複雑・ファジー小説

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私は貴方たちを忘れない
日時: 2016/06/29 09:33
名前: 小鈴 (ID: ZfyRgElQ)

小鈴です。『貴方たちを忘れない』の続きを書こうと思います。
時代背景は幕末で登場人物たちも前回と同じ人たちが出てきますので読まれる方は前回からお願いします。注意としましてできるだけ史実にそい書いていきますが途中で捏造も入りますのでよろしくお願いします。
初心者ですので書き間違いもあると思いますが流してください。

主人公 楠 楓〈くすのき かえで〉十七歳少女
    立川 紫衣〈たちかわ しい〉十七歳少女
この二人を視点にして書いていきます。
登場人物 大久保 利通。桂 小五郎。西郷 隆盛。新選組。土方 歳三。

他にもいろいろ出す予定ですので、楽しみに待っていてください。  時代は1867年のころからです。

追加 大久保利通〈三十七歳〉桂小五郎〈三十四歳〉  

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.86 )
日時: 2016/11/30 15:06
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

二人は声を上げてわぁわぁと泣き続けた。『いまだけ、どうかいまでけこの子たちにやすらぎを』願わずにいられない。
「ほかの人たちを探そうね。きっと生きているはずだから」
と言うと彼らは涙をふいて顔を上げた。その顔は軍人の顔に戻っていた。

別の場所。飯盛山。山頂にて。
城下ははや紅蓮の炎を上げ君主の下ります。鶴ヶ城はまったく黒煙につつまれて天守閣など今にも焼け落ちるかと思われた。この惨状を眺めて皆言葉をなくし立ちつくしていた。力尽きたのだ。がっくりと両膝を地面につけへたりこんだ。
「お城が燃えている」
「よく見ろ。あれは御城下の屋敷だ。」
「若松城は天下の名城だ。例え炎えようと落ちてはいないはずだ。」
井深茂太郎が言う。
「どうする?討ち死に覚悟で戦うのか」
「そうだよ。このまま何もせずただ死ぬのは武士にとって恥にならないのか」
「だとしても、皆は空腹で怪我している。こんな状態で戦うことはできない」
西川が言う。
「つかまっては恥の恥になるよな。潔く腹を切ることこそ武士の本分だな」
篠田が最後に言い、振り返る。皆は泣いていた。
「泣くなよ。よくやったさ。俺たち」
「うん」と頷いた。そして覚悟を決めていく。
「お先にまいります」
腰に怪我をしていた永瀬雄二だった。腹を切ってしまう。八重の言葉を聞いていた。【死にいそいではいけません】すぐさま皆に声をかける。伊東悌二朗は「まっ」あわてて止めてとしたが間に合わなかった。次々に自刃をしていく。仲間たちに涙をこぼしていく。銃をおき刀を引き抜き喉をついた。腹をさして見事な自刃をしていた。
「八重様・・・申し訳ありりません」
伊東も皆のあとに続く。
「皆と共に」
喉を突いたのは飯沼貞吉だった。西川勝太郎は最後であった。彼らの介錯する役をしていた。山下を歩く人に気が付く。
皆のことを頼むとそれだけを言い残し自刃を果たした。

そこを歩いていたのは紫衣だった。はっとして顔を上げた。「まっ」
止めようとしたが間に合わなかった。
「い・・いやぁぁ」
悲鳴を上げていた。あまりのことに立ちつくしていた。


Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.87 )
日時: 2016/12/03 10:32
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

『お願いだから生きていて』悲鳴を上げて涙が次々とあふれていく。あまりの現場に紫衣は体が震えていく。『だめ臆しては』必死に歯を食いしばる。そこはまさに地獄のような場所になっていた。15、16歳くらいの子供たちが折り重なるようにして倒れていた。あるものはお互いに刺し違えてまたあるものは喉を貫いてそして腹を刺していた。血と泥にまみれながらの最期であった。生きているものはいないのかと必死にさがした。
「うそ、うそ、うそ。こんなの嘘よ。」
見知っている子供を見つけてしまう。
「貞吉さん。儀三郎さん。」
もう、息をしていなかったように見えた。見事なまでの武士であった。彼らは最後まで会津の武士の生き方を貫いた。〈ああ、声が聞こえる〉
〈強情だと叱られても不器用だと笑われてもそれが会津武士の生き様〉
ならぬことはならぬのです。許せるものは許せぬのです。と言い屈託なく笑い合う姿が今でも思い出せる。

両膝を地面につけて彼女は泣き続けた。彼らのために。冷たい風にあおられていく。やがて手の甲で頬をこすりつけると立ち上がり一人一人の顔を見ていく。綺麗にしてあげようと思いつき手拭を取り出して土と血で汚れてきった彼らの顔を拭いていく。誰一人生きているものはいない。絶望しかない泣きながらも汚れを落としていく。
「貞吉さん」
頬に手を伸ばした時、手をつかまれた。「え?」大きく目を開けた。生きていた。
「・・・」
何か言おうとしている。喉からは空気がもれて何を言いたいのかわからないもどかしく思う。喉を刀で突いたのだ。血を止めないと。
「しっかりしてください。」
血を止めようとした。荷物の中から布を細かくして首を絞めるわけにいかないので傷をおさえるだけにした。

飯沼貞吉は喉を刀で突いたが急所をはずれていたため死ぬことができずにいた。血にまみれていたが生きていた。
「生きてください。・・・死なないで」
飯沼は声に惹かれて目を薄っすら開けた。

紫衣は必死だった。例え飯沼が死にたいとわかっていたとしても助けたかった。手当てをすませて彼を安全な場所に預けるため寺を目指す。背中に背負い立ち上がろうとしたが、やはり重かった。よろけ転びそうになる。あきらめずに足に力をこめて強い目をして歩き出す。

他の子供たちは申し訳ないが何もできずにいた。今は飯沼貞吉を助けることを優先したかった。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.88 )
日時: 2016/12/05 19:06
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

8月23日後続部隊の新政府軍が到着した。薩摩の大山巌だった。彼は砲撃隊の隊長だ。火縄銃の届かない射程距離に大砲を設置して若松城をめがけて攻撃を開始した。会津兵は次々と砲撃をうけて抵抗することができずにいた。すると八重は狙いをさだめて引き金をいっきに引いた。
「ならぬことはならぬものです。」
銃をかまえたまま小さく呟く。
大山は旗を掲げて下に下ろした瞬間大砲をうってくる。しかし直後攻撃が止む。

八重が放った弾は旗を振っている男に命中した。
「大山様ー」
新政府軍は動揺したのかその後の攻撃は止まる。右太腿に弾があたっていた。
「敵の大将をしとめたぞ」
少年兵が叫ぶ。次にはわぁ。と歓声が上がる。いっきに士気が上がった。
「命中」
と言うとにこっと八重は笑う。
「どうやらすぐれた狙撃手がいるみたいですね」
楓が感心していた。ふーんとキラキラとした目で大山の右太腿の手当てをしていた。
「楓さぁはいけんしてそげに嬉しそうなんだ」
少しだけ引き気味になっていた大山であった。

「今のうちに行って」
楓は峰治と又八の二人を城へかえす。何故か銃声が止んでいた。不思議に思いながら楓は彼らと別れた。

薩摩本陣に戻ると大山巌が右足を負傷していた。
「あそけは女や老人や子供しかおらんはずだが・・・」
弾を抜き取り傷口に消毒をほどこして包帯でしばる。
「ちょっとどこにいくつもりですか?」
杖代わりに刀を使い歩き出した。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.89 )
日時: 2016/12/06 13:20
名前: 小鈴 (ID: JQzgI8be)

「こんことを報告にいかねばならん」
大山は怪我した足を引きずりながら歩いていく。それを楓は呆れた目をしていた。

酒井と伊東は城に戻った時に知る。ごくわずかしか戻ってこられなかったのだ。
「では、儀三郎たちはどうなったのですか?」
二人は日向隊長とはぐれたことを知った。
「きっと立派に勤めを果たしているだろう」
背中を向けながらも言う。
「どうやってです?儀三郎たちは初陣だったのですよ。隊長とはぐれどうやって戦えというんですか?」
「よせ。峰治。隊長に向かって」
上のものに止められるが、やめない。
「いいえ。いくら隊長といえどもこれだけは言わせていただきます」
又八も同じようにくってかかる。自分たちは運がよかったのだ。「楓様に合わねば生きていなかった」

その時八重がやってきて二人をいさめる。
「又八さん。峰治さん。他の人たちに会いましたか?」
一体何があったのかと兎に角引きはなし話を聞くことになった。
「八重様。実は・・」
これまでのことを話して聞かせる。
「そう・・・」
全ての話を聞いた八重は目を閉じる。確かに運がよかったと考える。そうでなくては生きていなかった。

そのあとに伝令役がやってきて告げる。
「飯盛山のふもとにて」
「え?」皆、耳を疑う。
「山のふもとでみつかったそうだ。見事な最後であった」
男は女たちに聞こえるように大きい声で名前を告げていく。
「自刃をはたしたもの。篠田儀三郎。伊東悌二朗。池上新太郎。石山虎之助。井深茂太郎・・・・西川勝太郎以上16名だ。」
泣き崩れる母親たち。
八重もその中にいた。
「悌二朗さんたちが・・・」
手をきつく握りしめる。
「儀三郎たちが、そんな」
「俺たちも一緒にいたはずなのに」
どこかで生きていると信じていた。楓の言葉がよみがえる。〈生きてさえいれば必ずいいことがある。だから、あきらめないで〉

生きていたっていいことなんて何もないじゃないか。大切な友を失いそれでも生きなくてはいけないのか。苦悩をした。
「や、やっぱり・・ひっく。僕らは・・ひっく生きて戻っては・・ひっく」
「いけなかったのでしょうか?」
八重は二人の頬を平手打ちした。ぱしっと音がした。
「そんなことない。」
強い声でさえぎられる。泣きながらも怒っていた。こんな顔を楓もしていたと思い出す。
「生きなさい。あなたたちは生きなくてはいけない。」
泪でぐしゃぐしゃになっていたがはっきりと言われた。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.90 )
日時: 2016/12/07 14:23
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

理不尽なことばかりが続いていく。
「そうだ。生きろ。」
川崎がやってきて八重を慰めていた。彼は八重の夫だった。ふっと周りを見ると子供たちの母親たちは泣き崩れていた。
「君たちの母君たちだって内心ではきっと生きて欲しいと望んでいるはずだ」
じわじわと涙がにじんでくる。耐えきれずに川崎尚之助に飛びついていった。
「今は泣きなさい。思いっきり泣いて、そしたらまた顔を上げて戦えばいい」
「「はい」」八重も二人を慰めるように肩に手をのせる。

23日中野竹子たちは娘子隊は城の外にいた。高瀬村にて会津兵士らと合流した。
「私たちも共に戦いと思います」
「女を戦場に連れていけば奴らに兵がつきたとバカにされる」
「連れていってくだされぬのならこの場で死にます」
といい女たちは迷うことなく小さな刀を首に押し付けた。本当に喉を突こうとした。
「ま、まてはやまるな」
慌てて止めると仕方なく許可をした。

8月25日。湯川にかかる柳橋のたもとで城下より攻めてきた長州兵と激突した。
「女や、いけどりにしろ」
すぐに女と知れ捕らえろと支持を出してきた。薙刀をふるい必死に戦う。
「ねぇ。ここから戻れたら八重さんに銃を習いましょう」
「そうですね」
その時、竹子の額に銃弾が命中した。
「竹子ー」
叫ぶ声がした。

神保修理の妻雪子は捕らわれた。両手を木に縛られて身動きをとれなくされていた。
「女か上に報告して何とかしよう」
「その必要はありません。そのかわり脇差をおかし願いたい」
雪子は男によりひもをほどかれた庭の木から解放されると脇差をかりた。
「名のある家の妻か。名乗れば夫の恥になる。ならば三途の川を渡るときには誰それの妻と名乗りや。」
言うだけ言い男は去っていく。心で感謝をして鞘を払う。首に押し付ける。
「神保修理の妻雪子。旦那様。おそばに」
それが最後だった。迷いなく、斬りつけた。小さな声で呟いたがとどいたであろうか。


なんとか1日目を乗り切る。八重は昼に夜襲の計画を立てていることを知っていた。どうしても戦場に行きたい八重は夜襲ならばと考えた。
「時尾さんにお願いがあるの」
「なぁに。八重さん」
鏡の前に座り自分の髪を一つにまとめていた。蝋燭の僅かな明りをたよりににらめっこをしている。
「本当に夜襲にいくつもりなの?」
「私は三郎の仇をうちてぇ。そのためならなんでもする」
「本気なのね」
「ああ、私は何時でも本気だ。自分じゃきれねぇから切ってくんろ」
「綺麗な髪なのにもったい」
後ろに立ち友は悲し気に言う。
「また伸ばせばいい」
「わかった」
ばっさりと長い髪を切り落としていた。長い髪は後で庭に埋めた。
腰に刀をゲベール銃を担ぎ城の外に出ていった。スペンサー銃は1日目で弾をうちつくしていた。

新政府側。皆は体を休めていた。
「夜襲。夜襲だ」
どこからともなく声が響く。楓はその声に飛び起きた。銃声がした。すぐさま小刀をつかみ襲い来る敵兵の攻撃を受け止めた。上からの攻撃に必死に受けるだけでいっぱいだった。
「楓さぁ」
大山が兵士を蹴り飛ばした。
「どうしてここに?」
「夜襲だと聞いて」
敵も味方もまぎれて戦っていた。





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