二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- ポケットモンスター 魔王と救世の絆
- 日時: 2018/04/30 21:14
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: OiWubliv)
こんにちはこんばんはおはようございます。パーセンターです。
今回は紙ほか板から映像板に進出して、また懲りずにポケモンの二次小説を執筆したいと思っております。
今回は前作との繋がりはほぼ断ち切った完全新作です。
カウントすれば5作目になりますね。まだ向こうの「星と旋風の使徒」は完結しておりませんので、同時進行となります。
※注意事項(?)
・いつものことですがノープランです。更新のペースも早かったり遅かったりします。
・上でも述べていますが、前作までとの繋がりはほぼありません。まだ「星と〜」が完結していませんしね。
・登場するポケモンは第七世代までです。執筆中に第八世代が出てきたらまたその時に考えます
・上に関連して、パーセンターがよく使っているベガポケモンですが、今作では『出ません』。設定上は存在している設定ですが今作には出ません。
・ベガの技は普通に出ます。ついでにオリジナル技も結構たくさん出ます。オリ技の説明は随時公開するのでご安心ください。
・オリキャラとかオリ技の募集も近いうちにすると思います。皆さん協力お願いします。
それでは、新しい主人公の新しい物語が始まります。よろしくお願いします。
登場人物紹介
>>34
オリ技紹介
>>45
プロローグ
>>1
ハツヒタウン編——旅立ち
>>6 >>7 >>8
シュンインシティ編——経験
>>15 >>20 >>28 >>32 >>35 >>36 >>37
カザハナシティ編——ライバル
>>38 >>40 >>43 >>44 >>46
ヒザカリタウン編——出会
>>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>65
サオヒメシティ編——Evolution
>>66 >>70 >>71 >>72 >>73 >>74 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>84 >>85 >>86 >>91
ハダレタウン編——大会
>>92 >>94 >>97 >>98 >>99 >>102 >>103 >>104 >>106 >>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120 >>121
カタカゲシティ編——試練
>>122 >>123 >>124 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>134 >>135 >>136 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>151
ノワキタウン編——友情
>>152 >>153 >>156 >>159 >>160 >>162 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>175 >>176 >>177
イザヨイシティ編——実力
>>178 >>180 >>181 >>182 >>183 >>184 >>185 >>186 >>187 >>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>195 >>196 >>197 >>198 >>199 >>200 >>202 >>203 >>204
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- 第125話 肉薄 ( No.204 )
- 日時: 2017/07/04 09:56
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
『information
ジュカイン 密林ポケモン
古き森の奥深くに生息している。
木の葉の影に隠れ獲物を待ち伏せ
頭上や背後から奇襲を仕掛ける。』
スグリのエース、ジュプトルの進化系だ。
蜥蜴のような姿はそのままだが、かなり細身だったジュプトルに比べて少しはがっしりした体つきになり、尻尾の葉の数が大きく増えている。背中には栄養分を貯めた種が四つ。
「スグリ君のジュプトル、進化してたんだ」
「6個目のバッジを賭けたジム戦でね。どう? このスカーフ、似合うでしょ?」
ジュカインの首元には、緑色のスカーフが巻いてあった。
ハダレタウン以来のエース対決。その時はルカリオが勝ったが、ギリギリでの勝利だった。油断はできない。
「大丈夫、今の僕たちなら勝てるよ。ルカリオ、始めるよ!」
前回はメガシンカの力を得て思い上がっていたハルだが、今は違う。
正しい絆の力を理解し、正しいメガシンカを使う。
「僕と君の、絆の力に応えて! ルカリオ、メガシンカ!」
ハルのキーストーンと、ルカリオのメガストーンが反応し、光を放つ。
七色の光がルカリオを包み、その姿を変え、ルカリオはメガシンカを遂げる。
対して。
「そうこなくっちゃね。それじゃあジュカイン、こっちもだ」
ニヤリと笑うスグリと、それを見て振り返り、頷くジュカイン。
「こっちも……? もしかして、スグリ君」
「うん、そうだよ。オレも手に入れたのさ。キーストーンと、ジュカインナイトをね」
そう言いながらスグリは右手を突き出す。その中指には指輪があり、その真ん中に煌めく石は、紛れもなくキーストーンだった。
「オレたちの絆ってものを、見せてやる! ジュカイン、メガシンカ!」
ジュカインの首元のスカーフ。その留め具として使われているメガストーンが、スグリのキーストーンに呼応し、光を放つ。
七色の光がジュカインを包み、その姿形を変えていく。
光を薙ぎ払い、ジュカインがメガシンカを遂げる。
頭や腕の葉はより鋭利な形状に変化し、胸には植物のX字のアーマーが追加され、植物の尻尾はさらに大型化し、針葉樹のような形をとっている。
背中の種は尻尾に近づくにつれ赤く染まっており、小さいながら膨大なエネルギーを溜め込んでいるのが分かる。
「どう? カッコいーっしょ。オレ、このビジュアルすげー気に入っちゃってさ。勿論実力にも自信あるし、オレの一番の相棒にぴったりだよね」
スグリの言葉が聞こえたようで、ジュカインは嬉しそうにニヤリと笑う。
「これでハル君に追いついた。このバトルで勝って、また追い抜かせてもらうよ」
「そう簡単にはいかないよ。僕とルカリオも、正しい絆の力が使えるようになったんだ」
両者のメガシンカポケモンが、戦闘体勢に入る。
二人が最初の指示を出したのは、ほぼ同時だった。
「ルカリオ、発勁!」
「ジュカイン、リーフブレード!」
ルカリオの両手から炎のように青い波導が噴き出し、対するジュカインの両腕の葉が刀のように伸びる。
双方地を蹴って飛び出し、波導の打撃と葉の刃の激しい連続攻撃が激突する。
「ジュカイン、龍の波動!」
激しい応酬が続く中、隙を突いてジュカインがルカリオの攻撃を捌き、跳躍する。
口を開き、ルカリオの背を取って輝く龍の形をした光線を発射する。
「っ、ルカリオ!」
背中に波導の直撃を受けるが、吹き飛ばされたルカリオは受け身をとってすぐに起き上がる。
「ルカリオ、こっちも龍の波導!」
ルカリオの両手の波導が輝く龍の形を取り、光線のように発射される。
「ジュカイン、躱せ!」
最小限の動きで光線を躱しつつ、ジュカインは腕の葉を伸ばしてルカリオとの距離を詰め、
「アサシンソード!」
一瞬のうちにルカリオの弱点を見極め、腕の刃を振るい、的確に弱点を切り裂く。
「アサシンソードは鋼タイプに強い格闘技。威力はそんなに高くはないけど、その代わり、必ず急所に当たるんだ」
「っ、なるほど……ルカリオ、大丈夫?」
一度膝をついたルカリオだが、再び立ち上がり、ハルの言葉に応えて頷く。
威力が低いとはいえ、急所を突かれれば必然的にダメージは大きくなる。それに必ず弱点を突かれるとなれば、受ける側としては侮れない。しかもルカリオには効果抜群だ。
「ジュカイン、龍の波動!」
「ルカリオ、躱してボーンラッシュ!」
ジュカインが咆哮と共に龍の姿をした輝く光線を放つが、ルカリオは長い骨のロッドを掴むと、ジュカインへと向かっていく。
薙ぎ払うように放たれた龍の光線を飛び越え、掻い潜り、ルカリオは骨のロッドを振り回し、ジュカインへと叩きつける。
「ジュカイン、受け止めろ! リーフブレード!」
淡く光る腕の刃を伸ばし、ジュカインは骨のロッドを受け止める。双方の技は火花を散らし、激しく競り合う。
「ジュカイン、アサシンソード!」
「ルカリオ、波導弾!」
ジュカインが骨のロッドをいなして背後へ回り込むが、ルカリオは素早く反応する。
骨を携えた右手を裏拳のように振り抜くと同時、骨のロッドを青い念弾の形に変えて発射する。
波導の念弾はジュカインの腕へと命中、炸裂した波導がジュカインの体勢を崩し、
「発勁!」
間髪入れずに腹部へ波導の掌底を叩きつけられ、ジュカインが大きく吹き飛ばされる。
「ルカリオ、龍の波導!」
「ジュカイン、こっちもだ!」
ルカリオが両手を突き出し、宙を舞いながらもジュカインが口を開き、両者同時に輝く龍の光線を放つ。
二頭の龍が正面から激突、龍の咆哮のような爆音と共に大爆発が起こる。
「ルカリオ、君ならジュカインの場所が分かる。突っ込め! 発勁だよ!」
両手を叩いて波導を纏わせ、ルカリオは爆煙の中へと飛び込んでいく。
煙の中でも正確にジュカインの場所を見切り、ルカリオは一気にジュカインの懐へと飛び込み、波導の右手を振るう。
「っ! ジュカイン、アサシンソード!」
振り下ろされる右手を叩きつけられ、地面に撃墜され、それでもジュカインの動きは止まらない。
すぐさま両腕の刃を構えて飛び出し、一瞬のうちに狙いを定めて両腕を振るい、瞬時に二度、ルカリオの急所を切り裂いた。
「吹っ飛ばしてリーフブレード!」
続けて長い尻尾でルカリオを叩き飛ばし、ルカリオを地面に落とすと、ジュカインは両腕の刃を淡く光らせ、さらにルカリオへの追撃を仕掛ける。
「っ、ルカリオ、受け止めて! ボーンラッシュ!」
立て続けに、かつ一瞬の隙もなく振るわれるジュカインの腕の刃を、ルカリオは長い骨のロッドを振り回し、何とか捌き、いなしていく。
「龍の波導!」
「龍の波動だ!」
二人とも考えていたことは同じだった。
連続攻撃のさなか突然にジュカインが口から龍の光線を撃ち出し、それと同時にルカリオも手にした骨のロッドを輝く龍の形に変え、それを発射させる。
ほとんど零距離に近いほどの至近距離で両者の輝龍は、再び競り合った末に爆発する。
爆発と爆風に巻き込まれ、ジュカインもルカリオも大きく吹き飛ばされる。
「まだだ! ルカリオ、発勁!」
「この程度! ジュカイン、リーフブレード!」
壁まで吹き飛ばされたルカリオはそのまま壁を蹴り、両手に青い波導を纏わせて突撃し、床に落ちたジュカインは受け身をとってすぐさま起き上がり、淡く光る腕の刃を構えて飛び出す。
両者激突と同時に怒涛の連続攻撃を繰り出し、猛烈な攻防の応酬が繰り広げられる。
- 第126話 凌駕 ( No.205 )
- 日時: 2017/07/05 09:52
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
メガルカリオとメガジュカイン、両者とも休む間も無く連続攻撃を放つ。
競り合った末に、お互いのポケモンは素早く距離を取り、ハルとスグリの元へと戻る。
「ルカリオ、発勁!」
「ジュカイン、アサシンソード!」
両手に再び青い波導を纏わせ、ルカリオが地を蹴って飛び出す。
ジュカインは腕の刃を伸ばし、ルカリオを迎え撃つべく突撃する。
ルカリオが両手を立て続けに振るうが、激突の寸前、ジュカインは素早くルカリオの打撃を躱すと、ルカリオの背後へと回り込む。
「ルカリオ、躱して! ボーンラッシュ!」
背後から振るわれるジュカインの刃を躱し、ルカリオは両手を纏う波導を長い骨の形へと変化させる。
対して。
拮抗していた戦いが、遂に傾く。
「ジュカイン、リーフストーム!」
骨を構えて突撃するルカリオに対し、ジュカインは背を向ける。
ジュカインの尻尾を中心に空気が渦を巻き、直後、ジュカインの尻尾の付け根の赤い種が破裂する。
刹那。
渦巻く尖った無数の葉と共に、大きな尻尾がドリルミサイルのように撃ち出された。
「なっ……!?」
超高速で回転しながら、無数の尖った葉を纏わせたジュカインの尻尾がルカリオへ直撃する。
骨のロッドを容易くへし折り、さらにルカリオを捉え、押し切り、無数の葉とドリルミサイルのような尻尾が立て続けにルカリオを切り裂いていく。
そして壁へ激突すると同時に、大爆発を起こした。
「リーフブレード!」
そしてジュカインの尻尾はすぐさま再生し、ジュカインはルカリオとの距離を一気に詰め、淡く光る腕の鋭い葉の刃を振り抜く。
反撃する暇も与えられなかった。二対の刃に切り裂かれ、ルカリオは地面に崩れ落ちる。
七色の光がルカリオを包み、その姿を元へ戻す。
つまり、
「ルカリオ……お疲れ様。よく頑張ったね」
ルカリオの頭を撫で、ハルはルカリオをボールへと戻す。
ルカリオは戦闘不能。よってこのバトルは、スグリの勝利だ。
「よっしゃ、勝った勝った! ジュカイン、お疲れさん」
スグリがそう言うと、ジュカインの姿がメガシンカ前のものへ戻る。
水色の丸い木の実をスグリに渡されると、ジュカインは喜んで食いつき、飲み込み、じゃれつくようにスグリの頭を甘噛みする。
「……さすがスグリ君だね。悔しいけど、完敗だよ」
やはりスグリは強かった。それも、ハルの想像以上。
この実力がさらに伸び続ければ、その力はどこまで伸びるのか。それこそ、強者揃いのポケモンリーグ優勝も、夢ではないのかもしれない。
「いやぁ、まぁね。正直、以前ハル君に負けたのは死ぬほど悔しかったからね。その後から、ポケモンたちを必死で鍛え直したよ。おかげでオレたちはもっと強くなったし、ジュカインとの絆もさらに深まった。その結果得たのが、メガシンカの力さ」
しかし。
「……だけど、次は負けないよ。スグリ君がこれから大会に出ないなら、次に戦うのはポケモンリーグになるよね。そこで、決着を付けようよ」
スグリに負けたおかげで、ハルにも明確な目標が出来た。
すなわち。
ポケモンリーグで優勝する。まだ雲の上の目標だが、必ず、その境地に到達してみせる。
「……いいね、それ。ハル君なら、オレのライバルに相応しい。分かったよ。次に戦うのは、ポケモンリーグの決勝だ」
「うん、約束だよ。それまでに、もっともっと強くなるからね」
今、ここに。
二人の少年との間で、再戦の誓いが結ばれた。
「……さて、それはともかく。大会まではまだ一週間もあるけど、ハル君。今日は休んで、明日からしばらく、この街を観光しない?」
「わぁ、いいね! 科学技術の最先端の街、いろいろ見て回ろうよ!」
「よっしゃ、決まりだ! それじゃ、また明日!」
スグリはそう言うと、ジュカインをボールに戻し、先に交流所を出て行った。
ハルもポケモンセンター一階に戻り、ポケモンたちを回復させる。
イザヨイシティには、最先端の科学技術を生かした様々な建物が建っている。
海の科学博物館や古代ポケモン博物館などの研究施設が無数に立ち並び、街の中を移動すれば時々無人清掃ロボや警備ロボとすれ違う。
観光施設の多くは自動化されており、飲食店も例外ではない。
これらの自動サービスはあのマキナがたった一人で管理しているというのだから驚きだ。圧倒的な知能指数を持つ彼女だからこそ、為せるのだろう。
ちなみに、今日は大会の前日。
「よっしゃ! これで五十連勝! ハル君、ナイスサポート!」
「スグリ君のおかげで新記録達成だよ! さすがだね!」
ハルとスグリは、バトルタワーと呼ばれる施設でバトルをしていた。
一流のブリーダーに育てられたポケモンを例によってマキナお手製の人工知能が使い、それを相手に何連勝できるかという腕試しの施設。
ハルとスグリは二人でタッグバトルコースを選び、挑戦していた。
ハルは大会に向けてポケモンの調整を兼ねていたつもりが、いつの間にか新記録を樹立していたらしい。
『挑戦者ハル、スグリ。お見事です。さらに挑戦を続けますか?』
「いや、さすがに疲れてきたしそろそろ中断かな」
「そうだね。新記録も達成したし、五十連勝でキリもいいしね」
『分かりました。それでは挑戦を中断いたします。五十連勝達成のお二人に報酬がございますので、ロビーにてお受け取りください』
アナウンス通りに二人はロビーに戻り、報酬を受け取る。
新記録達成というだけあって報酬はなかなか豪華だった。まず賞金があり、さらに定番の木の実詰め合わせ、その他ポケモンの育成に役立つ道具などがたくさんある中で、
「なんだこれ。カプセル状の薬みたいな形だけど」
「えーっと……特性カプセル、だって。二種類の特性を持つポケモンに使うと、特性がもう片方のものに変わる、っていう代物みたいだよ。これもアルスエンタープライズ製なんだって」
報酬の中に説明書を見つけ、ハルがその文を読み上げる。
「たまに見つかる、隠れ特性を持つポケモンには効き目がないって書いてあるね」
「なるほどねぇ、なかなか面白いアイテムじゃん。使い所をよく考えなきゃな」
ちなみにバトルタワーでは一試合ごとにポケモンが回復されるため、ポケモンたちにそこまで負荷は掛からない。
とはいえ、さすがに五十戦もしていたのでトレーナーの方が疲れる。
「さて、と。そろそろいい時間だね。ポケセンに戻って少し休んで、夕飯でも食べよっか」
「そうだね。明日に備えて、今日は早めに寝なきゃ」
そろそろ夕方だ。特にハルは明日の大会もあるため、二人はポケモンセンターへと戻る。
- 第127話 集合 ( No.206 )
- 日時: 2017/07/06 09:34
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
『続いてのニュースです。カロス地方ミアレシティのミアレ酒造にて、何種類かのワインが強奪されたという襲撃事件が発生しました。ミアレ酒造では今朝、何者かの襲撃によって爆発が……』
街のいくつかに備えられた電光掲示板では、夕方のニュースが流れている。
『……後の捜査で、何種類かのワインが盗まれていたとのことです。この事件で、酒造を警備していた警備員のうち一人が死亡、数名がけがをしました。警察は強盗事件とみて捜査を進めていますが、犯人については……』
「カロスで爆破事件かぁ。どの地方も、物騒だなぁ」
歩きながらニュースを見ていたスグリが呟く。
カロス地方とマデル地方は近く、それなりに大きな事件のようなので、ここでも報道されているのだろう。
『……では、CMの後は、いよいよ明日開催されるポケモンバトルイザヨイリーグについての……』
流れてくるニュースを聞きながら、ハルとスグリはポケモンセンターの扉をくぐる。
イザヨイシティのポケモンセンターの食堂は、バイキング形式になっているようだ。
四人用の席とカウンターしかないので、二人は贅沢に四人用の席に座っている。
「スグリ君、たくさん食べるね……」
「そーかな? 寧ろハル君少なすぎない? いっぱい食べないと、明日力出ないよ?」
何と言っても目を惹くのは、スグリの皿一杯のフライドポテト。
「あはは……僕、昔から少食だからね。あんまり食べ過ぎると、お腹壊しちゃうよ」
フライドポテトを摘むスグリを見て苦笑いしながら、ハルも自分の料理を口に運ぶ。
そんな時、
「ハル! 久しぶり、隣いい?」
唐突に後ろから声を掛けられる。
振り返ると、
「あっ、サヤナ! カタカゲシティ以来だね、元気にしてた?」
立っていたのは、お盆の上にたくさんの料理を乗せたサヤナだった。
「うん! さっきここのジムリーダーに勝ってきたところだよ。身体が機械になってて、びっくりしちゃった。あっスグリ君もいる! 久しぶりだね!」
相変わらずテンションの高いサヤナが、春の隣に座る。
「……ごくんっ。サヤナちゃん、久々だね。ハダレタウンの大会以来かな?」
頬張っていたフライドポテトを飲み込み、スグリが手を振る。
「二人とも明日の大会出るんでしょ? 私も明日に備えて、ポケモンたちの調子も万全に仕上げてきたからね! 目指すは優勝だよ!」
「あ、オレはパス。ちょっと理由があってね。今回は観客席でみんなの応援と分析をしてるよ」
「そっかぁ、スグリ君出ないのかぁ。ちょっと寂しいけど、でもスグリ君が出場しないってなると、私の優勝の可能性が少し広がるかも?」
そう言いながら、サヤナは次々と料理を頬張っていく。
(サヤナもいっぱい食べるなぁ……)
そんなことを考えているハルだが、相手が女の子なのであまり触れないことにしておく。
「ハルは出るの? 明日の大会」
「え? あぁ、うん。ちょうどいい腕試しにもなるしね。優勝目指して頑張るよ」
ハルがそう答えると、サヤナはいかにも嬉しそうに微笑む。
「あっ、そういえばさ、今回の大会はかなり大規模だって話は知ってるよね。ポケモンリーグ大会に次ぐほどのおっきな大会だって」
「ああ、そうらしいね。優勝賞品の一つに、予選のシード権があるほどだし」
「そうそう。それでね、なんと! 解説に四天王の人が来て、それからスペシャルゲストとしてチャンピオンも来るっていう噂なんだよ!」
「へー。ヴィレさんが来るのか。生で見るのは初めてだな」
「ヴィレさん?」
ハルが不思議そうな表情を浮かべると、
「そっか、ハルは引っ越して来たから知らないんだね。ヴィレさんっていうのはマデル地方のチャンピオンなんだよ! 百年前に救世主と呼ばれた七人の英雄のうちの一人の子孫で、もうかなりの歳なんだけどその実力は健在。とっても強いお爺さんなんだから!」
「三十歳という若さでチャンピオンの座に立ってから、この三十年以上の間、ずっとチャンピオンの座を守ってる人。その下の四天王たちは代替わりしてる中、チャンピオンだけは代わっていない。まぁすごい人だよね」
「へー……そんな人が、明日の大会に来るのか……」
残念ながらバトルが出来るわけではないようだが、四天王やチャンピオンをこの目で見れるとは嬉しい限りだ。
今晩中にはジゼが戻ってくる。明日になれば、エストレやミオなど、ライバル達にもまた会えるかもしれない。
今日はゆっくり休んで、明日はイザヨイリーグに挑戦だ。
そして翌日。
ハルとサヤナは、朝早くから会場を訪れていた。
街の中央にある、巨大なバトルドーム。そこが、今回の大会の会場だ。
ハダレタウンの大会も大きなものだったが、今回の規模はそれ以上に大きい。建物には中央の巨大なバトルフィールドの他に、それを囲む四つの小さなバトルフィールドがある。ということは勿論、本戦の前に予選もある。
ちなみにスグリは観客席で観戦だ。
「開会式まではもう少し時間があるね。ちょっと会場を見て回ろっか」
「うん。……あっ、パパからメールだ。『大会頑張れ。仕事でそっちには行けないけど、テレビから応援してるぞ』だって。頑張んなきゃねっ」
忘れかけていたが、サヤナの父親とはミツイ博士だ。久しく会っていないが、サヤナの様子を見る限り元気に過ごしていることだろう。
すると、そんな時。
「あら? ハル君にサヤナちゃん?」
突然、背後から声を掛けられる。聞いたことのある声だ。
二人が振り向くと、
「あっ!」
「アリスさん!?」
青白いグラデーションの服に白いスカート、鮮やかな金髪のセミロング。サオヒメシティジムリーダーにして継承者の子孫、アリスだった。
隣にもう一人女性がいる。友人だろうか。
「お久しぶり。ここにいるってことは、二人とも大会に出るのよね?」
二人に名前を呼ばれ、アリスはにっこりと笑う。
「ええ、そうですよ」
「アリスさんは、大会のゲスト客、みたいな感じですか?」
サヤナが尋ねるが、アリスは首を横に振る。
「違うわよ。私も参加者。一人のポケモントレーナーとして、大会に参加するの」
「えっ、ほんとですか!?」
予想していなかった答えに、驚きを浮かべるハル。
「ええ。私は今のジムリーダーって立場にまだ満足してない。継承者の家に生まれた名のあるメガシンカ使いとして、いずれは四天王、チャンピオンの座だって狙いたい。その足掛かりに、この大会に出場するのよ」
「そっかぁ……アリスさんも大会に……優勝までの道は険しいなぁ……」
しょんぼりしたようにサヤナがため息を吐く。
と、そこで。
「ふぅん、この子がハルか。ってことは、アリスが言ってた、メガシンカを継承したっていうのは、この子ね」
さっきまでアリスの横で黙っていた女性が、興味深そうにハルの顔をじっと眺める。
髪は茶色のポニーテール、すらっとした体型で、緑の草花の模様が描かれた短いワンピースを着て、茶色のハイソックスを履いている。
「あの、すいません。アリスさん、この方は……?」
ハルが尋ねるが、
「あら、ごめんね。私の友達なの。名前は——」
「アサツキよ! よろしくね!」
アリスが紹介するよりも早く、その女性は自らの名を名乗る。
「——先に言われてしまったけど、この子はアサツキ。ウチセト地方のブルムシティってところでジムリーダーをやってる子よ。以前マデルに留学してた頃に私と知り合って、それ以来友達なのよ。今はハル君たちと同じく、マデル地方を旅してるの」
「そ。ま、同じポケモンリーグを目指すもの同士、仲良くやろうよ。よろしくね」
アサツキが笑顔を浮かべ、手を差し出す。ハルもすぐにその意図を理解し、握手を交わす。
「さあ、そろそろ開会式が始まるわよ。また、後でね」
アリスは手を振り、アサツキとともにその場を去っていく。
「……サヤナ。どうやら、今回の大会、一筋縄ではいかなさそうだね」
「……うん。気を引き締めていかないと、あっという間にやられちゃいそう」
激しいバトルが続くことを予想し、ハルとサヤナは開会式へと向かう。
波乱のポケモンバトル大会イザヨイリーグが、いよいよ幕を開ける。
- 第128話 チャンピオン ( No.207 )
- 日時: 2018/04/19 06:51
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: OiWubliv)
ポケモンバトルイザヨイリーグでは、今までと違い、正式な開会式が行われる。
ハルにとっては正直なところこのような開会式は退屈なもので、聞き流すように開会の言葉などを聞いていた。
しかし、
「それでは最後に、チャンピオンのヴィレ氏から、挨拶をいただきます」
その言葉と共に、ハルの退屈が一瞬のうちに吹き飛ばされた。
会場がざわつく中、一人の男性がゆっくりと壇上に上がる。
白い髭が特徴的な、初老の男性だ。魔法使いのような帽子を被り、緑色のマントのようなローブと黒い服に身を包んでいる。
「ほほほ、初めましての方がほとんどじゃの。儂はマデル地方のチャンピオン、ヴィレという者じゃ」
年老いていながらも威厳のある姿だが、その性格はどことなく気軽というか、親しみやすそうなお爺ちゃんとでも言ったような感じだ。
「この三日間の大会でどのような戦いが見られるのか、とても楽しみにしておるぞ。参加者の諸君、力の限り戦い抜き、熱い戦いを見せてくれ」
そう挨拶を終えると、ヴィレはゆっくりと段を降り、開会式は終了する。
引き続き、すぐに予選が始まる。しかし、すぐに予選があるからといって会場へ向かったサヤナと違い、ハルは予選までまだしばらく時間がある。
とりあえず自分の会場にスタンバイしておこうと移動するハルだが、その途中、
「あ! ミオ!」
見知った顔を見つけ、声を掛ける。
「あぁ、ハルくん。久しぶりだねぇ」
いつも通りのほんわかとした様子で、ミオはハルを見つけ、にへらーと笑う。
「ミオもこの大会に参加してたんだね!」
「もちろんだよぅ。そういえばさっき、えーっと……エストレさん、だっけ? 赤い女の人を見たよぅ。あの人にしては珍しく、かなり緊張してるみたいだったねぇ」
予想通りというか、どうやら、エストレもいるらしい。
ハルの知っているだけで、サヤナ、エストレ、ミオ、ジゼ。それに加えてさらにアリスとアサツキのジムリーダーコンビと、強豪が勢揃い。今回の大会は、ハルが想像していた通り、もしくはそれ以上に、かなり熾烈なものとなりそうだ。
ジゼにはまだ会っていないが、きっといるに違いない。
「ハルくん、予選の会場どこ?」
ミオにそう聞かれ、ハルはターミナルを使って予選会場を確認する。
「えーっと……第三会場だね。南側のフィールドだよ」
「そうかぁ。僕は北側の第一会場だから、予選は別々だね」
どうやらサヤナに続き、ミオもハルとは予選会場は別々らしい。
「それじゃ、まずは予選突破だね」
「うん。本戦で会おうねぇ」
それぞれの予選会場へ向かうべく、二人はそこで一旦別れる。
何度も言うがこの大会は非常に規模が大きなものである。それはなぜかといえば、大会参加者の制限がないからだ。
以前参加した大会はジムバッジの数による制限があったり、レギュレーションが分けられていたりしたが、今回の大会にはそれがない。
つまり、ポケモントレーナーなら誰もが出場可能なのだ。
トレーナーの強さはバッジの数だけでは判断できない。ジゼがいい証拠だ。
ちなみに参加者が非常に多いという性質上、予選の試合数も多い。
無作為に選ばれた相手と戦うのを何回か繰り返し、勝利数や試合時間を考慮し、四つの予選会場ごとに上位八名が本戦トーナメントに出場できる。つまり、本戦に出られるのは三十二名。優勝するには、そこからさらに五連勝しなければならない。
そして第三会場では、いよいよハルの予選の一試合目が始まる。
「これより、ハル選手とマコ選手のポケモンバトルを始めます。使用ポケモンは一体。両者、ポケモンを出してください」
ハルの相手は、少し小柄な厚着の少女だ。
「出てきて、ファイアロー!」
「ココロモリ、お願い!」
ハルが選んだポケモンはファイアロー。
対してマコのポケモンは、丸っこい印象を持つ青いコウモリのようなポケモン。首元のふさふさの体毛と、ハートの形をした巨大な鼻が特徴的だ。
『information
ココロモリ 求愛ポケモン
鼻から様々な周波数の音波を出す。
獲物を探したり異性へ求愛したり
岩石を破壊したりと用途は様々。』
ココロモリ、エスパータイプを併せ持つ飛行ポケモンだ。
「それでは、バトル開始!」
審判の声を引き金に、両者が動き出す。
「ファイアロー、ニトロチャージ!」
ファイアローが翼を広げ、体に炎を纏い、突撃を仕掛ける。
「ココロモリ、サイケ光線!」
大きな鼻を震わせ、ココロモリは鼻の穴から念力の光線を発射する。
炎を纏ったまま、ファイアローは光線の中へ突っ込む。
周囲の炎が光線からファイアローの身を守るが、その代わりに炎も掻き消されてしまう。
「ココロモリ、続けて瞑想だよ!」
ココロモリはその場でじっと目を瞑り、精神力を研ぎ澄ましていく。
「ファイアロー、止めるよ! 鋼の翼!」
翼を鋼の如く硬化させ、ファイアローが飛び出す。
特殊能力を上げていくココロモリを鋼の翼で叩きつけるが、瞑想を止めるには間に合わな
い。
「続けてアクロバット!」
さらにファイアローは一気にココロモリへ突っ込み、再びココロモリへ向けて翼を振り抜く。
「ココロモリ、躱して!」
しかしココロモリも意外と俊敏な動きで素早く飛び退き、ファイアローの翼を躱す。
「続けてサイケ光線!」
後ろへ下がったココロモリが、鼻を震わせ、鼻の穴から念力の光線を発射する。
しかしその威力がかなり高い。轟音と共に先程の二倍ほどもある勢いで光線が放たれ、ファイアローを吹き飛ばす。
「なっ……ファイアロー!?」
一発目と比べて明らかに威力の高い一撃に驚くハル。確かに瞑想でココロモリの特攻は上がっているが、
(一回瞑想を使っただけで、そんなに攻撃力が上がるものだっけ……?)
特攻を一段階上げただけにしては、明らかに威力が上がりすぎだ。
「ふふふ、驚いてるね。表情に出てるよ」
対戦相手の少女、マコが、得意げな笑みを浮かべる。
「私のココロモリの特性は、単純。この名前だけだと効果が分かりにくいけど、これは能力変化による効果を通常の二倍にする特性だよ」
「能力変化が、二倍……そういうことか」
つまり、通常は瞑想によって特攻と特防が一段階ずつ上がるところ、このココロモリは二段階上がっているのだ。
「早くしないと、止まんなくなっちゃうよ。ココロモリ、もう一度瞑想!」
ファイアローが体勢を崩している間に、ココロモリはさらに精神を研ぎ澄ませ、特殊能力を再び強化していく。
「さあ、こっからが本番だよ! ココロモリ、シグナルビーム!」
続けてココロモリは鼻の穴から激しく点滅を繰り返すレーザー光線を発射する。
「ファイアロー、ニトロチャージ! 炎で防御だ!」
ファイアローは全身を炎で覆うが、ココロモリの火力はさらに上昇している。
光線が着弾すると同時に爆発を起こし、ファイアローを吹き飛ばした。
「ココロモリ、さらに瞑想だよ!」
ココロモリはまたも精神統一を繰り返す。通常なら三回の能力アップだが、このココロモリの場合、これで特攻、特防共に最大まで上昇した形となる。
「ココロモリ、サイケ光線!」
ココロモリの鼻が振動し、鼻の穴から爆音と共に念力の光線が発射される。
ただのサイケ光線ではない。通常の何倍にも膨れ上がった極太の念力光線が、ファイアローへと襲い掛かる。
- 第129話 通過 ( No.208 )
- 日時: 2018/04/29 20:56
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: OiWubliv)
通常の何倍の威力も膨れ上がったココロモリの必殺の念力光線が、ファイアローへと迫り来る。
しかし、
「……やれる! ファイアロー、躱して!」
寸でのところでファイアローは飛翔し、ココロモリの光線を躱す。
「鋼の翼だ!」
翼を鋼の如く硬化させ、ファイアローが滑空するようにココロモリへと突撃する。
「ココロモリ、上だよ! シグナルビーム!」
ファイアローの方を見上げたココロモリの鼻が振動する。
ハート型の鼻の穴から、激しく点滅するレーザー光線が発射されるが、
「ファイアロー、旋回して! 後ろから!」
素早く光線を躱し、ファイアローはぐるりと旋回し、ココロモリの背後から鋼鉄の翼を叩きつける。
「まだまだ! ココロモリ、シャドーボール!」
ココロモリの鼻の振動と共に、その中央に黒い影が集まる。
影が集まって巨大な黒い影の弾を作り上げるが、
「ニトロチャージ!」
炎を纏い、ファイアローが突撃する。
ココロモリが巨大な影の弾を撃ち出すよりも早く、ファイアローが炎を纏ってココロモリへ激突した。
「っ、ココロモリ、サイケ光線!」
体勢を崩され、影の弾が霧散してしまうが、ココロモリは体勢を崩しながらも鼻を震わせ、膨れ上がった念力の光線を発射する。
「躱してアクロバット!」
しかし、やはり光線が放たれるより先にファイアローは一気にココロモリとの距離を詰め、翼を振るってココロモリを叩き落とす。
「っ……どうして? なんでさっきから攻撃が当たらないのよ……!」
マコの言う通り。
瞑想と単純の特性によってバトルを優位に進めていたはずのココロモリの攻撃が、急に当たらなくなった。
そして、
「それは、僕がココロモリの攻撃をほぼ見切れるようになったからだよ」
対するハルの表情には、先程と一転して余裕が浮かぶ。
「見切れる……どういうことよ」
「気付いていないかもしれないけど、そのココロモリは、攻撃を撃つ時、必ず鼻が振動するんだ。それなら僕は、それを見てから攻撃を躱して反撃に出る指示をすればいいよね」
「っ……そんな……!」
マコが気付いた時には、もう遅い。
既にハルは、このココロモリを突破する手段を見つけている。
「うぅ……! ココロモリ、サイケ光線!」
ココロモリが体内に念力を溜め込む。
だが光線を放つ前に、やはりココロモリのハート型の鼻が振動する。
「ファイアロー、躱してブレイブバード!」
燃える炎の如きオーラを纏い、ファイアローが突貫する。
轟音と共に放たれる念力光線を躱し、ファイアローの渾身の突撃がココロモリを捉え、貫いた。
「ココロモリ!?」
ココロモリが吹き飛ばされ、床を転がる。
止まった時には目を回し、地面に倒れ伏していた。
「ココロモリ、戦闘不能! ファイアローの勝ちです! 勝者、ハル選手!」
審判がココロモリの戦闘不能を告げる。ハルの勝ちだ。
「ファイアロー、お疲れ様! よく頑張ったね」
ハルはファイアローの嘴を撫で、ボールへと戻す。最初の試合に、勝ち星をつけた。
「ワルビアル、シャドークロー!」
「クリムガン、ドラゴンクロー!」
ワルビアルの黒い影の爪と、炎のように赤い顔に青い胴体を持つドラゴンポケモンの龍の力を込めた爪がぶつかり合う。
『information
クリムガン 洞穴ポケモン
普段は洞窟に生息するが時折外に
出てくる。翼は日光で体を温める
役割を持つが飛ぶことはできない。』
両者の頑丈な爪が激突し、取っ組み合いになるが、
「ワルビアル、地震!」
太い尻尾を地面に叩きつけ、ワルビアルは大きく床を揺らし、クリムガンの体勢を崩す。
「今だよ! ストーンエッジ!」
ワルビアルの咆哮と共に、クリムガンの足元から鋭く尖った岩の柱が出現する。
岩の柱はクリムガンを捉え、勢いよく宙へ吹き飛ばした。
「っ、クリムガン!」
打ち上げられたクリムガンは重力に従ってそのまま落下し、地面に激突して戦闘不能となる。
「クリムガン、戦闘不能! ワルビアルの勝ちです! 勝者、ハル選手!」
たった今、ハルは予選の最後の試合を勝ち星で通過した。
「よっし! ワルビアル、よく頑張ったね」
ハルはワルビアルを労い、ボールへと戻す。
ハルの試合は全て終わったものの、まだ予選が終わっていない人も多いため、結果はまだ分からない。
勝ち越しはしたものの、全勝はできなかった。やはり今までと比べても、今回の大会はレベルが高い。
不安と期待を抱きながらも、ハルは一旦控え室へと戻る。予選の試合が全て終了した時点で、結果はターミナルへと送られてくる。
そして、
「……! よし、載ってる!」
送信されてきた予選通過者の一覧には、ハルの名前が載っていた。順位は特に明かされてはいないので、この段階ではどのトレーナーが特に強いかまでは分からない。
「ハル! お互い予選突破だぜ、やったな!」
不意に声を掛けられた。声の主は、いつの間にか近くにいたジゼだ。
「ってことは、ジゼも予選通過したんだね」
「まぁな。俺もポケモンたちも調子いいぜ。特に最後の試合! リザードンが頑張ってくれてな。初戦のリンダって奴に負けたが、他は全勝だ」
得意げな笑みを浮かべるジゼ。かなり元気が有り余っている。
「それから、見たか? 予選通過者の中に、サオヒメシティジムリーダーの名前があったぜ。まさかジムリーダーまで参加してるとは思わなかったぞ」
「あぁ、アリスさんね……昨日会って、少し話したよ。やっぱり上がってきたか……」
さらに目を通すと、サヤナやミオなど、ハルの知り合いは皆予選を突破したようだ。アリスの友人、アサツキの名前もある。
「さて、今日はもうこれで終わりか」
「そうだね。本戦は明日からだよ」
そういってハルがターミナルの時計に目をやると、もう夕方だ。
予選は朝から行われていたので、随分長い間続いていたことになる。
「予選と違って、本戦はトーナメント形式になるみたいだね。本戦出場者が三十二人だから、優勝までは、えーっと……五回戦か」
「勝ち残った強豪相手に五連勝か。厳しいだろうけど、やってやるぜ。今の俺ならやれる気がする」
トーナメント表を見ると、もう既に選手が配置されている。
写真を見る限り、ハルの一試合目の相手は知らないトレーナーだ。
「ハル、トーナメント表のトレーナーを押してみろよ」
ジゼに言われ、ハルはとりあえず自分の顔写真をタップしてみる。
すると突然画面が切り替わり、映像が流れる。先程まで行っていた予選の動画だ。
「どうやら、予選のうち一試合を見ることができるらしいぜ。どういう基準で試合が選ばれているかは分からないけど、情報収集に使えるかもな」
「なるほど。試合自体ははまだだけど、もう本戦は始まってるってことか」
「そういうことだね。できるだけ沢山の情報を得たやつが、有利に戦いを進められる」
さて、とジゼは立ち上がり、
「今日はもう試合はないし、俺はもう少しだけポケモンの調整をしてくる。ハル、明日からの本戦、頑張ろうぜ。もし当たったら俺が勝つからな」
「前半は同意だけど、後半はそうは行かないよ。勝つのは僕さ」
ハルの返事を聞いてジゼはニヤリと笑うと、手を振って控室を出ていった。
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