二次創作小説(紙ほか)
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- 遊戯王 七つの輝きと光の守り手
- 日時: 2015/03/20 00:00
- 名前: 緋兎雫 ◆cW98CwF.kQ (ID: 0ZLVN9hQ)
!
リアルの事情でロックします。
追記
いきなりロックしてすみません。オリキャラも募集していたのに、このような形になって頭を下げるしかありません。
リアルで色々あり、現在名前を変えています。
調子がよすぎるとは思いますが、お知らせを。
何やかんや言って、遊戯王からは離れられず、カキコで新しい遊戯王作品を書いています。諸事情でタイトルは書けませんが御興味のある方は、お探し下さい。版は映像版の方です。
最後に小説をご愛読頂いていた皆様、本当にありがとうございました。
- Re: 遊戯王 七つの輝きと光の守り手【更新再開】 ( No.227 )
- 日時: 2014/12/09 14:53
- 名前: ひとしずく (ID: 9kyB.qC3)
「で、その熱意に負けてイラストを変えたレプリカが流通してるって訳。それでも、一年に何十枚しか生産されないから高いのよ。それを持ってる水葵は、とても運がいいのね」
(……青眼にそんな価値が。なくしたら、買えそうにないから大事にしよっと)
青眼の白龍は、ストラクチャーデッキに入った三枚のみ。なくしたら、二度と手に入らないと考えていいだろう。
「滅多にお目にかかれない青眼の白龍を持つ人間に会えるとは、感動じゃ」
しみじみと呟くイデア。水葵はカードを見せようと席を立った。
「あの。カードが見たいなら見せますよ」
だが、ならんとイデアに否定された。
「カードのイラストなどカタログで見慣れておるわい。わしが見たいのは青眼そのもの。モンスターは、デュエルをしてこそ輝くもの。わしは青眼の白龍が最高に輝く瞬間を目に焼き付けたいのじゃ!」
熱く語るイデアに気圧され、水葵は自然と頷いていた。
「わ、分かりました。青眼はデュエルで……」
「ほほ。なら、久々にワシの秘蔵デッキを見せるとするかの。水葵ちゃんもデッキを調整して来なさい。ちょっとした歓迎会と行こうかの」
イデアは席を立つと、部屋を出ていった。
「じゃあ、私も水葵とデュエルしたいからデッキを弄るわ。さらば!」
それに続いて、フィロソフィアも部屋を後にする。部屋は水葵一人になった。
これは幸いだ、と水葵は思う。遊戯王世界に来てから、デッキを一度も弄っていなかった。
普段なら友人たちからアドバイスを貰ったり、ネットのデッキレシピを参考にするが、結局のところデッキは自分で作るものだ。自分の使いたいカードで戦う、それが遊戯王の醍醐味だと水葵は思う。
部屋のソファーに置かれた肩掛けの鞄を開き、中からビニール袋を取り出した。
「まずは持ってるカードの確認、と」
デッキ作りの手始めとして所持カードの確認をする。
空になった皿を流しに下げ、机にデッキを三つ置く。その横に、シングルで購入したカードが並ぶ。ドラゴン族デッキに必須と言えるレダメこと、レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン。ノリで買ったシグナーの龍たちと、決闘龍等々。ドラゴン族のモンスターだらけだった。
「あれ、カードの柄が変になってる?」
ふと裏返しになったカードを見ると、柄が変化していた。茶色い地に、黒い楕円が描かれただけ。遊戯王カードを発行する会社のロゴもない。
手に取って見ると、厚みも増していた。いつものカードなら、トランプ程の厚みしかない。だが、今のカードはトランプを複数枚重ねたくらいの厚さはある。
「カードが変わったの?」
そう呟き、戸惑う水葵。デュエルは切羽詰まったものだったので、確認している暇がなかったのだ。
また今もデュエルを控えているので、カードの変化について考えている暇はない。カードの変化は気になるが頭の隅に追いやり、デッキの構築を続ける。
「あー……速攻で使うなら、ドラゴニック・レギオンも買うべきだったなー。もっと安定したのに」
ドラゴン族のストラクチャーデッキである、ドラゴニック・レギオン。あちらにはドラゴン族サポートのカードが多く収録されており、ネットでも青眼ストラク三つ、レギオンを最低一つで強いデッキが作れるとあった。欲しかったが、ないものは仕方ない。
諦め、購入したパックの開封に取りかかる。このパックには、青眼を強化出来るパーツが出る可能性がある。それを期待して、水葵はパックを開封していく。
「よし、征竜来い!」
次々に開封し、空になったパックをビニール袋の中に入れる。
(あ、三幻神揃った)
水葵を救った赤き天空龍オシリス、青く巨大な身体を持つ破壊神オベリスク。金色の輝きの神、ラーの翼神龍(よくしんりゅう)。
引き当てた三幻神を淡い期待を抱いて見つめ、ガックリと頭を垂れた。カードの効果も変化しないかと期待したが、それは外だけのようだ。効果は向こうのものと全く同じ。文字も日本語のまま、古代神官語(ヒエラティック・テキスト)ではない。
「次行こう、次!」
気分を変え、次々とパックを破く水葵。ややあって全てのパックを開封し終え、出てきたカードを手早く見ていく。
(ブラマジとガール。後、その関連のカードも揃った。けど、後はエルフの剣士、有翼幻獣キマイラは当たったけどパーツなし。ゴキボールか。むむ。微妙なのばっかね……)
全て開封し終えたが、結果から言えば何とも言えないものだった。
レアリティが高い三幻神を一枚ずつとは言え全てが揃う。
青眼に負けない人気を持つブラック・マジシャンとその弟子、ブラック・マジシャン・ガールとその融合体も当たったのはいい。レアリティが高いカードが、こうも揃うのは奇跡としか言いようがない。
が、水葵が望む青眼の強化パーツこと征竜は一枚も手に入らなかった。
「……あのパック、初代以外にも、征竜とかもあったはずなのに。一枚もないってどういうわけ?」
水葵が買ったパックは、デュエルモンスターズのアニメが放映されて何周記念だかで発売されたスペシャルパック。初代の主人公が劇中で使用したカードを中心に加え、最近の人気カードも収録した豪華パックだ。
三幻神やブラマジ師弟だけではなく、環境を賑わせた征竜等もあるはずだが。狙ったように三幻神やブラマジ師弟が当たるのは、何かのいたずらにしか思えない。
(トリップ特典で、遊戯王の全カードプレゼントとかないのかなぁ。……青眼も強くできるし、ブラマジデッキも組めるのに)
遊戯王世界に行くと、もれなくカード全種類頂けたりする話がありそうな気がするがそんなことは残念ながらなさそうだ。いくら探しても、持っているのは机の上にあるカードだけ。
神様とやらがいるとしたら、あるものだけで頑張れと言うに違いない。
デュエルも近いため、文句もほどほどに水葵はデッキ構築にかかる。
- Re: 遊戯王 七つの輝きと光の守り手【更新再開】 ( No.228 )
- 日時: 2014/12/09 15:01
- 名前: ひとしずく (ID: 9kyB.qC3)
(使えそうなのは、青眼の白龍デッキとそれを組むために買ったカード幾つかと、当てた三幻神とブラマジ師弟……)
カードを整理していると視界の隅に、二枚の宝玉獣が映った。
「ルビー、アメジスト・キャットさん。起きてる?」
彼らの名を呼ぶが、返事はない。まだデスサイスに施された封印が解けないのか。
「宝玉獣かぁ。この二枚だけじゃ、宝玉獣は組めないかな」
宝玉獣は、大量に特殊召喚するのを得意とするデッキ。上手くいけば、三体のリリースを必要とする三幻神と相性が良さそうだがカードが不足し過ぎている。モンスター二枚に、サポートの魔法・罠は0。どうやったら戦えるのか、こっちが聞きたいくらいだ。
(うん、青眼主体にしようかな。青眼とそのサポートはたくさんあるからね。魔法・罠がないのは痛いなぁ……青眼だと、殴るだけになるから除去や破壊がしにくいのよね。そこは、シンクロモンスターで補うか。じゃ、チューナー多めに入れておくかな。ラビー・ドラゴンを外して……)
現時点で作れそうなのは、青眼デッキか。
言わずもがな、青眼の白龍をエースとするデッキだ。青眼は攻撃力こそ高いが他には何の効果もない。ブラック・ローズ・ドラゴンやトリシューラのような破壊・除外が簡単に出来る強力なシンクロモンスターがホイホイ出てくるこの時代。このままでは、青眼の白龍は呆気なくやられてしまう。保険としてシンクロモンスターを入れておくか、とエクストラデッキにシンクロモンスターを入れる。融合・シンクロと呼ばれるカテゴリーのモンスターは、エクストラデッキに入れる。上限は15枚。まあ、15枚もカードはないのだが。
ストラクチャーデッキを弄り、不要なカードを外し、必要なカードは三枚入れる。エースである青眼の白龍を中心に、チューナーや下級のアタッカーを投入する。いずれカードが揃えば、ブラマジ師弟や三幻神、宝玉獣も作れるだろう。デュエリストである以上、様々なデッキに触れたいと水葵はワクワクしていた。
一時間程して何とかデッキを形にし、水葵はイデアと戦うべく部屋でじっとしていた。
「おー。水葵ちゃん、待たせたのう」
しばらく経って、リビングにイデアが現れる。
既にデュエルの準備は万端で、フィロソフィアの物と同じ形の、D・パッドとD・ゲイザーを既に身に付けていた。色は抹茶色。
そして両腕には、形は同じだが水色のD・パッドとD・ゲイザーを抱えている。水葵の元に歩み寄ると抱えていた物を差し出した。
「ソフィに聞いたのじゃが、D・パッドとゲイザーを持っていないようじゃな?この二つは生活の必需品じゃからのう。きちんと持っていなさい」
「ありがとうございます」
有難い。戦うにも、武器がなければ始まらない。イデアから二つの機械を受け取ると、水葵はデュエルを行う準備をする。腕にD・パッドを付け、耳にD・ゲイザーをセット。二回もデュエルをこなせば様になってくり。ややあって、機械的な音声が流れてくる。——デュエル・ターゲット、ロックオン。
「デュエル・ターゲットって何ですか?」
「ああ、D・ゲイザーが障害物を見えなくなるよう処理しておるんじゃ。辺りにいる人間や、デュエルの妨げになる障害物を消した映像をわしらに見せておる」
イデアに言われて、水葵は周囲の変化に気付く。言われてみれば机や椅子、ソファと言った家具がなくなり、辺りは殺風景だった。
D・ゲイザーを外すと、家具は全て戻っている。机には、触れることができた。再び付けると、家具はまたなくなった。だが、机があった場所に手を伸ばすと、机に手が当たる。イデアの言う通り、消えた映像を見ているだけのようだ。
「D・ゲイザーってすごいですね」
「じゃが、事故もある。実際にあった話じゃが、デュエルに夢中になるがあまり、車に跳ねられたり、海に落ちた人間もいるんじゃ。周りの風景が遮断されるからの、危険な物が近付いてきても分からないのはデメリットかの」
「場所は選ばないといけないですね」
自分は、こちらのデュエリストに比べると身体は軟弱だろう。生きるためにも、デュエル時には気を付けようと水葵は決意した。
「じゃが。それさえあれば、ARヴィジョンによる迫力満点のデュエルを楽しめるからのう。ピケルちゃまに白魔法をかけてもらったり、ピケルちゃまに白魔法をかけてもらえたりできるからの。それがないと、つまらんデュエルになるわい」
「ARヴィジョン?」
イデアの呟きを無視し、水葵は尋ねる。
「Augumented Reality、略してAR。端的に言えばデュエルモンスターズを実体化させる技術じゃ」
(ソリット・ヴィジョンの進化系かな?)
ソリット・ヴィジョンは海馬コーポレーションが開発した、モンスターを実体化させる技術。この世界では、ARヴィジョンと呼ばれているらしい。——何が違うのか、今のところ分からないが。
「ところで、そのD・パッドとゲイザーじゃが、手元に最新型の機種がなくてのう。売れ残った前の機種で許してくれんか。アプリは出来んが、デュエルやら何やらには支障はないはずじゃ」
「デュエルさえ出来れば大丈夫です。それ以上の機能は必要ないです」
本音を言えば最新型がほしい。
しかしただで貰っている以上、文句は言えない。デュエルさえ出来ればいい、と水葵は割りきることにした。
「そうか。……では、お喋りはこのくらいにしてデュエルといこうかの」
「はい」
互いのD・パッドが変形し、デュエル・ディスクの形態となる。——デュエル開始の合図だ。
「デュエル!」
二人の叫びが重なった。
- Re: 遊戯王 七つの輝きと光の守り手【更新再開】 ( No.229 )
- 日時: 2014/12/09 15:08
- 名前: ひとしずく (ID: 9kyB.qC3)
そして、イデアのデュエル・ディスクにランプが灯った。
「先攻はわしか。よし、ドロー。そのままターンエンドじゃ」
(何にもなし?)
先攻一ターン目は、当然ながら魔法や罠がないたも相手の邪魔も入りにくい。故にカードを展開するのに、最適な環境だ。初手にワンキルの材料が揃っていれば相手は防ぎようがないし、モンスターを召喚しても邪魔はされない。——最も、今はそれの対策も進んでいるが。
それでも遊戯王が先攻有利、と言われるのはこの辺りにあると水葵は思う。それを放棄したイデアは、何を狙っているのだろう。
「あたしのターンです。ドロー」
手札を見ながら、水葵はイデアの意図を考える。
真っ先に思い付くのが、ゴーズやドラゴエディアのような手札誘発系。特定の条件下で、手札から効果を発動するカード群だ。この二体は、自分フィールド上にカードが存在しない時に戦闘ダメージを受けた時、手札から特殊召喚出来るのでこれを狙う可能性は高い。
もう一つ、可能性としては本当に手札がよくない即ち手札事故を起こしていることもありえる。
「さあ、水葵ちゃん。青眼の白龍を見せてくれい!」
子供のように、無邪気に言うイデア。水葵は、呆れた顔をする。
「まだ手札に来てないので、すぐには出せませんよ。アレキサンドライドラゴンを召喚」
フィールドに、輝きに満ちた鱗を持つドラゴンが現れる。攻撃力は、下級のアタッカーとしては高い2000。攻撃しないことには何も見えない。水葵は様子を見ることにした。
アレキサンドライドラゴン
通常モンスター
星4/光属性/ドラゴン族/攻2000/守 100
アレキサンドライトのウロコを持った、非常に珍しいドラゴン。
その美しいウロコは古の王の名を冠し、神秘の象徴とされる。
——それを手にした者は大いなる幸運を既につかんでいる事に気づいていない。
「イデアさんに直接攻撃(ダイレクト・アタック)します!」
恐れていたはダメだと、イデアに攻撃をしかける。アレキサンドライトドラゴンは、長い爪を勢いよく降り下ろしイデアのLPを半分近く奪った。
イデアLP4000→2000
「なんじゃ、手札事故でも起こっとるのか? じゃが、青眼が来るまで耐えてやるぞ」
青眼に執着するイデアはLPを半分近く奪われても、へこたれていなかった。目には強い輝きが宿っており、並のデュエリストではないことを伺わせた。
「カードを一枚伏せて、ターンエンド」
LPを半分奪えたのはよいが、相手はあのフィロソフィアの祖父。油断は出来ない。
「ふむ、では。まず至高の木の実(スプレマシー・ベリー)を発動するぞ。相手よりLPが少ない時、LPを2000回復」
至高の木の実
通常魔法
このカードの発動時に、自分のライフポイントが
相手より下の場合、自分は2000ライフポイント回復する。
自分のライフポイントが相手より上の場合、
自分は1000ポイントダメージを受ける。
白い鳥がイデアの元に光る木の実を運ぶ。ぱっくりと割れた木の実から、淡い光が降り注ぎイデアのLPを回復した。
イデアLP4000
「わしのお気に入りカードを見せてやろう。いでよ、我が二次元の娘、白魔導士ピケルちゃま!」
白魔導士ピケル
効果モンスター
星2/光属性/魔法使い族/攻1200/守 0
自分のスタンバイフェイズ時、自分のフィールド上に存在する
モンスターの数×400ライフポイント回復する。
ぽん。気の抜ける音と共に出てきたのは、羊を象った帽子を被る小さな少女ピケル。白いワンピースや羊の角のような杖は可愛らしい印象を与える。
フィールドに降り立とうとして——派手に転んだ。瞳を潤ませ、顔をあげてイデア(主)を見つめる。恍惚の表情を浮かべるイデアは、水葵に理解不能な異国語を話していた。
「ピケルちゃーん! わしじゃー! わしをおじいちゃんと呼んでおくれ−!」
「ピケルですか」
アイドルに手を振るファンのように興奮しているイデアに冷ややかな視線を送る、水葵。一種のトラウマを思い出させる光景なので、気分が悪くなってくる。
モンスターを愛でる光景が常識の範囲を大きく逸脱しているので、何とコメントすればよいかわからない。
「この愛らしい姿、格好。たまらんのう、水葵ちゃん?」
(蟲惑魔(こわくま)愛でてるあたしのお兄ちゃんと同レベル)
暇さえあれば兄から蟲惑魔について永遠と語られ、いらないと言ってるのに蟲惑魔のカードをうん十枚も押し付けられた小学校最後の夏休みは最悪だった。
イデアの姿は、蟲惑魔と言えばトリオンの蟲惑魔だよな、な! と詰め寄る兄と重なり、気色が悪い。ピケルそのものは可愛いと思うので無言で頷いておけば、さらに調子に乗りピケルちゃまは全デュエリストの娘じゃのうと満足そうに笑っていた。そこまで溺愛してない、と水葵は心内で補足した。
「ここで、永続魔法『暗黒の扉』を発動。互いに攻撃は一体のモンスターでしか行えん。カードを二枚伏せて、ターンエンドじゃ」
突如としてフィールドに巨大な扉が現れた。中には、漆黒が広がるだけ。飲み込まれたらひとたまりもない。
暗黒の扉
永続魔法
お互いのプレイヤーは、バトルフェイズにモンスター1体でしか攻撃する事ができない。
「…………」
呆れかえる水葵は、無言でドローする。主の気持ちを読み取ったのか、アレキサンドライトドラゴンがピケルを睨んだ。
幼いピケルはびく、と身体を震わせ涙眼でイデアに訴える。
「さあ、ピケルちゃまはわしが守る! かかってくるんじゃ!」
- Re: 遊戯王 七つの輝きと光の守り手【更新再開】 ( No.230 )
- 日時: 2014/12/09 15:17
- 名前: ひとしずく (ID: 9kyB.qC3)
「……調和の宝札の効果発動」
調和の宝札
通常魔法
効果
手札から攻撃力1000以下のドラゴン族チューナー1体を捨てて発動できる。
デッキからカードを2枚ドローする。
何故かいきり立つイデアのテンションに、もう付いていけない。
伝説の白石(ホワイト・オブ・レジェンド)を捨て、カードを二枚ドロー。この、一連の流れを見ていたイデアは、口を挟む。
伝説の白石
チューナー・効果モンスター
レベル:1
属性:光
種族:ドラゴン族
ATK:300
DEF:250
効果
このカードが墓地へ送られた時、デッキから「青眼の白龍」1体を手札に加える。
「む、水葵ちゃん。無言で効果を処理するのは、デュエリストとしてご法度じゃぞ」
「あ、すみません」
元の世界では、相手に求められた時以外、基本的にカードの効果は説明しない。が、こちらでは違うらしい。
先ほどまでのデュエルで何回か説明したのは、相手が説明していたので説明しないといけない、と真似をしていただけ。
「記憶違いは仕方ない。デュエルモンスターズは、数が膨大じゃからのう。覚えられんから、お互いに効果を解説するのが暗黙のルールじゃ。と、言っても手取り足取り話すのは、戦術を明かすのと同じ。相手がカードの効果を知らなければ、それを利用するのも必要な時もある」
(……効果が三つあるとか言って、全部説明しないやつね)
こちらの世界では、カードの効果をいちいち説明しあってデュエルをするらしい。アニメでも主人公や悪役、律儀に誰もが守るルールだ。だがごく稀にこのカードには隠された効果があるとか言って、隠すような輩もいるが。
めんどくさい、と水葵はため息をついた。
「嘘の説明したらどうなるんですか?」
「そんなつまらない真似はせん。効果でわかるじゃろ。……では改めて」
はい、とカードのテキストを自分なりに説明する。
「このカードは、攻撃力が1000以下のドラゴン属のチューナーモンスター一体を手札から捨て、デッキからカードを二枚引きます」
「忘れんようにな」
水葵は頷く。
「ここで、墓地に送った伝説の白石の効果です。このカードは墓地に送られた時、デッキから青眼の白龍を手札に加えます」
デッキから加えたカードをイデアに公開し、手札に加える。それをイデアは不思議そうな表情で見ていた。
「ふむ、珍しいのう。サーチしたカードをきちんと説明するか」
「サーチしたカードは、相手に公開……ですよね」
「こればかりは曖昧じゃのう。相手に見せるのも見せないのも。デュエリスト次第なんじゃ。まあほとんどは、見せんがの」
デッキから加えたカードを公開するもしないも、自由らしい。そういえばアニメでは、あるカードを手札に加える等と言って、加えるカードは見せないことの方が多かった気がする。
「カイバー・マン召喚。このカードをリリースすることで、手札から青眼の白龍を召喚します!」
正義の味方 カイバーマン
効果モンスター
レベル:3
属性:光
種族:戦士族
ATK:200
DEF:700
効果
このカードをリリースして発動できる。
手札から「青眼の白龍」1体を特殊召喚する。
青眼の白龍
(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)
種類:通常モンスター
レベル:8
属性:光
種族:ドラゴン族
ATK:3000
DEF:2500
効果
高い攻撃力を誇る伝説のドラゴン。
どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない。
青眼の頭部を模した兜に、白いコート。口から覗くキザな笑み。が、登場してから僅か数秒後には高笑いしながら、強い光に飲まれるカイバー・マン。と、共に降臨する、伝説のドラゴン。フィールドを轟かす轟音と圧倒的な存在感。
それを目の前にしたイデアのテンションは、最高潮に達する。目をキラキラさせ、老体とは思えない程大きな声を出した。
「おお! 青眼の白龍の相手を出来るとは感激じゃ! さあ、攻撃してくるんじゃ!」
「じゃあ、青眼でピケルを……」
「ならーん!」
しかし一転、イデアは血走った眼で叫ぶ。
「はい?」
「水葵ちゃん、こんなに可愛い少女を! いじめるのか青眼に攻撃させると言うのかぁ!」
「今、攻撃してこいって言ったじゃないですか」
冷静に水葵が指摘するがイデアは聞いていない。
「水葵ちゃんよ、ピケルちゃまを前にして何にも思わんのか。心が痛まぬか?」
青眼を前にしたピケルは恐怖のあまり身を強張らせ、ガタガタと震えている。勿論人として、水葵の心は痛む。小さな子供をいじめるような、暗い気持ちにさせられた。
これが遊戯王名物、心理的に相手を揺さぶる心理フェイズ、と水葵はその恐ろしさを身をもって味わう。ピケルを攻撃するなど人としていけない、と良心が囁いてくる。
- Re: 遊戯王 七つの輝きと光の守り手【更新再開】 ( No.231 )
- 日時: 2014/12/09 15:24
- 名前: ひとしずく (ID: 9kyB.qC3)
「痛みます。ピケルもクランも好きですから」
だが、デュエリストたるもの情に流されてばかりではいけない。
それに、ピケルを愛でるイデアは夏休みのトラウマをえぐり出すばかり。気色悪い。その感想で水葵の中で何かが壊れた。良心は、夏休みのトラウマへの怒りに飲み込まれた。
「けど、あたし、蟲惑魔は苦手なんです! もう、トリオンはいらない! ——滅びのバーストストリーム」
「ピケルちゃまには、攻撃させんぞ! 速攻魔法、『カバー・カーニバル』を発動!カバートークン三体を守備表示で特殊召喚!」
青眼のバースト・ストリームが炸裂する直前。
軽快な音楽と共に、ピケルを守るためモンスターが出てくる。それは色鮮やかな二足歩行のカバ。派手に着飾り、化粧までした感想に困る連中だ。服はサンバの衣装に似ていた。それが三体。攻撃対象を見失った青眼は、口元にエネルギーを集めるのを止め、制止する。カバと背後のピケルを交互に見やりどちらを攻撃すればよいのか迷っていた。
「な、なんですか。この表現に困るカバたちは!?」
「これぞピケルちゃま親衛隊の、カバートークンたちじゃ。カバートークン三体を特殊召喚したターン、水葵ちゃんはカバトークン以外に攻撃はできん」
カバーカーニバル
速攻魔法
パスワード:18027138
効果
(1):自分フィールドに「カバートークン」(獣族・地・星1・攻/守0)3体を特殊召喚する。
このトークンはリリースできない。「カバートークン」がモンスターゾーンに存在する限り、自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。
このカードの発動後、ターン終了時まで相手は「カバートークン」以外のモンスターを攻撃対象にできない。
「ならカバトークンを破壊します。青眼で攻撃」
「ほほ。ドレイン・シールドを発動。青眼の攻撃を無効にし、攻撃力分3000のLPを回復じゃ」
カバの前にバリアのような物が現れ、バースト・ストリームの力をLPに変換する。
イデアLP4000→7000
「……ターンエンドです」
しまった。先を急ぎすぎて、青眼で攻撃してしまった。罠を警戒し、アレキの方で攻撃すれば良かったと水葵は後悔する。
たった一つの判断でデュエルの状況は常に変化する。それが楽しくてたまらないのも事実であるが。
「わしのターン。ピケルちゃまの効果を発動。自分フィールド上のモンスター×400のLPを回復。わしの場には、合計四体のモンスターがおるから、1600LPを回復するぞ。ほ〜疲れた心が洗われるようじゃ」
イデアLP7000→8600
ピケルが難しい顔をしながら、イデアに回復の魔法を送る。杖から放たれた光は、LPへと変換されイデアを癒していく。スターテスは低いながらも、その能力は馬鹿に出来ない。
それをイデアは満足そうにしていた。ピケルから回復魔法をかけてもらえることが嬉しくてたまらないらしい。水葵は引いており、呆れた顔をしていた。
(……もうトリオンの悪夢が蘇るよ!)
「ところで、水葵ちゃん。ピケルちゃまは双子なんじゃよ!」
「二枚積みですか」
「積みではない! 二人じゃっ!」
抗議するイデアは無視。
可愛らしい音と共に、フィールドに二体目のピケルが現れる。姉妹と出会ったピケルたちは、はしゃいでいる。
(もう会話出来ない次元に到達してるわね、この人)
「わしはカードを一枚セット。これでターンエンド」
「あたしのターン。ドロー」
イデアは攻撃を仕掛けてこない。
暗黒の扉で攻撃を制限し、防御系のカードでピケルを守りLPを回復するのが狙いだろう。しかし、自分のLPを回復して何をする気なのか全く分からないのが怖い。ピケルがいるなら、クランの存在も考えられるがカバがいるので出せない。ならピケルを倒し、LP回復を阻止するしかないか。暗黒の扉を破壊するカードは残念ながら、手元にない。なら、防御系のカードの発動を阻害する。この手のカードは、罠が多いのだから。
「ミラージュ・ドラゴン召喚」
攻撃せずにピケルを守るにはどうするか。今までの罠から、伏せてあるのは防御系の罠か、あるいは破壊系の罠である確率が高いだろう。なら、バトルフェイズ中に罠を封殺する、ミラージュ・ドラゴンは大敵と言えよう。
ミラージュ・ドラゴン
効果モンスター
レベル:4
属性:光
種族:ドラゴン族
ATK:1600
DEF:600
効果
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手はバトルフェイズ中に罠カードを発動できない。
だが、それを分かっていたかのように、イデアは不敵な笑みを浮かべた。
「ほほ、ミラージュ・ドラゴンを召喚したのは上手いな。おおまか攻撃を邪魔する罠と読んだようじゃが、それは外れ。この罠は運命の分かれ道じゃ。互いにコインを投げ、表裏によって効果が決まる」
「あ、コインが……」
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