宇宙の中で ―HANABI― 秋桜 ◆AxS5kEGmew /作

第五話
――いじめ――
この言葉が、頭から消えない。
私は唖然とした。
鉛筆を誤って折ってしまったり、キーホルダーの配分を決めてもらったり、そのキーホルダーをふざけて落としてしまったり。
こんな事がいじめだというのか。
一人で苦笑した。
そんなに私の心は弱くない。
でも、消しても消しても、すぐに浮かびあがってきた。
――でも――
声が聞こえた。
私は辺りを見回す。
空耳か、と安心した時、
――鉛筆を折ったのは明らかに優子が悪い。キーホルダー。ネコのキーホルダー。勝手に決めた、私の意見も聞かずに。おまけにそれをふざけて壊すときてる。人を馬鹿にするのもいい加減にしろ――
「誰っ・・・・・・?」
憎しみのこもった声だった。部屋中に響いている。
「ねぇっ、誰なの・・・・・・」
私は耳を塞ぎ、目をつぶった。
――大嫌いだ。ふざけるな。私につきまとうな!――
耳を塞いでいるのに、大きく響く。耳を塞いだ方が大きく聞こえた。
「ふざけないでよ・・・・・・誰なのよ!」
私は布団にもぐりこみ、震えた。
私じゃない。
――嫌いだ嫌いだ嫌いだ嫌いだ。あんなやつらなんて――
塞いだ手の隙間から、滑り込んでくるように聞こえる。
「お願いっ、やめてよ・・・・・・」
語尾がかすれる。息をするのが苦しい。
これは、私じゃない。
――あんなやつらなんて、アンナヤツラナンテ・・・・・・――
私は一層手に力をこめた。続く言葉を聞きたくなかった。
これは、私じゃない。私であるはずがない。私じゃない、絶対絶対絶対絶対・・・・・・。
――死ねばいいのに――
暗闇に、私の悲鳴がこだました。

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