複雑・ファジー小説

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守護神アクセス【Epilogue-2・中編】
日時: 2022/05/19 21:16
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: m3Hl5NzI)

2020年、夏の小説大会で金賞もらっていたらしいです。
投票してくださった方々、ありがとうございました。

___

本編の完結とエピローグについて >>173





目次です。

▽メインストーリー
 File1:知君 泰良 >>1 >>2 >>3 >>4 >>5 >>6
 File2:王子 光葉 >>9 >>10 >>11 >>12-13 >>14
 File3:奏白 真凜 >>16 >>17 >>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>24 >>25 >>26
 File4:セイラ   >>27 >>28 >>29 >>30 >>31
 File5:奏白 音也 >>32 >>33 >>34 >>35 >>36-37 >>38
 File6:クーニャン >>39 >>40 >>41 >>42-43
 File7:交差する軌跡  >>44 >>45-46 >>47-48 >>49
 File8:例えこの身が朽ちようと    >>50-51 >>52 >>53 >>54 >>55-56 >>57 >>58
 File9:それは僕が生まれた理由(前編)    >>59 >>60-61 >>63-64
 File0:ネロルキウス  >>65 >>66 >>67 >>68 >>69 >>72 >>73 >>74 >>75 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81
 File9:それは僕が生まれた理由(後編パート) >>82
 File10:共に歩むという事   >>83 >>84 >>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90-92 >>93-95 >>96-97 >>98 >>99
 FILE11:人魚姫は水面に消ゆる夢を見るか >>100 >>101 >>102-103 >>104 >>105 >>106 >>107 >>108-109 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>115 >>116 >>117 >>118-119 >>121 >>122 >>123 >>124-125 >>126-127 >>128-129 >>130-131 >>132 >>133 >>134 >>135 >>136 >>137 >>138 >>139 >>140-141 >>142 >>143 >>144
 Last File:12時の鐘が鳴る前に >>145 >>146 >>147 >>148 >>149 >>150 >>151 >>152 >>155-156 >>157 >>158-159 >>160 >>161 >>162-163 >>164-166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>171-172

 Epilogue-1 【守】王子 光葉 >>174-175
Epilogue-2 【護】知君 泰良 >>176-177

-▽寄り道
 春が訪れて >>23
 白銀の鳥  >>70-71
 クリスマス >>120

▽用語集
 >>8 File1分
 >>15 File2分
 >>62 File8まで諸々。それと、他作品とクロスオーバーしたイラストを頂いたのでそちらのURLも

▽ゲスト
 日向様(>>7にイラストをくれました、感謝。What A Traitor!作者)
 友桃様(Enjoy Clubの作者様。自分にとって小説の師匠や先生みたいな感じの方)




気軽にコメントとかもらえたら嬉しいです。
僕も私も異能アクション書いてるの!って子は宣伝目的で来てくれても構いません(参考にする気しかない)

Re: 守護神アクセス ( No.3 )
日時: 2018/02/09 02:08
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: hgzyUMgo)

「トランプの兵隊さん! あの女を、殺しちゃって!」

 わらわらと、トランプの胴体の上に、西洋の甲冑の上に鎮座するような兜が顔の代わりに乗っかったような異形の兵隊が現れる。トランプの模様はハート、スペード、クローバー、ダイヤ、それぞれが1から10の40体。それぞれが長槍に銃、剣などの思い思いの武器を掲げている。
 こうして、case17アリスと対策課第7班との交戦の火蓋が切って落とされた。まず初めに突撃してきたのはクラブのカードをモデルにした兵隊であった。クラブの表す意味は農民、なるほど彼らの中で最もカーストが低いからか身を賭した切り込み隊長役を担っているようである。
 しかし、他の者と比べると幾分かクラブの兵士たちは軽快に動くことができるようで、あっという間に二人を取り囲んだ。十人がかりで包囲され、奏白たちは退路を断たれる。自分ほどではないが、油断すると武器を当てられてしまいそうだと奏白は認識した。なるほど、確かに見た目が幼女でもフェアリーテイルは侮れない。
 全方向に配備した十人のクラブのソルジャーは一斉に奏白たちに襲い掛かってきた。槍を掲げ、剣を振りかざし、二人を無力化させようとする。真凜は殺せと言われているが、奏白は生け捕りにする必要がある。アリスから受けた命令を、彼らは忠実に守ろうとしていた。

「悪いけど、甘いよ」

 真凜に耳を塞ぐように指示する。その指示を受けた真凜は耳を塞ぎ、体全体を魔力のヴェールで包み込んだ。隣で攻撃に転じる奏白の音波の巻き添えを食らわないためだ。真凜が防御態勢を取ったことを確認すると、すぐさま奏白は襲い来る兵士たちを薙ぎ払うため、超威力の音波を放射状に打ち出した。
 奏白を中心としたその大気が震える咆哮は、まさに爆弾のようであった。あまりの音圧に押し出された彼らクラブの兵隊は音の爆発によって一緒になって吹き飛ばされた。風に舞い散るカードのようにひらりひらりと間抜けに宙を舞う。その威力にどうやら彼らは気絶してしまったらしい。
 だが、トランプの兵隊が状況を判断するのも早かった。雑兵のトランプが倒されたかと思うとスペードの兵士が今度は立ちはだかる。先ほどのように一丸となって陣形を展開するのでなく、まずは二人組を二つ作って、奏白と真凜それぞれに向かって一目散に襲い掛かる。スペードは騎士を意味するマークであり、先ほどの兵隊よりも動きは遅かったが、一挙手一投足から落ち着きが感じられた。
 スピードこそ落ちたとはいえ先ほどよりも確実に強い。そう判断した奏白は、先手必勝とばかりに走り出した。音の速度で戦場を駆け抜け、真凜を狙っていたほうの二人組の背後を取る。まずは一体、そう思って一人の兵士の背中側から、強い衝撃を加えようとしたところだった。まるで奏白の攻撃を読んでいたかのように、二人組のもう一人の兵隊が庇うように立ちふさがる。大きな盾を構えており、攻撃を読み切っていたようである。
 構うものかと奏白はその盾を貫くように音波を真っすぐに解き放った。音とはすなわち振動であり、衝撃はちゃんと通じるはずだと判断し、全力で。間違いなく、盾を突き抜け、それを構えている腕から全身へと音波の衝撃は突き抜けたはずである。しかし、先ほどのクラブとは格が違うのか、その二人組はいずれも倒れることはなかった。
 参ったなと苦々しく感じたのも束の間、奏白を見失っていた、彼のことを狙っている方のツーマンセルの兵士たちも移動した奏白の方へと向きを変えた。急いで退避しなければ、そう思って跳び退こうとしたところ、足に鎖が絡まっていた。見ればアリスの傍で従事するように待機しているダイヤの兵隊が鎖をどこからか取り出し、奏白の足を絡めたようである。
 ダイヤの持つ意味は商人、おそらくは様々な道具を戦闘中にでも持ち出せる能力。応用の効くアマデウスを持っている奏白とは言え、アリスは一体一人でいくつの能力を有しているのかとゾッとした。
 こんな少人数でフェアリーテイルと対峙したのはおそらく自分のみならず対策課でも初めての経験だろう。自分と真凜、二人の三桁ナンバーの契約者なら何とかなるかと思ったが、こりゃ厳しいかもなと心の中で嘆いた。

「兄さん、危ないです!」

 兄の窮地に感づいた真凜は咄嗟に魔力による砲弾を生成した。サッカーボール大の、魔力の込められたエネルギーの塊を奏白を囲もうとしている四体のスペード兵士に対してそれぞれ数発ずつ滅多撃ちにした。それと同時に、魔力を収束させて光線を放つ。そちらの標的は奏白の足を今まさに奪っているダイヤの兵士だった。
 襲い来る魔力の弾丸に一切怯まず、また躊躇もせずにスペードの兵士は手に持った得物でそれぞれその砲撃を切り伏せ、突き刺して無力化した。かなりの威力を込めて放ったはずであるのに、容易に対処された真凜は冷や汗を浮かべる。これが一切通じないとなると、この兵士たちは強すぎる。
 だが、一見効果が無いように思えるその攻撃も、全くの無駄という訳ではない。むしろこれは時間稼ぎさえできればよく、真凜の仕掛けた魔法による一手を対処する間、彼ら四人は奏白から目を離していた。そして、それだけの実力を兼ね備えた兵隊はスペードだけだったようで、ダイヤの兵士を狙っていた光線の方はというと、思惑通り標的に命中した。それにより、奏白の拘束は解かれ、すぐさま奏白は包囲から脱出することができた。

「ちょっとヤバかったな。助かったよ、真凜」
「いえ。それにしても癇癪を起こした女の子は手強いですね……」
「あー……わり、ちょっと煽りすぎた」
「いえ……これで冷静だったらと思うとそれはそれで怖いのでそれは構いません」

 事実、癇癪を起こしているアリスが彼らを統率できていないだけに有利に運んでいる側面も多い。今真凜が仕掛けた奏白救助のための一手にしても、アリスが待機している六人のスペードの兵士に、鎖を操っていたダイヤのソルジャーを守るように指示していたらそのまま奏白は無力化されてしまっていただろう。適当に気絶させられるなりで、こちらの戦力は激減する。
 それにしても、あれだけ人数がいて個々がこの強さ、少し反則気味ではないかと軽い絶望を覚える。スペードの兵隊に至っては、そんじょそこらの警察官よりも遥かに高い能力を有している。初めにクラブの兵隊を十人まとめて処理できたのは大きい。そうホッとしながら、相手が次に打ってくる一手を予知する。
 この未来予知は、行ったことが正解だったと言える。しかしそれで見た未来によって、よりどうしようもない事態を目の当たりにしたことも事実だ。見てしまった未来を嘆くよりも先に、真凜は奏白に向かって叫んだ。

「兄さん! 退避してください!」

 既に退避を終えたというのに、妹がこれだけ切羽詰まった声で指示している、それだけで奏白がその指示を受け入れるには十分だった。何が起こっているのか理解するよりも先に、音の速さで姿をくらます。一度合流したほうがいいと判断し、一目散に真凜の隣まで駆け抜け、ぴたりと静止した。見てみると、先ほどまで自分が立っていた地面には槍が突き刺さっている。

「どうなってる? 周りに兵士はいなかったはず」
「移動したのを観察されて、すぐさま回り込まれたんです」
「一体誰が? もうそんなにスピードあるやついなさそうだったぜ」
「あれを、見てください……」

 そう言って真凜が示した方向を奏白は目にする。するとそこでは、今まで攻め込んできていなかったハートの兵士が倒れ伏すクラブの兵隊に寄り添っていた。ハートの兵士は、鉛筆で描いた棒のような細い手を祈るように組んだかと思うと、温かく瞬く光がクラブの兵士を包み込んだ。奏白の心臓が跳ね、脳裏に警鐘が鳴る。この事実は、二人の立場を明らかな劣性へと貶めた。
 ハートが持つ意味は、聖職者。固有の能力は、『倒れた兵士の回復』である。先ほど奏白を死角から槍を投げて狙ったのは、復活したクラブの兵隊だったという訳だ。

「真凜! どうにかしてハートの兵士から全員倒すぞ!」
「了解です。ですが、おそらくハート自身もハートで蘇生できるかと……」
「でも、倒しづらいスペードは動きが遅い。スペードの合間を縫ってハートを倒すしかない」

 できることならば、一瞬のうちに片づける必要がある。ならば自分が先陣を切るのが一番だと奏白は決めた。自分が撹乱し、真凜が狙撃する。それが最も確実に目的を達成できる。適宜相手にちょっかいをかけながら期を伺えと奏白は真凜に告げて、アドリブの作戦を開始した。奏白の無茶ぶりは求められるハードルがかなり高いが、成功した際の見返りはとてつもなく大きい。それに、誰よりもリスクを覚悟して動いているのは奏白自身であるため、真凜が根を上げるわけにはいかなかった。兵士の集団の中へと果敢に飛び込んだ奏白の期待に応えるため、真凜は未来を予知しつつ、今打てる最善の一手を選び続ける。それがどれだけ困難で、大変で、難解なことだとしてもやり遂げなくてはならない。
 二人だけで本当に、どうにかできるのだろうか。弱気な心が顔を見せ始めると、不意に三人目の班員の顔が浮かんだ。特筆できることなんて何一つない、温和で腰の低い一人の少年。その姿が思い浮かぶと、真凜は自分への怒りに囚われた。よりによって、彼にすがるだなんてあり得ないと。
彼女は彼のことを未だ仲間と認めていない。唐突に理由も教えられずやってきた、平和の中でしか生きたことのないような物腰柔らかな男の子、そんな一般人と呼んで差し支えない少年に頼るだなんて、彼女の正義に反していた。平和な社会に生きる平凡な人を救うためにこの職に就いたのだ、そういった人々を不安にさせ、その助けを求めるようなことは、真凜にとって恥でしかなかった。
 それが、結果的に己への鼓舞につながった。彼がいなくとも自分たちは立派に成果を挙げることができると証明する。奏白は劣った捜査官ではない、真凜は可哀そうな立場になんて立っていない。貼られたレッテルが偽であることを証明するには、もうそれしか道が無いのだ。
 敵陣営の中央に乗り込んだ奏白は、初めの一撃のように自身を中心として音の爆発を巻き起こした。スペードの兵士はアリス本体を守ることに専念したのか、他の多くのダイヤやクラブの兵隊は大きく吹き飛んだ。怯むスペードの兵士が手を出す前に、近くにいたハートの兵士一体に音速で体当たりし、顔に位置する兜を蹴りつけて沈黙させる。
 賊を捕まえろと言わんような剣幕で残った兵士たちは一斉に奏白に襲い掛かろうとする。だが、真凜はそれを許さない。相手の進路に対し、牽制するように魔術の砲撃を仕掛ける。先ほどまでよりもさらに力を強めたその弾丸はアスファルトをえぐり、たまたま直撃したスペードの兵士の兜をも凹ませた。これならダメージが通ると確信し、急に前途が明るくなる。
 倒れた兵士に、まだ元気なハートのソルジャーが回復しようと寄り添うが、これ以上の蘇生を二人は許さなかった。真凜はそれを予知していたため、倒れ伏した兵士の近くの地面を抉り、地中でチャンスを待っていた魔力の砲弾の残骸を爆発させた。兵士の残骸に集っていた回復要員のハート兵が、また一体、また一体と数を減らす。
 奏白よりも真凜の方が厄介、そう判断したアリスはクラブの兵士で迅速に真凜を排除しようと目論んだ。だが、つい先刻の音波の範囲攻撃で半数以上のクラブの兵士を失ったままであり、その行動を見てから奏白が対処するのも容易であった。
 そうした攻防が数分間に渡って繰り広げられた。兵士が復活させられないよう細心の注意を払い、奏白と真凜がそれぞれ戦闘不能に陥らないように立ち回るためには、二人ともずっと集中を切らさずに立ち回り続ける必要があった。メルリヌスから借りている魔力のキャパシティにも限界がある。何とかしてそろそろ勝負を決しなければならない。集中し続け、焦り続けた二人には、その数分間が何時間のようにも感じられた。
 そしてついに、スペードの兵士を数体残すのみとして、トランプの兵隊は壊滅状態に陥った。傷こそ未だ負っていないが、消耗が激しい二人は霞む視界、そして荒れる呼吸と戦っていた。もう少し長引けばむしろこちらが地に伏していたと安堵の溜め息をついた。

「どう……だ、観念、しろよ」
「すごいすごい! お兄さんたちほんとに強いんだね!」

 先ほどまでの怒りはどこへやら、珍しいサーカスでも見たかのようにアリスは目を輝かせて笑っていた。ふざけやがってと、カラカラの喉から奏白は声をひり出す。もうこれ以上、強がる余裕は自分にもなさそうだと察した。

「でも私、そろそろ飽きちゃったな」
「はは、じゃあ俺たちに、とっ捕まってくれていいんだぜ、大人しくな」
「それはイヤ。お兄さんを私のものにしたいけど、私が誰かのものになるのは絶対にイヤ」

 真凜も奏白と同様に、もう体力は底を突きかけていた。何よりも魔力が足りなくなってきており、しばらく予知はできないなと、短いながらも回復の時間に当てようとした。その時だった、予知を一旦やめ、魔力の消費が抑えられて顔色が少し穏やかになった瞬間だった。万策尽きたかのように見えたアリスが次なる一手を打ったのは。
 予知をしていなかったため、最初に気づいたのは奏白の方だった。視界の端に映った『それ』に異様な感覚を覚えた彼は、残ったスタミナを使い切る勢いで、真凜の方へと駆けた。瞬きをした一瞬の後に、真凜は奏白に突き飛ばされる。えっ、という驚きの声が出ないまま、その勢いで地面を転がる。その際に視界の端で捉えたのは、今まで全く姿を見せていなかった新しい騎士の凶刃を受けた、兄の姿だった。

「兄さん!」
「そろそろ飽きてきたし、本気出しちゃおっと」

 目の前の玩具が予想外に面白くて興奮するその様子は、本当にあどけない少女のように見えた。けれども、彼女の目に玩具として映っているのは他ならぬ人間であり、アリスの笑顔があどけないだけにその異常性を際立たせた。

「よろしくね、クラブのジャックさん」

Re: 守護神アクセス ( No.4 )
日時: 2018/02/09 02:09
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: hgzyUMgo)

「よろしくね、クラブのジャックさん」

 今までの兵隊とは格が違うというのはその風貌から感じられた。先ほどあれだけ苦戦したスペードの兵士などまるで前座だと思えるほどに、そのジャックと呼ばれた騎士は本物の騎士のような風格と威厳を持っていた。槍を構え背筋を伸ばした姿勢は美しく、どことなく気品を感じさせる。これまでの兵士たちとは異なり、トランプのカードのような胴体ではなく、甲冑を纏っていた。右肩のあたりにはクラブの形の腕章がついており、対照に左肩には大きく『J』と甲冑に直に文字が書かれていた。
 ずっとそのクラブのジャックを真凜は注視していた。片時も目を離していなかった。しかし、気づくとその姿は不意に消え失せ、砂煙だけが巻き起こる。予知するだけの魔力が残っておらず、この攻撃が何であるのか、いつどこから仕掛けてくるのかまるで読めない。

「真凜、ボサッとすんな!」

 突如として、目の前で強い衝撃が生じた。手負いの体で駆け付けた奏白とクラブの兵士の槍が真正面からぶつかり合っていた。猛スピードで移動する二人の攻防による余波が街中の塵を巻き上げる。もうとっくに両者の姿は見えなくなっていた。常人の目にもとまらぬ高速で移動する二人は消えたかと思うと再び姿を現し、また消えたかと思うとさらに遠くで火花を散らす。
槍を縦に振り下ろした斬撃を背中から受けた奏白だったが防刃用のチョッキのおかげで傷は比較的軽く済んだ。しかし、かなり強固に作られているチョッキが両断され、傷つけられたという事実には驚愕せざるを得ない。このままだと血を失って不利になってしまう。
幸いなことに、今のところは奏白の方が優位に立っていた。しかし体力は既に限界であり、長期戦になればなるほど勝ちの目は潰えていく。どこか隙を見て離脱した方がいいだろうか思案する。近辺にシンデレラと交戦しているチームがいるはずなので、そこまで合流できれば状況は変わるかもしれない。だが、彼らがどこにいるのかを知るためには一度アクセスを解除しなければならない。そんな余裕は今どこにも無い。真凜にそう指示する時間すら与えられない。

「あいつが来るのを待つのが確実か」

 せめて目の前にいるクラブのジャックだけは倒さねばならない。他のマークにもジャックがいると考えたくはないが、それでも残った全ての力をぶつけねばこのクラブのジャックは倒せないだろう。槍の持ち手の、木でできている部分を奏白は蹴り上げた。不意を打つその策に、武器を奪う一手への警戒を怠っていたクラブのジャックは得物をまんまと失わされた。今がチャンスだと、最後の気力を振り絞った一撃を決めようとした時の事だった。
アリスが笑う。

「つっかまーえた。アハハっ」

 地中から鋼鉄の棒が何本も何本もせり出た。長方形状に奏白の退路を完全に断つよう包囲して立ち並び、奏白が事態を把握するより先に上から天板がどこからともなく現れて蓋をする。あっという間に奏白だけを閉じ込める鉄格子の牢獄は完成した。鉄格子を挟んだ目と鼻の先で、ゆうゆうとクラブのジャックは先ほど蹴り飛ばされた槍を拾い上げた。

 何が起こったというのか。焦った奏白は急いでアリスの方を見る。そこには残ったジャックの騎士が勢ぞろいしていた。地面に手を当てて何やら画策している騎士の右肩にはダイヤの腕章があった。戦闘の最中に鎖を取り出し、罠に嵌めてきたダイヤの兵隊。その上等兵に当たるジャックは下級兵よりもさらに取り寄せられる物質の質量、バリエーションが豊富らしい。

「しまった、真凜逃げろ!」

 せめて妹だけでも逃がさなければ。捕らえられた時点でもう勝敗は決したも同然だった、そのために奏白は逃げるように指示する。だが、真凜も退く訳にいかず、何とかして兄を救えないかと思案する。だが、疲弊しきったこの状況において、打てる策など皆無だった。

「しばらくお兄さんは静かにしててね」

アリスの命令を受けて、クラブのジャックは槍の、刃が付いていない反対側の先端、木の棒状になっている部分を使って鉄格子の隙間から腹を一突きした。手痛い外傷こそないものの、おもいきり腹部を圧迫され、息苦しさに喘ぐ。だが、喘ぎながらもずっと真凜に逃げろと彼は叫び続けた。

「ダイヤのジャックさん、あれお願い」

 痛めつけても大人しくならない奏白に痺れを切らし、アリスは麻酔を使うように上等兵に指示した。鉄格子の天板から蒸気が噴射されたとたん、奏白の意識は朦朧とする。不味いと察して息を止めようとするが、もう既に薬の作用が出る閾値を超えてしまっている。一秒進むごとに、視界が外側の方から順々に白んでくる。
 真凜の顔を見つめるが、それさえも霞む。泣き言も、負け惜しみも懇願も、何一つ口にすることができない。普段なら軽々と動く己の唇がやけに思い、声帯は思うように開かず、ただ息だけが規則正しく漏れ出る。
 とうとう、奏白の意識は混濁したまま夢の世界へと落ちる。アリスは奏白を生きたまま自分だけの所有物にしたがったため、幸運なことに位置名はとりとめている。背中に受けた傷からの失血死が無いよう、ハートのジャックが回復を行った。

「あとは、邪魔なお姉ちゃんが一人いるだけだね」

 お気に入りの捕獲を見届けると、満足しきったアリスは振り返り、満面の笑みで真凜の方を見た。もう既に、助けなくてはならないという意志は折られていた。ここで自分が逃げ出しても、割を食う民間人はいない。近場の同僚が応援で駆け付けてくれればそれでよいし、奏白は捕まっても後にアリスさえ捉えれば取り戻すことができる。
 しかし、彼女の脳裏に一抹の不安が過る。果たして本当に取り返すことができるのだろうか。果たして本当に、こんな化け物じみた力を持った守護神を捕らえることができるのだろうか。

「そうそう忘れてた。ハートのジャックさーん」

 無邪気な声で三人目の騎士に呼びかける。クラブとダイヤの兵隊を思い返すに、それぞれの下級兵の持つ固有の特性をさらに強化した性能をしていた。足の速いクラブの上級兵は奏白に拮抗するほどの高速戦闘を得意とし、商人のダイヤは巨大な折を瞬く間に作り上げてしまった。
 だとすると、ハートはどうだろうか。下級兵でさえ易々と仲間である他の兵士戦闘不能から立ち直らせた。そのジャックともなればどれほどまでの力を有するのだろうか。
 ハートのジャックが手にしていた得物は先端に緑色の宝玉のついた杖であった。アリスの隣で、スペードのジャックに守られながらその杖を高々と天に掲げる。その時、翡翠色の光の粉が周囲一帯に巻き散った。蝶の鱗粉が宙を舞うようにじわじわとその空間を埋め尽くす。毒の可能性を考慮したが、真凜がその粉塵に触れても何の効果も表れなかった。
 しかし、トランプの兵士たちは違った。奏白と真凜が地道に一体ずつ撃破していった各雑兵たちは、ハートのジャックがまき散らしたその光輝く粉を浴びた瞬間に、一様にむくりむくりと立ち上がった。折れ曲がり、破損していたカードでできた彼らの体も、まるで新品の商品のように折れ一つない様子に復元されている。
 先ほどまでの抵抗は一体何だったのだろうかと、真凜は目の前の光景に絶望した。共に戦っていた兄は捕らえられ、残るは満身創痍の自分が一人。立ちふさがるのは、総勢四十四名の、半永久的に戦うさながら不死の一個師団。資源も体力も尽きることはない。
 目の前の景色が真っ暗になった思いだった。言うなれば、未来が閉ざされていた。勝利のビジョンも無ければ逃走するすべもない。交渉の余地もなく、ただただ、アリスの凶悪さに絶望するほかなかった。
 せめてこれで、アリスのデータが伝わり今後の役に立ってくれればよいかと、乾いた笑いが漏れた。自問自答のように彼女は自分のその望みを否定した。役立てる、一体誰が?
守護神の中には序列が存在している。守護神が持っている識別番号、アクセスの際にphoneに打ち込むその数字こそが彼らの序列を示している。ナンバーは小さければ小さいほど序列は高く、数字が十や二十違う程度ではほぼ影響はない。しかし、この位階は観測されている中で最も小さい数字は100である。大きいものだと五桁や六桁に達する。それだけ多くの守護神が存在する中で、真凜の契約相手であるメルリヌスであれば224、奏白のアマデウスであれば649、世界にもその数がごく少数に限られる三桁のナンバーズ二人が束になってかかったのである。
 その結果がどうなった。確かに今回は二人しかいないと思えるが、人数に関してはアリスの側も最大44人、見せていないだけでキングやクイーンを足せば50を超える。対策課全員が二人ほど強いという訳でもなく、当然二人よりもナンバーが大きく、頼りない守護神の者しかいないと言っても過言ではない。
 今後アリスを討伐するために必要な条件はおそらく最低限自分が無事に帰還することだろうと真凜は思う。できるのか、尋ねたところで誰しもがきっと無理だと言うだろう。せめて、情けない面を拝まれてなるものかと、唇を強くかみしめて彼女は顔を伏せた。

「もう、いいや……」
「バイバイ、お姉ちゃん。楽しかったよ」

 これで終わり、そう思ったその時だった。リズムよく、アスファルトの大地を叩く音が聞こえた。足音、一体誰のものだろうかと思うが、都合のいい幻聴をしているだけだろうと真凜は無視する。きっと次の瞬間には兵隊たちの手にかかり、意識は途絶える。
 そう思っていたのだが、いつになっても真凜のとどめが刺されることはなかった。一体何をしているのかと、視線を挙げてみると、アリス達がよそ見をしているのが見えた。彼女たちの視線は、先ほど真凜が足音を聞きつけた方向を向いているようである。
 誰も来るはずなんてない。彼女が、そう諦めていたのを否定するかのように足音の主は叫んだ。
 その時彼女は思い出した。たった一人だけ、自分たちの交戦を伝えられた者がいたことを。

「奏白さん、真凜さん! 無事ですか!」

 無事な訳ないじゃないと、胸の内で毒づきながら真凜は吠えた。無いはずの気力を絞り出して、自分の元へと駆けよってくる彼へと思いをぶつける。

「今すぐ引き返しなさい、知君くん!」

 気弱な少年に対し、彼女は強い語気で幼い子供を叱りつけるようにそう怒鳴った。先ほどまで意気消沈し、抑鬱した状態のまま死を迎えようとしていた者とは思えないほどにはきはきとした、芯の通った声だった。いつも彼はこのぐらいに怒鳴りつければ委縮していた。きっと命令を聞いて帰ってくれるだろうと思った。
 しかし、彼は振り返ろうとすらしなかった。臆して目を閉じることも無かった。迷いない足取りで、ついには真凜の眼前にまでやってきた。何してるのと、弱弱しい叱咤が彼女の口から洩れた。

「助けに来ました。傷は……良かった、そんなに深くないですね」

 戦闘の最中、かすり傷は負っていたが、大きな負傷は一度も無かった。ただ疲労しているだけだということを一目で見抜き、知君はほっと胸をなでおろす。
 普段はおどおどしているというのに、知君は目を吊り上げてアリスの方に鋭い視線を向けた。あなたがやったんですねと、トレードマークの敬語は忘れることなく彼なりに精一杯威圧する。しかし、まるでアリスには怯えた様子はなく、「うんそうだよ」と和気あいあいとした様子でトランプの兵士の中心で微笑を浮かべていた。

「帰りなさい、何とか私が囮になるから」
「嫌です」

 真凜の指示に知君は真正面から逆らう。死に際の頼みでさえままならないというのかと、真凜は奥歯を強くかみしめた。

「僕なら大丈夫です。Callingの許可はもらってきました」
「知君くん、あなたの番号は知らないけれど、私たち二人がかりでも惨敗なの。一人じゃどうしようもないわ。私たちは元々覚悟してるけど、君は……」
「僕だって覚悟しています。子ども扱いしないでください」
「子供だから、じゃない!」

 お願いだから、頼みを聞いてくれと真凜は請うように声を捻りだす。

「あなたは民間人よ、私たちと違う。守られる側の人間なの。平和な世の中に生きる人なの。私たちは守る側で、死と隣り合わせかもしれないけど、それでも君たちみたいな人が幸せに暮らせることを願って、そうなるように力を振るってる」

 君が君だから悪いんじゃないと、今まで一か月の間共に過ごしてきて、知君に辛く当たってきた真意を漏らす。確かに彼女の中に、何の変哲もない少年が自分以上に兄の信頼を得ているのが腹立たしかったのも事実だ。しかし、それ以上に自分が護ると決めた人に頼り、すがらなければならないというのが彼女の自尊心に障った。

「お願い、君を心中させたくないから、早く逃げて……」
「お断りします」

 ぴしゃりと、知君は真凜の願いを切り捨てた。絶対に退かないという強い意志を見せる。どうしていつもならば素直に言うことを聞くのに、こんな土壇場では融通が利かないのか。歯がゆさに、真凜は目の前の少年の頬を引っ叩いてやりたくなる。しかしそれは堪える、彼女自身が彼を傷つける役目に回るのは本意ではない。

「ねえ、お話終わった?」
「ええ、そろそろ終わりますよ」

 おもしろそうだと思って黙って見ていたアリスだったが、ついに飽きてしまい、二人の会話に割って入る。

「待って、まだ話は」
「私は大人だから待ってあげたけど、そろそろ限界かな、って」
「大丈夫ですよ。Callingだけさせてもらえると嬉しいですが」
「いいよ、私大人だから。それに私とっても強いから、お兄さんの好きにしていいよ」

 ただ、負けたらお兄さんも私のものになってよと、彼女は条件を追加した。知君の容姿は中世的に整った外見だと仕分けし、可愛いお兄さんがいるのもいいなとアリスが欲したためだ。

「待って! この子にだけは手を出さないで!」
「いいですよ」
「君も何言ってるの、いいから早く逃げてってば!」

 ほがらかに話す二人の言葉のキャッチボールに挟まれながら、何度も金切り声で真凜は二人の会話を遮ろうとした。けれども、その声は二人には届かない。守りたいと思うのに、真凜のその祈りはどこにも届いていなかった。

「大丈夫ですよ真凜さん」

 負けませんから。そう言って彼はポケットから黒い機械を取り出した。それは、旧世代のphoneだった。スマートフォン型の、各種機能追加された、真凜たちが持っている機種ではなく、旧型のcallingする能力だけが備わった原始的な装置。ピッピッポッ、とボタンを押す電子音が三度鳴る。
 旧式のphone、それが使われていた時代はまだ、守護神アクセスはcallingと呼ばれていた。だから基本的に知君はアクセスでなくその用語を好むのかと、極限状態の中でどうでもよい些末なことに真凜は納得した。
 そのまま知君は耳にその機械を押し当て、発信ボタンを押す。つまりナンバーは三桁、ようやっと、彼がその身分や経歴を差し置いてこの対策課に大抜擢された理由を真凜は納得した。

「来てください、ネロルキウス」

Re: 守護神アクセス ( No.5 )
日時: 2018/02/09 02:05
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: hgzyUMgo)

「来てください、ネロルキウス」

 彼の端末から光の粒子が飛び出す。それらがぐるぐると渦を巻くように知君を取り囲んだかと思えば、ふとした瞬間に全て知君の体内へと飛び込んだ。人によってアクセスする際の視覚的な応答は様々だが、真凜にとってこのような光景は初めて目にするものだった。
 しかし、その様子が特別だからと言って本当に彼自身が特別とも限らない。真凜はその様子を険しい表情で見守った。仮に特別だったとして、たった一人で何ができるというのだろうか。そして、何かできたとして無力だった自分は、このケースに関して何をできたというのだろうか。
 当の知君はというと、大見得を切ったのだが内心は不安で不安でたまらなかった。自分の意思が敗北してしまうのが怖かった。かつてのトラウマが蘇る。出しゃばったばかりに、余計な悲劇を生みだした過去。自分が無力だったら、悪い想像は止まらない。しかし、それでも彼は逃げるわけにはいかなかった。
 捕らえられ、地に伏す奏白を初めて見た。満身創痍で恐怖と絶望にまみれた真凜など想像したことすらなかった。だが現に、知君の尊敬する二人の、格好良い大人がある一つの暴力に晒され、地に伏している現実を見た時に彼は自身の退路をすっぱりと断ち切った。二人の決死の時間を無駄にする訳にはいかない。
 そもそも、ここで逃げ出したら何のために自分はここへ来たのか。そう思い立った彼は、『過日の出来事』のように、自らのトラウマを背負ってまでも前へ進むと決めたのだ。暴走など、もう引き起こしてなるものか。
 Phoneを媒介として、彼の意識が次元を隔てた彼方に居座るネロルキウスの意識とリンクする。刹那の後、彼の頭脳は急激に覚醒させられ、膨大な情報の洪水が一気に押し寄せた。頭蓋の中心が一気に熱くなる、ぐるぐると眩暈がして、目の前の光景が新聞記事のような無機質な文字列の渦に埋め尽くされそうになる。
 知りたくもない数多の情報、その渦の中に囚われた知君は、自分という意識さえ見失いそうになる。やめてくれと、内なる自意識に知君は命令する。しかし、『彼』はその意志に応えようとしない。

「知君くん!」

 守護神アクセスを行った彼の身に何か異変が感じたとは真凜にもすぐに分かった。急に頭を抱えて苦しそうに目を閉じたためだ。奏白や知君自身の言葉を思い出す。守護神アクセスに許可を必要とする。それはおそらく、彼自身にかかる負担がとてつもなく多いことが起因しているのだろうと。
 彼の耳に、真凜の言葉が届く。その瞬間、自分を見失いかけていた知君は目が覚めるような想いに駆られた。自分を心配する声、それを耳にするのはこれが初めてだった。真っ暗な海の中に漂っていたその意識が、真凜の声によって引き上げられ、浮上する。
 やめろ。自分の意識が空を飛ぶ鳥のように自由になったその時、彼は自身の心の深い部分に向かって、そう強気に命令した。これまで誰にも、そんな言葉は使ったことが無かったが相手が自分の分身と思うとそう告げるだけの勇気になった。
 だが、『彼』……ネロルキウスは許さない。知君が自分の支配下に置かれず、自らの力は契約者ににいいように利用されるなど、ネロルキウスにとって癪な話だった。そのため、ネロルキウスはさらに契約者たる知君への呪縛を強めた。ノアの箱舟から放たれた純真な鳩の翼をもぎ取るように、洪水は再び荒れ狂う。
 地球の裏側の経済情報、かつてノーベル賞をとった男が書いた最新の論文、近所の交通情報、宇宙人が住む惑星の位置、ありとあらゆる情報が知君の頭の中に詰め込まれ、流れ込み、自我が座る椅子を奪い取らんとする。まだ駄目だ、しっかりしろと自分を叱咤する。
 オリーブの枝は、まだ見つからない。

「お兄ちゃん、苦しそうだね……もうちょっと待とうかな。その間に、お姉ちゃんは死んじゃえ」

 敵だというのにアリスは知君の心配をする。それはまるで母親や姉が息子や弟といった自分より下の立場の者を気にかける慈愛のようなものに満ちていたが、彼女が口にするとただ小さな子が背伸びをしているだけにしか見えなかった。もう既に、アリスの中で目の前の少年は自分の所有物になったつもりだった。

「クラブのジャックさん!」

 そう言って真凜を指さした。標的は奴だと言わんがばかりの表情で、空いた方の手でその首を落とすようにとジェスチャーする。人差し指から小指、ぴんと伸ばした状態で寄り添わせた四本の指で自らの首のすぐ傍の空間を切るようになぞった。
 瞬間、クラブのジャックは踏み出す。何度見ても見慣れない、俊足の騎士が槍を手にしたまま姿を消した。立っていたはずの位置に、うっすらと埃が舞い上がる。そして、真凜の方へと向かって、回り込むようにして埃の後は向かっていた。猛スピードで巻き起こる、騎士が大地を踏みしめた名残たる砂煙が視界の外へと消えていく。
 代わりに、その健脚がアスファルトの大地を蹴る激しい音が次第に大きくなる。

「やっちゃえ!」

 自分の中で己の守護神と戦っていた知君は、苦悶の中で目を少し見開いた。アリスの声に不穏を感じたからだ。そこからの景色はまるでスローモーションのように映った。全身の疲労と痛みに顔をしかめ、アリスだけを真っすぐに睨む真凜の斜め後方から、槍を構えたアリスの私兵が猛進している。ふりかざすその鋭利な刃は、ただひたむきに真凜の首だけを狙っている。
 いい加減にしろ。心の中の激闘の最中、彼は自分の心の中に強く命令した。それは、ネロルキウスに対するもののように反響したのかもしれない。だが、彼は契約相手たる守護神でなく、あくまで彼自身に命令した。
 自由とは、力とは、誕生日プレゼントのように貰い受けるのではなく、自身の力で手に入れるものなのだと。『奪い取るもの』なのだ、と。本当に能力を意のままに使いたいのなら、ネロルキウスによって与えられるこの苦悶を我慢し、耐えるのではなく、飲み込んで全て掌握する必要がある。
 もうあと数歩で、真凜の命は刈り取られる。意のままにならない自分に対して知君は鞭打った。ここで何もできず、終わる訳にはいかないのだ。いくら真凜があのようなことを言っていたとしても、自分にとって彼女と奏白は、大切な班員、仲間なのだから。
 空を飛ぼうともがく翼を絡めとっていた波を引きちぎる。もう、守護神たる『彼』の妨害など届かないほど、遥か高みに彼は飛び立っていた。オリーブの枝は、落ちているのを拾うのでなく、枝をへし折ってでも手に入れなければならない。それが本当に手にしたいものならば。
 軽くなった頭をより鮮明にするため、大きく呼吸をして酸素を取り込む。クラブのジャックは、もう後瞬きを一度すれば標的の首を刎ねるだろう。彼は、すんでのところで間に合った。

「手を出すな」

 普段の、緊張で上ずるような敬語とは違っていた。こんな声が自分でも出せるものなのかと知君は驚く。中性的な声であることは変わっていないのだが、その声にはいつもの彼の恭しい態度からは想像できないような、自信と強さと、粗暴さを併せ持っていた。
 ぴたり、知君の命令を耳にしたクラブのジャックはその動きを止めた。金縛りにあったかのような不自然な動きではなく、自分から体を停止させた。まるで、主人であるアリスの命令を聞くかのように従順に、そして迅速に命に従う。
 しばしの沈黙が訪れる。声を出した知君以外の誰もが、目の前で何が起きているか理解していなかった。間違いなく今度こそ自分は死んだだろうと思った真凜も、邪魔ものは取り除こうとしたアリスも、ポカンとして言葉を失っていた。どうしてこの騎士は、命令に反して止まったのだろうか。
 間の抜けた沈黙が埋め尽くした空間を割いたのは、続く知君の言葉だった。動きを止めたばかりのクラブのジャックに呼びかける。

「何をボサッと突っ立っている。お前の主人は誰だ?」

 途端に、慌てた様子でその兵士は地に膝をつけ、知君に対して頭を垂れた。それはまるで、王に従事する騎士の様子であった。言うなれば、真摯にアリスの命令を聞いていた様子と全く同じである。ようやく事態を受け止めた、アリスの声は震えていた。

「何……してるの? クラブの、ジャック……さん」

 アリスの声など聞こえていないかのように、彼は微動だにしなかった。否、聞こえていないはずはない。ただその声が持つ意味が変わっていた。仕えるべき主人の声でなく、討つべき敵の戯言と受け取る。彼にとっての今の主は知君 泰良に他ならない。

「どうかしたか嬢ちゃん、泣きそうな顔して」
「なっ、泣いたりなんかしないもん。いいわ、クラブのジャックさんが裏切ってもまだスペードのジャックさんがいるわ」
「確かに普通の守護神とは格が違うな。奪うのに時間がかかりすぎる」
「人のものをとったらどろぼーって、教えてもらわないの?」

 その問いかけを、彼は一笑した後に黙殺した。くだらない問いだと切り捨てて、アリスの出方を伺う。その様子があまりにも異質で、真凜は先ほどまでよりもはるかに強い恐怖に体を侵されていた。
 彼女の知る知君は、もっと穏やかな人柄だった。ただでさえ会って間もなく、自分から遠ざけてきた彼だったが、それでもこの今の粗暴な人間性は確実に彼女の知る知君とは異なっていた。まるで別人の人格が混じっているようで、その別人の持つ人間性の底知れぬ冷徹さが、真凜にとっては先ほどの死の恐怖に優るとも劣らないくらいに、警鐘が鳴らされてならなかった。
 一体、彼の守護神は何者だと言うのだろうか。

「王たるものに貢ぐのは下々にとって光栄の極みだろう」
「お兄さん、王様なの?」
「俺がじゃない」

 幼名をルキウス、後の名をネロ。欧州を恐怖で統治した、古代ローマ最恐最悪の第五代皇帝、暴虐の王。その暴君性を示す逸話は数知れず。

「死してなお『略奪』の能力に目覚めた守護神、それが俺の契約相手、ネロルキウス」

 欲すもの全てを手に入れる、誰よりも我儘な王様。それが自分の守護神だと知君は言う。似合わないですよね? 今の知君ではなく、普段の知君の声でそう尋ねる声が、真凜には聞こえるようであった。
 自分からずっと遠ざけてきたため、彼女にはどちらの姿が本当の知君 泰良なのか判別できない。今まで嫉妬する相手でしかなかった知君が、今ではそら恐ろしい。暴威を振るう悪名高い皇帝、その守護神に似つかわしい、怒気を孕んだような気難しそうな表情で、知君はアリスの前に立ちはだかる。それは、真凜を守るためだからなのだが、今やどちらが悪党なのか分からなかった。

「アリス、覚悟はいいか?」
「何の?」
「そんなもの決まっている」

 全てを奪われる覚悟だ。そう、冷たい声で知君は言い放った。

Re: 守護神アクセス ( No.6 )
日時: 2018/02/09 23:01
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: hgzyUMgo)

「そんなもの決まっている」

 全てを奪われる覚悟だ。そう、冷たい声で知君は言い放った。やはり、これは自分の知る彼とは違う。真凜の感じる恐怖はさらに募る。ぞわぞわと、背筋を寒気が這うように横断する。身の毛もよだつような畏怖が湧きあがり、体を強張らせる。鳥肌が身体中走り、そのまま締め付けられたかのように真凜は感じた。
 眉間に皺を寄せたままの知君の表情は、いつになく高圧的だった。守護神による人格の汚染、そのような話など彼女は未だに聞いたことが無かった。己亡き世がどのように変革したのか、己は後世にてどのように言い伝えられているのか好奇心を持つだけの温和な守護神ばかりのはずだ。それなのに、彼の守護神はこちらの世界に現れたそのままの勢いで知君の意識を蝕んでいた。
 この状態が彼の本来の姿で、普段は猫を被っているだけなのか。そう思い始めると、普段の温和な笑顔や気の弱そうな声すらも薄気味悪く思えるほどだった。敵ではなく、同じ側に立つ人間に対して、怖いと感じたのは彼女にとって生まれて初めての経験だった。

「スペードのジャックさん、やっちゃって!」
「クラブのジャック、時間を稼げ」

 指揮系統の混乱に、復活したはずの下級兵は混乱して動きを止めてしまっていた。仮に、彼らがはっきりとした意志で襲いかかってきたとしても、今の状態の知君にその刃は届かないだろうから戦局に変わりはない。
 重装兵のスペードの騎士と、軽装備だが機動力に優るクラブの騎士とが衝突する。一度でも反撃を受ければ勝負は決するだろうが、クラブのジャックは軽快にヒットアンドアウェーで攻め込んだ。自身の高速移動を活かして死角へと回り込み、相手の隙をついて切り込む。しかし、最強の兵たるスペードのジャックも屈しない。突進してくる足音の方向と音量からタイミングと角度を推察し、振り返りながら剣戟を放つ。突き進む知君に従う騎士もその切り返しに咄嗟に反応し、槍を地面に突き刺して、棒高跳びのように飛び上がりそれを回避した。着地し、再び敵方の行動を伺いながら隙を探す。

「……よし」
「お兄さん、また何かしたの?」
「その通りだ。何か文句あるか。兵が使えるのは小娘でなく王だと相場は決まっている」
「ほんとは可愛くないんだね、お兄さん。ならいいよ、諦めるから。お兄さんも殺しちゃえ」

 そう言いながらも、そわそわしながらアリスは自身の兵隊の様子を気にかけた。ちらりと横目で様子を見たスペードのジャックはクラブのジャックのように主を忘れている様子はなく、アリスを守るために全力を尽くしていた。命令違反も一つとして見受けられない。得意げな笑みを、彼女は浮かべる。

「お兄さん、残念だったね。スペードのジャックさんは私の方が好きみたいよ」
「誰がそんなものを狙っていると言った?」
「えっ……」

 アリスも、さらには真凜もずっと勘違いをしていた。スペードのジャックも同様に寝返らせることで形勢を一気に逆転、自分たちの勝利へと結びつけようとしているのだと。だが、現実に彼が目的としていたのは、早期の決着では無かった。
 そしてその選択をしたのは、まさしく彼らしいと言う他なかった。奪われたのは、別の兵士。目的は『仲間の安全の確保』である。

「ハートのジャック、こっちにいる女を回復させろ」

 彼が目的としていたのは初めから真凜の回復だった。擦り傷に塗れ、疲労困憊した彼女の様子を彼はこれ以上見たくなかった。痛みに苦しんでほしくなかった。そのため、優先するべきはそちらだと判断した。到着したその瞬間には、短期決着を目的としていたのだが、実際にはアリスは自分の能力に対する免疫のようなものを持っており、敵軍の中に回復を得意とする者がいることも知ることができた。その瞬間にもうこの意志が最優先だと誰に言われるともなく断定された。
 アリスのすぐ隣にいるまま、ハートのジャックは杖を天高く振り上げた。先端の緑の宝玉から、真っすぐに光が真凜に照射される。温かい光に包まれた彼女の全身からは、瞬く間に傷が消えていった。全身に溜まった疲労も、痛みも、嘘のように消えて無くなってしまった。

「気分はどうだ?」

 知君は、短い言葉で真凜に問いかけた。目を細め、眉間に皺を寄せて、険しそうにしながらも、無理に口角を上げる。笑おうとしているのかと、その表情を向けられた彼女は咄嗟にそれを理解した。抵抗しながらも、真凜を安心させようと、気丈にふるまおうと彼はしていた。
 それでもまだ、彼女の心は距離を感じてしまっていたが、それでもほんの少しだけ記憶にある知君の印象に近づいた。少なくとも彼は自分を救おうと立ち向かってくれている、それだけは誰の目から見ても明らかなことで、どれだけ怯え固まってしまおうとも見届けようと決心した。

「ハートのジャックさんまで……何で!」
「子供のお守りは疲れたんじゃないか。さて、降伏するなら早い方がいいぞ」
「うるさいうるさい! 皆して私に命令して、私から奪い取って、そんなにたのし……い……っ?」

 アリスの様子が急変したのはその時だった。先ほどの知君を思い出すような様子で、頭に手を当てて急に悲鳴を上げ始めた。彼女の頭の中で、耐えがたい激痛が走りだす。痛い痛いと泣き叫び、大粒の涙をぼろぼろとこぼしながらしゃがみこんだ。
 何事が起きたのかと驚いたのは知君もそうだった。目の前の出来事に驚き、何が起こっているのかとしばらく観察する。

「何も分からない、どういうことだ」

 それは彼にとって初めての経験だった。だが、その原因を探ることよりも今大事なのは目の前の事態の収束だと割り切る。だが、どうにもアリスが正気でないような気がしてならなかった。あの様子は、まるで自分自身のようだと知君自身も重ねずにはいられなかった。
 その時、真凜も知君も目の前で不思議な現象が起こっているのを目にした。異変は、アリスの瞳に現れていた。フェアリーテイルと認定された守護神は、観測された今までの事例全てで血だまりのような真っ赤な瞳をしていた。しかし今のアリスの瞳は右目がその赤色、左目は宝石のように青く澄んでいた。一番初めに観測室でアリスの姿を見た時のことを真凜は思い出した。あの時見られた彼女の姿は輝く黄金色の長髪に、碧眼を携えてはいなかったかと。
 ならばあの血のように赤い瞳は一体何なのだろうか。正気を失った守護神だと言われているが、あの瞳こそが正気を失っている証なのだろうか、アリスの瞳の色はおぼろげに移り変わっていた。先ほどまでオッドアイのようになっていたかと思えば今度は両目が赤く染まっていたり、逆に抗えている時間は双方の目が真っ青になっている。彼女も何かに抵抗しているのだと察した知君は助けなくてはならないのはもう一人いると認識を改めた。極悪非道と思われていたフェアリーテイル、彼ら彼女らもおそらくは、被害者の一員に違いないのだ、と。

「痛い、痛いよ……頭が、われっ」

 苦痛にうめきながら、助けてくれとアリスは視線で助けを知君に求めた。目の前の人を助けたいという彼の意志は強く堪えようとする。悲鳴を上げているのは自分の体も同じだというのに、彼はぶれない。辛さも苦しみも全て乗り越えて他者のためを想う。限界が来ていようとも、彼は立つ。
 必死で抵抗しているアリスは、決して全てを他人任せにしようとはしなかった。己の内側に巣食う破壊衝動を追い出そうと、全霊で抵抗し続ける。出ていけ出て行けと強く心に念じながら、いつの間にか脳裏に刻み付けられた真紅を求める衝動を全て吐き出さんと抵抗する。絶対に折れたりなどしない、その強い勇気は、歪んだ赤い瞳越しに見た、同じように自身に巣食う何かと格闘した彼を見て得たものだった。
 炎のようにゆらめきながら、真っ赤な瘴気がアリスから立ち上った。気力を振り絞って抵抗するアリスが身の内に根を張っていた邪な気配を押し出した。
 もうこうなればこっちのものだと、知君はそのアリスを蝕む元凶へと照準を定めた。

「もうちょっとの辛抱だ。お前を侵す諸悪の根源、それさえも奪ってやる!」

 左手を添え、右手の平をアリスに向ける。能力を発動し、少女を蝕む謎の邪気を吸引する。溢れ出す瘴気はどんどんと、知君の体の中に溜まっていく。

「待って、知君くん。こんなもの吸い込んだら、君は……」
「問題ない。ネロルキウスにこんなちんけのものは通用しない」

 顔色一つ変えずに、知君はより一層略奪の能力の強度を強める。一秒でも早く、アリスを苦しみから救ってみせると。瘴気を彼が片端から肩代わりしているだけあって、アリスの表情は次第に和らいでいった。瞳の色が明滅するようにころころと色彩を転調することも無くなっていく。そして、彼女の瞳が、青空のように晴れ渡った際に、解放された彼女は安堵に包まれた表情で眠りについた。ふらりと倒れそうになる彼女を、咄嗟に駆け付けた。トランプの兵隊たちが我先にと支える。その表情からは、歪な笑顔は消え去っており、狂気を孕む笑い声でなくただただ穏やかな寝息だけを彼女は上げていた。
 その様子を見届けた知君は、ネロルキウスに対するアクセスを切断した。これ以上長居させて意識をジャックされてはたまったものではない。憑き物が落ちたように、彼の表情も険しいものから見慣れた穏やかな表情に戻った。振り返り、邪気のない笑顔で真凜に向かって微笑みかける。その様子はまるで、よく懐いた犬のようで、先ほどまでの剣呑さなど、嘘のようであった。

「無事に終わりましたね、真凜さん」

 真凜に対し笑いかけてはいたが、彼の膝も笑っていた。危ない、そう声に出しながら、彼女はよろめき体勢を崩しかけた知君を支える。戦いの最中、ハートのジャックに回復させてもらったため、彼女の体の調子はすこぶる良かった。

「あはは、ごめんなさい。もう僕、限界みたいです」

 いいからゆっくり休んでなさいと真凜は指示し、大人しく彼もそれに従った。すやすやと、母親に抱かれる赤ん坊のように、嬉しそうに知君は眠った。アリスが再び暴れるようなことも無さそうで、騎士たちもこちらにはもう一切の敵意を示していない。それどころか、ダイヤのジャックは奏白を捕らえた檻を撤収させ、感謝の心だと言わんばかりに宝石などを差し出してきた。

「終わった、ってことでいいのよね」

台風一過、という言葉が相応しいように思えた。暴力と恐怖と絶望とが荒れ狂った戦場だったがいざ終わって残されたのは、眠りこける大人に、男の子に、幼い女の子。笑ってしまうぐらいに機嫌がいいお日様も、この景色の優雅さに一役買っていた。
 第7班によるアリス討伐、この事実は結果として、成果が出ずにくすぶり続けていた対策課全体を盛り上げ、第7班へのイメージを一変させた。
 そしてさらには、フェアリーテイルに関する、有力な情報をもたらしたのである。

File1 知君 泰良・hanged up

Re: 守護神アクセス【File1完】 ( No.7 )
日時: 2018/02/10 11:34
名前: 日向 ◆ZnBI2EKkq. (ID: Ueli3f5k)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs/index.php?mode=image&file=6039.jpg

(urlにて応援絵描かせていただきました)

決して異能バトルを執筆しているわけではありませんがお邪魔致しますよ((

過去に雰囲気がライトノベルと言ったのは撤回させてくださいね。
SSや以前執筆されていた小説には無かった数レスに及ぶ戦闘描写については凡そライトノベルの一言で片付けるには、なかなか情報量が密で圧倒されました。

やはりアリスちゃんが可愛いですね。私自身の推しは奏白さんなのですが、File1の主役はアリスだと信じて疑いません(
女の子が時折見せる歳相応(なのか?)の傲慢さに、戦闘後見せた安らかな寝息に、とかく彼女に魅了されました。
魅力ある敵キャラというのはバトルものにとって必要不可欠ですね。
主人公らの相棒である守護神の造形も、禍々しさが実体を伴っているような描写でした。
3人の守護神のなかで一番のお気に入りはメルリヌスさんです。唯一人間くささをみせるように真凛さんと喋っていたからかもしれませんが笑

お忙しいなかだとは存じ上げますが、早くも続きが気になっております。アリスちゃん…ではなく討伐後のフェアリーテイルの処遇も気になります。
これからも最新話を追わせてくださいな、お邪魔致しました。


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