宇宙の中で ―HANABI― 秋桜 ◆AxS5kEGmew /作

第六話
悲鳴に驚いて起きてきた両親には、怖い夢を見た、とウソをついた。
確かに、少しムッとするときはある。
でも・・・・・・死ねだなんて。
そんな事、私は思っていない。絶対に。
「おはよ、友里」
靴箱で、陽子に頭をポンと叩かれた。
――触るな――
あの声が、また聞こえた。
私の膝は、小刻みに震えている。
「友里・・・・・・?」
陽子が顔を覗きこむ。
私は目を閉じ、大丈夫、と自分に言い聞かせた。目を開ける。
「ううん、何でもない」
私は笑い、教室へ向かった。
教室に入り、席につくと、優子がやって来た。
「おはよー! 筆箱チェックの時間だよ」
――黙れ。筆箱に触れんな――
「ひっ・・・・・・」
さっきより、もっと黒い声だ。私は短く悲鳴をあげた。
「どうしたの?」
優子も、私の顔を覗きこんだ。
――好奇に満ちた瞳で私を見るな。あんたなんて死ね死ね死ね死ね――
「あっ、悪魔がっ・・・・・・助けて・・・・・・!」
私は頭を抱え、うずくまった。
「ちょっ・・・・・・友里!? どうしたのっ!」
頭の声が、ふっと止んだ。ゆっくり顔を上げる。
「ご、ごめん・・・・・・。ちょっと頭が痛くて」
自分でも苦しい言い訳だと思う。
「保健室行った方がいいよ。マジヤバイもん」
「うん、そうする・・・・・・」
私はふらふらと教室を出た。本当に頭痛がする。
優子がまだ私の背中を見つめているのが分かった。
保健室のドアを開ける。
「失礼します。ちょっと頭痛がするんで、寝ていてもいいですか・・・・・・」
私はこめかみを押さえて言った。
「いいわよ。奥のベッドを使いなさい」
保健の先生は、美人で優しい事で有名だ。
私はベッドにもぐりこんだ。
寒くなんてないはずなのに、震えが止まらなかった。頬を伝う涙も。
ドアを開ける音が聞こえた。
誰か、保健室に入ってきたようだ。
――熱っぽいんで、体温測らせてください――
――三好さんの声だ。
私は驚いた。クールで一人よがりな三好さんに、病弱なイメージはなかった。
――じゃあ、横になって測りなさい。鳴ったら教えてちょうだい――
三好さんが、隣のベッドに入ってくる気配がした。

小説大会受賞作品
スポンサード リンク