宇宙の中で ―HANABI― 秋桜 ◆AxS5kEGmew /作

第四話
「・・・・・・友里!」
陽子の声で我に返った。
「もー、何ボーッとしてんの。さっきから何回も呼んでたのに」
「ごめんごめん」
私は笑顔で応じた。
「ねえっ、これ可愛いよ!」
ミヤちゃんが手招きをしている。
ミヤちゃんが持っていたのは、ビーズ細工のキーホルダーだった。
天井の照明の光を浴びて、綺麗に光っていた。
「わっ、可愛い!」
「ホントホント」
ミヤちゃんがキーホルダーを振った。付いている鈴が鳴り、心地よく耳に響いた。
「ねえ、これ、動物の形で4種類あるよ。お揃いで買おうよ」
キーホルダーは、ネコ、クマ、ヒヨコ、コブタをかたどった4種類。
――私はネコがいいな――
そう言おうとした。
「あたしネコー」
陽子がさっとネコのキーホルダーをさらった。
「私も狙ってたのにー」
ウケを狙って、わざと大袈裟に悔しがった。
「えー、友里にこんな可愛いの似合うわけないじゃん」
「そうそう、あんたクソマジメなんだから」
今のは――グサッときた。
「友里はコブタって感じー?」
陽子が笑いながら私にコブタのキーホルダーを手渡した。
不細工なブタ鼻がよく目立つ。
その間に、ミヤちゃんはクマ、優子はヒヨコを手に取っていた。
レジに行き、財布を出した時、
「ヤバ・・・・・・」
陽子は財布を覗きこんで、愕然としていた。
「どうしたの?」
「お金、足んない・・・・・・」
「ええっ!」
優子とミヤちゃんは短く叫んだ。
それもそのはず、このキーホルダーは400円ほどの物なのだ。
「どんだけ金欠なんだよー」
ミヤちゃんが吹き出した。
「笑い事じゃないって。お金貨してくんない?」
「えー・・・・・・そんな事言われてもさ」
2人は困惑している。
「友里、お願いっ」
陽子が手を合わせてきた。顔は半分笑っている。
「私、参考書買わないといけないんだけど・・・・・・」
「参考書っ、ウケるー」
優子とミヤちゃんが爆笑した。
「そんなくだらない物買うんなら、貸してよ。友達裏ぎんの?」
陽子は少し怒っている。
「そうだよ、友達じゃん」
「あるんでしょ?」
2人も加勢して来た。
「・・・・・・もー、仕方ないなぁ」
私は笑いながら陽子にお金を渡した。
「サンキュッ」
陽子が会計を済ませた。
帰り道、私はまた「いじられ」た。
私のキーホルダーを投げっこして、返してくれなかったのだ。
陽子が投げた拍子に、キーホルダーは地面に落ちた。ビーズ細工はボロボロになっていた。
3人は気まずそうに顔を見合わせた。
私は笑顔で許した。
「お優しい!」
3人は私をふざけて拝み、私もウケを狙い笑わせた。
これでいいのだ、と思う。
私といういじられ役がいるからこそ、グループが盛り上がり、バランスが取れているのだ。
そう思ったのに、夜、布団に潜ると何故か涙が出てきた。

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