二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- ポケットモンスター 魔王と救世の絆
- 日時: 2018/04/30 21:14
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: OiWubliv)
こんにちはこんばんはおはようございます。パーセンターです。
今回は紙ほか板から映像板に進出して、また懲りずにポケモンの二次小説を執筆したいと思っております。
今回は前作との繋がりはほぼ断ち切った完全新作です。
カウントすれば5作目になりますね。まだ向こうの「星と旋風の使徒」は完結しておりませんので、同時進行となります。
※注意事項(?)
・いつものことですがノープランです。更新のペースも早かったり遅かったりします。
・上でも述べていますが、前作までとの繋がりはほぼありません。まだ「星と〜」が完結していませんしね。
・登場するポケモンは第七世代までです。執筆中に第八世代が出てきたらまたその時に考えます
・上に関連して、パーセンターがよく使っているベガポケモンですが、今作では『出ません』。設定上は存在している設定ですが今作には出ません。
・ベガの技は普通に出ます。ついでにオリジナル技も結構たくさん出ます。オリ技の説明は随時公開するのでご安心ください。
・オリキャラとかオリ技の募集も近いうちにすると思います。皆さん協力お願いします。
それでは、新しい主人公の新しい物語が始まります。よろしくお願いします。
登場人物紹介
>>34
オリ技紹介
>>45
プロローグ
>>1
ハツヒタウン編——旅立ち
>>6 >>7 >>8
シュンインシティ編——経験
>>15 >>20 >>28 >>32 >>35 >>36 >>37
カザハナシティ編——ライバル
>>38 >>40 >>43 >>44 >>46
ヒザカリタウン編——出会
>>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>65
サオヒメシティ編——Evolution
>>66 >>70 >>71 >>72 >>73 >>74 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>84 >>85 >>86 >>91
ハダレタウン編——大会
>>92 >>94 >>97 >>98 >>99 >>102 >>103 >>104 >>106 >>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120 >>121
カタカゲシティ編——試練
>>122 >>123 >>124 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>134 >>135 >>136 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>151
ノワキタウン編——友情
>>152 >>153 >>156 >>159 >>160 >>162 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>175 >>176 >>177
イザヨイシティ編——実力
>>178 >>180 >>181 >>182 >>183 >>184 >>185 >>186 >>187 >>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>195 >>196 >>197 >>198 >>199 >>200 >>202 >>203 >>204
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- 第81話 団長 ( No.144 )
- 日時: 2017/02/04 11:54
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: faHGqDVD)
- 参照: 森の中に逃げた団長を、ハルが追い詰める!
オーロットが黒い影の爪を振り下ろす。
標的は、体勢を崩すビビヨン。
「っ、ビビヨン! エアスラッシュ!」
何とか翅を動かそうとするビビヨンだが、最早間に合わない。
漆黒の影の爪が、ビビヨンを叩き斬る。
その、直前。
「バクーダ! 火炎放射!」
サヤナの後方から灼熱の業火が吹き出し、影の爪ごとオーロットを炎に飲み込み、吹き飛ばした。
「なっ……! まさか……!」
「バクーダ……ってことは……」
途端にシュティルがその顔に焦燥を浮かべ、サヤナは期待を込めて後ろを振り返る。
「エストレさん! サヤナ! 大丈夫!?」
「すまない、遅くなったな。だが俺が来たからにはもう安心だ」
全力で走ってきたのだろう、肩で息を吐きながらも二人に声をかけるハルと、汗をかいてはいるも疲れを全く感じさせないカガチ。
特訓に出ていた二人が、ようやく戻ってきた。
「なるほど……大方何が起こったか分かったぞ。奴らはサーカス団に成りすました誘拐犯。ハル、先にサーカスのテントを追え。森の中に逃げているはずだ。こいつらは俺が片付ける」
「誘拐犯……! わ、分かりました。それじゃ、ここはお願いします!」
ハルを先に行かせ、カガチはバクーダを従え、シュティルと対峙する。
「こうなったら仕方ないわ……! オーロット、ニードルルート!」
炎を受けてもまだ何とか起き上がり、オーロットは六本の足を地面に食い込ませ、バクーダの足元から複数の尖った根を放ち、バクーダへと突き刺すが、
「メガシンカを見せるまでもないな。バクーダ、焼き払え。火炎放射!」
まるで表情を変えずに、バクーダは再び炎を吹き出す。
躱す余裕もなくオーロットを再び炎が襲い、その樹木の体を焼き尽くしていく。
炎が消えた後には、力尽きて戦闘不能となったオーロットが倒れているのみ。
「っ……ルンペル! こいつ、やばいよ!」
焦りを隠せず、シュティルは隣で戦っているルンペルに助けを求める。
「ぐぅ、あと一歩やったのにねぇ……こうなった以上、私らではもうどうにもできへん。後はグリムの旦那はんに全部任せるしかあらへんな」
カガチとハルの出現に気を取られたその隙に、ルンペルのパンプジンもハッサムから打撃を受け、かなりピンチに陥っていた。
「しゃあない、撤退や。シュティル、行くで」
「そうするしかなさそうね……貴方達、覚えてなさい……!」
追い詰められたルンペルとシュティルは、少しずつ後ずさりし、
「パンプジン、火炎放射!」
まだ何とか体力を残していたルンペルのパンプジンが、二人の足元に炎を噴射する。
炎はあっという間に燃え広がり、二人と一体の姿を隠す。
「バクーダ、吹き飛ばせ! ダイヤブラスト!」
バクーダが煌めく爆風を起こして炎を消し飛ばすが、その時には既にルンペルとシュティルはどこにもいなかった。
「はぁ……カガチさん、ありがとう……助かった……」
「お二人が戻ってきていなかったら、危ないところでしたわ……ありがとうございました」
カガチの援護を受けてどうにかルンペルとシュティルを退け、ようやくサヤナとエストレは一息つく。
しかし、
「礼を言うのはもう少し後だ。まだ事件は解決していないぞ」
まだ気を抜かない様子で、カガチはターミナルを取り出した。
だが確かにカガチの言う通りだ。足止め役の二人は倒したものの、その間にテントを積んだ荷車はすっかり森の奥へと姿を消してしまった。
「よし……とりあえず警察には連絡した。俺たちもハルの後を追うぞ」
「うん!」
「ええ、急ぎましょう」
カガチたち三人もまた、森の中へ進んでいく。
そして。
「ふぅ……危なかったわね」
「ジムリーダーともなれば、さすがのシュティルでも勝てへんか」
三人が森の中へ姿を消したのを確認し、建物の陰に隠れていたルンペルとシュティルもまた一息つく。
「さすがのって何よ。あんたの方があたしより強いでしょ」
「言うても誤差の範囲やで……っとまぁ、こんな話はええんや。問題はこの後やで」
「そうね……まさかと思うけど、団長の援護することになるわけ?」
「まさか。あんな使えんお人の護衛する必要なんかあらへんよ。どうせ失敗しよるさかいな」
「ま、あの団長には元から期待なんかしてないわよ。私たちも団長も、今回は陽動役にすぎない」
「そうやで。ほな、私らは先にお暇させていただきましょか」
「ええ。ルンペル、報告だけ忘れないようにね」
「はいはーい、分かっとりますよ」
緑のピエロと蝶の衣装の二人組がゆっくりと立ち上がる。
一匹の野生ポケモンだけがそれを目撃していたが、瞬きした次の瞬間には、その二人はどこにもいなかった。
「さて、この辺まで来れば大丈夫かね……いやいや、出来るだけ早く先に進まねば」
荷車の上に座った燕尾服の男は、独り言を呟きながら、荷車を進めていく。
「人っ子一人いないような獣道を進んできたからね、そう簡単に追っては来れないはずだね。ルンペルとシュティルにも戦わせているし。あいつら普段言うこと聞かないけど、実力だけはあるからね」
グリム団長だ。
荷車のスピードは決して速くはないが、森の中という場所は早々追っ手が付いてこられるほど平坦な道ではない。
おまけに、荷車が踏み潰したはずの草木は、何故か通り過ぎた後にひとりでに元の姿に戻っていく。
これでは荷車の通った後も辿ることはできない。
「さ、後はこの間抜けなお客さんたちを届けて、たっぷり報酬をもらって、団長の仕事はおしまいね」
一人でくすくすと笑いながら、荷車を進めていくグリム団長。
しかし。
「そこまでだよ」
突然、荷車の後ろから少年の声が響く。
「!? な、何かね!?」
慌ててグリム団長は後ろを振り向く。
そこに立っていたのは、ルカリオを引き連れた少年、ハル。
「な、ななな、なぜここに!? 追っ手はルンペルとシュティルが足止めしているはず……それに、この薄暗い森の中で、どうやってここまで辿り着いたのかね……!」
「ルカリオは波導の力で1キロ先にいる生き物の種類だって見分けられるんだ。そのテントの中には沢山の人がいるから、見つけるのなんか簡単だよ。あと」
さらにハルは言葉を続け、
「ルンペルとシュティル、だっけ。貴方が足止めに使った二人なら、カガチさんにやられたよ。多分どこかへ逃げて行ったと思うけど」
グリム団長の疑問に全て答えるハル。それは、グリム団長が追い込まれていることを暗に示すものだった。
「ぐっ、ぐぬぬぬ……あり得ん……あり得んが……」
がたがたと震えだすグリム団長。しかし、何かを決めたのか、荷車から飛び降りる。
「かくなる上は仕方ないね! グリム団長はサーカス団の団長! この偉い団長を怒らせたらどうなるか! 大人を怒らせてはいけないってことを、身を持って知ってもらうしかないようだね!」
遂に吹っ切れたようで、グリム団長は懐からモンスターボールを取り出す。どうやらやる気のようだ。
「やっぱりそう来るか……ルカリオ、頼んだよ」
ボールを手に取る団長に対して、ハルはルカリオで戦う。
薄暗い森の中に、グリム団長とハルが対峙する。
- 第82話 脳筋 ( No.145 )
- 日時: 2017/02/05 09:56
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
「やってしまえ! ポリゴンZ!」
グリムが繰り出すのは、サーカスでも顔を見せていた赤と青を基調とするポケモン。
『information
ポリゴンZ バーチャルポケモン
ポリゴン2をより優れたポケモンに
するためにプログラムを追加した姿。
謎のバグによって挙動がおかしい。』
エストレが使っていたポリゴン2の進化系だが、図鑑の説明通り明らかにおかしな動きをしている。
「ノーマルタイプなら相性は有利だ。ルカリオ、メガシンカは無しだ。速攻で決めるよ!」
メガシンカを使うまでもない、その考えはルカリオも同じだったようで、ルカリオはハルの言葉を聞いてすぐに頷く。
「甘く見てもらっちゃ困るね! ポリゴンZ、トライアタック!」
ポリゴンZがガクガクと体を震わせ、赤、青、黄の三色の光線を放つ。
「ルカリオ、躱してサイコパンチ!」
ルカリオの右手を念力が包む。
そのままルカリオは地を蹴って飛び出し、周囲の木々も足場に使って光線を掻い潜りながらポリゴンZに近づき、念力を纏った拳を叩き込み、吹き飛ばす。
「うぐぐ、ポリゴンZ、反撃! 冷凍ビーム!」
ポリゴンZの首が一回転し、凍える冷気の光線が撃ち出される。
「ルカリオ、もう一度発勁!」
再びルカリオは右手に波導を纏わせ、その右手を勢いよく突き出し、冷凍ビームを打ち破ると、
「ボーンラッシュ!」
さらにその波導を長い骨の形に変え、骨のロッドを振るってポリゴンZを殴り飛ばす。
「ポリゴンZ! トライアタック!」
「させない! ルカリオ、波導弾!」
ポリゴンZが周囲に三色の玉を浮かべるが、そこから光線が放たれるよりも早く、ルカリオが右掌を突き出す。
青い波導の念弾が正確にポリゴンZを撃ち抜き、ポリゴンZは吹き飛ばされて木の幹に激突、早くも戦闘不能となってしまった。
「……! ポ、ポリゴンZ!」
グリムは慌てた様子でポリゴンZをボールへと戻す。
一方、
「えっ?」
ハルも驚いていた。
確かに格闘技はポリゴンZに効果抜群だが、こんなに早く倒れてしまうとは思っていなかったからだ。
そんな予想はしていなかったが、ハルは、思ったことを素直にグリムへと言った。
「もしかして……貴方、弱い?」
「なっ……!? そ、そんなわけないね! 団長はハーメルン・サーカスの団長! 偉いんだよ!?」
「いや、でも偉いのと強さって別ですよね」
「う、うるさーい! とにかく、ポリゴンZを倒したくらいで団長に勝ったと思わないことだね! 団長にはもう一体、ポケモンがいるんだからね!」
どうやら図星だったようだ。どのレベルで弱いのか決めつけるつもりはないが、恐らくルンペルやシュティルよりも実力は下なのだろう。
わめきながら、グリムは次のボールを取り出す。
「大人を怒らせるとどうなるか、教えてやる必要があるようだね! やってしまえ! カラマネロ!」
グリムの二番手のポケモンは、大きなイカを上下逆さまにしたようなポケモンだ。
『information
カラマネロ 逆転ポケモン
非常に強力な催眠術を使用する。
知能も高く催眠術を使って人間を
意のままに使役する個体も存在する。』
悪とエスパータイプを併せ持つ珍しいポケモンだ。イカのような姿をしているが、水タイプは持っていない。
「団長の切り札は何を隠そうこのカラマネロ! ポリゴンZを倒したくらいで、調子に乗ってもらっちゃ困るね!」
団長の言葉に合わせて、カラマネロも不気味な笑い声を上げる。
「それじゃあ、お前の力を見せてやれ! カラマネロ、まずはサイコカッター!」
カラマネロが触手のような長い腕を振り抜き、念力の刃を飛ばす。
「ルカリオ、躱してボーンラッシュ!」
身軽に念力の刃を躱し、ルカリオは長い骨のロッドを作り上げ、そのまま飛び出す。
骨のロッドを振るってカラマネロを殴り、グリムの元へと押し戻した。
「だったらこれはどうかね!? カラマネロ、馬鹿力!」
カラマネロの腕が凄まじいオーラを纏い、その腕を大きな木へと叩きつける。
いとも容易く木が吹き飛び、その木の幹はルカリオへと飛んでくる。
「ルカリオ、躱して!」
だかルカリオは素早く跳躍し、吹き飛ばされた木の幹を躱して別の木の枝の上に飛び乗ると、
「確か馬鹿力は攻撃力と防御力が下がる技。ルカリオ、発勁だ!」
その枝を足場に勢いよく飛び出し、波導を纏った右手をカラマネロへと叩き込む。
しかし。
「カラマネロ! 馬鹿力!」
カラマネロの腕に再び凄まじいオーラが迸り、その腕が先ほどよりも勢いを増して豪快に振るわれる。
波導を纏ったルカリオの右手と激突するが、逆にルカリオが吹き飛ばされた。
「えっ……? ルカリオ!?」
ルカリオが木の幹に激突する。
まだ起き上がれるが、効果は抜群、ダメージは大きい。
「ふふふふ、カラマネロの特性を知らないようだね」
ようやく、グリムがバトルの流れを握る。
「このカラマネロの特性は、天邪鬼。このポケモンに掛かる能力変化を全て逆転させる。つまり、馬鹿力を使えば使うほど、攻撃力も防御力も上がっていくというわけね!」
まるで勝ちを確信したかのように、グリムは高らかに笑う。
とはいえ、確かに厄介なのは間違いない。
「さあ、この調子でやってしまえ! カラマネロ、馬鹿力!」
調子付いてきたカラマネロは見境なく腕を振り回し、邪魔な木々をなぎ倒しながらルカリオに迫る。
「パワーじゃ勝てなくなってきてる……ルカリオ、何とか隙を見つけるよ。躱して!」
ルカリオは周囲を飛び回り、振り回されるカラマネロの腕を躱していく。
「ルカリオ、木の陰に隠れるんだ!」
カラマネロの腕によって次々と樹木が倒されていく中、ルカリオは倒れた木の陰に姿を隠す。
「ふふふふ、無駄無駄! どこに逃げても無駄ね! カラマネロ、手っ取り早く全部吹き飛ばしてしまえ!」
余裕たっぷりにグリムは指示を出し、カラマネロは腕を振り回しながら、倒れた木々を片っ端から吹き飛ばしていく。
(……今だ!)
ルカリオが隠れている木の陰にカラマネロが背を向けた瞬間。
勢いよく、ルカリオが飛び出す。
「ルカリオ、波導弾だ!」
- 第83話 ツヒェン ( No.146 )
- 日時: 2017/02/06 00:00
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
- 参照: サーカス団の黒幕が、遂に姿を現わす——
「ルカリオ、波導弾だ!」
カラマネロの背後からルカリオが飛び出し、青い波導の念弾を放つ。
「しまった……カラマネロ、後ろだ!」
慌ててカラマネロは後ろを振り向くが、波導弾の対応には間に合わず、波導弾の直撃を受けて大きく体勢を崩す。
「波導弾は特殊技。馬鹿力で防御力が上がっても、波導弾のダメージは変わらないよね」
「くっ、おのれ……いや、しかし、我がカラマネロが有利であることに変わりはないのね! 波導弾こそ普通に受けてしまうものの、それ以外は変わらない! 吹き飛ばせカラマネロ! 倒してしまえ! 馬鹿力!」
怒りを込めて、カラマネロは力任せに両腕を振り回す。
「ルカリオ、波導弾!」
ルカリオの右手から波導の念弾が出現し、ルカリオはそれを掴む。
カラマネロの怒涛の触手攻撃を潜り抜け、手にした波導の念弾を直接、カラマネロの腹部に叩きつけた。
「ぬぅっ、カラマネロ、サイコ——」
「波導弾!」
体勢を崩したカラマネロは腕に念力を纏わせるも、その腕を振り抜くより早く、ルカリオが再び波導の念弾を放った。
波導の念弾は正確にカラマネロを捉えて飛び、カラマネロの顔面に直撃。念弾が炸裂し、カラマネロを吹き飛ばした。
「カ、カラマネロ!?」
倒れた木々の中に埋もれ、カラマネロは戦闘不能になっていた。
グリムは仕方なくカラマネロをボールへと戻すが、
「さあ、これで終わりだ。観念してもらうよ」
全ての戦力を失ったグリムの前に、ハルとルカリオが詰め寄る。
「ひっ、ひいぃっ!」
いよいよ追い詰められたグリム団長。
最早打つ手をなくした彼ができることは、助けを求めることだけだった。
「たっ、助けてー! 誰でもいいから、団長を助けてくれたまえーっ!」
団長の声が、森の中に響き渡る。
そして、
「グリム。もう下がっておれ」
テントが開き、一人の男性が現れた。
背は低いものの、黒い杖を突き、お洒落に着飾った老人だ。
「……はっ!」
老人に促され、グリムは逃げるように森の中を走り去っていく。
「さて、私の部下が迷惑をかけたのう」
サーカス会場ではツヒェンと呼ばれていたその老人はハルの方に向き直り、細い目を見開く。
「っ……!」
ハルは見覚えがあった。
ただし、老人の顔に、ではない。
老人の持つ、その杖にだ。
「その杖……もしかして、サーカス団の黒幕は……」
「ほう、察しがついたようじゃの」
その老人は静かに笑みを浮かべる。その笑みには、明らかに邪悪なものが宿っていた。
「儂はハーメルン・サーカス初代団長、ツヒェン。勿論、この姿は借り物じゃ。本物のツヒェンはもう何年も前に死んでおる。そして、この私の正体は——」
「そう言えばエストレさん、どうして奴らがただのサーカス団じゃないって分かったの?」
森の中を進んでいく途中で、サヤナは気になっていたことをエストレに尋ねる。
「お客さんたちが眠らされる直前、ツヒェンって人が現れたでしょ。あのタイミングで気づいたの」
「……というと?」
「あの老人の話し方に違和感を感じた。特に意味もなく変わる一人称にね。そして、あの老人が出そうとしたポケモン。それを見た瞬間に、確信したわ」
「出そうとした、ポケモン?」
老人がポケモンを出すその直前に、サヤナはエストレに手を引かれ、無理やり会場の外に連れて行かれた。
「ええ。幻影と奈落、そう言っていたでしょ。幻影と奈落を司るポケモンを使用する人間を、私は一人知っているの」
「げんえいと、ならく……?」
それは、エストレが実際に戦っているからだ。
そして、その人物に会ったことがないサヤナには、その正体が分からないのも当然だった。
「ツヒェンと名乗るあの人物。その正体は——」
「——魔神卿、ダンタリオンだ。久しぶりですね、ハル」
「——ゴエティアの魔神卿の一人。ダンタリオンよ」
老人の顔がみるみるうちに剥がれ、赤いトランプ模様が描かれている真っ白なメイクを施した青年の顔へと変わっていく。
さらに着飾った服を脱ぎ捨てると、その下に着ていたのは真っ白な燕尾服。どういうトリックか分からないが、低かった老人の身長も元に戻っている。
「ダンタリオン……お前だったのか」
「ええ。グリムやルンペル、シュティルに指示を出し、ハーメルン・サーカスを裏で操っていたのは、他でもないこの俺だ。まぁ、ルンペルとシュティルは儂の直接の部下じゃがな」
相変わらず、このやたらと変化する口調は聞き慣れない。
「さて、こうなってしまった以上、この間抜けな観客共はここで諦めざるを得ません。まだ今回の任務は全て終わっていませんが、仕方あるまい」
だが、とダンタリオンは続け、
「ここでただ黙って引き下がるのも気に食わねえ。最低限やりたいことをやれたとはいえ、目的も達成しきれずにただやられっぱなしなんて、魔神卿の恥さらしですからね」
ぞわり、と。
ハルの背筋に、悪寒が走る。
「追っ手はまだ来ないみたいだし、来たとしても間抜けな客を人質に出来る。貴様を直接手にかけることは禁止されておるが、せめて再起不能くらいには追い込んで差し上げましょう」
今度こそ。
一介の団長とは比べ物にならないほどの巨大な闇が、ハルへと襲い掛かる。
- 第84話 変装 ( No.147 )
- 日時: 2017/02/07 07:52
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
「毒牙を刻め、モルフォン!」
ハーメルン・サーカス最終演目、ハル対ダンタリオン。
そのダンタリオンが初めに繰り出すポケモンは、毒蛾ポケモンのモルフォンだが、
「えっ……? そのモルフォンは……」
ハルには、そのモルフォンに見覚えがあった。
しかし使っていたのはダンタリオンではない。バトル大会で何度か当たった、リオンという少女のものだ。
「覚えていましたね。ならばそろそろ、種を明かしてもいいじゃろう」
そんなハルの様子を見て、ダンタリオンは不気味な笑みを浮かべる。
「貴方と大会で当たった、リオン、ダリ。その二人の名は覚えているな?」
リオンは言わずもがな。ダリはヒザカリ大会の一回戦で当たった男性トレーナーだ。
「ああ、でもそれがどうしたって……」
ハルが怪訝な表情で尋ねると、ダンタリオンはさらに口元を吊り上げる。
「その二人だがな。二人とも私の変装です」
「……は?」
思わず、ハルは聞き返す。
「変装するときの名前には拘りがありましてね、必ず元の名前六文字から文字を取って名前をつけている。情報収集に利用していたのだが、そろそろ限界もあるし、この辺で明かしてしまおうと思ったものでな」
証拠を見せると言わんばかりに、ダンタリオンはモルフォンを一旦戻すと、別のボールを取り出す。
「夜を導け、ドンカラス!」
出てきたのはソフト帽のような形の頭部に、胸にはもっさりとした白い羽毛を膨らませたカラスのようなポケモン。
『information
ドンカラス 大ボスポケモン
低い声で鳴き声を上げるとすぐさま
大量のヤミカラスの群れが集まる。
夜を招く者とも言われている。』
進化して姿こそ変わってはいるが、明らかにダリの使っていたヤミカラスの進化系だ。
「ゴエティアの異常なほどの情報網は、お前の力だったのか……」
「まぁ私だけの力ってわけじゃねえけどな。特にアモンの情報網は俺様より遥かに上じゃ」
そう言いながら、ダンタリオンはすぐにドンカラスをボールへと戻すと、再びモルフォンを繰り出す。あくまでもバトルはモルフォンで行いたいようだ。
「やるしかない……頼んだよ、ファイアロー!」
ハルが繰り出すのはファイアロー。タイプ相性的に、モルフォンとの相性はいい。
「大会での実力を儂の力だとは思わないことだ。あの時は必ず一回戦で負けるために力を抑えていただけですからね。それでは行きますよ、モルフォン! ヘドロ爆弾!」
モルフォンが短い脚でヘドロの塊を抱えると、そこから無数のヘドロの弾が放出される。
「ファイアロー、躱してニトロチャージだ!」
ファイアローの体が、炎に覆われる。
次々とヘドロの弾を躱しながらモルフォンとの距離を詰め、炎の突撃を食らわせて突き飛ばす。
「ファイアロー、続けてアクロバット!」
さらにファイアローは軽快かつ不規則な動きでモルフォンへと飛びかかって行く。
しかし。
「モルフォン、バグノイズ!」
体勢を崩すモルフォンから、突如耳をつんざく甲高いノイズが放出された。
ノイズによって、ファイアローは動きを止められてしまい、
「サイコショット!」
モルフォンが放つサイコパワーの念弾を躱すことができずに、吹き飛ばされてしまう。
「俺のモルフォンの特性は色眼鏡。タイプ相性が今一つだろうと、それを一つ打ち消して攻撃を通せる。単なるタイプ相性では、私のモルフォンを止めることはできませんよ」
ダンタリオンがさっき言っていた通り、大会の時と比べても今回のモルフォンは明らかに強い。
「ちなみに儂の手持ちの中ではモルフォンは最弱。この子にすら勝てないようでは、ゴエティアに楯突くのは無謀も無謀だぜ」
「っ、何だって……?」
これで最弱。やはり魔神卿はつくづく恐ろしい。
しかし、勝てない相手ではなさそうだ。少なくとも以前カザカリ山道で戦った時よりはよっぽど手応えを感じる。
「負けて、たまるか! ファイアロー、ニトロチャージ!」
一度ニトロチャージを当てているため、スピードが上がっている。
元々高い素早さをさらに上げ、ファイアローは炎を纏って突撃していく。
「モルフォン、サイコショット!」
そのファイアローのスピードに対応し、モルフォンはサイコパワーを溜め込んだ念弾を放出する。
突撃を仕掛けるファイアローに念弾をぶつけ、ニトロチャージを相殺すると、
「ヘドロ爆弾!」
再びヘドロの塊を抱え、無数のヘドロの弾を発射する。
「だったらファイアロー、鋼の翼!」
対するファイアローは大きな翼を鋼の如く硬化させ、ヘドロの弾の中に突っ込んでいく。
毒タイプの技は鋼には効かない。鋼の翼でヘドロの弾を貫きながら、一直線にモルフォンを狙う。
「モルフォン、サイコショット!」
「ファイアロー、躱してアクロバット!」
モルフォンがサイコパワーの念弾を放つも、ファイアローは上昇してそれを躱し、上空から翼をモルフォンへと叩きつける。
「モルフォン、痺れ粉!」
だが翼を叩きつけられたモルフォンの大きな翅から、薄い色の鱗粉が放出される。
風に乗って飛ぶ鱗粉はファイアローに纏わりつき、ファイアローはその鱗粉を吸い込んでしまう。
直後、途端にファイアローの動きが鈍る。
「っ、麻痺を受けたか……ファイアロー、大丈夫?」
麻痺状態は素早さが大幅に低下し、さらに一定の確率で行動できなくなってしまう状態異常。ダメージ自体はないようで、ファイアローはハルの言葉に頷く。
「素早さを上げ直そう! ファイアロー、ニトロチャージ!」
翼を広げ、ファイアローは炎を体に纏い、突撃していく。
しかしその動きは先ほどよりも明らかに鈍っており、
「当たりませんな。モルフォン、躱してヘドロ爆弾!」
モルフォンは難なくひらりと突撃を躱し、ヘドロの塊を抱えて、無数のヘドロの弾を放つ。
「鋼の翼!」
鋼のように翼を硬化させ、ファイアローはヘドロの弾から身を守る。
「ならば、これでどうですか? モルフォン、バグノイズ!」
モルフォンが動きを止め、翅を激しく震わせ、耳をつんざく甲高いノイズを周囲全体に放射する。
しかし。
「今だ! ファイアロー、ブレイブバード!」
ファイアローの体が、燃える炎の如きオーラに包まれる。
そのままファイアローは翼を折りたたみ、全力で突貫する。
ノイズの壁を強引に打ち破り、守りを捨てたファイアローの渾身の一撃がモルフォンを貫き、大きく吹き飛ばす。
「ファイアロー、ニトロチャージ!」
さらにファイアローは炎を纏い、木の幹に激突したモルフォンを追って飛ぶ。
炎を纏ったファイアローがモルフォンに激突し、木の幹ごとさらにモルフォンを吹き飛ばした。
「……っ!?」
そちらを振り向くダンタリオン。
木の下敷きとなったモルフォンは、戦闘不能となって目を回していた。
「おやおや、やられてしまいましたか。モルフォン、戻りな」
悔しげというより、何故先手を取られたのか不思議そうな様子で、ダンタリオンはモルフォンをボールに戻す。
「なるほど。少しばかりは成長しているみてえだな」
モルフォンの入ったボールをしまうと、ダンタリオンはすぐさま次のボールを取り出した。
「それならば、そろそろこいつを使ってもいいじゃろう。王様の許可も出ていますしね」
真っ白な化粧という仮面の奥に素顔を隠す魔神卿、ダンタリオンが、次なるポケモンを繰り出す。
「奈落に落とせ、ゲンガー!」
- 第85話 奈落 ( No.148 )
- 日時: 2017/02/08 15:19
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
『information
ゲンガー シャドーポケモン
獲物となる人やポケモンの影に
潜り込み隙を窺って魂を喰らう。
一度狙われれば逃れる術はない。』
ゴーストの進化系となるポケモン。タイプは変わらずゴーストと毒。
揺らめくガス状の体を持つゴーストとは違い手足が存在し、はっきりとした容姿を保っている。
「あのゴーストが進化したのか……いや、まだゾロアークの可能性もある。ファイアロー、申し訳ないけど、頼むよ」
体を痺れさせながらも、ファイアローは頷き、勇ましく啼く。
「ファイアロー、ブレイブバード!」
ファイアローが激しく燃え上がるオーラにその身を包み、翼を折りたたみ渾身の突撃を仕掛ける。
しかし、
「ゲンガー、ヘドロウェーブ!」
ゲンガーを中心として、その周囲に毒液が勢いよく溢れ出す。
捨て身でまっすぐに突っ込んでいったファイアローの攻撃力を持ってしても突き進むことができず、ファイアローは毒液の波に飲み込まれ、押し流されてしまう。
「っ、ファイアロー!」
倒れた木々を溶かし腐らせ、毒液が流れ去っていく。
ヘドロウェーブが途絶えた後には、ファイアローが戦闘不能となって倒れていた。
「くっ……ファイアロー、よく頑張ってくれたね。ゆっくり休んで」
ハルはファイアローを労い、ボールへと戻す。
(それにしても、ファイアローのブレイブバードを正面から打ち破るなんて。あのゲンガー、相当な火力の持ち主だ)
先ほどの口ぶりからしても、恐らくこのゲンガーがダンタリオンの切り札なのだろう。
「だけど、やるしかない! 次は君だ、ワルビル! 頼んだよ!」
ハルの二番手のポケモンはワルビル。悪技と地面技、主力技の両方で弱点を突ける。
「タイプ相性如きで儂のゲンガーに勝てると思ってんのか? ゲンガー、気合玉!」
ゲンガーが体内の気を一点に集めて、気合の念弾を作り出す。
「ワルビル、穴を掘る!」
ゲンガーが気合玉を放つと同時、ワルビルは素早く地面に潜り、地中へと身を隠す。
「ゲンガー、出て来た瞬間に気合玉です」
ゲンガーの右手に、再び気合の念弾が作り上げられる。
そのままゲンガーは辺りを見渡し、ワルビルの気配を探る。
「今だワルビル! 燕返し!」
ゲンガーが向いた方向と真後ろから、ワルビルが飛び出す。
刀身のように白く輝かせた腕を振るい、ゲンガーへと叩きつける。
「ゲンガー、後ろだ!」
対するゲンガーは素早く振り向き、手にした気合玉を直接叩きつける。
飛行タイプの技なので相性は不利のはずなのだが、競り合った末に吹き飛ばされたのはワルビルだった。
「押し流せ。ゲンガー、ヘドロウェーブ!」
「っ、ワルビル、躱して噛み砕く!」
裂けた口を大きく開き、ゲンガーは毒液の波を周囲に放つ。
対するワルビルは大きく跳躍して毒液を躱すと、そのままゲンガーに飛びかかり、頑丈な牙をゲンガーの体に食い込ませた。
ゲンガーを捕らえたままその首を大きく振り、ゲンガーを投げ飛ばす。
「ワルビル、一旦離れて。深追いは危険だ」
さらに攻撃を仕掛ける体勢に入るワルビルだが、ハルはワルビルを一旦退かせる。
「おや、なかなかやりますね。突っ込んできたら、返しの攻撃で吹っ飛ばしてやろうと思ってたんだがな」
ダンタリオンとゲンガーは同時に不気味に笑うと、
「ゲンガー、シャドーボール!」
ゲンガーの構えた両手に黒い影が宿り、黒い影の弾となって放出される。
「ワルビル、シャドークロー!」
影の弾を躱して、ワルビルは両腕に影の爪を纏わせ、ゲンガーへと飛びかかる。
「ゲンガー、躱すな。ヘドロウェーブ!」
ワルビルの影の爪に引き裂かれたゲンガーは、動きを止めなかった。
周囲に毒液の波を放出し、攻撃直後のワルビルを紫水の波に押し流した。
「しまった……ワルビル!」
「終わりじゃ! ゲンガー、気合玉!」
毒液に流されるワルビルに向けて、ゲンガーは身体中の気を溜め込んだ気合の念弾を撃ち出す。
起き上がったばかりのワルビルの額へと気合玉が直撃。効果抜群の一撃にワルビルは吹き飛ばされ、そのまま戦闘不能にまで追いやられてしまった。
「つ……強い! ワルビル、お疲れ様。よく頑張ったね」
ワルビルをボールへと戻すと、ハルは次のボールを手に取る。
(エーフィではだめだ。シャドーボールを受けてしまうと致命傷になってしまう)
ルカリオもルカリオで気合玉を受けてしまうのだが、ここはやはりルカリオしかない。
「こうなったら君の力を借りるしかない。頼んだよ、ルカリオ!」
悩んだ末にハルの選んだポケモンはルカリオ。
格闘技は効かないが、ボーンラッシュとサイコパンチはどちらも効果抜群。
「ルカリオ、相手は強敵だ。全力でかかるよ!」
ハルの言葉にルカリオは頷く。準備は出来ている。
「君と僕の、絆の力に応えて! ルカリオ、メガシンカ!」
ハルの持つキーストーンと、ルカリオのメガストーンが反応する。
七色の光に包まれ、咆哮と共にルカリオはメガシンカを遂げる。
「ゲンガー、気合玉!」
「ルカリオ、波導弾!」
ゲンガーが気合を溜め込んだ光の弾を放ち、ルカリオは右掌から青い波導の念弾を撃ち出す。
二者の放つ念弾が激突し、爆発を起こす。威力は互角だ。
「ルカリオ、ボーンラッシュ!」
爆煙の中を突っ切り、ルカリオは波導を長い骨の形に変え、ゲンガーへと突き出す。
「ゲンガー、シャドーボール!」
ゲンガーが黒い影の弾を放つが、ルカリオは骨のロッドの一振りでそれを弾き飛ばし、もう一振りしてゲンガーを殴り飛ばす。
地面技のボーンラッシュは、ゲンガーに効果抜群だ。
しかし、
「ほう、さすがはメガシンカの力です。貴方がメガシンカを使うなら、俺様もそろそろ本気を見せようか」
それを見た上でなお、ダンタリオンとゲンガーは不気味な笑みを浮かべる。
「本気……?」
本気。
その言葉に嫌な気配を感じ、ハルは聞き返す。
「ええ。まあ、口で説明するより実際に見せた方がいいじゃろう」
そう言うと、ダンタリオンは手馴れた様子で黒い杖をくるくると回す。
やがてその杖を握り、先端をハルへと突き付ける。
「なっ……!? それは……!?」
それを見たハルが、驚愕の表情を浮かべる。
黒い杖のその先にあったもの。それは。
「終わらない深淵を与えよう! ゲンガー、メガシンカ!」
杖の先に填め込まれていたのは、紛れもなくキーストーンだった。
ゲンガーが舌を出すと、その舌の先にピアスのようにメガストーンが付けられていた。
ダンタリオンのキーストーンから七色の光が飛び出し、ゲンガーのメガストーンの光と繋がる。
七色の光に包まれ、ゲンガーがその姿を変えていく。
背中や腕、そして尻尾は一気に刺々しくなり、真紅の瞳からは怪しい光を放っている。
下半身は異次元に潜っているのか、足は見えない。
そして。
より禍々しい姿となったゲンガーの額が不気味に蠢き、爛々と輝く黄色い三つ目の眼が現れた。
「メガシンカ——メガゲンガー」
暗き闇をその身に纏い、ゲンガーがメガシンカを遂げる。
「っ……メガゲンガー、だって……?」
今までハルが見たポケモンの中でも、かなり異質で異形なポケモンだ。
その歪な容姿からは、ただならぬ禍々しさを感じる。
「さあ、勝負はここからです。もっとも、最早勝負にならないかもしれぬがの」
ダンタリオンとゲンガーの邪悪な笑みが、ハルの瞳に焼きつく。
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