利通。桂 小五郎。西郷 隆盛。新選組。土方 歳三。

他にもいろいろ出す予定ですので、楽しみに待っていてください。  時代は1867年のころからです。

追加 大久保利通〈三十七歳〉桂小五郎〈三十四歳〉  

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.1 )
日時: 2016/06/21 12:12
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

1867年この年の話。11月。
土佐、長州、薩摩の三藩の会合の席にこの男がやってきた。
「いやぁ。ようやく手に入れたよ。」
にやにやとしながら部屋の中に入ってきた。彼らはいっせいに朝日奈を見た。相も変わらずの派手な着物だ。背中にはのぼり竜がいた。南方柊は視界に映したことを後悔した。それに着物の柄に金が使われている。もうなにもつっこみはいれない。
「新選組もようやく内部から崩れてきたみたいだ。」
気の抜けた口調と態度のまま皆のいる襖側に座る。新選組と聞き全員が反応した。大久保が憮然として言う。
「だが、それが真かどうかはわからんだろう。」
「おやぁ。大久保君は俺の情報があてにならないというのかい?」
心外だな。とにまにましてふざけた態度を改めもしない。腹が立つこと。しかしこの男は使えはするので誰も何も言えない。南方が手にしている扇子をぶん投げた。それすらわかっていたのか懐の鉄扇でバシッとはたき落とした。二人の間に火花が散る。朝日奈は扇子を拾うとパタパタと仰ぐ。
「御陵衛士?だっけあいつらは俺たちの考えに近いよ。」
「確かに坂本君の情報は伊東からの情報だった」
皆真剣な顔をして黙る。
「だからといって本当に新選組と手を切ったかは信用はできない」
新選組せいで多くの同志を失った桂が口にした。
「だったら密偵を送ればいいじゃない?」
にっこりと笑う彼に「「「密偵」」」と声をそろえたのは桂、大久保、南方だ。
「おい、変態。何をたくらんでいる」
きりきりと眉を吊り上げて南方が詰め寄る。それに嫌そうにしながら
「君は・・失礼だね。俺は何か間違ったことを口にしたかい?」
ふざけた態度を変化させて皆を見回した。
正論だ。しかい引っかかりを覚える。密偵なら怪しまれないように女がするのが一番だ。
「朝日奈さん。密偵というからにはあてがあるのですか?」
他人行儀にあっという間に戻ってしまう。さすがは桂小五郎すきは作らない。
「あるよ。いい人が二人もね。」
指を二本立てた。
「頭の回転が早く物事をよく見てから行動できる女の子。」
嫌な予感がする。
「一応聞いてやる。誰だ」
「楓ちゃんと紫衣ちゃん」
名を告げたとたん全員から殺気を向けられた。朝日奈は身の危険を感じて本能で襖の戸を開けて逃げようとした。『殺される』この時本気でそう思った。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.2 )
日時: 2016/06/24 14:20
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

大久保は低い声で言った。
「寝言は寝てから言え。」
「え?・・・・ちょっと待って・・・・」
大久保らが怒るのはわかるが、後藤や乾までも「何を言っているんだこいつ」という目で朝日奈を見てきた。目的のためなら手段を選ばない彼らですら反対の意見をするなんて驚いた。
「「お茶を用意しました」」
二人の声が聞こえてきた。
「入れ」と大久保が言う。
「ねぇ。二人とも話聞いていたでしょ。」
にいとふくみをもって聞かれた。
「盗み聞きとは感心せんな。」
うっとつまりながら楓はお茶を差し出す。
「それは・・・どうしても気になって」
「政ごとには口をはさむなと言わなかったか」
じろりと睨まれた。
紫衣は桂に差し出した。
「紫衣。これ以上巻き込みたくない。口をはさまないでくれ」
はっとしたように面を上げる。この人は大切な人をあまりに多く失いすぎている。しばし瞳をさまよわせる。この人を傷つけたくない。でも今はやるべきことがある。
「ごめんなさい。それでも私は・・・」
言いかけやめてしまう。いろいろ考えて心が痛くなる。下を向く。見かねた南方がその先を促す。
「紫衣。言いたいことがあれば言え。」
「?」
首をかしげて南方を見てくる。
「言いたいことがあるのだろう。」
さらに後藤が珍しく助け船を出した。それに勇気を得て続きを言う。
「はい。私は・・・私で役に立てることがあるなら行かせてください」
ここまで自分の意見を口にするのは珍しいことだ。桂は驚いていた。忘れてしまいそうになるが彼女は弱くない。こうと決めたなら真っすぐに突き進むことができるのだ。


こちらも同じように楓が口にした。
「坂本さんのことで借りを作ったでしょ。お礼ぐらいは言わないと」
不敵に笑う。
「それに・・・新選組の情報も知りたいでしょ。私たちは絶対に足を引っ張らないよ」
「・・・」
ただ無言となり大久保は楓を睨みつけていた。
「あはは・・・彼女たちの方がとっくに覚悟を決めちゃっているよね」
さすがと愉快そうに笑っていた。「黙れ」大久保は朝日奈に目を向けた。ぱくんと口を閉じる。その眼光と低い声にこれ以上はまずいと思った。青筋が浮かんでいた。
『楓」ちゃん。それ以上はまずい。』
男の様子に気が付いた彼らは思ったが何も言えなかった。
「大丈夫だよ。もし捕まったとしても何も言わないし余計なこともしないから」
「誰がそんなことを口にした。私は一切関わるなと言わなかったか?」
ついに大久保の堪忍袋の緒が切れる。雷を落とした。キーンと鳴るほどの怒鳴り声を出された。楓は耳をふさぐ。忌々しいと両手を耳からはずさせた。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.3 )
日時: 2016/06/24 15:47
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

耳をこれでもかと引っ張られていた。ぐいーと
「いたい、いたい、いたい」
と楓は悲鳴をあげているのに大久保には無視をされた。
「大久保さん。落ち着いてください。」
あわてて南方が大久保をなだめていた。はたからみたらかなり大人げない姿だった。
「でも今のは楓ちゃんが悪いよ。大久保君が怒るのもわかる」
乾退助が口にすると彼はふいと顔を背けてしまう。
乾たちに顔を向け次に大久保を目を向けるとため息をつく。『どうやらすねてしまった』らしい。『本当に面倒な人』本心は口にしたりしないのだから。
「わかっていますよ。あなたの気持ちぐらい」
そらされる顔に声をかけるがらちがあかない。
「少し席をはずしていいですか?」
皆を見てから表情を引き締め彼に言う。
「立って、場所を移動しましょう。」
腹を割り話をしなくては納得しないだろう。彼女の意思に気が付かない男ではない。別の部屋でお互い無言でいた。
「大久保さん?」
優しく話しかけるとようやくこちらを見た。
「私はあなたが大切だよ。」
ずっと視線だけはそらされていたから楓はさらに唇をほころばせる。ようやく話を聞くつもりになったらしい。彼は強いでも本当は違う。感情をすべて身の内に隠すだけなのだ。だから心配なのだ。
「いつも思っていた。あなたの背中は遠い。追いつきたいのに・・・」
「それは違うだろう。好きに飛んでいくのはお前の方だ。」
渋い顔を作っていた。眉間のしわが刻まれた。『何故・・?』
「どういう意味。それ」
いぶかしんだがあえてそこにはつっこまない。
「危険なことはしないよ。女中のふりもするし、ばれそうになったらはぐらかせてみせるから」
心をこめて口にした。優しい笑みさえたたえ女の顔をしていた。もう子供ではない年となっていた。正面から抱きしめられ楓は畳の上に膝をつくと腕を回した。
「無茶はするな。まずいと思ったら逃げろ」
真剣な声を出して言う大久保に「はい」とだけ返事をした。二人は見つめ合うと楓は目を閉じる。大久保は身をかがめるとそっと唇を重ねた。
恋人同士の短い逢瀬をかわした。
唇を重ねるだけなのに楓は照れてすぐに頬を染めてしまう。姿ばかりは大人だというのに仕草は子供そのものだった。
「まったく。いつもしているだろうに、」
あきれたように言われ頬を今度はふくらませた。
「だって・・・・」
くっと喉を鳴らすと大人の色気をもってみてくる。くしゃりと頭を撫でられた。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.4 )
日時: 2016/06/27 19:03
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

一方で部屋に残った男たち。
「南方先生。私にも役に立てるなら密偵をやらせてください。」
南方に向かい静かに頭を下げて懇願してくるのだ。それを冷めた目で見つめていたのは南方だった。横目でちらりと桂に視線を流すが無言でいた。
「わかっているのか。これは遊びではない。楓は状況に応じて動けるが君はどうなんだ?」
つまり実際のところどうなるかわからない。楓の足を引っ張ることなく判断して動けるのかと言われた。厳しい先生の意見に怯みそうになる。迷いは弱さにつながる。刀を突き付けられたとしたら怯えないでいられるか。血を見ても叫ばずにいられるか。そんなことはわからない。
「それは・・・」
ばっと面を上げた。言葉を濁し視線をそらす。この迷いが命とりになることを知らない。
冷たい声でたしなめてくる。
「紫衣。わかっているだろう。」
わかるだろう。楓の足を引っ張ればそれは邪魔にしかならない。
「はい」
彼女はしゅんとまた肩を小さくさせうつむく。わかっていた。頼ってばかりではだめだと。きちんと考えて答えを出さなくては楓なら迷うことなくはっきりと目を見て答えるだろう。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.5 )
日時: 2016/06/28 20:35
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

楓ならば「出来ます」と真っすぐ顔を上げて相手を見返すことができる。しかし紫衣にはまだそれができない。迷いがうまれる。しばらく考えていた。やりたいことはある。桂さんのそばにいたい。支えになりたいのだ。ばっと面を上げた。もう、迷わない。
「やれます。迷惑はかけません。足も引っ張りません。私にできることをします。」
今度は人が変わったようにそらさずに南方を見た。ため息を小さくついたのは桂だった。
「本気なんだね。わかっていたよ。君は覚悟を決めたら折れないことを」
あきらめたように苦笑された。一度桂をみて次に南方をみて紫衣は何か思うことがあったのか口を開いた。
「すみません。先生。桂さんと少し話をさせてください。」
きちんと彼と話をしなくてはならないと考えてのこと。
「いいよ。いっておいで。どうせまた、一人でごちゃごちゃ考えているのだから」
頭のかたいこいつのことだと鼻で笑う。むかっとしたのか睨んできた。
「・・・」
「おい。その顔。やめろ」
桂は「黙れ」と目で語る。唇は薄く弧を描いているが瞳は少しも笑っていない。能面のような顔であった。「早くいけ」と手でしっしっと追い払う真似をした。
桂と紫衣の二人は空いている部屋に移動した。


それを見送ると男らは口を開く。
「南方君は相変わらず。桂君を操るのうまいよね」
にやにやしながら朝日奈が言う。バカにしているのかこいつ。
「おい、まだいたのか。」
じろりと睨むが気にしない。
「しかし、それについては同じ意見だ。」
後藤が頷いた。
「楓ちゃんにも驚いたけどね。あの薩摩の頭脳をこうまで手なずけてしまうのだからね」
本人が聞いたなら激怒することを平気で口にする乾だった。



別の部屋に入ると二人は向かい合い無言で座っていた。
「桂さん。大丈夫です。無茶はしません」
にこりと笑った。凛と咲くかっこいい花ではなく、小さな花だが誰もが目を奪われる可愛い花だ。
「わかっているよ。君はいつもそうやって私の手から離れていってしまう」
さみしそうに口にされて困ったように眉をよせた。
「ごめんなさい。」
とたんに何故か泣きたくなってしまう。
「顔を上げて。君は間違っていないと思っているんだろう」
こくりと下を向いたまま顎をひく。桂はすいっと両手で頬を包み込み面をあげさせる。
顔をあげた紫衣の双眸は今にも涙が零れ落ちそうなほどうるんでいた。だというのに決して泪はこぼれない。一年前ならきっと泣いていた。今泣かないようにか彼女は唇をかみしめ耐えていた。


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