二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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ポケットモンスター 魔王と救世の絆
日時: 2018/04/30 21:14
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: OiWubliv)

こんにちはこんばんはおはようございます。パーセンターです。
今回は紙ほか板から映像板に進出して、また懲りずにポケモンの二次小説を執筆したいと思っております。
今回は前作との繋がりはほぼ断ち切った完全新作です。
カウントすれば5作目になりますね。まだ向こうの「星と旋風の使徒」は完結しておりませんので、同時進行となります。

※注意事項(?)
・いつものことですがノープランです。更新のペースも早かったり遅かったりします。
・上でも述べていますが、前作までとの繋がりはほぼありません。まだ「星と〜」が完結していませんしね。
・登場するポケモンは第七世代までです。執筆中に第八世代が出てきたらまたその時に考えます
・上に関連して、パーセンターがよく使っているベガポケモンですが、今作では『出ません』。設定上は存在している設定ですが今作には出ません。
・ベガの技は普通に出ます。ついでにオリジナル技も結構たくさん出ます。オリ技の説明は随時公開するのでご安心ください。
・オリキャラとかオリ技の募集も近いうちにすると思います。皆さん協力お願いします。

それでは、新しい主人公の新しい物語が始まります。よろしくお願いします。

登場人物紹介
>>34
オリ技紹介
>>45

プロローグ
>>1
ハツヒタウン編——旅立ち
>>6 >>7 >>8
シュンインシティ編——経験
>>15 >>20 >>28 >>32 >>35 >>36 >>37
カザハナシティ編——ライバル
>>38 >>40 >>43 >>44 >>46
ヒザカリタウン編——出会
>>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>65
サオヒメシティ編——Evolution
>>66 >>70 >>71 >>72 >>73 >>74 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>84 >>85 >>86 >>91
ハダレタウン編——大会
>>92 >>94 >>97 >>98 >>99 >>102 >>103 >>104 >>106 >>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120 >>121
カタカゲシティ編——試練
>>122 >>123 >>124 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>134 >>135 >>136 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>151
ノワキタウン編——友情
>>152 >>153 >>156 >>159 >>160 >>162 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>175 >>176 >>177
イザヨイシティ編——実力
>>178 >>180 >>181 >>182 >>183 >>184 >>185 >>186 >>187 >>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>195 >>196 >>197 >>198 >>199 >>200 >>202 >>203 >>204

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Re: ポケットモンスター 魔王と救世の絆 ( No.149 )
日時: 2017/02/09 07:05
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 今回のコメントはおよそ3800文字です。先に宣言しておきます。どうも白黒です。

 ハル君はカガチさんに負けてしまいましたか。カガチさん、言葉が辛辣というか、容赦ないというか、めちゃくちゃ厳しいですね……でも、こういう厳しい人は嫌いじゃないです。
 それに、トレーナーを見る目も凄いですね。最初からハルの力が未熟だとわかっていたから(エースで素早く決めましたが)3vs3のバトルにしていたのか。バトルしてない状態でハルの力を見抜いていたとは……事前情報もあったんでしょうけども。
 サヤナとの特訓を経て、再び挑んだジム戦は、それまでよりも豊かな内容で非常に面白かったです。
 先発のサナギラスが瞬殺されたのは少し笑いましたが、後続のポケモンたちの戦術の個性的で、起点となったサナギラスの砂嵐の使い方が巧いなと感じました。
 砂かきで高速化するサンドパンは、特性利用と単純ながらもスピーディーな試合運びでテンポが良かったですし、なによりワルビルとのバトルっていうのがいいですね。サンドパンのように特性の恩恵は受けないとはいえ、ワルビルも砂嵐が得意なフィールドでしょうし、同じ砂漠に住まう者同士のバトルというのは熱いです。結果は、流石に特性でスピードアップしているのと、地面タイプを専門としているだけあって、カガチさんのサンドパンに軍配が上がったようですが。でもワルビルにも威嚇があるんだよなぁ……それも踏まえると、サンドパン強いですね。
 続くフライゴンも、砂嵐が消えたにもかかわらず、発生した砂を利用した砂の壁戦法は独特で新鮮ですね。
 どうでもいいですけど、フライゴンを見たハル君の「ドラゴンタイプか……見るからに強そうだな……」という台詞が煽りか皮肉にしか聞こえないのですが、彼ならば素直にそう思っているの信じたいです。
 ヒノヤコマも害鳥……ではなくなったファイアローに進化して、フライゴンを打ち破ってくれましたか。いやさ、やはりポケモンが進化瞬間はそれだけで熱いですね。
 そして、ラストはバクーダですか。
 最初にカガチさんのバクーダを見た時、まさかこいつがエースだとは夢にも思ってませんでしたが、エースじゃないにしては強すぎるよなぁ、と今にしては思うので納得です。
 しかも、メガバクーダか……そうか。メガルカリオを下して、メガシンカの強さについて諭すカガチさんが最後に繰り出すポケモンとしては、ピッタリ当てはまりますね。
 メガバクーダのバトルスタイルは、純粋にバクーダの時の戦い方を強化したものみたいですが、やっぱり火力が凄まじい。力ずく火炎放射でH振りギルガルドが確殺……対戦知識をここで出すのは野暮ですけど、この超火力がメガバクーダの魅力ですよね。
 それに、リベンジ前の時も思いましたが、口と噴火口と、火炎放射ひとつでも二つの攻撃方法があるというのが、これまた斬新で面白いです。こういう発想はなかったなぁ……しかも、それぞれの発射口から放たれる炎の質が違うというのが、その斬新さに拍車をかけていますね。この着眼点というか、発想は本当に凄いと思いました。月並みな感想しか出なくて申し訳ない。

 カタカゲジムで無事リベンジを達成したハル君。それは非常に喜ばしいですが……ジム戦前に出会ったサーカス団。なんか、きな臭いですね。
 最初は陽気なサーカス団かと思ってましたが、団長はやたら偉そうですね。団長という高位にしては妙に小物臭が……
 それはそれとして、ハーメルン・サーカス団って、やっぱり『ハーメルンの笛吹き男』からなんですね。団長の名前も、編者の一人であるグリム兄弟から取っているようですし。もっと言うと、団員のルンペルとかシュティルというのも、ドイツっぽい名称ですね。
 ここで言うことでもないんですが、私は大学でドイツ文学を専攻しているので、自分の専門のことが出て来ると、ちょっと嬉しくて反応しちゃいますね。
 それと、直接的な関係はないですけど、アリス・リデルで『不思議の国のアリス』に続き、童話モチーフが続きますね。『ハーメルンの笛吹き男』はどっちかっていうと伝承ですけど。でも、童話とか寓話が好きなので、それらをモチーフにしたものにも、自然と惹かれてしまいます。しかし、ハーメルンはなぁ……あの話って結構ゾッとするというか、子供たちが笛吹き男に連れ去られた“後”の諸説とか、伝承の背景とかに、かなり恐ろしいものがあるんですよね……そういう恐怖感というか、凄惨さも合わせて好きですけど。
 この時点でなんとなくこいつらの闇が察せられた気がしますが、それは後述するとして。
 チケットを譲渡したために、サーカスには行けず、代わりにジムリーダーと特訓ですか。こういう展開もまた、珍しいですね。勿論、それまでも真新しいと思うようなものはありましたが、特にカタカゲシティ編から独特な物語の運びが多いように感じます。
 でも、やらされてることはトンネル工事……ただの労働というか、特訓という名目で上手く誘って、こき使っているだけでは? と思ってしまいましたが、カガチさんの性格上それはなさそうなので、本気で特訓のつもりなんですかね……

 ハル君がトンネル工事をしている間、サヤナとエストレさんは優雅にサーカス観賞。
 サーカスって個人的にはあまり行く機会がないのでよくわからないのですが、復活の儀式、とか言い始めるあたりでかなり怪しいですね。
 しかも、初代団長のツェヘンを復活させるって……あぁ!
 ルンペル、シュティル、ツェヘンの三人で、グリム童話の『ルンペルシュティルツェヘン』か! 小人が赤子を奪いに来る話でしたっけ……今さら気づきました。
 しかも、先に言っちゃいますが、この三人は全員グルなんですよね。そう考えると凄い納得。名前が伏線になってたのか……グルといえば、グリムもですけど、なんか見限られてますし、この三人に比べて結びつきは弱そうですね。
 順番が滅茶苦茶になってしまいましたが、ルンペル、シュティルをそれぞれ退け、団長のグリムとハル君のバトルですね。
 なんか団長、団員の二人から完全に見限られてますけど、この流れどっかで……ディントス教だ。
 ミョルとグングみたいに、ルンペルとシュティルも派遣社員……? あの時はヴィネーが裏で手を引いてて、今回はダンが黒幕みたいですし、流れは酷似していますね。
 しかも、どっちもメガシンカについて言及してる話だ……後から気づかされるこの伏線と構成力と、ひとつのテーマに基づいた結びつき。感服するしかありません。月並みかつ乏しい語彙でしか表現できないのが心苦しいですが、これは本当に巧いですし、素晴らしいと思いました。
 また順番がしっちゃかめっちゃかになってしまいました。えぇと、グリム戦ですね。
 凄い小物っぽい言動でしたけど、グリム団長、弱いですね。
 でも、大人が云々と主張する姿は、ロケット団を始めとする典型的なポケモンの悪役らしくて、嫌いじゃないです。
 使用ポケモンも、サーカス団っぽい奇妙で不気味な面子ですし、全体的にテーマが統一されてて、とても面白いですね。脳筋馬鹿力カラマネロが、やっぱりなぁ、って感じですが。
 グリムがあっさり下されて、ダンことダンタリオンが姿を明かしましたが……変装が得意にしては、役作りがちょっと甘くないですかね、ダン。エストレさんに一人称の変化とか見抜かれちゃってますけど。
 それと、いつぞやの大会で出て来たリオン、やっぱりダンだったんですか……ダリまでそうだとは気付けなかったのが、ちょっと悔しい。でも思えば、ダンタリオンから名前取れてるなぁ。これは気づくべきだったか。
 それにしても、ダンタリオンって、変装が得意なだけあって姿のバリエーションが多く、口調もコロコロ変わって色んな喋り方をして、一人称もたくさんあり、名前さえも多数の名前を持ってるって、もう何奴だかわからないですね。
 ダンタリオンという唯一の存在が存在しないといいますか、ダンタリオンという“個人”はどこにあるのか……なんか、そういうキャラに感じてきました。しょっちゅう口調かわって鬱陶しいとかちょっと思ってましたけど、ここまで“個”を捨てたキャラってなかなか見ないというか“個”を捨てたキャラって大抵は“無”なので、多くのなにかを有して“個”を隠すっていうのは、凄く珍しいなと感じます。あるいは、“個”がないことが“個”なのか……
 ……なんか観念的ですいません。なんというか、好きというのとはちょっと違うんですけど、ダンタリオンがどういう奴なのか、興味が湧いてきましたと、それだけです。はい。
 そんなダンとのバトルですが……強いですね、ダン。
 最弱らしいモルフォンでも、パワーで押している感じがありますし、決して耐久が高いといえないポケモンらで、あえて回避せず、耐えて反撃に出るという強引な戦術を取れるのが凄いです。
 しかも、ダメ押しのようにメガゲンガー……ゾロアークが印象的でしたけど、エースはこっちか。
 なんか非常に語彙力を喪失した感想になった気がするのですが、カタカゲシティ編はとりわけ伏線と構成が巧いと感じ、バトルも独特で面白い戦術や発想が多く見れて、楽しめましたし、勉強にもなりました。
 ダンとのバトルは非常に厳しいそうですが、どう収束させていくのか。次回更新を楽しみにしています。
 それでは。

http:// ( No.150 )
日時: 2017/02/10 08:19
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

>>白黒さん
いつもコメントありがとうございます。コメントが多いと読むのが楽しみなのでありがたいです。

カタカゲジム初戦は、ハルは敗北、それも大敗といった形での敗北です。
今までのジムリーダー四人に比べて、カガチは厳しいキャラに仕上げました。メガシンカを手に入れてチョーシに乗ってるハル君に喝を入れるのにちょうどいい役になったと思ってます。トレーナー歴もここまでのジムリーダーたちとはかなり違いますしね。
財団の代表という設定もありますので、人を見る目も一流です。バッジを渡すに値しないと判断すればすぐに試合を終わらせてしまいます。
再戦では、ハルの成長具合を示すためにも、まだ進化前で起点作り担当だったサナギラス君に犠牲になってもらいました。ただその分、後続の三体でカガチのその実力を充分に描写出来たかなと思っております。
まずはサンドパン、砂かきという単純かつ強力な特性で相手をかき乱すのを得意とします。仰った通り、素早さだけでなく、威嚇の特性を持ったワルビルにも負けない火力も持ち合わせています。万が一追いつかれても対応できるための策ですね。
三番手のフライゴンについては、翅で砂を巻き上げて身を隠すという公式設定があったので、そこから転じて砂と風の壁という特殊戦法を取らせてみました。
ハル君の言葉に関しては……まぁ、特に他意はなかったはずなんですが、見ると結構な皮肉ですねこれ。
一応ハル君の思考としては、ジラーチの映画でサトシを乗せたフライゴンを見て「カッコイイ!ツヨイ!」と思った人たくさんいると思うんですけど、その感情に似てます。れっきとした聖なるドラゴンタイプですしね。
バクーダがエースであることについては、正直自分でも気付く人少ないだろうなと思ってました。ただリベンジ前からやたら強いので察していた人もいるかもしれません。
一応メガシンカがどうこうと話していたのも、彼もメガシンカを使えるという伏線だったり。
フライゴンの砂の壁についてもそうなんですが、やっぱり折角の小説なのでゲームじゃ描かれないような設定もフルに生かしていきたいと思っております。バクーダの噴火口なんて小説映えしないわけがないですからね。炎の質だけは完全なオリジナル設定ですが。

ジム戦に勝ったということで、次はサーカスのフラグの回収ですね。
本性に触れてしまいますが、サーカスって普通のパレードとは違って、楽しいながらもどこか不気味に感じてしまうんですよね、特にピエロとか。
そこにハーメルンというこれまた不気味な寓話の名前をつけることで、「何かある」感を出したつもりです。ハーメルンの笛吹き男は不気味なんてもんじゃない気もしますけどね。
しかし残念ながらハルはチケットを譲ってしまったのでサーカスには行けずじまいです。
団長は……まぁ、小物臭というか完全に小物ですね。小物感を全力で出していく方向で描写しています。
カガチは真面目な人なので、トンネル掘りもちゃんとした特訓の一環のつもりです。単純にパワーを鍛えるという点では理にかなっているかなと思ってます。

私もサーカスは一回しか行ったことがないので、かつての記憶や、テレビとか漫画とかで得た知識を使ってどうにか描写しました。普通のサーカスでは儀式なんて言いません。
団員たちの名前は、その通り、グリム童話、ルンペルシュティルツヒェンからです。気づいていただけて嬉しいです。
流れは正直、ディントス教とほぼ同じです。この二つの下部組織の展開は執筆開始の前から考えていた展開なので、そう言っていただけるととても嬉しいです。ありがとうございます。
そんでもってグリム団長は弱いです。ディントスはまだある程度は強かったですが、こいつはルンペルやらシュティルの方がよっぽど強いレベルで弱いです。さっきも言いましたが典型的な小物ですね。
使用ポケモンもルンペル、シュティルも含め、割と異質だったり不気味だったりするポケモンをチョイスしています。ちなみに無数のカエンジシはシュティルのポケモンではありません。
ダンタリオンの口調についてですが、これは変装を度重ねた結果生まれてしまった癖という設定があります。普段変装しているときはかなり気を使って喋っているのですが、今回は一人称でついボロが出て、エストレに見破られてしまっております。
この間のコメントでリオンを言い当てられたときはさすがにびっくりしつつも、ここで言うわけにはいかないと思って敢えてスルーしました、ごめんなさい。
今回の敵、魔神卿はその名前も含めてかなり異質さを出したつもりですが、特にダンタリオンはその筆頭ですね。あとはアモンも。
まぁこいつは結構陰湿なやつなので、多分人気の出るキャラではないだろうなとは思ってました。口調も見ててこんぐらがりますしね。
一応明確な個は存在しているんですが、多彩な変装や無数の名前、目まぐるしく変わる一人称、挙げ句の果てに白い燕尾服姿のダンタリオンでさえ、真っ白なメイクで素顔を隠しています。その奥にこそ、こいつの真の本性があるわけですが、それはまたその時に。
そしてそんなダンタリオンの切り札は同じく異質で異形のポケモン、メガゲンガーです。
ゾロアークもそうですが、変装によって相手を騙す異質な奇術師のモチーフにはぴったりかと。色違いだったら色もそっくりでした。カタカゲシティ編は次回で収束させる予定ですので、楽しみにしていてください。

第86話 閉幕 ( No.151 )
日時: 2017/02/11 00:48
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
参照: 魔神卿ダンタリオンのゲンガー、まさかのメガシンカ——

「ゲンガー、シャドーボール!」
「ルカリオ、躱してボーンラッシュ!」
ゲンガーの第三の眼が輝き、黒い影の弾が放出される。
対するルカリオは大きく跳躍して影の弾を躱し、周囲に放った波導を無数の骨の形に変え、ゲンガーへと放つ。
「ゲンガー、纏めて押し流すのです。ヘドロウェーブ!」
ゲンガーを中心として、周囲に毒液の波が流される。
毒の波は無数の骨を次々と打ち消していくが、
「ルカリオ、突っ込め!」
骨型のロッドを携え、ルカリオは真正面からゲンガーへと向かっていく。
鋼タイプのルカリオに毒技は効かない。毒液の波をものともせずに突っ切り、骨のロッドをゲンガーの額に叩き込んだ。
「ゲンガー、シャドーボール! 連射だ!」
ゲンガーの第三の眼が黒い光を放ち、黒い影の弾が連続して撃ち出される。
「ルカリオ、躱してサイコパンチ!」
ルカリオの握り締めた握り拳が念力を纏う。
次々と放たれる影の弾を次々と躱しながら、ルカリオはゲンガーへと突撃していく。
だが、際限なく放出される影の弾がルカリオの逃げ場を次第に狭め、最後にはルカリオはシャドーボールを受けて押し戻されてしまう。
「ゲンガー、気合玉!」
ゲンガーがニヤリと笑い、異次元に体を潜める。
少し時間を置き、ゲンガーは不意にルカリオの背後から現れる。
「まずっ……ルカリオ、発勁!」
咄嗟に波導を纏った右手で背後に裏拳を繰り出し、ルカリオは何とか気合玉を防いだ。
「サイコパンチ!」
さらにルカリオは念力を纏った右手を突き出すが、
「ゲンガー、戻って来なさい」
ふたたびゲンガーは異次元に沈んでルカリオの拳を躱し、ダンタリオンの元へと戻る。
「ルカリオ、突っ込め! ボーンラッシュ!」
ルカリオが構えた手から波導が噴き出し、長い骨の形を作り上げる。
骨のロッドを携え、ルカリオは一気にゲンガーへと向かっていくが、
「ゲンガー、躱しなさい」
地面を滑るように駆け抜け、ゲンガーはルカリオの骨の一撃を躱し、背後を取る。
そして。

「ゲンガー、ファントムゲート!」

ゲンガーの第三の眼が怪しく蠢き、次元が裂けて異次元の入り口が開く。
その異次元の裂け目から、青い波導の念弾が放出された。
「……!?」
見たこともない技に驚くハル。
異次元の裂け目から撃ち出されたその技は、どう見てもルカリオの波導弾だった。
必中技ゆえ躱すこともできずに、ルカリオは吹き飛ばされる。効果は抜群だ。
「っ……今の技は……?」
「ゲンガー、続けろ!」
異次元の裂け目から、ゲンガーは連続で波導弾を撃ち出していく。
「くっ、ルカリオ、こっちも波導弾だ!」
ルカリオも右掌から波導の念弾を放出するが、明らかにゲンガーの方が連射速度が速い。
全てに対応しきれず、ルカリオは次々と波導の念弾を叩き込まれる。
「知らないだろうな。ファントムゲートは、バトル中に見た相手の技を一つだけ選んで使える技。今回はお主のルカリオの波導弾を使わせてもらいました」
「何だって……!?」
前代未聞の技だ。オウム返しなど相手の技を使用する技はいくつかあるが、特別な条件もなく好きに使える技など、さすがに見たことがない。
「そして、これでおしまいじゃ。ゲンガー、気合玉!」
立ち上がろうとするルカリオへ、ゲンガーが身体中の気を一点に溜め込み、気合の念弾を放つ。
「っ、ルカリオ!」
ルカリオはようやく起き上がるが、既に気合玉はルカリオの眼前まで迫っていた。
気合の念弾が、ルカリオへと直撃する。
その、直前。

「バクーダ、大地の力!」

ゲンガーの足元とルカリオの目の前から土砂が噴射し、ゲンガーを吹き飛ばし、気合玉を打ち消した。
「よし、ようやく追いつきましたわ!」
「ハル! 遅くなってごめん!」
森の中から現れたのは、エストレとサヤナ。そして、
「悪党、そこまでだ。これ以上好き勝手はさせんぞ」
バクーダを引き連れたカガチだ。先ほどの大地の力はバクーダの技だろう。
「おやおや、これはまた大勢で。どうにかしてもいいですが、さすがにこの人数が相手では骨が折れますね。仕方ない、ここで撤収するかの」
やれやれといった調子で、ダンタリオンは頭を掻く。
「さあ、攫った街の人たちを返してもらおうか」
「そう怒りなさるな。攫った観客たちはそこの荷車の中で眠っていますよ。私のゲンガーとゾロアークで幻術を仕掛けたので、当分は眠ったままだと思うがな。ゲンガー、撤収だ。そんじゃ」
最後に、ダンタリオンはもう一度不気味に笑うと、

「本日は、ハーメルン・サーカスにご来場いただき、誠にありがとうございました。またのご来場、お待ち申し上げております」

刹那。
ゲンガーが異次元の入り口を開き、ゲンガーとダンタリオンはその中へと消え去った。



その後すぐに荷車はカタカゲシティに引き戻され、テントが切り裂かれ、中で眠らされていた観客たちは全員怪我なく助け出された。
すぐに目を覚ました者もいれば、ダンタリオンの言った通り全く目を覚ます様子のない者もいるが、ちゃんと全員生きていた。
「あら、お兄さんがまた助けてくれたの?」
テントから出てきた二人組に、ハルは声を掛けられる。
ハルが振り向くと、その声の主はハルがチケットを譲った親子だった。
「えっと……まぁ、僕というか皆が……。それより、怖い思いをさせてしまってごめんなさい。僕が譲らなければ、こんなことには……」
「いいのよ。実際サーカス自体は面白かったし、眠らされてたみたいで怖いことはほとんど覚えてないから。ありがとうね」
「お兄ちゃん、ありがとうね!」
ハルにもう一度礼を告げると、その親子は楽しそうに会話しながら、その場を去っていった。
「ハル。今回のことでは迷惑を掛けたな。すまなかった。協力、感謝しているぞ。サヤナとエストレ、お前たちにも謝らなくてはな」
全員の無事が確認された後、カガチはハルたちへと頭を下げる。
「いえいえ、僕は大丈夫ですよ。カガチさんこそ、助けてくれてありがとうございました」
「ハルと同じく、礼を告げるのは私の方です。あそこでカガチさんが来てくれなかったら負けてたかも」
「頭をあげてくださいな、カガチさん。事件が無事解決して、何よりですわ」
サーカス団員を捕まえられなかったことだけは残念だが、捕まった人たちは全員無事に救い出せた。
「さて、ハル。まだ特訓の途中だったが、どうする? 続けるか?」
「……そうでしたね。はい、やります。行きましょう!」
「いい返事だ。よし、続けるか」
ハーメルン・サーカスを撃退し、ハルは再びトンネルの中に戻り、カガチと特訓を再開する。



「はぁ……はぁ……」
森の中を、ひたすら駆け抜ける。
やがて、グリム団長は森を抜け、舗装されていない薄暗い道路へと出た。
「はぁ……し、死ぬかと思った……」
肩で息をつくグリム団長。
「おーおー、大丈夫かいな」
そこで待機していたのは、緑のピエロ、ルンペル。
彼らにとってのこの場所は、任務が終わった後の待機場所だった。
「弱いくせに、しぶとさだけは一流ね」
ルンペルの横には、ゴシックな蝶の衣装のシュティルもいる。
「お、お前たち! どうして団長を助けなかったのかね! おかげでひどい目にあったんだよ! 分からないのかね!?」
仲間を見つけた途端に怒鳴り出すグリム。
「……ムカつく。もう殺しちゃいましょうよ、こいつ」
ついに見かねたシュティルが呟く。
「き、君は団長に向かって何てことを言うのかね!?」
「何が団長よ。実際にあんたはただの役立たずでしょうが」
実力の差は分かっているようで、グリムは途端にビビり出すが、
「まぁ、待ちぃなシュティル。このおっさんの処遇は私らが決めることちゃうよ」
相変わらず柔和な笑顔のルンペルに肩を叩かれ、シュティルは止まる。
「処遇……? はて、それはどういう?」
先ほどから表情がころころと変わるグリムだが、それを無視し、
「どうぞ、後はご自由にー」
そう言って、ルンペルはシュティルの手を取り、一歩引き下がる。
すると、
「気付いていたか。最低限だが任務は終了した。引き上げますよ」
地面に異次元の裂け目が現れ、そこからダンタリオンとメガゲンガーが姿を現す。
「ルンペルとシュティル、お前たちは先に撤収を」
現れたダンタリオンはまずルンペルとシュティルの方を向き、先に二人を帰らせる。
「はいはい。ほなら私らはこれで」
「それでは、お先に失礼します」
暗闇の中へと去っていく二人を見て、グリムも後を追おうとするが、
「グリムは残りなさい。話すことがある」
ダンタリオンはグリムの方を向き、グリムを呼び止める。
「グリム。とりあえずこう言っておきますか、お疲れ様でした」
「え……あ、はい、ありがとうございます!」
ころころと態度が変わるグリム。本当に分かりやすい。
「こっちも最低限やることはやった。任務終了だ」
「お、お褒めいただき恐縮でございますっ!」
「うん、まぁそれはいい。グリム、もう少し前に出てくれるかな」
「……?」
怪訝な表情を浮かべ、グリムは一歩前に出る。
「——そんでさ、ここからは話の続きなんだがよ」
表情を変えずに、ダンタリオンは言葉を続ける。
「シュティルから聞きましたよ。ターゲットをサーカスに連れてこられなかったのは、貴方が客の一人にでかい態度をとったせいらしいな。おまけに散々部下を罵り回った挙句、自分は時間稼ぎも出来ずにただ負けただけと。どこまで馬鹿なんだ」
「ひっ、ひいっ! 申し訳ございません!」
「なぁ、グリム。最初に言ったこと、もう一度言うぞ」
その瞬間。
グリムには、ダンタリオンの白い化粧という仮面の奥に潜む本性が、確かに見えた。

「——任務終了だ。お疲れ様」

閃光、直後に衝撃。
グリムの意識は、そこで途絶えた。

第87話 トンネル ( No.152 )
日時: 2017/02/11 14:26
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

『続いてのニュースです。今日未明、カタカゲシティ郊外にて、誘拐の容疑で指名手配を受けていたハーメルン・サーカスの団長、グリム氏が、遺体で発見されました』

「えっ……!?」
ポケモンセンターの宿舎で目を覚まし、ターミナルでニュースを確認していたハルの耳に飛び込んできたのは、グリム団長の死亡を知らせるニュースだった。
『遺体には刃物で斬りつけられたような大きな傷跡があり、警察は殺人事件と見て、捜査を進めています……』
しかも、殺人。
昨日の大量誘拐でのミスによって用済みと判断され、ダンタリオンに処分されたのだろうか。
グリムも同情の余地もない悪人であるのは間違いないが、ディントスの時といい、こうも簡単に部下を切り捨てるゴエティアに対してはやり切れない怒りが浮かぶ。
それと同時に、
(やっぱり危険な組織だな、ゴエティア。今後関わるなら、一層用心しないと)
自分はパイモンのお気に入りか何からしいので、今のところは命を奪われることはないかもしれない。
だがそうでない人となれば話は別だ。邪魔する者には容赦しないのが、ゴエティア。

——ぼくは確かにハル君、君に期待してはいるけど、逆に言えばそれだけ。君のお友達にはなんの興味もないんだからね?

いつかのパイモンの台詞が、頭の中に蘇る。
ゴエティアの危険性を改めて認識しつつも、
(まぁ、そんなことを考えていても仕方ない。今は、僕がやることを考えよう)
気持ちを切り替え、ハルは次の街を目指す。
次なる目的地は、イザヨイシティだ。



次の街に向けて、ハルはカタカゲシティからイザヨイシティへと続くマデルトンネルを進んでいた。
イザヨイシティ方面はもう完成しているトンネルであるため、昨日掘り進めていた道と違い、きちんと舗装されており、薄暗くはあるものの周囲を見渡せる程度に照明が付けられている。
あまり明るくしていないのは、生息する野生のポケモンへの配慮だ。
「なになに……イザヨイシティはマデル地方における科学技術の最先端を突き詰めた街。街のあらゆるところに、最新の科学技術が使用されている……近未来的な街なのかなぁ」
今ハルが情報を検索しているこのアルス・ターミナルを製作した会社、アルスエンタープライズの本社の所在地もイザヨイシティにあるという。
さらに、少し先の出来事にはなるが、この街で大規模なポケモンバトルが開かれるらしい。
その規模、まさにポケモンリーグマデル大会の次に大きな大会。優勝の商品は賞金、それから何と、ポケモンリーグ予選のシード権だ。
「うん、ちゃんとジムもあるみたいだね。イザヨイシティに早めに着けたら、ジムに挑もう」
予定を立てながら、ハルは薄暗いトンネルの中を進んでいく。
しばらく進むと、分かれ道へと差し掛かった。
どっちに進むべきか迷うことになるかと思ったが、その疑問はすぐに晴れた。立て札が置いてある。
「えーっと……この先、ノワキタウン。関係者以外の立ち入りを禁ず、か」
道のど真ん中に置かれた立て札には、そう書かれていた。
昨日の特訓(トンネル掘り)中にカガチから聞いた話によると、ノワキタウンは粗大ゴミの捨て場として使われている、所謂無法地帯とのことだ。
一応ジムリーダーもいるらしいが、無法な町の治安維持を目的としたもので、今は形式的なものに過ぎないらしい。
マデル地方にはジムが八箇所しかないわけではないので、わざわざそんな無法地帯へと赴く物好きはそうそういないし、ハルもそんな物好きではない。
「まぁ、普通にイザヨイシティを目指そう」
そう独り言を呟き、立て札の立っていない道に進んで行こうとしたところで、

「邪魔だ! どけ!」

三人ほどの黒装束の男たちが通路から飛び出してきた。
ハルは突き飛ばされ、尻餅をついてしまう。
「痛たた……なんだ?」
お尻をさすりながらハルは立ち上がる。
よく見れば、黒装束はゴエティアの下っ端たちだ。
「……! ゴエティア……ここで何をやってたんだ!」
「げっ、お前、俺たちのこと知ってるのかよ」
思わずハルは身構えるが、男たちからは戦意を感じない。
「悪いが、俺たちは今お前のようなお子様に構っている暇はないんだ。俺たちが縄張りをちょいと荒らしてやったせいで、ここを住処にしてるポケモンが暴れ出しちまったもんでな。逃げるところなのさ」
「そういうこと。ま、イザヨイシティへ向かうにはそこを越えていくしかないがな」
それだけ告げると、男たちは立て札の立てられた通路の奥へと逃げて行ってしまった。
「何だったんだ?」
追いかけたい気持ちもあるが、無法者の町の中へ飛び込んでいくのも気が引ける。
何より、こんな薄暗いトンネルの中で追い掛けたとしても、すぐに見失ってしまうだろう。
「……ま、いっか。気にしないで進もう」
しばらく考えた結果、ハルは下っ端たちのことは気にせず、目的地へと足を進めることにした。



道が険しくなってきた。
照明は設置されているのだが、ところどころ電池が切れているらしく点灯しておらず、道もごつごつした石が目立つようになってきた。
薄暗い通路の中を、黙々とハルは進んでいく。
その時だった。

ズガァン! と。
トンネルの壁が破壊され、何者かが姿を現わす。

「な、何だ!?」
後ずさりし、身構えるハル。
襲撃者の正体はポケモンだった。恐らく野生のポケモンだろう。
赤い爪を持つ、緑色の小型の怪獣のような風貌のポケモン。口からは長い牙が突き出している。

『information
 オノンド 顎斧ポケモン
 口から突き出た牙は大岩を砕く
 ほどの破壊力。非常に頑丈な反面
 折れてしまうともう生え替わらない。』

ドラゴンタイプのポケモン、オノンド。牙を剥いて威嚇しており、相当興奮している様子だ。
「もしかして……さっきあいつらが言ってたのって……」
恐らくは、このオノンドのことだろう。この場所を住処としていたところ、下っ端たちに縄張りを荒らされて気が立っているのだろう。
「倒さないと進めないか……あんまり気が進まないけど、エーフィ、ここは頼んだよ」
戦闘は避けては通れないと判断し、ハルはエーフィを繰り出す。

第88話 顎斧 ( No.153 )
日時: 2017/02/13 17:23
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
参照: 突然襲いかかってきた襲撃者は、野生のオノンドだった。

突然襲いかかってきた野生のポケモン、オノンド。
対するハルは、エーフィを繰り出して応戦する。
先にオノンドが殴り込んできた。龍の力を爪に纏わせ、エーフィに向けて振りかざす。
「エーフィ、躱してサイコショット!」
突っ込んでくるオノンドの龍爪を躱し、エーフィは額の珠に念力を溜め込み、サイコパワーの念弾を発射する。
だがオノンドも対応が早い。長い牙に炎を灯して牙を振り抜き、念弾を切り裂いてしまった。
「今のは炎の牙……それに最初の技は、ドラゴンクローか」
バトルから気を逸らさないように気をつけつつ、ハルは図鑑を取り出して情報を調べる。
「エーフィの得意技を一撃で壊す……なかなか攻撃力が高いな……このオノンド、ちょっと欲しいかも」
この洞窟一帯を縄張りとしているだけあって、実力は高そうだ。
ハルの手持ちはまだ四匹。そろそろ新しい仲間が欲しい頃だ。このオノンドをゲット出来れば、頼もしい仲間になってくれるだろう。
そうこうしている間に、オノンドは再び突っ込んできた。
「エーフィ、躱してスピードスター!」
身軽にオノンドの牙を躱し、エーフィは二股の尻尾を振り抜いて無数の星形弾を飛ばす。
オノンドは星形弾を躱そうとするが、必中の星形弾は軌道を変え、確実にオノンドを捉える。
「いいぞエーフィ、続けてシャドーボール!」
続けて、エーフィの額の珠が黒く染まり、黒い影の弾が放出される。
対して、オノンドは龍の力を帯びた爪を構えて突っ込んでくる。
龍爪を振り抜いて影の弾を破壊すると、さらに今度は牙を構えて突撃し、エーフィを切り裂き、吹き飛ばした。
「っ、エーフィ! 大丈夫!?」
ゆっくりと立ち上がるエーフィだが、ダメージが大きい。
技を確認すると、
「シザークロス……虫技を持っているのか……」
虫タイプの技は、エスパータイプのエーフィには効果抜群となる。
そしてオノンドもシザークロスがよく効くことに気づいたようで、続けざまに再び牙を構えて突っ込んで来る。
「そう何度もは当たらないぞ。エーフィ、躱してサイコショット!」
今度は跳躍してオノンドの牙を確実に躱し、勢い余って後方に飛んでいくオノンドの背中へ念力の弾を放つ。
飛び上がったエーフィの方を振り返ったオノンドの顔面に、サイコパワーの念弾が直撃した。
「エーフィ、スピードスター!」
さらにエーフィは尻尾を振って無数の星形弾を飛ばす。
この技は躱せないと理解したようで、オノンドは手刀を振るうように牙を叩きつけ、星形弾を破壊する。
「最後の技は瓦割りか……エーフィ、一旦離れてサイコショット!」
エーフィはその場からジャンプしてオノンドから距離を取り、サイコパワーの念弾を放つ。
突撃を仕掛けようとしたオノンドに念弾が直撃し、オノンドは体勢を崩す。
「よし……! 今だ!」
オノンドが転んだところに、ハルはモンスターボールを取り出し、それを投げつける。
モンスターボールがオノンドの額に当たると、ボールが開き、オノンドを吸い込む。
ボタンが赤く点滅し、激しく揺れる。
しかし、
「……っ! まだだめか!」
オノンドはモンスターボールを突き破り、中から出てきてしまう。
荒々しく吼えると、オノンドは再び龍の力を帯びた爪を構えて突っ込んでくる。
「エーフィ、スピードスター!」
対するエーフィは無数の星形弾を放つが、オノンドは爪を突き出して強引に突っ込み、星形弾を打ち破り、その奥にいるエーフィに斬撃を与えて吹き飛ばす。
オノンドの攻撃はそこで終わらず、さらに牙で切りかかって来る。
「っ、エーフィ、シャドーボール!」
咄嗟にエーフィは倒れたままくらい影の弾を放つが、影の弾はオノンドの牙に押し負け、威力は弱めたものの、エーフィは再び切り裂かれてしまう。
「エーフィ!」
吹き飛ばされるエーフィに対し、オノンドは爪に龍の力を纏わせ、飛び出してくる。
ようやく立ち上がったエーフィ。普通ならば回避できる余裕はないが、
「エーフィ! マジカルシャイン!」
エーフィの額の珠が白く輝き、周囲に純白の光が放出される。
オノンドの腕の龍の力を容易く打ち消し、さらにオノンドを光に飲み込み、吹き飛ばした。
「今度こそ! いけっ!」
ハルはもう一度モンスターボールを取り出し、オノンドへと投げる。
地面に横たわるオノンドに当たると、再びオノンドをボールの中へと吸い込んだ。
地面に落ちたモンスターボールはボタンを点滅させながら何度か揺れ、やがて動きを止める。
「……よし! オノンド、ゲットだ!」
その後、まずは体力を消耗したエーフィに好みのモモンの実をあげ、捕まえたオノンドをボールから出す。
オノンドはまだ興奮が収まらない様子だが、自分を打ち負かしたエーフィに睨まれているためか、ハルに攻撃はしてこない。
「オノンド。君は黒い服の人たちに縄張りを荒らされて怒ってたんだよね。あの黒い服の人たちは、僕の敵でもあるんだ。同じ目的を持つ者同士、僕と一緒に来て欲しいんだ」
ハルがまっすぐにオノンドの目を見てそう言うと、オノンドは不承不承と言った感じではあるが頷いた。
ハルはにっこり微笑み、いくつか木の実を差し出す。
オノンドは少し戸惑っているようだったが、そのうち、ハルの差し出したものの中から、赤いクラボの実にかぶりついた。どうやら辛い味が好みらしい。
新しい仲間としてオノンドを手持ちに迎え入れ、ハルは今度こそイザヨイシティを目指す。



「あれ……?」
トンネルの出口を抜けたハルは、そこで愕然とすることになった。
最先端の科学技術で作られたような施設や設備は一つも見当たらず、寧ろハルを出迎えたのは古びた空き家のような建物の数々。
さらに、ろくに管理もされていないのか、そこら中に粗大ゴミが投げ捨てられている。
どう考えても、ここが科学技術の最先端、イザヨイシティとは思えない。
不審に思い、ハルはターミナルを取り出して地図を確認する。
「嘘……でしょ……!?」
どこで道を間違えたのか。
ハルがやって来てしまったこの場所は、ノワキタウンだった。


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