二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- ポケットモンスター 魔王と救世の絆
- 日時: 2018/04/30 21:14
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: OiWubliv)
こんにちはこんばんはおはようございます。パーセンターです。
今回は紙ほか板から映像板に進出して、また懲りずにポケモンの二次小説を執筆したいと思っております。
今回は前作との繋がりはほぼ断ち切った完全新作です。
カウントすれば5作目になりますね。まだ向こうの「星と旋風の使徒」は完結しておりませんので、同時進行となります。
※注意事項(?)
・いつものことですがノープランです。更新のペースも早かったり遅かったりします。
・上でも述べていますが、前作までとの繋がりはほぼありません。まだ「星と〜」が完結していませんしね。
・登場するポケモンは第七世代までです。執筆中に第八世代が出てきたらまたその時に考えます
・上に関連して、パーセンターがよく使っているベガポケモンですが、今作では『出ません』。設定上は存在している設定ですが今作には出ません。
・ベガの技は普通に出ます。ついでにオリジナル技も結構たくさん出ます。オリ技の説明は随時公開するのでご安心ください。
・オリキャラとかオリ技の募集も近いうちにすると思います。皆さん協力お願いします。
それでは、新しい主人公の新しい物語が始まります。よろしくお願いします。
登場人物紹介
>>34
オリ技紹介
>>45
プロローグ
>>1
ハツヒタウン編——旅立ち
>>6 >>7 >>8
シュンインシティ編——経験
>>15 >>20 >>28 >>32 >>35 >>36 >>37
カザハナシティ編——ライバル
>>38 >>40 >>43 >>44 >>46
ヒザカリタウン編——出会
>>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>65
サオヒメシティ編——Evolution
>>66 >>70 >>71 >>72 >>73 >>74 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>84 >>85 >>86 >>91
ハダレタウン編——大会
>>92 >>94 >>97 >>98 >>99 >>102 >>103 >>104 >>106 >>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120 >>121
カタカゲシティ編——試練
>>122 >>123 >>124 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>134 >>135 >>136 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>151
ノワキタウン編——友情
>>152 >>153 >>156 >>159 >>160 >>162 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>175 >>176 >>177
イザヨイシティ編——実力
>>178 >>180 >>181 >>182 >>183 >>184 >>185 >>186 >>187 >>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>195 >>196 >>197 >>198 >>199 >>200 >>202 >>203 >>204
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- ポケットモンスター 魔王と救世の絆 ( No.34 )
- 日時: 2017/07/01 12:55
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: z5Z4HjE0)
【登場人物紹介】
※登場に沿って随時更新
ハル 男 >>39
本作の主人公。他の地方からマデル地方に引っ越してきた。
サヤナ 女 >>75
ポケモントレーナーの少女でミツイ博士の娘。ハルと同じ日に旅に出る。
スグリ 男 >>115
ポケモントレーナーの少年。自信家だがポケモンバトルに関しては天才肌。
エストレ 女(オリ)>>10
ポケモントレーナーの少女。気の強い性格で実力もあるものの実際は内気。
ミオ 男(オリ)>>13
ポケモントレーナーの少年。マイペースでのんびりしているが意外としっかり者。
ジゼ 男
ノワキタウンに住む少年。ハルに憧れ、ポケモントレーナーとして旅立つ。
イチイ 女 >>47
シュンインシティのジムリーダーで草タイプ使い。花屋の看板娘も担当している。
ヒサギ 男 >>48
カザハナシティのジムリーダーで格闘タイプ使い。物静かな性格で人見知りが激しい。
ポプラ 女 >>69
ヒザカリタウンのジムリーダーで炎タイプ使い。活発で極めてテンションが高い。
アリス 女 >>93
サオヒメシティのジムリーダーで電気タイプ使い。マデル地方でも名のあるメガシンカ使い。
カガチ 男 >>137
カタカゲシティのジムリーダーで地面タイプ使い。無愛想でぶっきらぼうな男。
メイゲツ 男 >>179
ノワキタウンのジムリーダーで悪タイプ使い。無法者たちを纏める町のリーダー。
マキナ 女 >>201
イザヨイシティのジムリーダーで鋼タイプ使い。身体の約半分が機械化している。
ミツイ 男
マデル地方のポケモン博士。各地方におけるポケモンの生態について研究している。
リデル 男
ジムリーダーであるアリスの父親で、サオヒメシティの外れの塔の管理人。メガシンカの研究も行っている。
ディントス 男
最近勢力を拡大している宗教団体『ディントス教』の教祖にして教皇。『V』という信仰対象に忠実。
ミョル 女
二人組で行動する、ディントス教司教のうちの一人。必ず先に口を開く。
グング 男
二人組で行動する、ディントス教司教のうちの一人。必ずミョルの言葉の後に口を開く。
グリム 男
他地方では有名なサーカス団、ハーメルン・サーカスの団長。自分勝手で、態度がでかい。
ルンペル 男
ハーメルン・サーカスのピエロ役。コガネ弁で話す。
シュティル 女
ハーメルン・サーカスの団員。猛獣の扱いに長ける。
パラレル 男
パイモンに雇われた用心棒。強さを追い求める。
パイモン 男
『ゴエティア』魔神卿の一人。ハルに何かしらの期待を抱いている。
ベリアル 男
『ゴエティア』魔神卿の一人。直接戦闘を専門とする。
アモン 男
『ゴエティア』魔神卿の一人。フクロウのような顔の大男。
ダンタリオン 男
『ゴエティア』魔神卿の一人。むやみやたらと口調が変化する。
ヴィネー 女
『ゴエティア』魔神卿の一人。神使のような姿をしている。
ロノウェ 男
『ゴエティア』魔神卿の一人。狂気染みたほどにテンションが高い。
アスタロト 女
『ゴエティア』魔神卿の一人。ロノウェのストッパー。
- 第8話 盗難 ( No.35 )
- 日時: 2016/10/29 21:54
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
- 参照: ジムバッジを手に入れたハルの前に、事件が——
「ところでハル君、貴方はここが初めてのジムでしたわね」
「え? あ、はい、そうですけど……」
ジム戦が終わった後、ハルはイチイに話を持ちかけられた。
「それならちょうど良かったですわ。実はさっき、カザハナシティのジムリーダー、ヒサギさんから連絡が来まして」
そう言ってイチイはターミナルを取り出し、メールの文面を見せる。
「ここに書いてある通り、カザハナシティでポケモンバトル大会を開こうとしたものの、参加者の数が足りないらしいんですの。まぁ、これはヒサギさんが『バッジを一個までしか持っていない者のみ』という制限を付けてしまったからだと思うのですけれど。ヒサギさんからすれば、ちょうどいいポケモンバトルの場を設けたつもりみたいですけれどね」
まぁ簡単に言えば、カザハナシティに行って大会に出て、そこのジムリーダーに協力してあげてほしい、ということだ。
「ちょうどジム戦もできるし、次はカザハナシティに行ってみてはどうかしら?」
「はい、じゃあそうしてみます」
次はどこに行こうか迷っていたところだったので、この申し出はありがたい。
「……それと」
さらに、
「ハル君がどんな目的で旅を始めたのかは分かりませんけれど、自分が歩みたい人生を歩みなさい」
急に、イチイの口調が変わる。
「私は元々富豪の生まれ。ですが、親に人生を決められるのが嫌で、家を飛び出し、ここの店長、クネニさんに拾っていただき、この花屋で働かせてもらっているのです。財産は家にいた頃の方がずっと多かったですが、生活はこちらの方がよっぽど楽しいですわ」
そこでまたイチイはにっこりと笑う。
「私はこれを全ての挑戦者に言っています。自分が決めた道を歩みなさい。人に決められる人生なんて、退屈で仕方ありませんわ。それじゃ、カザハナシティでの大会とジム戦、応援しておりますわよ」
「……はい。ありがとうございます!」
もう一度イチイに礼を告げ、ハルはジムを後にした。
後にしたところで、ハルはスグリに出会った。
「あれ、ハル君じゃん。もしかしてジム戦帰り?」
「うん。たった今バトルが終わったところ」
ハルがそう返すと、スグリはニヤリと笑みを浮かべ、
「で、どうだった? 勝ったの?」
「勿論。ギリギリだったけどね」
そう言ってハルはバッジを取り出す。
「へーえ、やるじゃん。ハル君に追いつかれちゃったなぁ。ま、オレは今からここのジム戦に勝つから、すぐに追い越すけどね」
スグリが得意げな笑みを浮かべて、そんな話をしていると、
「あら、また挑戦者の方ですか?」
店の奥からイチイが出てきた。おそらく、二人の話を聞いて店の人がまたイチイを呼んできたのだろう。
「って、あら、ハル君のお友達ですの?」
「まぁね。バッジの数を追いつかれたもんで、追い抜きに来たわけよ」
「あらあら、自信満々ですわね。そう簡単には勝たせませんわよ……それと」
イチイは一旦笑顔になるが、すぐに申し訳なさそうな表情に変わる。
「申し訳ないのですけれど、少し休憩を取ってもよろしいかしら? 私のポケモンも連戦になってしまうし、そうなるとベストコンディションで戦うことが出来ませんのよ」
「ちぇっ、そう言われちゃ待つしかないね。分かった、じゃあこの辺りで一時間くらい時間を潰してるよ」
残念そうな表情を隠すこともせずに顔に出していくスグリ。
と、そんな時。
「ハル……! イチイさん……!」
大声で二人を呼ぶ声が聞こえた。それだけならいいのだが、聞き間違いでもない限り、友人の泣き声だ。
二人が振り向くと、予想通りサヤナが道路を走りながら泣き顔でやって来た。
「あら、昨日来たサヤナさん? どうされたのですか?」
イチイが真っ先に進み出て、サヤナの頭を撫でながら尋ねる。
サヤナに特訓のアドバイスをしたり、ハルに進路相談を持ちかけたり、花屋の看板娘を担当したりと、イチイはとても面倒見のいい性格なのかもしれない、とハルは思った。
だが、今はそんなことはどうでもよかった。
なぜなら、サヤナはこう言ったからだ。
「私のポケモンが、変な男の人二人組みに取られちゃったの……!」
「!?」
思わず目を見開く三人。
「な、なんだって……!?」
早い話が、ポケモン泥棒だ。
「あの、ちょっといいかな。サヤナちゃんだっけ、ポケモンを盗まれたのはどこ?」
真っ先に声を掛けたのは、隣に立つスグリだった。
「近くの……林……ポケモンの特訓をしてて、ボールに戻したところを……」
「分かった。格好とかは覚えてる?」
「真っ黒な服装の二人組……林も薄暗くて、見失っちゃった……」
恐らく、サヤナが昨日言っていた林だろう。
「あそこだな……ハル君、行くよ。ジム戦は後だ、先に泥棒からポケモンを取り返しに」
「あ、うん……でも、ポケモンの回復が」
「オレの持ってる傷薬をやるよ。ポケセンに戻ってる時間がない。さ、行くよ!」
「う、うん!」
スグリが駆け出し、慌ててハルもそれに続く。
「すぐに追いかけますわ! 無理はなさらず! サヤナさん、貴女はここで待っていてください」
イチイも花屋の奥に戻り、店長に事情を話し、二人の後を追う。
シュンインの林。
そこまで広くはない林で、ポケモンの特訓の穴場だ。
珍しいポケモンはあまり生息していないが、近辺の道路と比べて少しだが強力なポケモンが多いとされている。
ハルとスグリは現在、林の中を突っ走っている。
方向が合っているのか不明だが、スグリ曰く間違いないらしい。
『information
オンバット 音波ポケモン
光無き洞窟で暮らし耳から超音波を
放って周囲の様子を正確に把握する。
ズバットとは違い日光にも強い。』
耳の大きな紫色のコウモリのようなスグリのポケモンが、二人を案内するように飛んでいる。
「オンバットは超音波で周りの様子を探れるんだ。この能力を使えば、奴らがどこにいるかも大体特定できる」
茂みを掻き分け進みながら、スグリは説明する。
「ここで特訓しているのはオレたちと同年代の新人トレーナー。だから最初は人気のない場所を探し、その後大人を探す。ちょうどさっき、オンバットが大人の二人組を見つけた。止まって休憩してるらしい。チャンスだ」
しばらく進むと、急にスグリが止まり、ハルを制止する。
二人が立ち止まると、近くから話し声が聞こえてきた。
- 第9話 ゴエティア ( No.36 )
- 日時: 2016/10/30 12:02
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
「いやー、いい収穫だったな」
「コフキムシはどうでもいいが、こっちのアチャモは珍しいポケモンだぜ」
ハルとスグリが少しずつ忍び寄っていることも気付かず、二人の黒装束の男は木の幹にもたれかかって話している。
「アチャモ、コフキムシ。間違いないよ、あいつらがサヤナのポケモンを奪った奴らだ」
「オッケー。それじゃ、サクッとやっちゃいますか」
オンバットをボールに戻し、ハルとスグリは動き出す。
「サヤナのポケモンを返せ!」
まず正面から、ボールを突き出してハルが飛び出す。
「!?」
慌てて二人の男が逃げ出そうとするが、
「悪いけどお兄さんたち、もう逃げらんないよ」
その逃げ道を塞ぐように、茂みからボールを持ったスグリが現れる。
「く、くそ、こうなれば!」
「ああ! こうなりゃ力尽くだ!」
逃げることを諦めたのか、黒ずくめの男たち二人もモンスターボールを取り出した。
「行け、フシデ!」
「やれ、ポチエナ!」
ハルに相対する男は赤い小型のムカデのようなポケモンを、スグリに相対する男は黒い子供のオオカミのようなポケモンを繰り出す。
『information
フシデ ムカデポケモン
非常に凶暴な性格で天敵の鳥ポケモン
にも噛み付いて毒を送り込む。触覚で
空気の揺れを感じ取り獲物を探す。』
『information
ポチエナ 噛みつきポケモン
動くものを見つけるとすぐに噛みつき
逃げる相手はしつこく追いかける。
だが反撃されると尻尾を巻いて逃げる。』
「虫タイプなら……! 出てきて、ヤヤコマ!」
「ジュプトルに頼るまでもないね。出て来い、ブイゼル!」
ハルとスグリが、それぞれ戦闘に入る。
「フシデ、糸を吐く!」
「ヤヤコマ、火の粉だ!」
フシデが白い糸を吐き出し、ヤヤコマを拘束しようとするが、ヤヤコマは無数の火の粉を吹き出し、その糸を燃やしてしまう。
「フシデ、ポイズンボール!」
「躱して疾風突きだ!」
糸が当たらないのを見ると、フシデは毒素を固めた球体を放つが、ヤヤコマはそれを躱して嘴を突き出し、高速で突っ込む。
「フシデ、虫食いだ!」
フシデが口を開いて迎え撃とうとするが、それよりも早くヤヤコマが嘴でフシデを突き飛ばした。
「くっ、フシデ、毒にするぞ! ポイズンボール!」
再びフシデが毒素を固めた弾を放つが、
「ヤヤコマ、エアカッター!」
ヤヤコマは翼を羽ばたかせて風の刃を飛ばし、毒の弾を切り裂いて壊し、さらにフシデ本体も切り刻む。
「一気に決めるぞ! ヤヤコマ、火の粉!」
連続攻撃を受けてフシデが数歩下がったところに、ヤヤコマは口から火の粉を吹き出し、フシデの体を焦がす。
炎を浴び、黒焦げになったフシデは、そのまま目を回して動かなくなった。
「ブイゼル、アクアジェット!」
ブイゼルが水を纏い、猛スピードで突撃を仕掛ける。
「ポチエナ、噛み付く!」
ポチエナは迎撃しようと口を開くが、その時には既にポチエナはブイゼルに突き飛ばされていた。
「速い……っ! ポチエナ、突進!」
「遅いっての! ブイゼル、瓦割り!」
立ち上がったポチエナが地面を蹴って突撃を仕掛けようとするが、その瞬間にブイゼルに脳天へ手刀を叩きつけられ、再びよろめく。
「くそっ! ポチエナ、噛み付く!」
「もう決めようか。ブイゼル、水の波動!」
ポチエナが口を開けたその瞬間、ブイゼルがその口の中に水の弾を叩き込んだ。
ポチエナの口の中で水が炸裂し、派手に吹き飛ばされ、ポチエナはそのまま戦闘不能になった。
「嘘だろ、俺のフシデがたかが子供に!?」
「こんなに早くやられるなんて、そんなバカな……!」
どうやら黒装束の男たちはこれ以上ポケモンを持っていないらしい。
「さぁて、そろそろ観念してもらおうかな」
「サヤナのポケモン二匹を、返してもらうぞ」
ハルとヤヤコマ、スグリとブイゼルにかこまれ、追い詰められていく。
焦る男二人。ハルとスグリはポケモンを連れ、少しずつ圧力をかけていく。
その時だった。
ズドォン!!! と。
轟音が響き、その真ん中に何かが落ちてきた。
「っ……!」
「な、なんだ!?」
ハルは後ずさりし、スグリは腕で砂煙から目を覆う。
「……あーあー、折角の木々が台無しだぁ。やっちゃったやっちゃった。まぁバカみたいに生えてるし、別にどぉだっていーかぁ」
砂煙の中から、声が聞こえる。
少年にしては高いが、少女にしては低い。そんな声だった。
そして砂煙が晴れると、そこには一人と一匹。
まずポケモン。鋼の円盤のようなボディに、二本の鉄の腕が付いている。
『information
メタング 鉄爪ポケモン
時速100キロの速さで空を飛ぶ。
分厚い鉄板を引き裂く爪にジェット機と
ぶつかっても傷つかない頑丈な体を持つ。』
鋼タイプのポケモン、メタングが赤い瞳を光らせ、周囲を見回す
そして、そのメタングの上に座る人影。
金色の王冠を被り、長い黒髪を垂らし、肩を露出させた丈の長い赤い服を着ている。
体つきも身長も少年にも少女にも見え、性別が分からない。足は裸足だ。
「はいはいはい、見つけた見つけた見つけたっと。ったく、なんでこんなところにいるんだよ。林の中にいるから空から探せないじゃんかよ」
悪態を吐きながら、謎の人物は黒装束の二人からサヤナのボールを取り上げ、ハルとスグリの方に振り向く。
「君たち、このポケモンを取り返しに来たんでしょ? これ返すからさぁ、代わりにこいつら引き渡してくんない?」
何気ない様子で首を傾け、二つのボールを掴んだ左手を突き出し、そう尋ねる。
「……その前に」
スグリがブイゼルを連れたまま、その人物に詰め寄る。
「取引を持ちかける前にさ、自己紹介の一つくらいしたらどうなのさ」
「あらぁ? 気の強い奴がいたもんだ。こんな怪しそうな男に、自ら話しかけて来るなんてね」
スグリに詰め寄られても、自らを男だと示したその少年は顔広一つ変えない。
「『ゴエティア』。その名前を聞けば、気付くんじゃないかな?」
「……っ。『ゴエティア』だって……?」
刹那、スグリの表情から余裕が消えた。
だが目の前のスグリなど気にしていない様子で、少年はハルの顔を見据え。
「あら? 君はこの地方の人間じゃないのかな? この地方の人間なら絶対に分かるはずなんだけど」
歴史の勉強が足りないなぁ、と少年はせせら笑い、
「じゃあこっちなら分かるかな? 百年前に起きた大戦、それを引き起こした『王』が引き連れていた組織の名前。それが『ゴエティア』なのさ」
「百年前の紛争……『王』……。……!」
ハルも思い出した。最近、マデル地方の歴史の本で読んだばかりだ。
「ぼくたちの組織の名は、まさにその『ゴエティア』。百年前の王の思想を理解し、それを受け継ぐ者たち。そして」
ニヤリと。その少年は顔いっぱいに悪戯っぽい笑みを浮かべ、
「『王』を支える、悪魔と呼ばれた特別な七人の部下。七人の悪魔を集めて、全員揃って七魔卿。そう、ぼくはその七魔卿の中の一人」
ようやく、その名を明かす。
「ぼくはパイモン。ゴエティアに仕える、七人の魔神卿の一人だよ」
そう、名乗った。
- 第10話 Paymon ( No.37 )
- 日時: 2016/10/31 09:25
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: PHzrOxCh)
- 参照: 突如現れた、謎の少年。その正体は?
「魔神卿……パイモン……?」
分からない言葉だらけだが、とりあえずこの少年の正体と、何をしに来たのかは分かった。
「さ、もう一度言うよ。このポケモン返すからさぁ、こいつら引き渡してくんない?」
相変わらず薄ら笑いを浮かべ、パイモンは再びそう持ちかけた。
「ポケモンは受け取るよ。だけど」
スグリがさらにもう一つボールを取り出し、進み出た。
「性格上さぁ、悪人は放っておけないんだよ。どうせポケモン泥棒するような奴らの上司だ、あんただってどうせろくな奴じゃないんだろ? オレがぶっ飛ばしてやるよ」
「……ふぅーん」
そんなスグリをパイモンはじっと眺め、
「あくまでやる気なんだねぇ。そういう姿勢は嫌いじゃないけど、強気と無謀は違うってことを教えてあげる必要があるね」
袖からモンスターボールを取り出した。
「やっちゃえ、スピアー!」
『information
スピアー 毒蜂ポケモン
猛スピードで飛び回りお尻や腕の
毒針を突き刺す。どんなに手強い
相手でも強力な毒で仕留めてしまう。』
黄色い大きな蜂のようなポケモンが現れた。目を引くのは腕と腹部の巨大な毒針だ。
「ハル君、サポート頼むよ」
パイモンから目線を逸らさず、スグリはハルに声を掛ける。
「こんなのでも一応相手のボス格だ。二人がかりで速攻で決めるよ」
「わ、分かった。リオル、出てきて」
「ジュプトル、出番だ」
ハルはリオルを出してスグリの横に並び、スグリはエースのジュプトルを繰り出す。
「始めるよ。ジュプトル、タネマ——」
「必殺針!」
一瞬だった。
ズドォン!!! という轟音と共に、地面がクレーターのように凹んだ。
ジュプトルが動き出すよりも早く、スピアーが腹部の毒針を地面に思い切り突き刺した。
たったそれだけ。たったそれだけで、林の一角の地形が容易く変えられたのだ。
「な……っ!?」
「ッ……!」
ハルもスグリも、完全に動きを止めていた。
スピアーに圧倒され、動けなかった。
「今のは警告」
パイモンの笑みの中に、一瞬邪悪なものが入ったのを二人は感じ取った。
「どう? これでもまだやる? これ以上やるっていうんなら、次は今の一撃がそのまま君たちのポケモンにぶち込まれるけど」
「っ……スグリ君」
「……ああ。ここは退こう。オレたちじゃ勝てない」
ジュプトルを戻し、スグリは悔しそうな表情を浮かべ、一歩下がった。
ハルも同感だった。そもそも、一体何をどうしたら一撃で地形を変化させるほどの威力の技を使えるのだろうか。
「うんうん、これで分かってくれたみたいだね。パイモンさんは嬉しいよ。そんじゃ、これで取引成立ってことで。ほいっと」
そう言いながらパイモンはサヤナのボールをハルに向けて適当に投げ、恐らく下っ端なのだろう黒装束の男の方を向く。
「あぁ、パイモン様、助けてくださり、ありがとうございました……」
先程までの勢いはどこへやら、男たちはへたり込み、途端に情けない声をあげて下手に出る。
だが、
「はぁ? 誰がお前たちを助けに来たって?」
こちらも先程とは打って変わって、悪魔のように冷たい声になるパイモン。
「本当にバカだねお前たち。ぼくがここに来たのはお前たちを助けるためじゃない。この男の子二人、特に後ろの子に興味を持ったからだよ。どうしてこのぼくがお前たちみたいな下っ端なんかを気にかけなきゃいけないのさ。おまけに勝手に問題起こして勝手に追い詰められて。もういいや、お前たちみたいなバカはゴエティアにはいらない。連れて帰って処刑ね」
そこで。
あ、と何かを思い出したかのように、またパイモンはハルとスグリの方を向く。
「そうだった。百年前の話なんだけどね。『王』を打ち倒した七人の救世主は、ちょうど君たちくらいの歳の少年少女だったんだ。特に後ろの君。君はその時の救世主の一人によく似てる。だから、ぼくは君たちの存在に、特にハル君だっけ? 君に期待しているんだよ。今は弱っちくても、いずれぼくたちの好敵手になるんじゃないかってさ。だから、君たちを始末するのはその時まで待ってあげるよ。パイモンさんは気に入った人間には優しいのだ」
さあ、とパイモンが再び下っ端の方を振り向いた、まさにその時。
「チェリム、自然の力!」
女性の声が響き、直後、林の地面から無数の蔓が出現し、一斉にパイモンのスピアーに襲い掛かった。
蔓を叩きつけられ、スピアーが吹き飛ばされる。
「自然の力……大成長かぁ。なんだよ、出て来なよ。誰?」
面倒くさそうに頭を掻きながらパイモンが振り向く。
その途端に日差しが強まり、
「すみません、遅れてしまいましたわ」
ジムリーダー、イチイが遅れてやって来た。すぐ横にはチェリムを連れている。
「あーあーあー。ジムリーダーが来ちゃったかあ。まぁ、でも」
パイモンが不敵に笑い、林の奥からスピアーが戻って来る。
「折角だ。実力の違いを教えてあげよう。スピアー、必殺針!」
「チェリム、自然の力!」
スピアーが腹部の針を突き出して突撃し、チェリムは自然の力を起こして無数の蔓を向かわせる。
だが結果は明白。
スピアーの針が容易く蔓を裂き、チェリムに針を突き刺し、木の幹まで吹き飛ばした。
「なっ……チェリム!」
流石はジムリーダーのポケモン、まだやられてはいないが、とはいえそれでも大ダメージ。
「なーんでそんなに揃いも揃って躍起になるのかなぁ? ぼくはこいつらを処刑するために連れ戻そうとしただけでさぁ、君たちに害を与えようってわけじゃないんだけど? ま、今ので実力の差は分かったでしょ? じゃあぼくもう行くね……ほら行くぞゴミ共! 自分で動くこともできねえのかよ! もういいや、メタング、サイコキネシス!」
パイモンが怒鳴り、メタングは念力を操って下っ端二人の動きを操作する。
スピアーと念力を維持したままパイモンを乗せたメタングが、宙に浮かび上がった。
「名前は覚えたよ。じゃあね、ハル君、スグリ君」
それだけ言い残し、パイモンは二人の下っ端を連れ、去っていった。
事件の後、すぐにイチイは警察へとゴエティアなる組織についての連絡をし、ハルとスグリは取り返したポケモンをサヤナに返した。
犯人は取り逃がしたが、サヤナのポケモンは無事取り戻せた。
「ハル、それにスグリ君! ありがとう! イチイさんもありがとうございました!」
「いいえ。貴女のポケモンが無事で、よかったですわ。それじゃ、改めてジム戦なのですけれど……スグリ君もジム戦でしたわよね。順番どうしましょう?」
「あ、オレはやっぱり今日はいいよ」
サヤナとスグリを交互に眺めるイチイに対し、スグリは手を横に振る。
「ヒサギ兄から大会に参加してくれってメールが来てさ。ほら、オレってカザハナシティ生まれだからよくヒサギ兄と連絡取るんだけど、この大会、バッジを二個以上取っちゃうと出れないじゃん? だから、大会が終わったら挑戦しに来るよ」
そんじゃね、とスグリは手を振り、去っていった。一足先にカザハナシティに向かったのだろう。
「ハル、先にポケモンセンターに戻ってて。それじゃあイチイさん、もう一度ジム戦よろしくお願いします!」
「ええ。受けて立ちますわよ」
これにて一件落着。
ハルは先にポケモンセンターに戻り、サヤナはリベンジマッチに挑戦する。
- 第11話 カザハナシティ ( No.38 )
- 日時: 2016/10/30 18:01
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: PUqaVzEI)
- 参照: カザハナシティバトル大会、開幕!
「ハル! 勝ったよ!」
バッジを手にしたサヤナが、ポケモンセンターに駆け込んできた。
「おめでとうサヤナ! これで二人ともジムバッジを手に入れたね」
「うん! ハルに並んだよ! にひひー、次は追い越すからね」
とても嬉しそうにサヤナは笑い、ソファーに腰掛けているハルの隣に座る。
「カザハナシティまではちょっと距離があるよ。今日はいろいろあったし、明日カザハナシティに行こうか」
「そうだね。私も今日は泣いたり笑ったりでもうへとへとだよ」
一日で泥棒にあったり、ジム戦のリベンジを果たしたり。いくら元気いっぱいのサヤナでも流石に疲れるだろう。
「それじゃあ、今日は休もうか」
宿舎に戻り、明日はカザハナシティに出発だ。
マデル地方は、比較的他の地方よりもポケモンバトルに力を入れている。
そのため、不定期に色々な街でジムリーダーやテレビ局がバトル大会を開催しているのだ。
そしてこの街、カザハナシティでも今日、ジムリーダーであるヒサギがバトル大会を開催する。
「なになに、試合はポケモン一体ずつで、三回勝てば優勝……そんなに大きい大会ではないんだね」
ハルはターミナルで受信した情報を読み上げる。
二人は先程エントリーしてきたところで、トーナメントの組み合わせの発表待ちだ。
「こういう大会初めてだし、緊張するなぁ……」
「でもみんなバッジは一個までの初心者だし、きっと大丈夫だよ」
そんな話をしていると、ターミナルに一回戦の組み合わせが送られてきた。
「僕の一回戦の相手は……リオンって人か」
「私も知らない人だよ」
お互いに知らない人同士。初めて会う人なので断定できないが、少なくともスグリと当たるよりは二回戦進出の可能性は高そうだ。
「それじゃあ、頑張ろうね」
「うん! まずは一回戦突破だね!」
そして、いよいよマデル地方恒例のバトル大会、カザハナ大会が開幕する。
『さあ始まりました、カザハナシティバトル大会! 今回は特別に、今大会主催者、カザハナシティジムリーダーのヒサギさんに解説に来ていただきました! それではヒサギさん、今日はよろしくお願いします!』
『information
ジムリーダー ヒサギ
専門:格闘タイプ
異名:静かなる闘志(サイレンスファイター)
悩み:人見知り』
『……ああ。よろしく頼む』
男——ヒサギは何だか無愛想にそう返すが、会場は拍手や歓声で満ちていた。やはりジムリーダーともなれば注目を集めるのだろう。
『それでは今大会の第一回戦、ハル選手とリオン選手の出場です!』
『二人とも既にバッジを一つ持っているな。ハル君はシュンイン、リオンさんはヒザカリのジムバッジを獲得している』
初めて立つような立派なバトルフィールドに立つハル。小さな大会とはいえ観客もいるので、なかなか緊張する。
相手は背が高めの金髪ポニーテールの少女だ。向こうも緊張している様子だ。
『それでは第一試合、スタートです!』
試合開始の合図とともに、ハルとリオンは同時にボールを取り出し、ポケモンを繰り出す。
「出てきて、ヤヤコマ!」
「お願い、コンパン!」
ハルの繰り出すのはヤヤコマ。リオンのポケモンは紫色の体毛に覆われた赤い複眼を持つ虫ポケモンだ。
『information
コンパン 昆虫ポケモン
小さな目が沢山集まって大きな目に
なっている。昼間は木の穴で眠っており
夜に活動して餌の小さな虫を食べる。』
『ハル選手はヤヤコマ、リオン選手はコンパンを繰り出しました!』
『タイプ相性ならヤヤコマの方が有利だな。ヤヤコマはスピードも早い』
『つまり、この勝負はハル選手が有利ということでしょうか?』
『だがコンパンは補助技に優れる。上手くヤヤコマを撹乱できれば、勝機は十分にある』
無愛想ではあるが、きっちり解説をこなすヒサギ。流石はジムリーダーだ。
「よし、行くぞ! ヤヤコマ、電光石火!」
まず先手を取ったのはヤヤコマ。猛スピードで一気にコンパンに突っ込み、そのまま突き飛ばす。
「コンパン、サイケ光線!」
ひっくり返るが素早く起き上がり、コンパンは目から不思議な光を放つ光線を発射する。
「ヤヤコマ、躱して火の粉!」
ヤヤコマは光線を掻い潜ってコンパンに近づき、嘴を開いて無数の火の粉を吹き出す。
しかし、
「コンパン、躱して毒の粉!」
大きくジャンプして火の粉を躱すと、コンパンは全身を揺らして毒の鱗粉を放出。ヤヤコマは鱗粉を吸い込んでしまう。
『おおっと、ここでリオン選手のコンパン、ヤヤコマに毒を浴びせた!』
『毒タイプを持つコンパンの常套手段だな。このまま上手く撹乱していけるかどうかだが』
毒状態についてはもうハルは身をもって学習している。
「毒が蓄積される前に倒す! ヤヤコマ、疾風突き!」
「コンパン、虫食い!」
ヤヤコマが嘴を突き出して突っ込み、コンパンが鋭い歯を持つ口を構える。
だがコンパンが食いつこうとするよりも早くヤヤコマがコンパンを嘴で突き、押し飛ばしていた。
「いいよヤヤコマ! エアカッター!」
「っ、コンパン、サイケ光線!」
ヤヤコマが翼を羽ばたかせて風の刃を飛ばし、コンパンは目から不思議な光を放つ光線を放射して迎え撃つ。
空気の刃は光線で何とか防ぐが、
「電光石火!」
続くヤヤコマの高速の追撃に対応できずに、突き飛ばされてしまう。
「うぅ……コンパン、シグナルビーム!」
体勢を立て直し、コンパンが今度は瞳から激しい光を放つ光線を放射するが、
「ヤヤコマ、躱して疾風突き!」
素早く動き回るヤヤコマには光線が当たらず、再び高速の嘴の突きを受けてしまう。
「今だヤヤコマ、エアカッター!」
ふらつくコンパンに対して、ヤヤコマは翼を羽ばたかせ、風の刃を飛ばす。
躱すことも出来ずにコンパンは風の刃に切り裂かれ、そのまま戦闘不能になってしまった。
『ここで決着がついた! 一回戦、第一試合の勝者はハル選手! リオン選手のコンパンを圧倒して、二回戦進出です!』
『ヤヤコマのスピードを生かしたいいバトルだった。リオンさんのコンパンは苦手な相手と正面から向かわせ過ぎて防戦一方だったな。もう少し相手を翻弄できれば勝機はあっただろう』
ハルとリオンはお互いのポケモンを戻し、互いに一礼した後、フィールドを去っていく。
「……よし、一回戦は勝ったぞ」
ヤヤコマを回復させ、ハルはロビーに戻る。隠してはいたが、内心かなり緊張していた。
ハルは初戦だったので、一回戦が終わるまでにもう少し時間がある。
二回戦の組み合わせとサヤナを待つためにロビーで待っていると、第四試合目のバトルを終えたサヤナが戻ってきた。
「サヤナ! どうだった?」
「もちろん勝ったよ! 二回戦進出!」
どうやらサヤナも一回戦を無事突破したようだ。
そして。
第四試合目が終わったということで、二回戦の組み合わせが発表される。この大会は試合ごとに対戦相手がシャッフルされるため、トーナメントを辿っても発表されるまで次の相手は分からない。
そして。
注目の二回戦の相手は。
「うそ……!」
ハルにとって一番当たりたくなかった相手、スグリだった。
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