宇宙の中で ―HANABI― 秋桜 ◆AxS5kEGmew /作


第七話



「あの・・・・・・三好さん?」
私は何故か、喋らなくてはいけないような気がして、三好さんに話かけた。
「・・・・・・誰?」
「私、佐々木。佐々木友里です」
「ああ・・・・・・」
三好さんが寝返りを打った様子が、仕切りのカーテン越しに分かった。
「何?」
「えっと、前私にウソついてるって言ったじゃない。あれ、どういう意味かなって」
つまらない事を聞いてしまった。そんな前の事、どうでもいいのに。
「そのまんま」
三好さんは、素っ気無く言った。
「そのまんまって・・・・・・」
「腹立つことされても、へらへら笑うやん。それって、自分にも皆にもウソついとるって事やろ」
「そっ、そんなっ。私、腹なんて立たないよ」
「へぇ」
三好さんは、全く信用して無い声で言った。

「三好さん、寂しくないの? いっつも一人でさ」
長い沈黙を破ったのは、また私の質問だった。
「全然」
三好さんは短く答えた。そして、
「佐々木さんは寂しないん」
と、逆に質問して来た。 「・・・・・・何で?」
「あんなに大勢で、寂しないん」
「ごめん、言ってる意味、分からない」
三好さんは黙った。
「・・・・・・三好さん、クラスで浮いてるよ」
私は、自分の口から出た言葉に驚いた。
「仲間外れにされてるでしょ」
意地悪な言葉が、次々に出てくる。止まらなかった。
「喋り方とか・・・・・・」
「ちゃうよ」
私が言い終わらないうちに、三好さんが言った。
「うちが仲間外れにされとんちゃうよ。うちが皆を仲間外れにしてんねん」
「・・・・・・それってさー、負け犬の遠吠えじゃないの」
今までで、一番意地悪な声になった。
言い過ぎたと思う。どうして余計な事まで口走っちゃったんだろう。
「佐々木さんって、卑怯やな」
「・・・・・・え?」
「卑怯や」
三好さんは、天井を見つめたままはっきり言った。
思い切り素っ気無く。

その時、三好さんの体温計が鳴った。
三好さんがベッドから出て行く。

――平熱なんで、戻ります――

――いいの?――

――はい、失礼しました――

会話が、カーテン越しに聞こえた。
聞きながら、もし体温計が鳴らなかったら、どんな顔をして、何と答えていただろう、とぼんやり思った。