宇宙の中で ―HANABI― 秋桜 ◆AxS5kEGmew /作

第三話
休み時間になり、私は目で三好さんを探した。
三好さんは、車イスを器用に動かし、教室から出ていく所だった。
私は廊下に出た。もう十一月の半ばなので、廊下は身震いするほど寒い。
「あのっ・・・・・・三好さん」
私は呼びとめた。
「・・・・・・何?」
面倒臭そうな声だ。振り返らない。
「さっきは、ありがと・・・・・・」
三好さんの不機嫌な様子に、身がすくみ、語尾が小さくなった。
「ああ、そんな事」
三好さんは短く言う。続けて、
「佐々木さんって、誰のためにウソついとん? 見とってアホらしいで」
さっきよりもっと素っ気無く言った。
また、車イスを進める。私も、呼び止めなかった。
授業中、数学の佐藤先生の高い声が、ボンヤリと耳に入ってくる。
私は窓の外を見た。空は晴天なのに、とても寒そうだ。窓に霜が降りている。
私は三好さんの事を考えた。
――ウソついてるって、どういう事なんだろう。分からない・・・・・・全然分からない。何であんな態度なんだろ。悪い事言ったかな――
とりとめの無い事が次々と頭に浮かんできた。
頭が痛くなり、考えるのをやめた。
「友里、今日帰り道、買い物行こうよ」
放課後、駐輪場で陽子が話かけてきた。
「いいよ。2人で遊ぶの、久しぶりだし」
「えっ、2人じゃないよ。優子とかミヤもいるけど」
陽子は顔の前で大きく手を振った。
「また、それか・・・・・・。ねぇ、今日は2人で遊ばない?」
そのメンバーで遊ぶと、私は決まって「いじられ」役だ。私を「いじる」事で、グループの輪が盛り上がる。
でも、その役も少し疲れてきた。たまに、度を越す時もある。
「だって、もう約束しちゃったしー。友里も行くって言っちゃったんだよ。勝手な事言わないで」
陽子が不機嫌になった。一度ヘソを曲げると、陽子はなかなか機嫌が直らないのだ。
陽子の不機嫌な顔は見たくない。
「分かったって。そんな怒んないでよー」
私は笑った。
「もうっ、今回だけだぞっ」
陽子も笑ってくれた。ほっとした。
「大体さ、あんたネクラなんだから、話続かないじゃん」
陽子は声を出して笑った。
でも、でも。私の話がつまらないと言ったのは、陽子だ。
「陽子ー、友里ー!」
優子とミヤちゃんが、ファンシーショップの前で手を振っていた。
――遊ぶ場所も決まってるんだね――
そう思った自分に驚いた。
――私はこんなに皮肉屋だった?――

小説大会受賞作品
スポンサード リンク