宇宙の中で ―HANABI― 秋桜 ◆AxS5kEGmew /作


第十八話



目を開けると、天井が霞んで見えた。ユラユラとゆれていた。
私は手の甲で目を擦る。手の甲は、濡れていた。
昔の夢を見た。鈍臭かったよなぁ、と笑う。また、なきそうになった。

――助けて――

また、聞こえた。私は聞かないふりをする。
その時、体がふわりと持ち上がった。
「え・・・・・・?」

――私は、叫んだ。喚いた。あんたに助けを求めた。何度も、何度も!――

頭の中に大きく響いた。
いつもと違うのは、まるで、私に向かって語りかけているような気がすることだ。

――なのに・・・・・・あんたは私の声を聞こうとしなかった。私の叫びに、蓋をした。振り返ろうとしなかった!――

体が勝手に立ち上がる。抵抗しようとしたが、能はまるで、声に支配されたようで、いう事を聞かない。
足が上靴の中に入る。
足は、保健の先生の机に向かっていく。そして、椅子に腰をかけた。
手が痺れる。私の腕が向かっていく先を目にした時、私は恐怖で顔が引きつった。
――カッターナイフ。
「ひぃっ・・・・・・」

――だったら・・・・・・あんたが消えればいい。死んでしまえ!――

最早、私の体は私の物ではなくなっているようだ。指が、カッターの歯を出していく。
「やめて! お願い、助けて・・・・・・」
声がかすれた。心臓の鼓動が早くなる。

――あんたがいるから、私は抜け出せない。だから、消えろ――

声は、消えろ、と何度も何度も言う。
カッターの歯が、手首に当たる。声が出ない。

――死ね!――

声は、低く叫んだ。その声は憎悪に満ちた声であり、どこか哀れんでいた。
私の右手が思いきり手前に引かれた。

溢れんばかりの血が手首から流れた。

「何やってるの!」

保健の先生がドアを開ける音や、叫び声がとても遠く聞こえた。